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トピックス -企業家倶楽部

2003年10月27日

飽くなき事業意欲と野武士軍団がスピード経営を支える/グッドウィル・グループ強さの秘密

企業家倶楽部2003年12月号 グッドウィル・グループ特集第2部


軽作業請負業として事業を開始、1999年には創業4年5ヶ月にしてスピード上場を果たしたグッドウィル・グループ。折口雅博という類まれなる事業センスをもつ経営者に率いられ、今や総合人材サービスのトップ企業としての地位を不動のものにしつつある。2003年7月には拠点数320ヵ所、登録スタッフは100万人を突破し、更なる躍進を遂げるグッドウィル・グループの強さの秘密を探る。



■ 飽くなき事業欲

「ようやくここまできたか」

 六本木ヒルズ三十五階の会長室で、眼前に広がる東京の街を見渡しながら折口は呟いた。「ゼロからスタートして、いくつもの逆境を跳ね除けながら戦いつづけてきた。その成果がこれなんだ」そんな男の自尊心を満足させるに足る光景である。

「会長、そろそろ事業部長会議が始まります」

 秘書の声が、物思いに耽る折口を現実に戻した。二〇〇三年九月某日、今日は六本木ヒルズに本社を移転して最初の会議である。この感動を現場で頑張っている社員に伝えなければならない。

「それでは初めに折口会長よりあいさつをお願いします」司会進行役が折口に目で合図した。

 緊張の面持ちでスピーチに入る折口だが、壇上に立つと言葉が溢れ出してきた。

「グッドウィル・グループはこの九月に六本木ヒルズに本社を移転しました。見てください、この眺望、グッドウィルは新しいステージに入ったのです。皆さんは本社が六本木ヒルズにあるという『上質なプライド』をもって仕事にあたって下さい。だけどこれで満足してはいけません。変わらぬベンチャースピリットをもって、これからも成長していきますので、皆さんの頑張りがますます必要になります」

 まるで青年のように純粋に喜びを表現しながら、折口は話し続けた。

 折口の飽くなき事業意欲、これこそがグッドウィル・グループ躍進の原動力といえる。ベンチャー企業家は誰しも事業欲旺盛なのだが、折口は並外れて大きい。その原点は幼少期にまで遡る。

「雅博、これを見るか。遊園地を見せてやるよ」

 折口は幼少の頃、父親がアメリカに行ったときに八ミリビデオで撮ってきた映像に感激した。

「滝がわーっと流れているところから突然潜水艦が出てきた。すごい、アメリカの遊園地は潜水艦が出て来るんだ」

 アメリカは偉大であり、それを撮ってきた父親も偉大だ。かっこよさを感じ、憧れを感じた。折口は子供心に「大人になったら、偉大なことをしたい、でかいことをしたい」と思った。

 小学生のとき父親の経営する会社が倒産、生活保護を受けるほど貧乏な家庭になった。これがもとで両親は離婚した。

「あの偉大なお父さんがこんなになるなんて。負けたくない、僕は力をつけて勝ってやる」

 この少年が成長し企業家になった。飽くなき事業欲は志半ばで倒れた父親のとむらい合戦でもある。「とにかくでかいことをやりたい」という折口の精神は、グッドウィル・グループの社是である「弛まぬベンチャースピリット」、経営理念の「拡大発展、社会貢献、自己実現」に投影され、組織の隅々にまで行き渡っている。同グループでは朝礼や会議の冒頭には必ずグッドウィルグループ十訓を社員全員で斉唱、社員の潜在意識に刷り込んでいる。荒々しい声が一丸となって響く様子は壮観であり、組織全体に力が漲っている様子がわかる。



■ チャンスを捉える天性のビジネスセンス

同時に、飽くなき事業欲は折口の戦略思考に磨きをかけた。でかいことをやるには、市場性の豊かな分野で事業を起こさなければならない。折口の事業選択の基準は「市場性があるか、儲かるか」である。そして目をつけたのが人材ビジネスであった。一九九五年、折口は絶好のタイミングで軽作業請負事業に参入した。まさに規制緩和がなされる瞬間であり、巨大なマーケットが眼前に現れようとしていた。働き手の意識も様々なスタイルを許容し始めている。折口は天性の冴えで大きな社会的なニーズを直感した。業界を見渡せば中小企業が群雄割拠しており、傑出した企業は見当たらない。

 ブルーカラーの派遣事業に焦点を絞ったのも勝因のひとつ。ホワイトカラーは年間二百日程しか仕事がないのに対し、ブルーカラーは三百六十五日、年末や正月でもイベント系の仕事は存在する。

 折口の先見性は時代の波をジャストタイミングで捉え、その卓越した事業手腕で一気に規模を拡大させる。そして二〇〇一年九月、業界での地位を不動にするべく、折口は動いた。売上高二百十億円まで成長し、軽作業請負業界では第一位にあったグッドウィル・グループは、業界三位で売上高七〇億八千六百万円のラインナップと合併する。

  これにより合計売上高は二百八十億円となり、当時売上高百五十億円で折口がライバル視するフルキャストに大きく水をあける。拡大する軽作業アウトソーシング市場の中での強者同士の合併劇だった。当時、物流部門が七〇%弱を占め、ITシステムにより大量に人材を投入できる体制を整えていたグッドウィル・グループ。それに対して建築、オフィス内装、イベントやSP(セールスプロモーション)など専門的なスキルを必要とする部門に強みをもつラインナップは見事にかみ合った。得意分野に重複がなく、相互に人材を補完しあうことで仕事量も平日と土日が平準化された。

 現在は従来型の軽作業請負事業から事業領域を拡大させ、新しいサービスである一般事務職のデータインプットや営業・販売代行、市場調査、セミスキル型スタッフの技術者派遣、コールセンター業務など多彩な展開を見せている。拠点数も七月末現在で三百二十二拠点になり、クライアント企業に対するサービスメニューの拡充で圧倒的な地位を築き上げた。二〇〇三年六月期には売上高三百六十三億千万円(前期比41.4%増)、経常利益三十七億七千百万円(同35.9%増)を達成、二〇〇四年六月期は売上高四百三十億円、経常利益四〇億円を見込んでいる。介護事業を行うコムスンを含めた二〇〇三年六月期の連結では、売上高六百二十二億七千二百万円(同31.6%増)、経常利益四十八億千四百万円(同31.6%増)と堂々たる数字である。今期の連結は売上高八百億円、経常利益五十九億円を見込むが、「グッドウィルだけで五年以内に一千億円はいくでしょうね」と折口は雄弁に語る。



■ スピード経営

飽くなき事業欲は確かな戦略性を磨くとともに、スピード経営を促す。なぜなら限られた時間の中で大きな事業構想を実現するには、スピード経営を実践する以外に道がないからだ。 

「スピードは力なり」折口が好きな言葉のひとつである。コムスンの買収はそれを如実に表すが、折口は常に勉強を怠らず、情報のアンテナを張り巡らせている。そして「ここが勝負どころ」と見るや、果敢に決断し、戦略を練った上で、組織作りに落とし込む。そのスピード感には誰もが驚きを隠さない。

 例えばグッドウィル創業期の一年間は、ヴェルファーレで朝の八時半から翌日の午前一時まで仕事をし、それからグッドウィルでの仕事に取り掛かるなど、七、八人の創業メンバーとともに恐ろしいほどのハードワークをこなした。そして資金調達に成功すると、拠点の全国展開を加速させ、創業四年五ヵ月にして株式を店頭上場させた。 

 二〇〇〇年にはコムスンで一日に十数拠点というスピード出店を実行、一時は千二百拠点まで増やした。その後、赤字が膨らむと三百拠点に一気に集約する。折口は冷静に苦境脱出の戦略を練り、問題点を抽出、解決し再び攻勢をかけ、コムスンを今や業界を代表する企業に育てあげた。マスコミは短期間に九百拠点を縮小したことを定見がないと批判したが、九百拠点を閉鎖できるスピード経営は折口しか持ち合わせていない偉大な才能といえる。

「組織が急速に拡大していく際に、役割分担をしっかりしてスペシャリスト集団を作り上げる。経営力とシステム力、適材適所の組織構築力でスピード感のある事業展開をする」とスピード経営の要諦を語る。



■システム経営


  二〇〇三年七月、グッドウィル・グループの登録スタッフが一年前の七十万人から大きな伸びを示し、ついに百万人(フルキャストは七十万人)の大台を突破した。これは就職難の影響でスタッフ希望者が増加し、一方の企業は固定費削減のため業務を外注する傾向が強まっていることを示している。登録社数は七月末の時点で約二万四千社と、一年間で約二〇%伸長した。需要の拡大にともない拠点の拡大と整備に取り組む。営業拠点は七月末で三百二十二ヵ所と一年間で六十%近くの増加、今期中には三百七十ヵ所にする予定だ。こうしたスピード経営を可能にしているのは、グッドウィル・グループ独自のシステム経営である。

「他社は損益分岐点が高いため、赤字拠点になるリスクがある。同業他社は拠点に社員が二人必要であるため、損益分岐点は月商五百万円。グッドウィルは社員一人で回せるので月商二百五十万円を基準に出店できる」と折口は明快に答える。

  継続した情報投資を行い、各拠点のネットワーク化に力を注いできた。拠点間でお互いのスタッフの登録データベースを参照でき、他の拠点からでもスタッフが手配できるようシステム化されている。特に企業の需要が急速に膨らむ繁忙期に効果を発揮し、一拠点一社員の体制を可能にする。

  マッチング力の高さも特徴のひとつだ。企業が求める人材をデータベースからピックアップし、時間指定と人数指定の要望にも確実に応える。登録スタッフのもつスキルや経験までも把握しているので、細かいオーダーにも対応できる。更にスタッフのチームもシステムで自動的に編成される。まず登録スタッフをその技能のレベルによってランク付けし、給料に差をつける。そして独自に開発したシステムで、利益率を高めると同時にクライアント企業の満足度を高める適正水準のポイントで、スタッフの配分を自動的に行うのだ。

「人材業は、実は人材業という名の仮面をかぶったシステム産業です。そのシステムの高度さ、ネットワークの精緻な融合が勝負を決します。人と企業のマッチングをシステムで効率的に行えれば、支店長の力が多少弱くてもオーダーを取れるのです」と折口が話すように、システムで人に依存する比重を小さくすることがシステム経営の要諦のミソである。

  折口は防衛大学を卒業してから日商岩井に入社するまでの一年間、日本ユニバック(現日本ユニシス)の営業マンとして働いた経験から、優れたコンピュータ・システムを低コストでつくる方法を理解していた。「プログラミングは委託するけれども、基本アーキテクト、基本デザインは自社でやることが大切なんです」と折口、このバックグラウンドが折口にシステム経営を実行させたともいえる。

「マッチング力とスケールメリットの両方が備わっているので、業界で最も適した人材が出せる力がある。だから値段を下げる必要性がなく、高い利益率を維持できるのです」

 最終的には全国に五百拠点くらい展開する予定はあるが、潜在マーケットが大きいためそれ以上の拠点拡大の可能性もある。 



■ライバルの存在

ライバルの存在が折口の事業欲を駆り立てている。

 一九九五年のグッドウィル設立当初、平野岳史率いるフルキャストは売上高四十億円で折口の先を走っていた。当初から折口はフルキャストに追いつき、抜き去ることを意識していた。

 このようなエピソードがある。グッドウィルの創業メンバーの数人は、学生時代に軽作業請負業のラインナップでアルバイトをして仕事を覚えた。その中の一人が創業時のフルキャストに経営指導する中で、平野に「一緒に事業をやりましょう」と持ちかけたが、話が折り合わなかった。そこで話が回ってきたのが折口なのである。

 業界に同業他社は六百三十社ほど存在し、その市場規模は千百億円程度。その中でグッドウィル・グループは三割のシェアをもつ。株式公開はフルキャストより二年早かった。しかし油断大敵である。平野は折口に対するライバル心を剥き出しにし、強烈なリーダーシップで追撃の号令をかけている。この七月に東証二部に上場し、折口と同じく東証一部上場を目指す。フルキャストはどちらかというとの製造ライン・製造業の請負に強みをもつが、「近々、プロセスエンジニアリング事業部を設置し、ファクトリー専門部門を強化していく予定」と折口が話すように、この分野でグッドウィル・グループが伸びてきている。局地戦は今後とも激しさを増していくだろう。

 古今東西、歴史の英雄たちには必ずライバルが存在した。ベンチャーの世界でも米国ではビル・ゲイツ(マイクロソフト会長)とラリー・エルソン(オラクル会長)、日本では孫正義(ソフトバンク社長)と西和彦(元アスキー社長)という具合でライバルが熾烈な競争を展開することによって、互いに成長を促してきた。

 折口と平野は年齢も同じなだけに、今後長くライバル同士として成長していくだろう。



■血気盛んな野武士軍団

折口は四十二歳、気力、体力ともに最も充実した年代にある。創業期からのブレーンであるグッドウィル・グループ社長も川上真一郎は四十二歳、専務取締役の神野彰史は三十八歳と経営陣も若々しい。創業メンバー以外にも、折口の優れたリーダーシップに惹かれ、軽作業請負業界の先駆者である大西幸四郎、常務取締役管理本部長として東証一部上場に向けた組織作りを行う金崎明、コンサルタント出身で心理学を応用した人材ビジネスを生み出したグッドウィル・キャリアの奈良元壽など多士済々の顔ぶれが揃っている。

 経営幹部の肉声から意外な折口像が浮かび上がってきた。折口はワンマン経営で会社を先導しているように見られるが、実際は人の意見をよく聞き、吸い上げ、考えて、実行する。それがしがらみがなく、意見の言いやすい環境を作り出している。責任感も強く、会議では問題を解決するための議論をし、自分から提案を行い次のアクションを具体的に決める。

 修羅場をくぐってきた経験から人物を見る目も養われている。その人が何を考えて発言しているのか、じっと観察する。何よりも仕事に対するモチベーションを大切にし、いい加減な気持ちで仕事をやっていれば、厳しく評価する。

 グッドウィル・グループ社員の平均年齢も二十九・五歳と若い。この若さを活かすため、年齢や社会経験に関係なく支店長などのポジションを任せ、支店ごとに毎月損益決算書を提出し、経常利益の七%を還元するインセンティブ制度が存在する。また「新規事業提案制度」という可能性のある事業提案には資金も人的資源も提供し、責任者として事業を立ち上げてもらう仕組みもある。チャンスを掴む余地が大きい急成長企業であり、公平な実力主義が貫かれているため、社内の雰囲気は常に高揚している。

 特に経営陣の一体感には驚かされる。徹底した実力主義と権限委譲がモチベーションを高めているのだ。そして誰もが折口の「決断の速さ、事業構想力の大きさ」に尊敬の念を隠さず、優れたリーダーとして認めている。その一方で友達的な感覚もあり、仕事が終わると皆で六本木周辺を飲み歩くこともしばしばだ。誰の口からも「売上高一千億円、利益百億円、東証一部への上場」の言葉が発せられる。折口の指揮の元、幹部全員が目標を共有し、一丸となってグッドウィル・グループを経営している。



■雄大なビジョン


 就労に対する日本人の大幅な意識の変化により、いわゆる正社員制度や終身雇用制度自体が事実上流動化している。就職難など雇用環境が悪化する中で、人材業界には雇用の受け皿としての機能を期待されている面もある。そうした中、グッドウィル・グループの役割は「アウトソーシング事業」から「リプレイス産業」(自社雇用の正社員やパート・アルバイトをグッドウィルのスタッフへ置き換える)へとより重要性を増している。

 これにはフリーターの増加や雇用不安という負の側面も伴う。しかし折口は「グッドウィルの成長が雇用を流動化させたのではなく、雇用の流動化がグッドウィルを成長させた」と認識している。物事の善悪ではなく、社会の大きなトレンドとして判断するべきだとの意だ。

 資本主義社会における拡大再生産が企業成長の源泉であることは間違いない。そしてイノベーションを生み出す企業家は世の中のニーズを先取し、それに応えるべく実行する人物である。その成功は結果的に大きな社会貢献をもたらす。例えばグループ企業のコムスンは来年、新卒で千人を採用する。イノベーションによるマーケットの開拓が大きな雇用を作り出したのである。

 折口は究極の目標は「グッドウィル・グループをセコムのような一流企業にする」ことだ。

「サービス業ではセコムがトップ企業だと思います、本当に素晴らしい会社です。だから将来的にはセコムを目指し、それを追い越せるような企業になりたいです。人材ビジネスに限らずに、サービス業のトップコングロマリット(複合企業)をめざしたい」と将来に向けた雄大な構想を語る。

 過剰に意気消沈する日本に必要なのは、若者の心を燃え上がらせるような英雄の存在である。折口の評価は賛否両論あるが、何よりも我々が心に刻むべきは折口の「挑戦する心」であり、「勝利への執着」であるはずだ。それが卓越した「ビジネスロジック」と相まって、成功への階段を登りつめていく。このことが結果的に新しい産業を生み出し、新しい雇用を作り、日本の未来を拓いていくのである。



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