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トピックス -企業家倶楽部

2005年08月27日

気宇壮大な事業構想力で食のインフラを制覇する/レックス・ホールディングスの強さの秘密

企業家倶楽部2005年10月号 レックス・ホールディングス特集第2部


不動産仲介業から身を起こし、焼肉チェーン店に転身、さらにコンビニエンスストア、高級スーパーを買収し、外食・中食・内食と「食」のインフラづくりに邁進する。外食進出からわずか10年弱で、約2800店舗を展開する食の新興グループ、レックス・ホールディングスの強さの秘密は、社長の西山知義の壮大かつ緻密な事業構想力と、社員のやる気を引き出す天才的なうまさにある。(文中敬称略)

 



■お客様を元気にする接客

「予約した高田ですが」

「はい、予約のお客様、ご来店です!」

 その声を合図に、

「いらっしゃいませ、こんばんは!」と元気のよい声が一斉に響いた。

 八月十六日、午後六時、横浜市郊外の牛角「鶴ヶ峰店」を訪れると、二十歳前後の若者が一体となって店を切り盛りしていた。店の壁にはさまざまなメッセージが書かれている。

『牛角つるがみね店にようこそ! お誕生日が一週間前後のお客様!! スタッフに一言おかけください。すてきな歌とデザートでお祝いいたします!!』

『牛角よーいドンっ!! 牛角鶴ヶ峰店では早い時間に来て頂いたお客様を歓迎しちゃいます……』

 メニューを開くと、

『牛角の夏! 期間限定 7月20日から9月20日まで 夏の名物激辛焼肉!! ブラックガーリック ……』

 トイレはどこかと見回すと、さっとやってきて目の前まで案内し、扉まで開けてくれる。トイレの壁には曜日、時間別の混雑マップが貼られているほか、デンタルリンス、コットン、綿棒、油取り紙などを揃えている。トイレットペーパー一つにしても、むき出しで置くのではなく、布に包んでインテリアのようにしている。

 活気、元気、気配り……をさまざまな場面で感じさせる。マニュアル的な元気ではないから、うるさいとは感じず、気持ちよくなれるのだ。その違いは微妙だが「自分たちだけ元気になるのでなく、お客様を元気にしよう。そして鶴ヶ峰の町を元気にしたい」という気持ちで若いスタッフたちが働いているのだと聞いて、なるほどと思った。

「親しみやすい」「すごいテキパキしている」「元気がよくていい」と顧客の評判が高いのも納得できた。やらされるのではなく、自分たちでやっているから客も心地よいのだ。

 スタッフのこのモチベーションの高さこそ、レックス・ホールディングス(以下レックス)の強さの源泉である。



■感動創造の理念を徹底 社員、パートナーのやる気を引き出す

 レックスはアルバイトから店長、FCオーナー、幹部社員までの全員が経営理念「感動創造」に共鳴、「全員参加型」の社風をつくっている。理念の共有化のため年に二回、「パートナーズフォーラム」を開催し、パートナーと呼ばれるアルバイトを表彰する。これは、いわば各店舗にとっての甲子園のようなもの。四千人が一堂に会して、自ら努力して底上げした店舗の業績、そのいきさつを発表、パートナーの中には、発表しながら感極まって涙を流す人間も多い。この過程で、最初は単なるアルバイト代を目当てにやってきた十代後半から二十代前半の若者たちが見違えるように変わっていくのである。

 レインズ社内では「パートナーズフォーラム」を含めれば、年間十四回表彰を行っている。店舗で生き生きと働くアルバイトたちの笑顔の裏にも仕組みがあるのである。

 西山がその仕組みの必要性に気づいたのは過去の苦い経験からである。一九八七年、当時二十一歳の西山は持ち前の営業力を武器に不動産仲介業を行う国土信販を設立、渋谷のワンルームマンションから徒手空拳でスタートした。経営の目的はお金が全てだった。理念もなく、ひたすら収益のみを追いかけていた西山のもとには、お金だけを目的にする社員が集まった。社内に一体感はなく殺伐とした雰囲気の中で、ついには横領事件を起こす人間まで出た。

 悩み苦しんだ西山は一念発起して、マクドナルドでアルバイトとして働いた。そこではアルバイトの学生が休憩の暇を惜しんで勉強している。聞けば皆、「お客さんが喜んでくれるように」と口を揃える。西山は衝撃を受けた。「人はお金のために働くのではなく、お客さんのために働いてこそ、充実感を得ることができる」と気づいたのである。この経験から「感動創造」という経営理念が生まれた。

 ある日、社員に誘われ、安いと評判の焼肉店に行った。その店は、平日の夜にも関わらず大変な行列ができているが、接客サービスが横暴で、味が悪い。素直に「もっとサービスや雰囲気がよくて、安くて美味しい焼肉店ができたら、どんなに喜んでもらえるだろう」と感じ、西山は焼肉店への進出を思い立つ。一大ブームとなった炭火焼肉酒屋・牛角の誕生である。

 西山が謳った「感動創造」という理念は、まさに天職とも言うべき外食産業の舞台で花開いた。今や外食事業のみで千四百店舗弱にまで急成長したレックス。事業規模は大幅に拡大したが、西山の根本にあるのは不動産時代に芽生えた人材育成への熱い情熱であり、それが「感動創造」を旗印に躍進するレックスの原動力となっている。



■科学的根拠に基づいた店舗管理手法「B-System」

 西山の「感動創造」主義は、厳密な店舗管理のノウハウがあってこそ可能になる。科学的根拠に基づいて現状を把握し、目標を設定、アクションプランを立案して、進捗管理を一貫して実施できる「B-System」。レックスの各業態が、BSE(牛海綿状脳症)の影響を受けても既存店売り上げが下げ止まっているのは、このシステムによるところが大きい。

 具体的には、「店舗診断シート」で過去半年間の実績を調べ、理想の店舗と比較し問題点を洗い出す。その後「プログラムシート」で理想の状態を定め、問題解決の優先度を決め、目標とする期待水準を明確化する。次に「シュミレーションシート」で適切な目標かどうか診断し、「アクションプランシート」で行動計画に落とし込む。最後に「日時管理シート」で結果目標と行動計画に戻って、日時管理を行う。

 各シートにある項目は、全て数字に落とし込まれており、具体的な成果に結びつけるためのツールとして機能している。過剰な管理システムのようにも見えるが、西山はその存在理由をこう話す。

「一生懸命にやれ、売り上げを上げろと言っても、なぜそれをやる必要があるのか分からないと行動できませんよね。自分も安心できますし、数値で明確にパートナーに伝えられます。また、売り上げを伸ばすのにはリピーターの獲得が重要ですが、すごく店の状態が悪いのに、販促してお客様を呼んできても、リピーターになってくれるわけがありません」

「牛角への再来店意思は、肉の味・活気・気配り・内装・雰囲気から生まれる」と話す西山。この「B-System」で、どの要素を向上させれば、顧客の再来店意思を刺激するのか、業態別に数字で明確にしている。過去の売り上げや客数、客単価からでは、改善のための科学的な根拠は生まれない。外食進出後、約七年で千店舗展開を実現したレックスだが、これは外食を先導したマクドナルドや「すかいらーく」の約三倍のスピードにあたる。こうした急速な店舗出店にもかかわらず、レックスがバランスを崩すことなく成長できたのは、「B-System」のノウハウによるところが大きい。



■ベンチャーリンクと提携FC展開による急成長を実現

 不動産の賃貸からスタートして、牛角を中心とした外食のFC展開で勢力を拡張したレックスだが、ベンチャー・リンクとの提携にその端緒がある。

「オーナー様が変われば店長が変わる。店長が変わればアルバイトが変わる。アルバイトが変わればお客様が変わる。お客様が変わればお店の売り上げ・利益が変わる。お店が変われば経営が変わる」と西山は口癖のように話す。これは以前、店舗の収益が悪化したとき、FC展開コンサルティングのベンチャー・リンク会長、小林忠嗣に言われた言葉を反芻したものだ。

 一九九六年、西山は周囲の反対を押し切って不動産業から外食事業に進出、三軒茶屋に「焼肉市場 七輪(現在の牛角)」をオープンした。しかし、店には閑古鳥が鳴き続ける。夫婦揃って駅前で必死でビラを配るなど、血の滲むような努力を重ねた結果、開店から半年で店には行列ができる繁盛店になった。

 一店舗目と同じ手法で、二店舗、三店舗と店舗を拡大した西山だが、出店スピードを上げるべく、ベンチャー・リンクにアプローチをかける。一度目は簡単に断られたが、西山は諦めなかった。ベンチャー・リンクの親会社・日本エルシーエーに、なけなしの四百万円を支払いコンサルティングを受ける。診断の結果、「将来性がある」ということで、小林に面会が叶った。

「二十店紹介する。ただ収益が上がらなかったら、一生かけて加盟店にお金を返し続けられるか」と小林は西山に問うた。「やります、必ずやります」と即答する西山。小林は西山の強烈な成長志向に心を動かされた。その後、ベンチャーリンクがレックスのFC加盟店の募集を代行、出店に弾みがついた。

「成功のポイントは、五千七百億円マーケットの焼肉市場の中に空白地帯を見つけだしたことです。叙叙苑に代表されるように高くて美味しい肉を出す店はありましたが、二十代から三十代をターゲットとし、客単価二千九百円くらいのところがなかった」と話す西山、当時から商売の先を読む能力は備わっていた。

 一九九七年十一月にオープンしたFC第一号店は、開店直後から大行列ができる繁盛店となる。噂が噂を呼び、加速度的に店舗が拡張していく。一九九八年四月には、国土信販からレインズインターナショナルへと商号を変更、外食事業に事業ドメインを定めた。店内ではジャズを流し、綺麗な内装で洗練された雰囲気をつくり、またデザートに力を入れるなどして、女性客を呼び込む。

 こうした従来にない焼肉屋のコンセプトが評判になり、一九九九年八月に五十店舗、二〇〇〇年五月に百店舗を突破、二〇〇〇年十二月に店頭市場に株式を公開した。勢いは止まらず二〇〇一年六月に三百店舗、二〇〇二年四月に五百店舗、十一月に六百店舗を達成し、現在は八百三十九店舗(二〇〇五年六月現在)を展開する。その間に「しゃぶしゃぶ温野菜」「鳥でん」「土間土間」など、新規業態を次々とオープン、アメリカや台湾など海外にも積極進出するなど、まさに破竹の勢いだった。

 ひとつ大きな懸念材料がある。ベンチャー・リンクが加盟店と出店契約をしたものの、実際の出店に至っていない「未出店枠」の問題だ。「ベンチャーリンクとの契約は今期末で終了し、未出店枠に関しては、来期にはなくする計画です」と西山。今年四月設立した、中古店舗買い取り事業を行うテンポリノベーションが、問題解決に向けて積極的に動いている。

「小林会長には本当に色々なことを教えていただいて、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。取引はなくなりますが、レインズの成長の最初のステップは小林会長との出会いだったことに変わりはありません」と今の心境を吐露する西山、感謝の心を忘れない西山らしい言葉である。



■消費の二極化に対応壮大な経営戦略を実践する

 西山は一見、茫洋として、つかみどころのない企業家に見える。ところが誠実な表情の裏側に企業家としてのたぎるような事業欲が隠されている。「俺は単なる焼肉チェーンの社長では終わらない」という西山の野心が、並みの外食チェーン経営者には発想できないコンビニやスーパーの買収を可能にした。

 二〇一五年に経常利益千億円を達成することがレックスの大きな目標になっている。業界で千億円を達成しているのは、鈴木敏文率いるセブン-イレブンのみであり、高く聳える壁であるが、西山は「必ずやり遂げる」と決意を語る。

 二〇〇四年十二月期は、売上高八百四億六千五百万円、経常利益四十五億六千六百万円。大型買収によるのれん代の償却で、当期純利益は百二十二億三千万円の赤字だった。二〇〇五年十二月期連結は、am/pmジャパン、成城石井の業績も加算され、売上高千四百億円、経常利益六十五億円、当期純利益二十七億円を見込むが、経常利益千億円には程遠い。西山は「消費の二極化」という時代状況を的確に捉え、他の外食チェーンとは全く異なった戦略を展開している。

「今、日本は三十年に一度の外食流通の大変革期を迎えています。所得構造の変化で二極化が進み、人口構造の変化・少子高齢化で、単身・二人世帯が増えています。そんな中、外食流通で求められるコンセプトは二極化です。時代のお客のニーズに合うように、そしてコンビニ、外食など全ての構造を変えるような企業にしたいと考えています」

 更なる業態開発で、高い成長を実現する必要性があり、レックスは徹底した低価格、もしくは高付加価値の新規業態開発による二極化戦略を推し進めている。外食分野では、格安カレー専門店「カレキチ」など安価な業態開発を進め、一方でレッドロブスターのような高価格帯の出店も加速する。中食分野では、成城石井をコンビニエンスストア化した、高付加価値のコンビニを来年にはオープンさせる予定で、同時にam/pmジャパンの既存店を伸ばすとともに、すべての商品を百円均一にした「am/pm100」をチェーン展開する予定だ。内食分野では、すべての商品を九十八円で販売するスーパーマーケット「フードスタイル98」をオープン、現在三店舗を展開する。

 am/pmは、レックス流の全員参加型経営を実践し、二〇〇四年三月期に二十三億円だった赤字は消え、今期は十五億円の黒字に転換した。一店舗の一日平均売上高も三万円ほど高まり、約四十六万円となった。とはいえ、セブン・イレブンと比較すると日販は二十万円ほど低い。また、既に中流階級をターゲットとした既のコンビニの七兆円市場は、約四万件が乱立し飽和状態にある。次の展開如何ではどうなるかわからない。「まだまだやるべきことの百分の一を達成した段階です」と話す西山、二極化に対応した革新的な業態開発で、セブン・イレブンやローソン、ファミリーマートといった競合に果敢に挑戦し、競争を勝ち抜こうとしている。

 西山は三十九歳とまだ若い。気力・体力ともに充実し、最も脂の乗った年代であり、これからも積極果敢にチャレンジできる。社内向けの中期経営計画では、二〇〇八年売上高四千億円を設定した。「あくまで夢のある数字という意味です」と話す西山だが、一方で「早ければ二〇一五年には、数兆円規模の企業になり、外食日本一、流通小売日本一を達成させ、食の全ての分野で感動創造を実現したいです」と強気の未来構想を語る。

 急速に規模が拡大したにもかかわらず、ベンチャー企業らしい成長志向が衰えないのは、西山の気宇壮大な事業構想力によるところが大きい。「感動創造」の旗印の下、社内を一致団結させ、人の心に火を灯す西山、その志の高さがレックスを更なる高みへと導くだろう。



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