• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2005年08月27日

感動創造を理念に外食、中食、内食を制し、外食ナンバーワン企業をめざす/レックス・ホールディングスの21世紀戦略

企業家倶楽部2005年10月号 レックス・ホールディングス特集第1部


焼肉レストラン「牛角」をはじめ、「とりでん」「土間土間」など繁盛業態を次々と創造、外食レストラン約1400を展開、縮小均衡の外食業界でひとり気を吐くレックス・ホールディングス。社長の西山知義は今こそ30年に一度の商機と、エーエム・ピーエム・ジャパン、高級スーパー成城石井を手中に収め、外食と流通小売のトップ企業を目指すと宣言する。根底を貫く理念は「感動創造企業」。目標達成の最大の武器はモチベーションの高い人財である。西山とともに高い目標を掲げ、熱いドラマを創りあげるレックス軍団の真実に迫る。(文中敬称略)



■レインズパートナーズフォーラムで感動を共有  

二〇〇五年五月二十六日、横浜パシフィコの大ホールには熱気と興奮が渦巻いていた。壇上では若者が次々と登場、緊張した面持ちで発表している。「目標をどうしたら達成できるかを全員で考え、チラシを作り街角に立ちました」。目標を達成するために、どんな計画を立て、どう実践してきたのか、事例を発表する誇らしげな姿に、会場を埋め尽くした四千人の聴衆が熱い声援を送る。

 ここは焼肉チェーン「牛角」を展開するレインズグループが年二回成績優秀者を表彰する、パートナーズフォーラムの現場である。同社はアルバイトをパートナーと呼び戦力として育成している。全国のレインズグループ約千四百店舗から勝ち上がってきた選りすぐりのパートナーの発表の場である。いわばレインズグループの甲子園大会といえる。

 第七回大会で全国約千四百店舗の頂点に立ったのは牛角鶴ヶ峰店である。壇上では顔をクシャクシャにしたパートナーたちの歓喜の姿が、客席にはその姿にもらい泣き、くやし涙など嗚咽が広がり、感動で一つになった。

 八時間にも及ぶ大会の締めくくりとして登壇したレックス・ホールディングス総帥の西山知義は四千人の聴衆に力強く語りかけた。

 「パートナーの皆様、感動をありがとう。高い目標を掲げ、突き抜ける強い達成意欲をもって行動すれば必ず実現できるという成功体験を実感しました。皆様こそがわがレインズグループの宝です。パートナーが成長することがどれだけ素晴らしいことか。オーナーの皆様にはぜひ彼らに成長のチャンスを与えて欲しい。我々のミッションは一人でも多くの方に感動を与えることです」。会場は静まりかえり、西山を食い入るように見つめている。ひと呼吸おくと力強く宣言した。「まだ序章だが、マクドナルドの背中がようやく見えてきた。我々は外食日本一を目指す」

■外食ナンバーワンを目指す

二〇一一年にマクドナルドを抜いて外食産業日本一を目指すという目標を掲げる西山だが、そこには確かな勝算がある。まずはレックス軍団の高い成長意欲と展開スピードの速さには自信がある。事実一九九六年に一号店を開店してから、わずか七年で一千店舗を達成した。ベンチャー・リンクの支援を受けたとはいえ、これはマクドナルドやすかいらーくの約三倍のスピードと西山は自信をみせる。そして今、創業わずか九年で「牛角」約八百五十店舗を展開、「鳥でん」「土間土間」など次々と繁盛店を開発、その店舗数は総計約千四百店に達する。また台湾、ロサンゼルス、ニューヨーク、シンガポール、ハワイと海外展開も順調だ。

 一方、外食産業日本一を誇る日本マクドナルドの店舗数約三千七百店、二〇〇四年十二月期の売上高は三千八十一億円、経常利益七十三億円。回復基調とはいえ低価格路線が裏目に出た。特効薬を探しあぐねてスクラップ&ビルドを繰り返すマクドナルドと、今のレインズを比較すると、その勢いは歴然としている。

 それだけではない。レインズインターナショナルは二〇〇四年にはコンビニのエーエム・ピーエム・ジャパン、成城石井を買収、その数を含めると、店舗数二千七百七十五、パートナー数は四万五千人と一大ビックチェーンに駆け上がった。レインズの二〇〇四年十二月期の売上高は約八百五億円、経常利益四十六億円だが、二〇〇五年十二月期は売上高千四百億円、経常利益六十五億円を見込む。

 そしてレインズインターナショナルはこの五月、グループ価値の最大化を目指し持株会社体制に移行、レックス・ホールディングスに社名変更、西川はその社長に就任、グループ全体の運営を強化する。

■エーエム・ピーエム・ジャパンを買収

二〇〇四年八月、「牛角のレインズがコンビニのエーエム・ピーエム・ジャパンを買収」の文字が新聞に躍った。なぜレインズが?業界に大きな衝撃が走った。その真相はこうだ。

 「唐突にみえるかもしれませんが実はずっと中食をやりたいと考えていました。中食の最大のチャネルはセブン・イレブンを筆頭とするコンビニエンス。われわれはコンビニを手に入れる必要がある」。

 西山が中食の象徴としてのコンビニ業界を意識したのは二年前だ。米国産牛肉のBSE問題で、焼肉店には逆風が吹き荒れていた。二〇〇三年三月、幹部合宿で西山が宣言した。これからは外食だけではダメだ。中食への進出が必須となる。それにはなんとしてもコンビニチェーンを手に入れたい。その命題は当時、経営企画をまかされていた現常務の福井克明に課せられた。スケールメリットを考えると店舗数一千店舗以上のコンビニチェーンが対象となる。福井の隠密の買収作戦が始まった。M&A仲介企業を丹念に当たった。しかし、条件に合うコンビニを買収することは不可能に近かった。

そして一年後の二〇〇四年三月、朗報が舞い込んだ。エーエム・ピーエム・ジャパンが候補として浮かび上がってきたのだ。同社はam/pmを都内を中心に約千三百店をドミナント展開、添加物を使わない冷凍弁当を提案するなど、セブン・イレブンや、ローソンとはひと味異なる店づくりで支持されている。福井は買収の可能性を一%以下と睨んだ。

 西山はすぐさまエーエム・ピーエム・ジャパン社長の秋沢志篤を訪問すると、その想いをぶっつけた。秋沢は西山の熱意に打たれたのか即座に答えた。「そんなにやりたいならまずは一店舗やってみてはどうですか」

 そしてam/pm赤坂一ツ木通り店での修行が始まった。西山は社運をかけたコンビニ買収の斬りこみ隊長として、常務の松宮秀丈を送り込んだ。外食店舗の経営には自信があるが、小売は初めての経験。西山も自ら店舗に乗り込み、コンビニ運営初体験の修行を積んだ。そして三ヵ月後、赤字だった同店は収益改善を果たした。その実績と西山の情熱が秋沢の心を動かし、買収が実現した。

 こうして外食一辺倒のビジネスモデルから脱却、中食参入の足かがりを掴んだ。今、西山がam/pmの運営でまず力を入れているのが、全従業員の理念の共有である。感動創造企業を最大のミッションとして着々と改善策を実行している。



■時代のニーズに対応、フィールドを拡大

西山がそれほどまでに中食進出にこだわるのは、日本の社会構造の変化に危機感と商機を感じているからだ。変化の一つは所得構造の変化による消費の二極化である。一億総中流意識が崩れ、高級化と低価格の二極化の方向に進んでいる。アメリカでも一九七〇年から一九九〇年に同様の変化が起こり女性の就業率が高まった。

 もう一つは人口構造の変化である。今、日本では急速に少子高齢化が進展、核家族化が進んでいる。関東では既に六三%が単身か二人世帯となっている。

  こうした社会構造の変化は二十五兆円市場といわれる外食市場を直撃している。年々シュリンクする市場に頼っていたらジリ貧になる。一方、中食市場は毎年一兆円のペースで拡大しており、すでに七兆円市場に成長している。外食の雄、レインズとしてもこのまま見過ごすわけにはいかない。なんとしても中食に進出する必要があった。

 今、外食・中食・内食で求められているコンセプトは、二極化だと西山は考えている。外食では、単身者や二人世帯が行きやすく、安価な業態開発が求められる。一方でレッドロブスターのような高価格帯のニーズも高まると予測。西山はこの社会構造の変化を三十年に一度の商機と捉え、グループシナジーを発揮、業態開発を加速化している。

 「安くて美味しい」を武器に牛角ブランドを築いてきた西山だが、高級化路線となると未だ未熟というのが実態である。そこに舞い込んできたのが、成城石井の身売り話である。これは「われわれからではなく先方の石井社長から申し入れがあった」と打ち明ける西山。二〇〇四年八月のことだ。

  am/pmジャパンを買収、資金は尽きている。しかし食品スーパーを手に入れることは内食に参入することになる。これは千載一遇のチャンス。レインズとして未開拓の高級路線に風穴を開けることができる。西山の心をかき立てたことは間違いない。そして二〇〇四年十月、成城石井を傘下に収めた。カリスマ創業経営者石井良明が築いた食品小売の高級ブランドは、新しい食のリーダーの手に委ねられた。

■レインズ成長の軌跡

今でこそ外食成長神話を次々と生み出し、外食業界の寵児として名を馳せる西山だが、ここまでくるには試行錯誤の連続であった。

 西山はもともと外食を手がけていたわけではない。不動産業からの転身組である。マクドナルドのアルバイトで外食のイロハを学び、外食産業の魅力に気づく。そして一九九六年、東京・三軒茶屋に焼肉市場「七輪」を開店した。十八坪、二十七席からスタートだった。ズブの素人が始めた店だけに、当初は連日閑古鳥。日商一万五千円という日もあった。あるときFCビジネスを支援するベンチャー・リンクの存在を知り、焼肉レストランのFC展開を思いつく。ビジネスモデルには自信があった。ベンチャー・リンク会長の小林忠嗣を訪問、支援を要請するが、断られる。まずはコンサルを受けることを求められた。料金は四百万円。当時のレインズには途方もない大金だった。しかし西山は諦めることはなかった。

 経営のイロハから、科学的な経営手法など小林から学んだことは大きい。ベンチャー・リンクとの提携が今のレインズ成長の土台となったことは間違いない。レインズが新しい業態を開発し、FC契約はベンチャー・リンクが担う。二社共同で七年間で外食レストラン一千店舗を達成するという急成長路線を突っ走ってきた。

 一番の痛手はBSE問題だ。米国産の牛肉を主流にしていた牛角には試練の時であった。しかし感動創造企業という理念とパートナーの高いモチベーションで乗り越えてきた。このとき西山は「敵はわれわれの心の中にあり」と社員やパートナーを励ました。そして今、レインズはベンチャー・リンクとの提携を解消、独自路線を歩んでいる。

■企業理念は感動創造

レックス・ホールデスングスの理念は感動創造企業である。「感動とは、客が抱いている事前期待を上回ったときに感じるもの」とは西山特有の理論だ。そしてレックスグループの最大の商品は『感動』と言い切る西山。全ての客に感動を与えることがミッションだ。そして二〇〇五年の課題として「全店感動」を掲げた。直営店だけでなく、FCを含む全ての店で、全ての従業員が「感動創造」を追求する。

 西山がこれほどまでに感動にこだわる根源はどこからきたのか。子供の頃から人を喜ばすのが大好きだったという西山少年。その感動する心を育んだのは父親だった。小学生の頃、スポーツ大会で活躍した西山少年に父親が言った。「よく頑張った、ご褒美に何が欲しい」。「お菓子についているカードが欲しい」と答えたところ、父親は段ボール二箱分を買ってくれた。そのときの西山少年の喜びは計りしれない。感動で胸が一杯になった。西山はこのときの感動を今でも忘れない。

 感動創造を経営理念に掲げる西山だが、その手法はきわめて科学的だ。「感動」という測りがたい感情を指標で捉え、その価値を測定、科学的手法で現実の店舗運営に落とし込んでいる。客はサービスのどの項目に満足したときにリピーターとなるのか。来店動機の最大のポイントはどのサービス項目か。来店客にアンケート調査を実施、その心の中の感動を数値化、リピーター獲得に役立てる。感動という測りにくい感情をもあえて科学的に測定、企業理念の遂行に情熱を傾ける。科学と情熱の融合がレインズ成長の秘訣といえる。

 レックスグループでは人材を最大の宝とし『人財』と書き、利益は理念を追求した結果として得られた価値として『理益』と書く。特に顧客との最前線にいるパートナー育成には力を注ぎ、全員参加型の経営を貫いている。冒頭で紹介したパートナーズフォーラムは人財育成の重要な舞台といえる。

■レックスグループのシナジーを発揮 、業態を開発

コンビニと高級スーパーを買収、そのシナジー効果を発揮、時代ニーズに合致した新業態開発に力を入れるレックス。am/pmの『三温度帯一日三回配送』の物流システムは大きな強みだ。そして成城石井の『高級食材の独自仕入れルート』も魅力である。これに外食店舗総合サービスを提供するコスト・イズが加われば鬼に金棒。新たな業態開発ができる。

 二〇〇五年春には消費の二極化に対応、東京・目黒に低価格ミニスーパー「フードスタイル」を出店した。最大の特徴は全て九十八円という価格設定。そして生鮮野菜と雑貨をも充実させたミニスーパーである。

 入り口脇には九十八円の生鮮野菜が積み上げられ、通常のコンビニとは異なる業態であることを示している。また一人分でも簡単に調理したいというニーズに応え、内食の簡単キット「プレメイト」を提案している。例えば「チンジャオロース」にはカットして炒めるだけの牛肉、ピーマンなどの具材とタレがセットされて三百六十五円。常時三十アイテムを揃え、個食ニーズ、内食ニーズに対応している。

 それだけではない。レインズとしては初のファーストフードにもチャレンジしている。東京の下町人形町、交差点の角のam/pmの隣に低価格カレー店「カレキチ」が登場した。交差点の向い側には日本最大のカレーチェーン壱番屋の「CoCo壱番屋」があるが、カレキチの強みはなんといってもその安さだ。ポークカレー二百七十円。ビーフカレー二百九十円と格安。このフォーマットは駅ナカ、駅ビルなど狭いスペースでも出店できる。今期中に三十店を展開する計画だ。

 そしてこの秋、高価格帯コンビニ「成城石井」を出店する計画だ。現在三十店舗を持つ成城石井のファンは多い。ここでは成城石井得意の輸入ワイン、菓子、乳製品など高級食品を揃え、ワンランク上の食スタイルを提案する。「フードスタイル」や「カレキチ」のように低価格の業態と高級路線のコンビニ「成城石井」。今後も消費の二極化に合致した業態開発を加速する考えだ。

■限りない業態開発

消費の二極分化に照準を合わせ、中食、内食にも進出、多様な業態開発で、ナンバーワンにチャレンジする西山だが、その道のりは平坦ではない。まずは急ぎすぎる業容拡大は内部崩壊につながる危険性をはらむ。内部組織固め、人材育成が欠かせない。というのは店舗の八割がFCである。そのオーナーと理念を共有、常に満足させ続けることが求められる。

外食業態の寿命は五年から六年といわれる今、常に業態開発をし続けなければならない。競合、立地環境の変化で客の流れはすぐに変わる。ましてレインズのメイン顧客層である若者やヤングファミリーは飽きっぽい。

 また日本は少子高齢社会に突入、五十代以上のシニア社会となる。いまレインズが持っているのはそのほとんどが、若者やヤングファミリー向けのフォーマットである。お金とヒマを十分に持ち、厳しい選択眼を持つシニア層にどう斬り込んでいくのか。接客の向上だけでは感動創造はできない。

 am/pmを買収、コンビニ経営に参入したものの、全国に一万店以上を展開するセブン・イレブンと勝負するのは至難のワザだ。日販で二十万円は負けているam/pmの価値をどう高めていくのか。まずは欲しい商品が確実に揃っているというコンビニ本来の機能を全うすることが求められる。

 そして感動創造というレックスの理念を、どうam/pmというコンビニ業態に落とし込むのか。専務の松宮は「客の期待が多様すぎて掴みきれない」と打ち明ける。外食店舗であれば、客はリーズナブルで美味しい食事をすることを目的に来店する。従って客の期待値を超す感動を創造するのはそう難しいことでしない。しかしコンビニの客の目的はバラバラだ。どこに的を絞り期待値を超せば、感動を与えることができるのか。試行錯誤が続く。

■2015年小売ナンバーワンを目指す

二〇一一年外食ナンバーワンを掲げ、マクドナルドに挑戦状を突きつけた西山だが、その事業欲はそれだけに留まらない。エーエム・ピーエム・ジャパンと成城石井を手に入れたことで、さらなる高い目標、二〇一五年流通小売日本一を掲げた。これは小売の巨人、セブン・イレブンに挑戦状を突きつけたことになる。

 「セブン・イレブンと戦うのは大変な度胸ではないか」という多くの心配をよそに、西山は涼しい顔で切りかえす。「セブン・イレブンと真っ向から勝負しようとは思っていません。われわれが狙っているのはわくわくするような楽しさのあるリテイルです」。ここには西山が得意とするエンターテインメントに富んだ店舗構想が予測される。というのはレックスの商品は「感動」であり、モノではない。感動を与えることが最大のミッションだからだ。

 最初の焼肉市場「七輪」の開店から十年足らずでここまで急成長を遂げた実績がある。そのスピード力と成長意欲はピカ一だ。現在グループ全体の店舗数二千七百七十五店、二〇〇五年十二月期の売上高見込み千四百億円。十年の期間があれば、夢の実現は不可能ではない。まして西山はまだ三十九歳、体力・気力も十分だ。支えるスタッフも若い。その若さと執念で、十年後日本の小売業界の地図をどう塗り換えるのか、楽しみだ。

いずれにしても感動創造を理念に成長路線をひた走る西山とレックス軍団の飽くなきチャレンジ精神と実行力に期待したい。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top