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トピックス -企業家倶楽部

1999年04月27日

【リゾートトラスト特集】リゾートトラストスピリットを構築し日本の余暇産業のリーディングカンパニーを目指す/リゾートトラストの21世紀戦略

企業家倶楽部1999年5月号 特集第1部


一億総不況感に喘ぐ日本にあって、一室一千万円以上のホテル会員権を売りさばき、確実に業績を伸ばしている企業がある。日本の会員制リゾートホテルナンバーワンを誇るリゾートトラストである。会長の伊藤與朗は「不況の今こそわが社にとって最大のチャンス」とリゾート産業のリーディングカンパニーを目指し強気の戦略を練る。(文中敬称略)




 日本でもトップクラスのリゾート地、長野県蓼科高原。残雪の残る蓼科山は朝日にきらめき、冷たさの残る凛とした風が心地よい。一九九九年三月四日、黒のタキシードに身を包んだリゾートトラスト社長の伊藤興朗は高まる胸の鼓動を押さえながら、テープカットの瞬間を待っていた。スコットランドのバグパイプの素朴な音色が早春の高原にこだまし、緊張の中にも穏やかな雰囲気が漂う。


 自分に注がれる熱い視線、司会者の合図のもと、ファンファーレとともに紅白のテープにハサミを入れる。羨望と温かさのこもった大きな拍手を受けながら、伊藤は居並ぶ来賓一人ひとりに深々と礼をした。


 リゾートトラストが渾身の力を込めて開発した十カ所目の「ⅩⅣエキシブ蓼科」のグランドオープンセレモニーの始まりである。


 テープカットの瞬間は何度経験しても緊張と興奮で身体が熱くなる。心地よい緊張に快感を感じながら、伊藤は三年前のプロジェクトスタート時を思い起こした。


 念願の蓼科の土地を手に入れた瞬間、伊藤はここに今までにない最高のエキシブを創ろうと意気込んだ。


  唐松林に囲まれた静寂の地、蓼科高原に何度も足を運んだ伊藤は、ホテルのコンセプトを「ブリティッシュ・カントリースタイル」と銘打った。「イギリスの貴族が週末をゆったりと過ごす郊外のマナーハウス」をイメージしたのである。外観は勿論、建物のエントランス、ロビー、部屋、調度品の一つひとつにまでブリティッシュカントリーのコンセプトが息づいている。



■エキシブで別世界を創造する

 ここはまさにイギリスのカントリーそのものだ。メインロビーに足を踏み入れるや、黒いオークの柱をふんだんに使った高い天井、壁面の重厚な石作りに圧倒される。しかし、それは威圧感ではなくゆったりとした落ち着きと品格、そして自然の温かさを感じさる。 

  赤々と燃える暖炉の前に腰を下ろし、ゆっくりとパイプをくゆらす紳士。鳥のさえずり以外は何も聞こえない静寂の中でまどろむ至福。ここには時間に支配される日常のしがらみや猥雑とは全く無縁。日常の慌ただしさや煩わしさから自分を解き放ち、自分らしさを取り戻す。伊藤はメインロビーの中央に立ち、予想以上の出来栄えに満足げにうなずいた。 「レディズ&ジェントルマン!」地下一階のレセプションルームでは本場英国のバグパイプの演奏に続きおなじみのナレーター、小林克也のアップテンポな語り口の開会宣言とともに、「エキシブ蓼科」披露のセレモニーが始まった。

 まずは音とレーザー光線と大画面が織り成す独創的なプレゼンテーションに詰め掛けた来賓は驚きの声を上げる。数分間で静寂が戻ると伊藤はゆっくりと登壇し、口を開いた。 「本日、日本でも有数のリゾート地蓼科に念願のエキシブを完成させることができましたことはまさに皆様のご支援おかげです」。まず、出席者に感謝の意を表した。 「広大な敷地に八つの低層階の建物を配置し、カートを使ってのお客様の送迎、本格的スパ施設、一年中泳げる温泉プールなど施設面での充実は勿論、レストランも充実させ、何日滞在しても会員の皆様にご満足いただけるような施設に仕上げました。当社の持てるノウハウを全て結集した本格的リゾートと言えます。会員の皆様には蓼科の自然と触れ合い、リゾートライフを思う存分満喫して頂けると確信しています」。

 伊藤の自信に満ちたが声が会場に響く。長年実績を積み重ねて勝ち取ってきた業界ナンバーワンの自信がほとばしる。さらに続ける。「会員の皆様に利便性を実感していただくためにインターネットでの二十四時間予約やホテル周辺情報が瞬時に入手できるよう、端末を皆様にお貸しし、会員の皆様のコミュニケーションに役立てていただきます」。

 エクシブ蓼科の敷地面積は八万七千平方メートル。八棟の延べ建築面積は三万六千平方メートル。部屋数二百三十室。同社は約百八十七億円と三年の月日を費やして完成にこぎつけた。完成の時点で、会員権はすでに九百二十二口、百四十三億円を売り、三四%の達成率である。日本経済が不況の真っ直中にあるなかで、三四%の目標達成率は上々の滑り出し。伊藤の自信に満ちたあいさつもうなずける。

 華やかな会場を回り、この日のために駆けつけてくれた来賓一人ひとりに挨拶しながら、伊藤の脳裏には十五年前、エクシブを初めて世に問うた時の緊張感が蘇ってきた。



■二十五年前草分けの会員制リゾートホテルに進出

 リゾートトラストの創業は一九七三年、中部の軽井沢といわれる岐阜県ひるがのに会員リゾートホテル「サンメンバーズクラブひるがの」をスタートさせたが始まりである。


 当時、日本にはリゾートという概念すらなく、余暇と云えば「団体旅行でいく温泉」ぐらいしかなかった。


 マリンスポーツやスキー、ゴルフが得意な伊藤はホテルを基地とした余暇を楽しむ施設をつくりたい、と考えていた。そこで思い付いたのが当時欧米で人気の会員制リゾートホテルであった。早速、ひるがのに第一号を建設した。


 当時、会員制リゾートホテルの競合はダイヤモンドクラブ、エメラルドグリーンクラブ、紀州鉄道などの四社。いずれも会員制のメリットを謳い、それなりの評価を得ていた。しかし会員からは「最も泊まりたいピーク時になかなか予約が取れない」という不満の声が挙げられていた。


 そこで創業十年目を迎えた伊藤は本格的にCI(企業イメージの総戦略)を導入、それまでの商品価値、会員の満足度など全てを徹底的に洗い直した。そこで一番問題になったのは「泊まりたいときに泊まれない」という会員の不満であった。


 空いていればいつでも宿泊可能という日本のフローティングシステムは、申し込みが殺到する盆や正月などは泊まれないという欠点があった。一方、一週間単位のアメリカのタイムシェアリングシステムは決められた一週間しか泊まれないという欠点があった。それでも確実に泊まれるという点が受けて、かなり普及していた。



■ 画期的予約システムⅩⅣ(エキシブ)の発案

 そこで伊藤ら社員が一丸となってCI導入の仕上げとして、考え出したのがアメリカ型タイムシェアリングシステムと、日本のフローティングシステムの長所を併せ持つ独自のタイムシェアリングシステムである。それが現在の主力商品となっているⅩⅣ(エキシブ)である。


 そもそもエキシブという言葉はアラビア語で十四を表す。つまりホテルの一部屋を14人でシェアするという画期的システムを編み出した。


 エキシブを開発するに当たり、伊藤が最も拘ったのは会員のステータスを創造するということであった。それまではリゾートホテルの会員になってもメリットは安く泊まれるというだけであった。


「会員制というからには会員としてのステータスを感じてもらわなくては意味がない」伊藤は自問し続けた。


 それなら「あのエキシブにぜひ泊まってみたい」と思わせるような世界に負けないリゾートホテルを創ろう。エキシブで別世界を作ろう」。


  第一号の鳥羽は敷地面積四万八千平方メートルに延床面積五千五百平方メートル、総室数二百十四という日本のリゾートホテルとしては類のない本格的なホテルだった。当然販売価格も高額だ。価格は一室平均三百万円、他社の百万円と比較すると三倍であった。


 果たして売れるのか? お客様はこの価値を理解してくれるだろうか。伊藤にとっては大きな賭けだった。
「連日眠れないほどの緊張感が続いた」と、なつかしそうに述懐する。


  結果は大成功であった。カレンダーで定められた二十六日間は確実に泊まれるという安心感、鳥羽きってのスケールの大きさ、紛れも無い本物志向に会員は満足したのである。


  さらに会員にとって使い勝手がよいのは交換システムを利用し、空いていれば他の日と、またさらには他のエキシブとも交換できるという画期的なシステムである。しかも、同社と世界的なリゾート交換会社RCI社との業務提携により、世界五十四カ国、三千二百カ所のリゾートホテルが利用可能となれば、会員にとっての利便性はこの上ない。


 伊藤の会員制リゾートホテル事業をメジャーな産業に引き上げたいと願う心が、会員にとって最も使い勝手のよいシステムを生み出したといえる。


 今、同社の会員は七万人に達するが顧客の七〇%が会員からのクチコミという数字が顧客満足度の高さを物語っている。


 念願の「エキシブ蓼科」を無事にオープさせた伊藤はこの四月、会長に就任、副社長の伊藤勝康を社長に据えた。狙いはCEO(最高経営責任者)とCOO(最高経営執行責任者)の役割分担を明確にし、伊藤自身はグループ各社のシナジー効果を最大化する仕事に専念するためである。


 会社そのものの執行を新社長の伊藤(勝)に任せ、CEOとして昨年掲げた新中期五カ年経営計画「バリュープラン21―価値倍増計画― 」達成に本格的に取り組む。


 新しい五カ年計画は今後五年間で「価値倍増」を達成するために、まず風土としてリゾートトラストスピリットを構築する。五年後の指標として売上高は一・五倍の七百四十億円、経常利益は二倍の七十五億円、ROE(株主資本利益率)一七%という数値を掲げる。そして五年以内に東証上場を目指す。


 そのためには組織としてリーン (筋肉質)カンパニーを目指す。具体的にはスピード、スリム、ストロングな組織を作る。特にスリム化についてはただスリム化すればいいというものではなく次に大きく伸びるためのスリム化でなければならないと自らを戒める。



■不況の今こそが最大のチャンス

 規模拡大の手法としてM&A(企業の買収・合併)も視野に入れている。日本の不動産業界は大小問わず不良債権の処理に追われ沈没寸前。バブル時に買いあさった物件やゴルフ場がお荷物となり、身動きできない状態にある。そんな中で一人快走を続けるリゾートトラストには熱い視線が寄せられる。伊藤は語る、「不景気の今こそがわが社にとって最大のチャンス。じっくりと考え、わが社の体質と体力にあったものを手にいれたい」。すでに二、三の案件を検討中で、年内には商談が成立しそうだ。


 一見華やかにみえるリゾートホテル業界にあって、伊藤は極めて慎重である。皆が浮かれ狂ったバブル期にあっても脇見をせず、自分を失わず、たずなをしっかりと締め得意分野に資源を集中させてきた。この堅実さがバブル崩壊後、リゾートトラストの強さとなっている。



■総合リゾート産業を目指す

 第二はポストエクシブ作戦。伊藤は「主力商品であるエキシブが好調な内にポストエキシブの芽を育成したい」と意欲を燃やす。そして掲げた目標は総合リゾート産業への変身である。


 エキシブ山中湖に設置した世界最高の水準の会員制医療施設ハイメディックをさらに発展させてのヘルスケア事業への進出。マンション事業のノウハウを活かしてのハウジング事業への進出、フィットネス、ゴルフ事業を発展させての総合スポーツ産業への進出などである。


 また今後はエキシブを核として、既存の事業を多角化、複合化してシナジー効果を高め、総合リゾート産業を実現したいという伊藤の夢は大きく膨らむ。


 その具体策として初の海外進出にも意欲を燃やす。場所は海の美しさで世界中のダイバー憧れの島、南海の楽園パラオ。ここにホテル、コテージ、ゴルフ場を含め総合リゾートを開発しようというものだ。既に三十万坪の土地取得の契約は終了した。一期、二期、三期に分けて開発となるが、今、全社のノウハウを結集し、リゾートトラストならではの企画開発に英知を絞る。最終投資額は二百億円に及ぶ。初のグローバルリゾート実現の夢を語る伊藤の目は少年のように輝く。


 インターネットを通じ会員同士のコミュニケーションを図るというネットワーク事業にも意欲を燃やす。これは二十四時間何時でも予約ができるという利便性だけでなく、ホテルのイベント予定や、周辺観光地のイベント予定、また会員同士のゴルフコンペなどネットワークの利便性を享受してもらおうというものである。これはすべて会員の価値を倍増するために編み出したものである。


  今、エキシブの会員は七万人だが、五年後は十万人の獲得を目指す。高額所得層十万人のネットワークの威力は計り知れない。



■リゾートトラストスピリットの構築

企業理念がない企業は伸びない、と語る伊藤は、バリュープラン21で企業理念を「ビューティフルカンパニーを目指す」と定めた。これは儲かれば何をやってもいいということではでく、リゾートトラストのカルチャーに合わないものには手をつけないということである。そして何よりも「いかにリゾートトラストらしさを出すかが重要と」伊藤。


「価格は同じでもちょっとしたところに本物志向、ハイセンス、ハイクオリティを感じていただけるような工夫をしたい」と、リゾートトラストらしさを強調する。



■日本におけるリゾート産業のリーディングカンパニーを目指す

  働きばちの日本人は遊び下手である。しかし、確実にリゾートに対する認識は変化してきている。この不況下にあっても余暇を楽しみたいと希望する人は年々高まっている。レジャー白書によれば「仕事を充実させたい」より「余暇を楽しみたい」人が逆転してきたという。つまり仕事より余暇が大切と感じている人が増加してきたと言うわけだ。事実この長引く不況下にあっても会員制リゾートホテル業界は微増を続けている。

 ここで重要なのはその将来性である。平均してそうであるならば、二十代、三十代の若者はもっと余暇を楽しみたいという欲求が強い。つまり年代を経るほど余暇に対する価値観が高まり、市場はますます拡大するということだ。 「今、日本人が余暇のために宿泊する日数は平均で三・三日であるが、これに対し、欧米では平均で十五日程度となっている。日本が仮に倍の六日になったとしても市場は二倍になる」と伊藤は身を乗り出す。 「さらに今後は日本も能力主義が進展し、新富裕層が登場する。彼等はハードな仕事をこなす一方、休暇は思い切り楽しむというメリハリの利いた生活を望むはず」

 レジャーもグローバルスタンダードになるとすればまさに日本のリゾート産業は追い風が吹いているといえる。 「人間が人間として生まれてきた喜びを存分に味わってもらたいたい。楽しく快適なリゾートライフを満喫し、明日の活力の源にして欲しい。そのためには単に宿泊施設を提供するだけでなく、遊びをコーディネートし、リゾートライフそのものを提案していく必要がある」と語気を込める。

 リゾート貧国日本人に真のリゾートライフを提案したいという伊藤の強烈な思いが、お客様にとっての利便性を徹底追求し、会員の信頼を築き上げてきたといえる。

 日本の会員制リゾートホテル事業ではダントツ一位をキープするリゾートトラストだが、一歩先を行く欧米諸国を追い抜くのも夢ではない。 「エキシブを開発し始めた当初は世界有数のリゾートホテルに頻繁に視察に行っては参考にしたが、今や世界を探してもそれほど参考になるホテルはなくなってきた」と語る伊藤。

 これはエキシブが世界のリゾートと肩を並べたということを意味する。これからはリゾートトラストそのものが世界のリゾート産業をリードする立場になってきたといえる。

  日本人に真のリゾートライフを提案したいと意欲を燃やす伊藤の夢はつきない。

 



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