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トピックス -企業家倶楽部

1997年04月27日

【伊藤園特集】「敗因は得意なときにあり」伸びているときこそ足元をみる/伊藤園会長 本庄正則

企業家倶楽部1997年5月号 特集第2部 編集長インタビュー


大小の企業が群居ひしめき合い、熾烈な販売競争を繰り広げる飲料業界の中で、その勢力を着実に拡大している伊藤園。しかし、どんなに調子がよくても浮かれず、足元をしっかりと見つめる存在が、組織には絶対必要だ。本庄正則は創業者として、身を挺してその役目を担っている。「21世紀戦略を考える前にまず消費税対策です」とは、消極的な慎重さとは違う。足元をしっかりと固めたうえで、はじめて未来が見えてくるという信念から出ている。その言葉の端はしには、威勢のよい若手企業家とはまたひと味違う、いぶし銀の迫力が漂っている。

■後発だったことが成長につながった

問 食品産業は一般的に好・不況のない、安定した業界といわれてますが、実際に商売をされていてどうですか。

本庄 安定なんて、とんでもない。厳しい販売競争を繰り広げています。飲料業界は売り上げ一兆円を超えた巨人、コカ・コーラグループが先頭を走り、そのあとに年商二千三、四百億円のサントリー、キリンビバレッジ、アサヒ飲料がおり、その後ろを年商一千億~千二百億円台のわが社、サッポロビール、カルピス、ポッカコーポレーション、カゴメなどが続いています。毎日、食うか食われるかの戦いです。そこへ消費税率が三%から五%へ上がったでしょう。コカ・コーラさんが価格を据え置いたので大変です。これは黒船の到来のようなものですよ。

問 コカ・コーラが値上げしなければ、二位以下の会社も追随し、消費税率の二%アップ分を吸収しなければならないわけですね。

本庄 売り上げからでなくて、経常利益からなんです。売り上げ千億円の場合、二十億円もとられるんだから、大変なことです。会社情報を見ればわかるが、売り上げが千億円前後の会社の経常利益はほとんど十四、五億円ぐらいです。消費税を加えたら、赤ですよ。うちの去年の実績は、対売上高経常利益率が五・三%で、経常利益は六十三億円です。飲料業は経常利益率が三・五%あればいいという考え方がおかしい。うちの経常利益が仮に二十億円以下だったら、どうにも手がつけられない状況になる。儲けすぎでもなんでもない。まず消費税アップを乗り越えること。他社もみんなそうでしょう。コカ・コーラさんはおそらく消費税アップに乗じて、日本制覇を考えてます。そんなところと正面切って戦うことはない。伊藤園なりのペースで、企業が安定化していけばいい。それ以上の夢を見るのは、いまは非常に危険だと思います。



■何年経っても先行者利益がある

問 そういう厳しい状況のなかで、伊藤園は毎年百億円も売り上げを伸ばしてきました。成長の秘密はどこにあったのですか。

本庄 私が伸ばしたのではないのです。いつも言うように、私自身の能力はゼロなんです。ではなぜ伸びたのかというと、運が七割です。あと私を取り巻く上下左右の人たちの能力が三割。それで伊藤園が会社らしい形になった。どうやって成長させたのと聞かれると、そうとしか答えられない。伊藤園はお茶屋になったのは最後発ですし、飲料業界に入ったのも最後発です。ということは、他社がやっていない分野を開発しなければ生きていけない。それが、お茶屋のときからの課題であったがために、ウーロン茶、缶入り緑茶、野菜ジュースなど無糖飲料のマーケットを結果的に、伊藤園がつくった形になった。新分野を最初に開拓すると先行者利益がいただける。ウーロン茶をいまから十七年前、最初に出したのも伊藤園です。そのときは日本では五年間、伊藤園が独占的に売って、これが大ヒットしたから、ものすごく儲かった。ところがいまは、ウーロン茶はどこでも買える成熟産業になった。お茶(缶入り緑茶)も、うちが最初に出した。いまはウーロン茶より、緑茶の方が売れています。苦し紛れだったけど結果的に、新しい分野を開拓した形になって、利益に貢献しています。

問 ウーロン茶をはじめ、それまでにない飲料を開発した点が成長の一因ですね。

本庄 先に開発した会社には、何年経っても、ある種の先行者利益があります。たとえば、三つの缶コーヒーを並べてみる。サントリー、コカ・コーラ、伊藤園の三つの中から、どれか選びなさいといったら、伊藤園の缶コーヒーを取る人は少ないでしょう。逆に三社のお茶を並べて、どれかを選ぶことになれば、まず伊藤園のお茶をとると思う。消費者にはこういう先入観があるんです。それにあえて反抗していくと、会社はおかしくなる。ウーロン茶を最初に中国から仕入れて、商品化したのは伊藤園ですが、逆に伊藤園だけだったら絶対、これだけ大きな市場にはなってなかった。当時の伊藤園の販売力はいまの百分の一ですから、おそらく一時的ブームに終わったでしょう。そのときに、たとえばサントリーさんが一緒に乗ってくれたことで、全国ブランドになった。現在ではウーロン茶はサントリーが始めたような形になってますが、それはそれでいいんです。うちの何倍も大きい企業と同じように競争しては、負けるに決まっている。われわれは、われわれの計算通りに伸びてくれればそれでいい。



■新製品は年に一つヒットすればいい

問 商品アイテム数は現在、どれくらいあるのですか。

本庄 登録しているのが、飲料で千、茶葉で三千、計四千アイテムあります。そのうち実際に動いているのは飲料で百、茶葉で五十アイテムぐらいです。新商品は年間、三十ぐらい出してますが、そのうち一つ当たればいいと考えてます。一番売れているのは缶入り緑茶の「お~いお茶」です。九六年度は三百四十億円も売れました。

問 最近、いたるところで御社の自動販売機を見かけます。自動販売機を始めて、どれくらいになりますか。

本庄 本格的に始めてから五年目です。年間八千から一万台のペースで増やし、現在は合計四万台ほど設置しています。一定の売り上げに達しないものは外すようにしてますが、撤退企業もあるなかで増設ペースは早いですね。 問 企業内の設置が多いように見受けました。 本庄 社員の努力もさることながら、私のつき合い、顔の問題があるのでしょう。

問 缶入り緑茶では、御社は圧倒的なシェアを握っていますが、市場としては缶コーヒー市場の方が大きいですね。コーヒー市場への取り組みはどうなってますか。

本庄 コーヒー市場が一番大きいのはわかってます。うちでも年間、七十億円ぐらい売ってます。コーヒーに力を入れていないわけではないが、それよりもお茶に力を入れた方がいいと思っています。その得意な分野がたまたま、世の中の健康志向とマッチした。甘いものを避ける風潮に偶然、伊藤園の無糖飲料がうまく乗った。能力でも何でもなくて、苦し紛れに出した商品が偶然伸びているんです。

問 お茶の消費はまだ伸びますか。

本庄 若い人はスパゲティを食べながら、缶入り緑茶を飲むようになった。パンとウーロン茶の組み合わせも珍しくありません。そんなことを考えると、お茶の消費はまだ伸びると思います。缶入り緑茶用のお茶は、お茶全体の消費量の四%ぐらいですが、年率一八%で伸びているので、一〇%ぐらいまで行くのではないでしょうか。お茶はもともと薬草として飲まれていました。カテキンなどの抗がん作用も注目されています。いま、当社の中央研究所でお茶の成分の薬効の研究を進めています。どんな研究成果が出るか楽しみにしています。



■失敗しても罰しない加点主義の会社

問 先ほどの話に戻りますが、偶然だけで伸びたわけではないと思いますが。

本庄 もう一つ、伸びている理由があるとすれば、私のちょっと抜けているところ。それが、社員が言いたいことを言ったり、したいことができる要因になっているのではないか。うちは失敗しても罰することをしません。だいたい、失敗を起こす価値のある役員なんか、僕以外一人もいないんだから(笑)。一役員、一部長クラスが失敗したって、企業の生命線に関わることはない。一番怖いのは、私の失敗。次が弟(本庄八郎社長)の失敗。それ以外の失敗はたかがしれている。前向きなことをやって三回、四回としくじっても、この会社では評価が下がらない。減点主義でなくて、加点主義ですから。学歴も関係ない。私自身早稲田大学の卒業証書を、高校の恩師に、いくらで買ったんだと聞かれたくらい勉強しなかったから(笑)。門閥、派閥などまったくありません。あるとすれば、私の派閥一つです。派閥をつくる役員がいたら、即刻クビですから(笑)。二十二人の役員のうち、大卒は十二人しかいない。去年、三人の四十代の若手を役員にしたが、その学歴をあとで見てみたら、二人が夜間高校卒、一人は短期大学卒でした。決めてから見るとそうだった。こういう状況だから、下の人は、一生懸命やれば自分も出世できると思える。

問 本庄さんの経営は、人間を大切にするのが特徴で、リストラについても独自の考えをもっていますね。

本庄 リストラとは事業の再構築のことで、人員整理のことではないんです。うちは人員を減らさずにリストラをやろうと思っている。人を減らせば、うちはダイレクトセールスだから、それだけサービスができなくなる。六十歳の定年になっても、やめたくなければ、何か仕事を残して、六十七歳ぐらいまでは働けるようにしたい。ただし給料は下げます。過去三年間、私自身の給料も下げている。そうやってお互いが助け合う形にしないと、どこかで人員整理しなければならなくなる。リストラで人を減らせ減らせと、誰もが言うが、減らした人間をどうするかは誰も言わない。減らした人間をどうするかをまず考えなくてはいけません。老年失業者だけならまだいい。去年はこんな小さな会社でさえ、八万人もの学生の問い合わせがきました。総務部の人間が喜んでいたので、私は怒った。「喜べることではない、バカ者!」と。三百二十人しか採用しないのですから、試験を受けさせなかった人、落とされた人はアンチ伊藤園になってしまう。学生の兄弟、家族を入れれば、少なくとも毎年十万人以上のアンチ伊藤園をつくることになるんだから、喜んではいけないのです。



■無理な目標を立てず、足元を固めるのが先決

問 二〇〇一年に二千億円の売り上げ目標を掲げていますが、達成できそうですか。

本庄 それは社内用に言っているんです。本当にそうなったら、人の問題などで無駄な費用が出てきておかしくなってしまう。千六百億から千六百五十億円が安定して、いい形だと思っています。九六年度は千百五十億円の予定だったが、千百八十五億円までいく。今年度は千二百八十億円で十分だといっている。部下があまり高い目標を出すと、もう一回考え直せ、と言います。目標を高くすると、乱暴な売り方になり結果、売り上げは落ちる。低く低く抑えると逆に余裕ができて、売り上げは上がってしまう。われわれとしては、低い視線でやりたい。 問 オーストラリア、ハワイ、中国などに進出してますが、グローバル時代に伊藤園はどんな企業に育っていくか。二十一世紀にかけての将来計画を、夜な夜な考えているんじゃありませんか。 本庄 私の海外戦略の基本は、何かあった場合、現地で接収されてもかまわない状態にしていることです。海外の子会社のために、日本の本体がおかしくなったら、なんにもならないですから。おかげで中国でも非常にうまくいってます。なぜか。人間と土地はすべて向こうから、機械はこちらから出して、そこでつくったものは一品も現地で売らずに、全部こっちで買うからうまくいくんです。貨幣価値が二十倍も違うのに、日本の商品を中国で売ろうとするからおかしくなる。ウーロン茶も、つくったものを全部買うから、伊藤園を大事にしてくれるんです。ハワイは、ほとんどがハワイアンジュースで、現地の人が現地でつくって、現地で売っています。

問 飲料以外の食品業界に進出するとか、総合食品メーカーへの夢は当然お持ちでしょう。M&A(企業の合併・買収)や多角化についてはどうですか。

本庄 M&Aの話はいろいろ来ていますよ。双方が合意してやるのは非常にいいと思いますが、なかなか難しいのは、わが社にはわが社なりのカラーというものがある。M&Aでよその会社を手に入れたとしても、このカラーを相手に浸透させない限りは無理なんです。M&Aは、ちょっとでも力関係でやったとすれば怨が残る。古い日本人だから、なるべく怨は残したくない。他人様のつくったものを横からカネでとるなんてことは、とてもできない。M&Aが悪いというのでなく、私の能力下においては、できないと思ってます。 問 事業家として、やってみようという気にはならないですか。 本庄 全然ない。そもそも私は事業家でも経済人でもない。商人ですから、自分のことでいっぱいです。ここまできたこと自体がおかしい。ゴルフ場も商売ではなく、趣味でやっているだけです。とにかく、飲料業界でナンバーワン、食品業界の中でも三、四番目に高い、いまの株価を維持する経営をしていかなければいけない。他人様の命から二番目に大切なおカネを投資してもらっているのですから、まずは消費税問題をクリアして、いかに安定していくかを考えています。



■敗因は得意なときにあり

問 株主のことが出ましたが、普通の会社は総会屋を恐れて、株主総会には非常に神経質になっています。ところが伊藤園の場合、総会屋は、いらっしゃいと言っても寄りつかないとか。

本庄 ほとんどゼロですね。私自身が検事になりたかった人間で、警察官とか自衛隊が非常に好きなんです。国家を背負い、薄給で、命をかけて働いているところが。それで検事や警察の友人がたくさんいて、株主総会のときに、暴力団担当のこわい顔の警察官があちこちから、三十人くらい来るんです(笑)。また、総会屋が来るほどのことを、うちはしてないから、恐れることはありません。それよりも今後、問題になるのは、諸制度の変更でしょう。株主代表訴訟、製造物責任法などの問題の方が、経営者にとっては難しい問題になると思います。

問 本庄さんの座右の銘は何ですか。

本庄 私は手帳に「敗因は得意なときにあり」と書いています。敗れる原因は、得意なときに生じる。伸びている時期がもっとも危ないのです。私はこの歳で、会社が傾くのを二度と経験したくない。そのときは、逃げちゃいますよ(笑)。それが大事だと言っても、若い人は経験がない。カネがなくて、倒産寸前の苦しみはわからない。それを注意してくれと、いくら言ってもわからない。だから繰り返し繰り返し、どういうふうにやろうと考え結局、リストラをやることにした。いろんなことをやってますが、今度やったのは、手形を一切やめること。うちの場合、今月締めの二カ月後とかに、現金でおカネをもらってます。それに合わせて支払いも二カ月後としていたのを、一カ月早くして、今月締めの来月払いとした。うちは無借金経営ですが、つき合いの関係で銀行から百億円以上借りているから、それができるのです。早く払う代わりに、申し訳ないが、百円のものを一円だけまけてもらう。普通、おカネを早くもらえるなら、それくらいまけますよね。一万円で百円ですから。けれど、われわれからすれば千億円買うわけですから、その一%だと十億円です。これは、働かずして出る利益。これがリストラになります。



■五島さんは将に将たる器だった

問 ところで、本庄さんは、東急グループ総帥の故五島昇さんには、いろいろ指導を受けられたそうですね。

本庄 もっとも尊敬すべき師匠でした。東映会長の岡田茂さんを通じて知り合ったのですが、晩年にものすごくかわいがってもらいました。あれだけの人物は、これからの日本には出にくいのではないでしょうか。このこせこせした時代に、惜しい人を亡くしました。私は兵隊の長ですが、五島さんは将の将なんです。会社のトップたちが、五島さんに無理を言われても、言うことを聞くのは、おカネの力ではなく、この人の人徳だったんですよ。

問 どういう方だったのですか。

本庄 十年ぐらい前、自分が会長になり、弟に社長を譲ろうと思って相談した。五島さんは、会長は閑職だという古い考え方をしていたから、じっと考えて、言いました。「そんなことを俺に聞きにくるな。イエスと言うと、弟の方が能力があると言うことになる。まだ早いと言うと、おまえの弟はダメだと言うことになる。そういうことは他人様に言えるものではない」と。これはすごい人だと思いました。

問 五島さんの思い出を聞かせてください。

本庄 五島さんはゴルフのハンデが四ぐらい。私も強かったので、私とプレイするときは、自分の調子のいいときしかやらないんです。あるとき、ハワイにいる私に、韓国で向こうの財界トップとゴルフをやるから、一日も早く来いと電話があった。そこで出かけていってゴルフをした。五島さんたちはカートに乗って、「おまえも乗れ」といわれた。私はキャディーさんがゴルフバッグ抱えているのを見て、彼女たちも歩くのだからと思い、若いからそんなの乗りませんよと言った。「そうか」と五島さん。カートが走り、私とキャディも走りました。ところが次のホールに行ったら、次のキャディが待っていて、駅伝みたいに交代して走り始めた。私は参ってしまった。三ホール走ったところで、「おい乗らないか」と言われて、乗ると、にたっと笑って、「だからおまえは馬鹿なんだ」と言われた(笑)。

問 惜しい人を亡くしましたね。 本庄 あまりしゃべらないのですが、はにかみやで、茶目っ気のある人でした。社長の交代については、八八年五月に行いました。(本庄八郎社長を)弟だからではなく、もっとも信頼できる部下だったから社長にしたのです。

問 本日はどうもありがとうございました。

ほんじょう・まさのり  1934年、神戸市生まれ。59年早稲田大学法学部卒。学生時代検事をめざし、次いでジャーナリストを志すがいずれも断念し、東都日産モーターのセールスマンになる。トップセールスマンになるが、メーカー出身者が主要ポストを占める体質に嫌気がさし退社。64年、食品卸会社をつくる。66年、フロンティア製茶を設立。69年、東京上野で100年以上続いたのれんを200万円で買い、伊藤園に社名変更。88年、実弟の八郎氏に社長を譲り、会長に就任。92年、株式を店頭公開。96年、東証第2部に上場。趣味はゴルフで、最盛期のハンデは1、現在は5。千葉県長生郡に自ら設計したゴルフコース「グレートアイランド倶楽部」をもつ。



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