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トピックス -企業家倶楽部

2010年02月27日

アジアの成長力を取り入れ5年で10万人の雇用を生む/vs アリババ代表取締役社長 香山誠

企業家倶楽部2010年4月号 骨太対談vol.15


経済学者で小泉構造改革を支えた竹中平蔵氏と、中小企業の救世主として期待がかかるアリババジャパンCEO香山誠氏との対談が実現した。話題は急成長する中国経済とアリババ・グループの未来、中小企業の抱える課題、日本の景気低迷打開策など多岐に渡った。二人の対談から日本の取るべきアジア戦略が見えてくる。    企画:徳永健一(本誌副編集長)



世界最大のバイヤー 資産で日本の中小企業を救う

竹中 まず、改めてアリババジャパンのビジネスの概要をお話して頂けますか。

香山 中国杭州に拠点をおくアリババ・グループは2009年9月に10周年を迎え、08年の5月末に正式にソフトバンクとのジョイントベンチャーとしてアリババジャパンをスタートしました。

 アリババジャパンはアリババ・グループの三つのバイヤー(買い手)資産に向けて、翻訳サービスなどをつけながら日本の中小企業や個人事業主の商材を売り込んでいます。一つ目の資産は、アリババB2Bビジネスの中国語サイトにおける中国ビジネスバイヤー約1500万社。二つ目は、世界の新興諸国やEU、北米を含めた英語サイトにおけるビジネスバイヤー約1000万社。三つ目は、B2Cサイト「タオバオ」における出展者約260万社です。タオバオは年間流通総額が約3兆円になりました。現在ヤフーオークションが6000億円、楽天が8000億円ですからその規模は圧倒的です。上にいるのはイーベイの5兆円だけですが、5兆円はもう射程内です。

竹中 誰もが中国経済の活力を取り入れて経済成長しようと口にしますが、その最前線にいるのがアリババだと私は認識しています。言葉や取引先開拓の壁など様々な制約があるからこそビジネスチャンスが生まれるわけですが、現状ではそれぞれのファクターをどの程度まで克服しているのでしょうか。

香山 日本のバイヤーが中国からモノを買う輸入サービスでは、約3割まで来たと思っています。取引の最初の段階で一番多い価格や仕様、納期などについての質問・回答を単にボタンを押したり数字を入れればいいようにしました。しかし、その後の「なぜバイヤーが買わないか」を伝えることが難しいのです。日本のバイヤーは欧米のバイヤーに比べて注文が多く、中国サプライヤーもどう合わせていいのか分からない。ですので、バイヤーのより詳細な要求を正しい中国語で渡してあげることに力を入れています。日本バイヤーは、欧米諸国のように大ロットで購入することは少ないですが、一度取引すると長く続けてくれます。このような日本バイヤーの慣習をようやく中国サプライヤーは理解し始めましたので、ここは30点くらいだと思います。

竹中 輸出の場合はどうでしょうか。

香山 相手が欧米諸国だと大抵問題なく商談は済みますが、アリババドットコムの英語サイトではアジアやアフリカ諸国など新興諸国のIDが伸びていますので、彼らの商習慣に合った売り方をしなくてはなりません。このため我々は一定期間、サプライヤーに価格のふり幅だけ決めてもらって商談の中身を全て代行します。この半年で約100社の商談代行を続けてきましたが、新興諸国の場合、欧米のバイヤーと同じように丁寧にやっていてはなめられて結局振り回されてしまうと分かりました。しっかり名乗らせて24時間以内に結論を出させるというやり方の方が売れます。このように商談代行の中で我々が工夫しなければならないことが分かってきて、それを少しずつサプライヤーの方々に教育プログラムとしてお伝えしています。



5年で10万人の雇用を生む

竹中 ネットワークの経済性の強みを100%発揮しながらすごい勢いで急成長しておられますが、短期中期の目標をどの辺りに置いているのでしょうか。

香山 アリババジャパンは約10%を目標にしています。今タオバオの流通総額は約3兆円ですが、日本製品はまだまともに出て行っていません。ルートが確立しておらず、どちらかというとアンダーグラウンド経由のものばかりです。しかし、それでも既に300億円を超えるほどあります。毎年約250%ずつ伸びていますので、日本製品の伸びはタオバオの成長スピードより早い。これを我々が正規ルートで、きちんと海外で仕入れられるようにしたいのです。タオバオの日本製品の流通総額を増やして、その中のまず10%を確立できるようにします。新興諸国も同じです。日本の中小企業の新興諸国向け輸出をっと拡大し、全体の約10%が我々のサービス上で実現できるようにしようと思います。まずそこまでをアリババ・グループCEOのジャック・マーと約束しています。「金額など様々な目標よりも、10%のために何をしていくかが重要だ。私たちのプラットフォームを満足して使ってもらうことさえできれば売り上げも何もかも絶対についてくる。そこまでは一切何も考える必要ない」と言われました。

竹中 世界的な景気後退の中でこれほど急成長している会社は少ないので、急成長している会社のイメージを私も掴みかねています。従業員の数もこれから短期間で急激に増えていくと思いますが、社内的にはどういうものを掲げて求心力を保っているのでしょうか。

香山 アリババジャパンだけを見れば杭州と日本で約200名ですから、まだ我々の目の届く範囲です。我々としてはここから約5年のスパンで日本の中小企業約3万社を海外に出して、最低でも1社2?3人の雇用を生もうと考えています。これが3万社になったら10万人の雇用です。これは50万人と言われる新卒の2割です。これが実現できれば社会に対して大きく貢献できると思っています。インターネットを利用すれば資金も人材もない個人事業主や中小企業が海外の顧客を得ることができます。我々が簡単な仕組みをつくれば必ずそこに成功が生まれ、雇用が生まれます。この思いが社内で一致団結している一番大きな理由かもしれません。このビジョンに共感して、ホームページなどから優秀な方々が随分応募していただき、今ではこのアリババ事業はソフトバンクの中で最も人気があります。


5年で10万人の雇用を生む

オバオ・ヤフーと組んでシナジーを高める

竹中 日本の中小企業に共通して欠落している要素は何かあるのでしょうか。

香山 ひとつには、海外でのリスクを非常に恐れています。これは実体験したわけでもなく人から聞いてきたリスクが大半です。我々は月々5万円のサービスですから、年間使っても60万円、3年間使っても180万円で、一人分の人件費もかかりません。ですから我々は「アリババのサービスを使って3年間本気で海外と付き合うために何が必要か考えるだけで全然違います」と申し上げています。自分達の商品をいくらでも載せられますし、サービスも製品も入れ替えながらどこの国で何が売れるのか調べることができます。「売れたら代金は回収できるのか」と心配する方もいますが、B2BはB2Cのように勝手にクレジット決済されないので売るかどうかを決めるのはサプライヤーです。もちろん、ネット上で商取引をやる上で安全性は絶対に必要ですから、トラブルの解決策も提供していきたいと思います。タオバオが急成長したのも、取引すべてに責任を取って、何かあれば全部タオバオが補償するからです。

 もっと中小企業の成功を導ければ、我々の手元に世界への輸出額など様々な実績データが残りますから、それを銀行に開示して融資を促すこともできます。実際に、中国の銀行融資はアリババでの実績データを見て行われるのです。そういう意味では、アリババは金融まで含む全ての取り口のプラットフォームといえるでしょう。

竹中 B2BはB2Cと違って一般の方々には見えにくいですが、企業イメージをどのように確立していくおつもりですか。

香山 やはりB2Cの部分が入ってこなければならないと思います。ここはヤフージャパンやタオバオとのアライアンスを大きくするつもりです。ヤフーショッピングのサプライヤーが中国にモノを売る時、我々のシステムに乗っかればタオバオでわざわざライセンスを取って出店する必要がありません。また、例えば中国のコンピューターの周辺機器は日本の約10分の1の価格ですが、これを日本で徹底的に売る場面がありません。我々が独自にコンシューマーを集めてくるのは難しいですが、ヤフージャパンなら出来ます。このようにアリババジャパン・タオバオ・ヤフージャパンが組めば、全く違うシナジーのインパクトがあります。ヤフージャパンは楽天と差別化するためにも我々が必要です。


オバオ・ヤフーと組んでシナジーを高める

日本製品の強みはクオリティーの高さ

竹中 経済全体が沈滞気味の中で躍進している会社の社長として、日本の経済状況をどのようにご覧になっていますか。

香山 私の知っている限り、人口が減って老齢人口が増えて経済が伸びている国はあまりありません。ですからこの経済の落ち込みは仕方ないものだと思います。もう他の新興諸国の成長を取り込むしかありません。ただ私が心配しているのはもう少し違うところです。日本の製造業は国内の消費者の目が厳しいので今までクオリティーの高いものを売っていました。これは中国や新興諸国から見ればとても安心・安全で素晴らしいものでした。しかし最近少し変わってきた気がします。安ければいいと考える企業が少なくありません。日本の消費者の需要が価格だけに変わってきてしまったような気がします。すると、新興諸国の成長を取り組むときに、日本企業の強みが少しずつ損なわれてしまう。安いモノで強い新興諸国は沢山ありますから、差別化できなくなります。

竹中 今の御指摘は大変興味深いです。基本的にはやはり賃金がグローバリゼーションの中でフラット化していきますから、日本の場合実質的な生活水準はかなり下がってきています。低下した生活水準に合わせたものを提供していきますから、物質のクオリティーが下がる。やはりデフレの影響というのは非常に大きいと思います。

 実は14世紀イタリアで黒死病が流行した時、人口の約2割が亡くなるのですが、それでも生活水準は上がるのです。その理由は簡単で、痩せた土地を捨てて肥えた土地に集約する、比較優位の考えに立ったからです。つまり、無駄な部分を捨てて、人口が足りないのだから競争力があるところに集約するのです。そうすることで生活水準が上がってルネサンスが起こったといわれています。日本もまさに今人口が減っているのだから、無駄な部分を捨てなければなりません。悪い会社は潰すべきです。しかし現状は、生活水準が下がっているから皆かわいそうだ、皆保護してあげますということになっている。これでは生活水準が絶対に下がると思います。中国はどういう風にご覧になりますか。リーマン・ショックの直後中国も一瞬0成長になるのですが、そのあと一気に回復し、去年の第2四半期では15%成長です。

香山 私も杭州-上海の新幹線を乗るとその成長ぶりが分かります。打撃を受けたのは本当に金融ショックの一瞬だけです。その後一気に人が増え始めました。ちょうど日本が60年代70年代に様々なショックが起きても経済の足元が強かったのと同じです。私が子供の頃に感じた、貧しい国が豊かになる時の強さを感じます。中国はあと10年は成長が続くとイメージしています。今年6月に上海万博が開幕しますが、日本も70年に大阪万博があって、その後バブルが85年?90年頃でした。街の立ち方をみるとあの頃の風景と重なり、同じことが繰り返される気がします。

竹中 森ビルの「上海環球金融中心」(上海ワールドフィナンシャルセンター)は六本木ヒルズのちょうど2倍の高さだそうです。このビルが建つ前はいわゆる貧民街で、森社長はこれを1年でクリーンナップすると宣言しましたが、森ビルは六本木ヒルズの周辺を再開発するのに17年かかったので、そんなこと出来るわけ無いと多くの人から言われました。しかし、実際には半年でやってしまったのです。中国は資本主義と社会主義の良いとこ取りをしていて、悪いとこ取りをしているのが日本です。

香山 本当にそこが中国の素晴らしさだと思います。我々も1回面白いことを経験しました。2年ほど前に、日本のバイヤーが中国からサンプルをとるのに約3週間もかかったことがあります。どっちが金を払うのかなど色々やりとりがあったのですが、結局安い商品だったのでサンプルを我々が買ってきて、それを日本の倉庫において24時間サンプル取り扱いサービスをやったのです。それはとても好評だったのですが、その後中国のサプライヤーに支払いを要求したら断られてしまいました。そこまで我々も負担できませんので、サンプルの取り扱いは一度やめることになったのです。しかし、金融危機後に中国政府がアリババジャパンと話がしたいと言って呼ばれました。「欧米が金融危機でクラッシュしているので日本向けをもう少し増やしたい、政府が負担するからサンプルを続けて欲しい」と言って、中国政府がさっと予算を億単位でつけてくれたのです。一党独裁ならではのスピード感でした。日本と比較すると本当に政府の動きは早いです。



インドを中心に新興諸国向け輸出を拡大する

竹中 最後に、今後のビジネスの目標、特に海外要因をどうするかを教えてください。

香山 アリババドットコムのユーザーは、新興諸国のIDが急激に増えています。これまでは北米、 EUを中心にビジネスをしてきた企業が一気にグローバル展開しています。最も顕著に伸びているIDはインドです。既にアリババはインドに拠点をつくってインドのバイヤーインクルーディングを徹底的にやっていますし、アリババの英語サイトにはインドのバイヤーも相当数入っています。我々の世界進出プログラムを利用すれば、日本語の画面ナビゲーターで商品を載せることができるので、インドのマーケティングもやりやすいでしょう。このプログラムを利用して日本の中小企業が世界の新興諸国を攻略できるようにしていきたい、ここから3年ほどはこのプログラムを強化したいと思います。




プロフィール

香山 誠 (こうやま・まこと)
1957 年生まれ。86 年にソフトバンク株式会社入社。営業本部などを勤務後、分社化したソフトバンク・イーシーホールディングス株式会社にて取締役に就任。2000 年からはソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社(旧イーキャリア株式会社)代表取締役社長に就任。その後、同社子会社のアビリティデザイン株式会社代表取締役社長などを経て、06 年11 月よりマイスペース株式会社の代表取締役に就任。07 年11月よりアリババ株式会社の代表取締役社長に就任。


竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
1951年和歌山県生まれ。73年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。



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