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トピックス -企業家倶楽部

2000年04月27日

【パーク24特集】駐車場のインテリジェント化で10兆円市場をつかみとる/パーク24の21世紀戦略

企業家倶楽部2000年6月号特集 第1部


時間貸し無人駐車場「タイムズ24」の黄色い看板で知られるパーク24は、全国に2万7000台分の駐車場をもつ業界のナンバーワン企業だ。しかし、その地位に満足はしていない。駐車場総合プロデュース企業として、「快適な車社会の実現」に向かって邁進している。その行く手には、まだ手つかずの広大な市場が眠っているのだ。

 



■地域密着型のスーパー銭湯を提案

二〇〇〇年二月二十四日木曜日、午前七時四十分。JR川崎駅前は、通勤ラッシュが始まっている。空は晴れ、空気は澄んでいる。川崎駅東口を出て左手に徒歩一分、小綺麗なビルが見えてくる。一見、オフィスビルのようだが、黄色地にTimesの黒文字、見慣れたマークで駐車場とわかる。

 ドトールコーヒーの前まで来ると、黄色いジャンパーを着たパーク24の社員たち、二十人ほどのキャンペーンガールが勢ぞろいしている。駐車場入口には『タイムズステーション川崎 OPEN』と書いてあり、くす玉が吊されている。

 やがて超高級スーツを着た社長の西川清が登場する。

「駐車場が暗い、汚い、臭いというイメージのままでは、よい車社会は実現しません。われわれは駐車場をサービス産業ととらえ、日本の車社会を変えていきます……」

 淡々と挨拶し、電気自動車に乗り込む。

 時計の針が八時九分を回った。

「秒読みを始めます!」その合図で、全員が秒読みを始める。

 1、2、3……。西川の運転する車がそろりそろりと駐車場の入口に近づき、八時九分二十四秒(パーク24)ぴったりに入庫した。

 パーク24初のビル型駐車場「タイムズステーション川崎」は二百九十台を収容する地上十階建ての自走式駐車場で、総事業費は二十五億円。ビル内にはドトールコーヒーショップ、チケットぴあ、キャッシュディスペンサー、パウダールームなどを備える。

 ホテルを思わせる大理石で装飾されたエントランス、エレベーター。女性が感動するような贅沢なトイレ。明るくライトアップされた駐車スペース……。既成概念を覆す駐車場がこの日、誕生したのだ。



■10兆円市場のトップ企業

パーク24のここ六年の売上高は九五年から百億円、百四十七億円、百八十七億円、二百八億円、二百四十六億円、二百八十億円(二〇〇〇年十月期見込み)。同様に経常利益は四億円、十二億円、十五億円、十六億円、二十四億円、三十一億円(二〇〇〇年十月期見込み)と、きれいな右肩上がりで伸びてきた。

 しかし、十兆円を超える市場の大きさに比べれば、まだまだ小さい。

「巨大なチーズの塊にネズミが一口かじりついたようなものだ」

「車が下駄だとすれば、駐車場は下駄箱。下駄より下駄箱の方が高いのが普通だから、駐車場のトップ企業は、トヨタ並みの大企業であってもいい」などと、独特のたとえ話を使って、西川は市場の大きさを強調する。

「たかが駐車場」という古い観念を捨てないと、パーク24のポテンシャルは理解できない。その行く手には、誰も手をつけなかった広大な原野が広がっているのだ。



■駐車場をインテリジェント化する

充電サービスを付加した駐車場「パーク&チャージ」、銀行や飲食店の駐車場をタイムズ化する「サービス駐車場のタイムズ化」など、斬新な発想で駐車場ビジネスの常識を覆してきたパーク24はいま、駐車場の情報化という新しい課題に取り組み、さらに一歩先へ進もうとしている。

 まずタイムズの位置情報はカーナビにすでに配信済み。九九年十一月には日本信号、三井物産など七社と新会社アイポスネットを立ち上げた。同社は時間貸し駐車場の精算機に通信端末を取り付け、さまざまな情報をドライバーや駐車場オーナーに提供する。これにより満車・空車情報をドライバーに配信したり、精算機の破損をオーナーに知らせることが可能になる。満車・空車情報の配信は、二〇〇〇年末に実現する。

 次はキャッシュレス化。郵政省が埼玉県大宮市で取り組んでいる電子マネー実験に参加。三月二十一日には大宮市、浦和市にある七カ所のタイムズで電子マネーで支払えるようにした。実験の成果をもとに、二〇〇一年秋にはカード決済サービスを実用化する。
 
 ネットワークとくれば会員組織だ。この一月にはマーケティング会社のシグニチャージャパンと折半で、ドライバー向けの会員制サービス事業会社「ドライバーズネット」を立ち上げた。会員は月々五百円程度の会費で、事故・故障時の緊急対応サービスや自動車保険の割引サービス、タイムズの割引サービスなどを受けられるようにする。七月をメドに会員組織を発足させ、二〇〇三年末までに五十万人の会員獲得をめざす。

 これらのインフラを元に、二〇〇四年にはタイムズの予約サービスを可能にする。



■ 解約リスクの克服を図る

パーク24がタイムズのIT化と並んで、積極的に進めているのは、タイムズの開発バリエーションの拡充だ。

 現在、タイムズの八八%は、不動産オーナーから一時的に土地を借りて運営している。「当初二年間、その後一年毎に自動更新」という一時賃貸借契約である。オーナーからすれば、当座の土地利用方法として、設備投資せずに安定収入が得られ、権利関係が発生しないメリットがあり、パーク24の営業もしやすい。

 しかし、その代償として、タイムズには解約リスクが常にある。解約率は最大で一五%。一万台の一五%は千五百台。五万台の一五%は七千五百台になる。つまり、これまでと同じ方式でタイムズを増やしていくと、総数が多くなればなるほど、解約の数も大きくなり、新規開発台数を増やしても増やしても、総数は変わらない、もしくは減少していく状況になる。そこでパーク24はいま、解約リスクのない新しいタイプのタイムズを次々と開発している。



■駐車場を目的地にする

解約リスクのない駐車場運営を行うための方策は三つある。①PFI活用②長期賃貸借③駐車場の証券化、である。

 PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)とは、従来国や市町村が行っていた社会資本整備を民間企業が肩代わりする制度。「PFIで駐車場ができるのはうちしかない」と西川は断言する。

 この四月、福井県の鯖江市と組んで三百三十台の時間貸し駐車場をオープンした。この駐車場はBOT方式で運営される。BOT方式とは、行政が保有する土地に、パーク24が設備投資してタイムズを建設(Build)。その後、パーク24は行政に地代を払いながらタイムズを運営(Operate)し、運用益で設備投資資金を回収。資金回収後は、タイムズの所有権を行政に移管(Transfer)し、運営権だけを得るもの。

 長期賃貸借とは文字通り、土地のオーナーに二十年、三十年という長い期間に渡って賃貸借契約してもらうこと。つなぎとして用地を提供してもらうのではなく、駐車場経営を目的化してもらうためにタイムズの付加価値を高める。たとえば時間貸し駐車場の上に託児所や賃貸マンションを併設した「タイムズコート白金」。託児所やマンションがあることによって、駐車場そのものが目的地になる。

 駐車場の証券化とは、パーク24が土地と設備を手当してタイムズを建設し、収益が出る状態にしてから、土地と設備を、利回りのよい小口の金融商品として売ってしまうこと。これにより、投資資金を一気に回収し、タイムズの運営権だけを得る。

 西川は複数の駐車場をパッケージにした証券化商品を総額百億円近く発行する構想を表明している。

「タイムズステーション川崎」が、証券化商品の第一号になる。現在、そのスキーム(枠組み)を策定中で、この十月には証券化を実現する計画だ。

 数の拡充と効率化によって、二〇〇四年十月期にはタイムズの総駐車台数五万三千台。稼働率五四%。売上高五百五十五億円。経常利益百十一億円をめざす。売上高は現在の二倍、経常利益は三倍にあたる数字だ。



■六本木の地下に大駐車場をつくる

いま西川が最もつくりたい駐車場は、東京・六本木の地下駐車場である。国際都市六本木には公共駐車場が一つもなく、通りは始終渋滞している。PFIを活用して六本木の外苑東通りの下に、千二百台収容する地下二階の立体駐車場をつくらせてくれと、何年も前から言い続けている。
 
 日本には駐車場の付置義務という法律がある。東京都では四千平米以上の建物を建てると必ず駐車場をつくらなければいけない。そうした杓子定規の法律では地域の特性に合った街づくり、駐車場づくりができない。

「馬の背みたいな地形で裏道のない六本木にビルを建てたら、必ずメイン通りに向かって駐車場の開口部をつくることになって、ビルも街並みも死んじゃうでしょう。だったら道路の下に大きな駐車場をつくって、そこをみんなで共有すればいいじゃない」という。

 ドライバーは駐車場を確保でき、道路の渋滞は解消し、街並みはきれいになる。みんながハッピーになる構想を実現したくてたまらない。東京都、トヨタ……、どことでも組む準備はある。駐車場のプロとしてのキャリアと斬新な発想力。こんなことをできるのは西川しかいない。



■2度創業した会社

パーク24は、西川一人が突出した文鎮型の会社である。年齢、知識、経験はもちろん、アイデアまでもが西川の独壇場である。平均年齢三十歳。二十代から三十代前半の若い社員たちを、親子ほど歳が離れた西川がうまく率いている。あるいは、うまく担ぎ上げられているとも言える。

 こうした年齢構成の会社はいくつかある。新古本チェーンのブックオフコーポレーション(坂本孝社長)、カー用品のオートウェーブ(広岡等社長)などだ。いずれも創業経営者が五十歳になってから創業し、急速に成長した会社だ。西川の場合は創業は早かったが、五十歳を境に、第二の創業というべき変革を経ている。自己革新を成功させた非常に珍しいケースだ。

 西川は一九三八年東京生まれ。大学卒業後、工業用ファスナーメーカーの営業マンになった。最初から社長になろうという意気込みでいたモーレツ社員だった。九年間勤めて、新しい道を選んだ。失業保険の支給を受けながら八カ月間、何をやるかを考え続けた。車が好きだったこともあり、駐車禁止看板をつくることを思いついた。

 一九七一年八月、三十三歳でニシカワ商会(現パーク24)を設立。妻の持参金百万円を独立資金にして、西川の駐車場人生が始まった。



■店頭公開企業になると宣言

その後全国の大病院、ホテルを回って、パークロックを売り歩き、事業を拡大させた。創業三年目の七三年で年商一億三千万円。いまの貨幣価値でいえば、年商十億円企業を三年でつくったことになる。

 自信とやる気と才覚の塊のような三十五歳の西川は「この程度で成功できるのか」と思った。銀座などで派手に遊びながら、不安を感じると仕事に集中し、利益が出るとまた遊ぶということを繰り返した。

 四十歳、四十五歳と不安感は高まっていき、五十歳になったとき、いよいよ追い詰められた。このままでは、自分は会社を潰してしまうのではないか。当時売上高二十億円の会社になっていたが、自分がいなくなったら吹っ飛んでしまう気がした。

 そのかたわらで、自分を追い越して、株式公開していく企業をいくつも見てきた。

『なぜあいつが公開できて、俺ができないんだ』嫉妬心がめらめらと湧いてきた。

『成せばなる。俺は絶対できるんだ』自分に何度もいい聞かせた。

 決断を確固とさせるために、西川は自分自身を追い詰める手段をとった。

「店頭公開企業になる」社員の前で宣言し、新聞に発表したときから、パーク24は第二の創業期に入ったのだ。



■ほとばしり出たビジネスプラン

しかし、店頭公開するには百億円ぐらいの売り上げが必要。病院やホテル相手の商売ではとても到達できない。ならばパークロックを街中に設置するしかない、と思った。

 モヤモヤしたものを抱え、ぼんやりとしていたある日、突然、ほとばしるようにアイデアが出てきた。夢中で、計画を書きなぐった。気がつくと、三時間ほどで、全ての計画ができていた。

「できた!」と叫んで、妻へ放った。

 この計画がそのまま現実になったのが、現在のパーク24である。



■執念でつくった組織

営業には絶対の自信がある西川だが、組織づくりには苦労した。公開レベルの会社にするには、二百人規模の社員が必要とコンサルタント会社に言われ、人集めに精を出した。しかし、求める人材はなかなか集まらない。そこで西川は、こんな求人用コピーをひねり出した。

『彼女の家に泊まった翌朝、ぼくはクルマの無事を確かめる』

 このコピーの評判がよく、有望な新人が集まった。現在、経営企画室課長の広羽芳順も、このコピーで入社した一人だ。

「求人誌で見た途端、この会社って、どんな会社だろう。社長はどんな人だろうと、ものすごく興味をひかれました」と証言する。

 西川がアイデアマンであるというだけでなく、経営者の執念を感じさせるコピーである。

 このとき集められたのは、まさにタイムズ事業を立ち上げるための新人だった。西川は二十人ほどの若者たちの面倒をこまめにみた。

「食事に行こうか」

 遅くまで残っている社員に声をかけ、毎週のように銀座、六本木などに繰り出した。高級店で大いに奮発し、若手社員の掌握に努めた。



■ 快適な車社会の実現をめざす

日経紙に店頭公開の計画を発表した九二年、タイムズの総駐車場台数は六百八十台だった。それが九三年四千六百台、九四年七千二百台、九五年一万一千台というペースで伸びた。

 九七年三月、念願の店頭公開を果たした。九九年四月、東証二部に上場し、この四月には東証一部上場企業になった。夢が現実になり、今度は現実が夢を超える勢いで進展している。

 西川自身も企業家として、会社の規模とともに大きくなっている。

 タイムズステーション川崎には、電気自動車用の充電施設が設置してある。いまのところ、主要自動車メーカーの電気自動車は充電方式がまちまちのため、メーカー別の接続ケーブルを用意しなければならない。利用者も滅多にいないが、電気自動車の普及をアピールするため、あえて設置している。
 
 タイムズを成功させた過程で車社会全体のことを考え「自動車メーカーがやらないからうちがやる」というほどの気概をもつようになった。

 なぜがんばるのですか、と聞かれると、西川は「遊びたいからです」と答える。旅行通で、夜の銀座通で、競走馬の馬主で、絵画、ジャズの造詣が深く……と、西川があらゆる遊びに通じているのは事実だが、そこにはある種の韜晦(とうかい)がある。西川にとって仕事で社会貢献することほど、楽しくて刺激的なことはないはずだ。

 粋であることを何よりも大事にし、その上シャイだから「世のため、人のため」とは言わないが、周りの人間はわかっている。だからこそ、パーク24はこれからも、大きくなっていくだろう。
 
 そして、いつの日か、私企業の枠を超えた存在になっていく。そこまで見届けたいものだ。



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