トピックス -企業家倶楽部

2016年06月16日

クリエイターのプロ集団を創る/クリーク・アンド・リバー社 代表取締役社長 井川幸広

企業家倶楽部2014年10月号 今、日本を最も面白くする企業家たち


コメンテーター:徳永卓三(企業家ネットワーク会長)

キャスター:  宮舘聖子

この記事は、BS12TwellV 火曜7時30 分から放送中のワールド・ビジネス・チャンネル同名番組を紙面化したものです。今、日本を最も面白くする企業家の熱きドラマです。なお、過去放送分も含めた当番組の全てのラインナップは、企業家ネットワークのホームページでご覧頂けます。(http: / /kigyoka.com)

P r o f i l e

井川幸広(いかわ・ゆきひろ)

1960年佐賀県生まれ。毎日映画社撮影部に勤めた後独立、ドキュメンタリー番組等のフリーディレクターとして活動。90 年 クリーク・アンド・ リバー社を設立。2000年6月ナスダック・ジャパン(現JASDAQ)に上場。クリエイター・エージェンシー事業をはじめ、医療、IT、法曹、会計分野にも進出。



プロとクライアントにwin-winの関係を築く

 当社は、テレビディレクターや医者、弁護士などのプロフェッショナルな人々をネットーワークし、彼らの付加価値を向上させながらクライアントと結び付けています。そして、両者の間にwin-winの関係を築くことを目標とした会社です。

 日本には10万人のプロのクリエイターがいると言われますが、そのうちの6万人が当社とパートナーになっており、テレビのディレクターであれば45%のテレビ番組に当社の演出系スタッフが関わっています。また、当社では毎年2万人の中から厳選して新卒を50~100人採用し、クリエイターの育成も行っています。

 私たちは主にエージェンシー、プロデュース、ライツマネジメントという3つの仕事を行っています。エージェンシーとはクリエイターに直接仕事を供給する派遣と紹介です。プロデュースはクリエイターの持っているアイデアを請け負い、クライアントに提供していきます。ライツマネジメントとは、クリエイターの権利を形にするものです。 

今では日本の勤務医の60%、弁護士の30%が当社に登録し、パートナーとなっています。プロフェッショナルの分野は約50種類ありますから、今私たちが展開している分野以外にもニーズはあるはずです。日本で言えばバイオやエネルギーなどの優れた科学技術もありますから、そうした分野にもニーズはあると言えます。

 彼らは自分の研究に没頭しつつも、資金調達をしなくてはなりません。その為、技術者や研究者の知財を世界中にプレゼンしていく仕組みが出来れば、彼らはインパクトを持って仕事が出来るようになるのではないでしょうか。



一人ひとりの才能を世の中に広める

 一人の天才のアイデアは組織になると埋没してしまいますが、世の中に一人のアイデアが浸透すれば、もっと豊かになると思います。個人の持っている才能をいかに見出して世の中に広めるか、または社会に貢献させるかという役割を当社は成し遂げたいのです。

 当然、プロフェッショナルやクリエイティブは組織ではなく、どうしても個人の能力の中で生み出される傾向にあります。そこに、いかにスポットを当てられるかどうかが肝心なのです。 

 世間に名の通った有名な人のアイデアは表に出やすいものですが、そうではない人たちであっても面白いアイデアを持っていらっしゃいます。彼らのアイデアを世の中に浸透させる仕組みを構築し、表に出せるようなビジネスモデルを作ることが重要なのです。

 今までのクリエイターは、自信を持つとフリーランスになっていきました。フリーになると単なる演出力や企画力だけでは生きていけず、営業力や人脈が必要となります。これらは前者と別の才能です。そのため、才能と営業力のバランスが取れない人の中に天才がいても彼らは世に出にくかったのです。

 しかし、今ではユーチューブやゲームなど表現の場が増え、日本だけでなく世界中から多くの評価が得ることができます。能力のある人が活躍できるインフラがネット上に出来つつあるので、クリエイターが真剣勝負をできるようになってきているのです。

 当社に所属していれば番組の企画一つ、または演出などでテレビ局の仕事に関われます。当社はテレビ局の直系プロダクション、コマーシャルやゲーム分野の仕事にクリエイターを派遣しているため様々な垣根を越えることが出来るのです。才能や企画力は様々なメディアで評価されますから、結果として私たちがクリエイターの可能性を意図的に広げることになるのです。

 基本的にフリーランスの人々は仕事一本一本で勝負していきます。しかし、それが終わった後に仕事がないと大変ですよね。ですから、私たちでその仕事が終わる前に次の仕事を用意する仕組みを作ります。あるいはクリエイターが「こんな映画を作りたい」「こんな番組を作りたい」と言ったときには私たちの方で企画を出せるルートを作り、一緒にプレゼンテーションまでしていきます。その中でクリエイターの価値を上げていくのです。

 わが社では他社との差別化戦略は一切行っていません。いかにクリエイターの夢を実現するか、クライアントの価値に貢献するかの二つしかありません。この二つを突き詰めていくと、結果として他社と差別化されますが、それを目的とはしていないのです。



自分が成し遂げられる仕事をする


 そんな中アフリカの難民キャンプに参加したことで、ディレクターとしてテレビで知られるよりも、自分の手で難民キャンプの人たちの生活基盤を作りたいと強く思うようになりました。

 また、「ゆく年くる年」のディレクターだったジェームス三木氏の世界観に圧倒され、自分ではこの世界観、境地までは辿り着けないと悟ってしまいました。これらがきっかけで、テレビのディレクターを続けていくよりも何かを成し遂げようと、クリーク・アンド・リバー社を立ち上げたのです。

 創業してから一番苦労したことは、いざ会社を大きくしようとする時に、請求書を出しても支払いサイトの関係ですぐには入金されなかったことです。収入よりも支払いの方が先に出て行くので、会社を伸ばそうと思うほどお金が不足して借金が増えていきました。銀行でも簡単にお金を貸してくれなかったので、起業してからは「社長はどうしてこんなに苦労していかなきゃいけないのか」と思ったほどです。

 やはり会社は成長していくことが宿命のようなものです。会社の成長は人の成長でもありますから、いかに次世代の経営者を作り出すかが今の最大のテーマです。



映画「少年H」で人間の活力を描く

 2013年に公開し大ヒットした「少年H」という映画は、わが社と契約しているプロデューサーが手がけたものです。1年もの時間をかけて、企画からどのように映画にするかを話し合いました。

 ちょうど東日本大震災もありましたから、戦後のダメージと重なり合うのではないだろうかということで、勇気を持って前に進もうという人間の活力を描けると考えました。

 この作品は権威あるモスクワ国際映画賞で日本の実写では初の特別賞を受賞し、海外の方からも高く評価されています。対象は主に60~80歳代のご高齢の方なのですが、中には車椅子を使いながら映画館にいらっしゃるお客様もいます。高齢者割引もありますし、収入よりも戦争を経験されたご高齢の方々に懐かしんでいただけたら幸いです。



ビジネスの輪をアジアへ 

当社では3年前から新たに作家のネットワークの展開を始めました。まず中国の出版社600社を回ったところ、日本の書籍に興味を持ったようでした。中国では、今まで日本の書籍は年間で1200冊しか翻訳されていませんでしたが、私たちが半年間営業したところ、1500冊のオーダーを得ることができました。上海と北京に拠点を作って書籍を取り扱うことを始め、3年で700タイトルを契約し中国で販売しました。その後、台湾や韓国にも進出しています。

 また、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長が旗を振ってスタートした、アジア経営者連合会という団体があります。現在600社もの企業が加盟しており、シンガポールや韓国、マレーシア、カンボジアなどに支部を拡大しています。このアジア経営者連合会によるアジア経営ビジネスサミットが2013年9月に開催され、私が委員長を務めました。

 政治を超えたビジネスの繋がりには経営者同士の繋がりが重要です。国や言葉を超え、経営者同士が握手をする場を創ることで、アジア経済の発展に貢献していくことの大切さをアピールしていこうと、このイベントを開催するに至りました。

 私は佐賀県の出身であり、佐賀県のプロサッカーチームであるサガン鳥栖のオーナー兼会長も務めています。サガン鳥栖は既に数回倒産しており、ホームタウンの人口も約6万人しかいません。経営として考えたら、サガン鳥栖は多くのハンディキャップを抱えていました。

 しかし私は、この劣悪な環境においてサガン鳥栖の経営をどう克服していくかは、まさにベンチャーそのものだと考えました。がけっぷちからJ1に昇格していくサクセスストーリーは共感を集め、私がオーナーを引き受けようとした時にはエイチ・アイ・エスの澤田会長や元エイベックスグループ会長の依田氏、更にディーエイチシーの吉田会長等約30人もの創業経営者が支援してくださいました。



死して評価される功績を残したい


 日本の中には、世界に誇れる才能を持った多くの人々がいます。そのプロフェッショナルな50の分野にエージェントを作り、日本から海外にネットワークや活動範囲を拡大していきたいと思っています。最終的には世界のスペシャリストたちに当社のネットワークに入ってきてもらいたいです。

 そして30年後には様々なスペシャリストの人たちがテーマ別にアメーバのように集まり、会社が出来るだろうと思います。例えばテーマが環境ならば、環境についてのスペシャリストが集まって、一つの会社を作るといった具合です。そうすれば、50年も100年も会社が成長する仕組みが出来るのではないでしょうか。

 私には様々な夢があります。1つはサガン鳥栖を世界一のクラブにしたいと思っています。もう1つは、佐賀県には「葉隠」という武士道のようなものがあるのですが、その中に「人間の評価は死んでからされるものだ、生きているうちは評価を気にしてはいけない」という考えがあります。私が死んでから日本の新聞、世界の新聞で「世界が泣いた」と取り上げられるような功績を残したいのです。



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