トピックス -企業家倶楽部

2010年10月27日

最先端のロジスティクスが強み/Paltacの強さの秘密

企業家倶楽部2010年12月号 特集第2部


化粧品・日用品、一般用医薬品の卸売業界で最大手企業として躍進するPaltac。全国約5000社の小売企業、約1200社のメーカーと取引し、1日600万個を超える商品を流通している。その中核を担うのが、Paltacが誇る最新鋭の大規模ハイテク物流センター「RDC」である。小売店の実情に合わせた納品体制で、「速く、安く、正確で、安全に」を実現。この最先端の物流システムが、他の追随を許さない同社最大の強みになっている。(文中敬称略)

 



■強さの秘密1 最新鋭の物流システム

流通商品数は1日600万個

 シャンプー4本、リンス2本、洗顔フォーム3本。エプロン姿の女性が大型のカートを押しながら、陳列棚にある商品を手に取り、箱に入れていく。まるでスーパーで買い物をしているように見えるが、そうではない。ドラッグストアやスーパーなどの小売店に納品するための出荷作業である。出荷された商品は大型トラックに積まれて、ドラッグストアやスーパーなどに運ばれている。

 こうした風景が、Paltacの大規模ハイテク物流センターで日々見ることができる。同社は国内最大規模を誇る物流センター「RDC」を全国15カ所に展開。このRDCを通じて、化粧品・日用品、一般用医薬品という生活に欠かせない商品を、約1200社のメーカーから仕入れて、約5000社の小売企業に届けている。

 1日の流通商品数は約600万個。化粧品・日用品、一般用医薬品の分野では、日本最大の流通量を誇る。この600万個を日々、間違いなく小売店へ届けなければいけない。このノウハウこそ、Paltacの大きな強みになっている。その秘密のノウハウとは何か。RDCの内部にご案内しよう。

納品精度99・999%の実現
 
9月9日、午前9時。大阪の気温は蒸し暑く、真夏の気温が続いている。大阪の南に位置する堺駅。そこから車で約10分行くと、Paltacが誇る大規模ハイテク物流センター「RDC堺」が見えてくる。

 敷地面積は1万2370坪。東京ドームとほぼ同程度の広さを有する巨大な物流センターである。RDCを眺めていると、メーカーの商品を積んだ大型トラックが次々と入ってくる。入庫した商品は倉庫へ即座に移される。同時並行して倉庫にある商品を小売店に納品する出荷作業が行われ、小売店へと運ばれていく。

 卸売会社の物流機能はシンプルだ。メーカーから仕入れた商品を小売店へ届ける。一見、誰もができる簡単な作業に思えるが、実行は簡単ではない。

 間違った商品が届く、3個頼んだのに2個しか届いていない、納品スピードが遅い、商品が壊れている。取り扱う量が増えるほど、間違いもどこかで必ず起こってくる。

 作業中に間違いが起こるのは、人的なミスが大半である。昔はベテランのスタッフが商品の詳細や格納場所を長い時間をかけて体得し、商品の入出荷作業をしていた。しかし今はそれができない。商品数が多すぎるからだ。

 現在、Paltacが取り扱う品目数は、全社で約6万5000アイテム。とても覚えられる量ではない。しかも新商品が次々と生まれては消えていく。人的な能力では限界がある。ベテランスタッフだけではなく、仕事経験の少ないパートも数百人単位で働いている。

「入出荷作業のポイントは、商品の詳細をまったく知らない素人でもすぐに仕事ができること」と情報・物流統括本部長の酒井敏行は言う。そこでPaltacは最新のITシステムを徹底活用し、人的ミスを極限まで減らす仕組みを確立した。

 その仕組みとは、納品精度99・999%を実現する「ファイブナイン」システムである。誤納品率は10万分の1で、仕分けや納品のミスはほとんどない。このファイブナインを実現する最新鋭の物流システムで、Paltacは業界での確固たる地位を築いてきた。

 ファイブナインのシステムは、人的なミスが起こらないように設計されている。例えば、小売店の注文に応じて、その商品を倉庫の在庫から運び出すピッキング作業。これは注文量に応じて、パレット単位やケース単位、1個から数個単位(バラピッキング)に仕分けする。間違いは、バラピッキングで起きやすい。スタッフが商品を間違えたり、商品の個数を入れ間違えたりする。

 では、どうするか。Paltacは独自開発のシステムで管理するようにした。そのシステムとは、「SPIEC(スピーク)」というハイテク機器を搭載したピッキングカートである。

 スピークは、カートに内蔵した小型パソコンに小売店からの受注情報が無線LAN経由で飛んでくる。例えば、ある商品を2個ピッキングする場合、スピークの画面に商品の棚番号や数量が表示される。スタッフはカートを押して指示を受けた商品を陳列棚に取りに行き、商品のJANコードをバーコードスキャナーで読み取る。商品が正しければ、数量表示が消える。

 続いて、その商品をカート内にあるオリコンと呼ばれる箱に入れる際、数量を「重さ」で自動計測する。カートに電子量りを搭載しているので、250グラムの商品が二つ注文されれば、500グラムかどうかを判断する。正しければ、数量表示が緑色に変わり、次の商品へ進める。もし数量を誤った場合、誤った数量が表示され、赤になる。重量検品システムは1グラムから30キログラムまでを正確に計測するので、注文のない商品がオリコンに積まれることもない。

 このように商品のコードスキャンで正しい商品を照合し、重量検品により正しい数を照合する。こうすれば、商品も個数も間違えようがない。商品や個数の確認は、人ではなく、コンピュータにさせる。これが大きなポイントである。近畿支社物流部部長の大久保博之は次のように言う。

「単純作業は人のミスを生みやすい。ミスを人のせいにすれば、スタッフも疲弊し、効率は下がります。スタッフにとってわかりやすく安心して使えること。それが最も大切です」


■強さの秘密1 最新鋭の物流システム

■ 強さの秘密2 無駄を省く文化

自前主義でノウハウを蓄積

 RDC堺のカバーエリアは近畿2府4県で、年間の出荷可能額は約800億円を誇る。その中ですべての商品を正確に届ける。それができるかどうかが、物流システムの生命線となる。Paltacは、納品精度99・999%を実現することで、同業他社の群を抜く仕組みを確立してきた。

 こういった仕組みを自前で開発しているのが、Paltacの大きな特長である。先述のピッキングカート「SPIEC(スピーク)」も自社で開発した。スピークは作業内容が自動記録されるので、1時間にどれくらいの作業量をこなしたかなど、スタッフ別の作業効率まで分かる。これらの達成度を公開し、スタッフごとに作業効率の改善策を打っている。

 作業の際は、安全面にも気を配る。スタッフがスピークを移動する際は、「通りまーす」と声を掛け合っている。また陳列棚の入口にはミラーを付けて、周囲を確認しやすくする。もし衝突しても怪我をしないように、スピークの前方にはピンク色のウレタンパットを付けた。「衝突防止の視認性アップと、もし仮に接触した場合の衝撃緩和、労災防止を目的に改善を重ねてきた」と物流本部の川崎正則は語る。 

 独自開発で特許を取得したシステムも数多い。その代表例は、メーカーからの段ボール箱の上蓋を切り取る「オートカートンカッター」である。これはコンベアーで運ばれてきた段ボール箱を光センサーで読み取り、中の商品を傷つける事なく上蓋を自動でカッティングするシステムになっている。

 メーカーから商品を箱詰めされた段ボール箱は1日1万個以上届く。この段ボール箱をスタッフがカッターで開けていると、気を抜いた瞬間に腕や太ももを切ってしまい、大けがをすることもあった。オートカートンカッターでは、機械がカッターの作業を担うことで、スタッフによる危険で煩雑な作業が激減した。しかもカッティングされたケースをバラピッキングの棚まで自動で運ぶように組み立てている。

 ただ機械による自動のオートカートンカッターでは処理できない段ボール箱もある。その際は、どうしても人の手で通常のカッターを使って段ボール箱を開けるしかなかった。すると、やはり事故が起こる。一つの段ボール箱を切り開くのにも18秒かかった。そこで刃が斜めに入るカッターを作り上げたら、時間が18秒から4秒に短縮でき、事故も激減した。この開梱用のカッターは「SSカッター」と呼ばれ、特許も取得済みだ。こうした独自開発の機器は数多く、これまでに10の特許を取得している。

「理想のRDCを組み立てるには、自前主義が欠かせない。自分たちで作り、試し、使い、改良する。その一連作業が必須になる」とRDCの開発を担ってきた特別顧問の山岸十郎は語る。山岸がRDCを構想する際に、トヨタ自動車の生産方式を参考にした。

「トヨタには業務の至るところで無駄を省く文化があります。それを自前でシステムを築くことでノウハウを蓄積する。その発想を取り入れました」

 Paltacは、スタッフの入庫や出荷作業、コンベアーの最適な移動などもすべて計算して、RDCを構築している。土地や建物は自社で取得し、賃貸やリースで借りることはない。

「リスクを背負って、800億円を投資し、全国に15カ所のRDCを建設してきた。毎回ゼロベースで発想し、改良を重ねている。自前でやらなければ、素晴らしい物流拠点はつくれない」と山岸は言う。

 RDCを建設してもそこで終わりではない。山岸は働く作業者の立場でいつも考える。例えば、歩数。パートスタッフの時給から換算すると、1歩が23銭。その歩数を一歩でも減らせれば、23銭のコストが削減できるし、スタッフの作業も軽減する。

 現場スタッフからの意見も積極的に吸い上げ、作業効率化を追い求め続けている。ある時、スタッフから「廃棄段ボールをコンベアーに載せにくい」という声が上がった。廃棄する段ボール箱を回収するコンベアーはRDC内に配置されているが、以前は高い位置にあった。そこで新規のRDCではコンベアーの位置を低く設置し、投入の負担軽減と事故防止を図っている。

 自前主義で、改善・改良を追求し続ける。これが最新鋭の物流システムをさらに強化する強みになっている。


■ 強さの秘密2 無駄を省く文化




■ 強さの秘密3 顧客満足度の追求

カテゴリー納品で店舗作業を軽減

 東京の繁華街にあるドラッグストア。週末の午前、店内を覘くと、買い物客でにぎわっている。顧客の一人は店内を巡りながら、シャンプーのコーナーで、いくつかの商品を手に取った。比較検討した後、資生堂のTSUBAKIを手に取って、レジに向かう。

 店舗のスタッフは、レジ作業や接客をしながら、その合間に商品の品出し作業をしている。商品の補充や陳列、発注、掃除など、休む暇がない。品出し作業に時間を割かれて、レジが混雑したり、肝心の接客サービスがなおざりになってしまう場合もある。

 小売店で最も重要な仕事は、スタッフによる接客やレジ作業を中心とした販売活動である。販売活動は、顧客満足度を高め、売上に直結する。この販売活動に時間を割きたいというのが小売店の本音だ。だが、現実は違う。

 スタッフが店舗内で使う時間を統計で見ると、商品に関する作業(品出補充、売場変更・棚管理、発注、荷受・バックヤード作業)は全体の51・8%で、半分を超える。最も大切な接客などの販売活動は41%で、商品に関する作業よりも短い。いかに商品に関わる作業時間を軽減し、販売活動の時間を増やすか。これこそが、小売店の長年の課題だった。この問題を解決する施策の一つが、Paltacのカテゴリー納品である。

 Paltacは小売店に商品を納入する際、店舗の売り場ゾーンの構成に対応してあらかじめ同一種類の商品を取り揃えて納品している。出荷頻度やメーカー別の納品ではなく、メイク、ペット、ヘアケア、石鹸・ボディソープ、胃腸薬、感冒薬、健康食品など、カテゴリー(商品分類)ごとに納品する。

 カテゴリー納品であれば、小売店のスタッフが商品ごとに棚を求めて移動する時間を大幅に短縮できるので、商品の補充や陳列作業の時間が軽減される。在庫もカテゴリー単位でまとめて保管できるので、追加品出しや在庫量の把握の手間が楽になる。

 しかも検品作業が必要ない。Paltacが誇る誤納品率0・001%(納品精度は99・999%)のファイブナインの実現で、店舗のスタッフはPaltacから届いた商品をいちいち確認しなくていい。誤納品が少ないので、小売店は届いた商品や数量を確かめる検品作業を省略できる。
 

 これにより、小売店は商品陳列の作業時間を短縮し、余計なコストも抑制できる。スタッフは接客サービスの時間が増えて、顧客満足度も上がる。

「お客様がお求めの商品を見つけやすく手に取りやすい。小売店で働く方たちも、接客や販売活動に専念できる。そんなお客様第一の売り場を支援したい」と会長の三木田國夫は語る。

消費者目線の提案力が武器


 Paltacでは、小売店に商品を届けるだけでなく、「売れる売場づくり」も提案している。例えば、ドラッグストアは通常、数千点から数万点の商品を並べている。この商品群の中から、どの商品をどれだけの数、どんな風に売るか、Paltacが小売店に戦略的な売場構成を提案している。

 どの商品を陳列棚のどの位置に置くかで、売上高や利益率が大きく変化する。同社の営業マンは、新製品情報や売れ筋の情報を提供しながら、シミュレーションソフトを使って陳列棚の商品構成を提案する。

 こうした提案ができるのも、圧倒的な商品ラインナップがあるからこそである。Paltacは約1200社のメーカーとのパイプを持ち、約6万5000アイテムの化粧品・日用品、一般用医薬品を扱っている。流通する商品も1日600万個を超えている。

「Paltacの強みは、化粧品・日用品、一般用医薬品という美と健康に関する商品を全国にフルラインで一括して取り扱う唯一の卸であること」と、社長の折目光司は言う。

 メーカーにとっても、Paltacの存在価値は大きい。マンダム常務執行役員の寺林隆一は「Paltacは全国約5000社の小売企業と取引があり、小売の現場情報を豊富に持っている。このような情報が商品の販売戦略において貴重な情報になる」と言う。Paltacは、マンダムをはじめライオンや資生堂など日本を代表するメーカーと、商品販売の戦略会議を定期的に開いている。

 さらに毎年2月にはPaltacのソリューション機能を紹介、提案するイベント「ストアソリューションフェア」を開催。このイベントでは、メーカーもブースを出展し、新商品などをアピールできる。全国の小売店約600社、3500人が参加するため、新商品PRの格好の機会になり、全国の小売店に一気に展開することも可能になる。マンダムの寺林は「商品の流通だけではなく、流通価値の創造を通じて、小売店、メーカーの双方に貢献する。これがPaltacの大きな特長だ」と指摘する。

 消費者のニーズをくみ取り、小売店とメーカーの双方に貢献する。その顧客主義に徹したビジョンと、それを裏付ける最先端の物流システムがPaltacの強さの秘密なのである。



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