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トピックス -企業家倶楽部

2012年12月27日

小売業の社会的地位向上に邁進/ヤオコー会長 川野幸夫

企業家倶楽部2013年1/2月号 ヤオコー特集第3部 編集長インタビュー


小売業の社会的地位向上に邁進スーパーマーケット の事業を通して地域文化の向上・発展に寄与するこ とを企業理念に掲げるヤオコーの川野幸夫会長。生 活者目線に立った売り場作りを目指し、地域で最も 愛される店舗を作ってきた。ヤオコーの将来を担う若い世代には、「成功体験に囚われず、自分たちで考え挑戦して欲しい」とエールを送る。「小売業に優秀は人材を受け入れ、本当に魅力のある業界にしたい」と熱い想いを語った。(聞き手は本誌編集長徳永健一)



■生活者目線のお店作り

問 ヤオコーのお店の特徴を教えていただけますか。

川野 まずは生鮮食品やデリカ食品に強い点です。もう一つはお店に行くといろんな意味での提案があることです。私どもはミールソリューション型と呼んでいます。たとえば今晩の夕飯は何にしようかと
考えたときに、ヤオコーへ行くと自然に決まるよう工夫しています。
 
 また、一般的なスーパーマーケットは魚や肉、野菜と組織が縦割りです。ところがお客様の食生活は縦割りではありません。ヤオコーでは横串がささっており、部門間の横のつながりがあります。お客様の生活本位な売り場を作る努力をしています。

問 具体的に横串がささるとは、どんな工夫でしょうか。

川野 一つ例にすると、サラダは青果コーナーにあると思いますね。しかし、魚と野菜が一緒になったサラダもあるし、ローストビーフと一緒になったサラダもありますよね。そういう部分で魚売り場には 魚のサラダがあるということではなくて、サラダという売り場を作っています。ヤオコーにはサラダの担当者がおり、野菜部門や肉部門、魚部門と相談しながら、商品作りをしています。組織を縦割りではなく、お客様の食生活の風景を考え、売り場作りをしています。

問 現在の日本では、少子化や超高齢社会といったライフスタイルが多様化しています。消費者のニーズを汲み取ることは難しくありませんか。

川野 そうですね。お店も日々変わっていかなければお客さんのニーズに合いませんから、どんどん変わっています。そして、売り方は店によって違います。若い世代は所帯人数が多く消費量も多いですね。一方、高齢者は所帯人数が少なく、食べる量も少ないです。だから年寄りがたくさん住んでいる場所と若い人がたくさん住んでいる場所ではお客様のニーズが違いますから、そのニーズに合わせ売り場は変えているのです。

問 消費者のニーズをつかむ秘訣はあるのでしょうか。

川野 ヤオコーでは個店経営といって、商売に主体性を持たせています。基本的なコンセプトや置いている商品はそんなに大きく違う訳ではありませんが、量やサイズが違ったり、主力で売っている商品が店によって相当違います。多くのチェーンストアは、本部主導型です。本部が計画をたてて、店舗は指示通りにしなさいというのが主流です。しかし、私どもヤオコーは「個店経営」をしています。行政で いうところの「地方分権」ですね。バックヤードのシステムでは標準化をしながら、一方で店ごとの個性を加えています。

問 すると店長には大きな権限が与えられているのでしょうか。

川野 そうですね。他の会社ですと店長はマネージャーですね。会社から指示された商売を与えられた店舗、商品、メンバーをマネジメントすることによって計画された数字をあげるのが使命です。

   しかし、私どもヤオコーの店長は、まずは店主なんです。自分たちのお店はどういう商売をしていくのかということから考えます。その店長一人で考えるのではなくて、店舗のスタッフ皆で参加をしてもらい、その地域のお客様にあった商売をしてもらおうということです。だからまずは自分たちの商売を店長が考える。

   そしてそれを実現するためのマネジメントをどうしていくのかと主体性を持って考える。当然、それを決める権限が与えられています。お客様のことを考えたら結果的に個店経営に行き着いたのです。



■「おかげさまで」と言われる企業へ

問 11月5日に上期の決算報告がありましたが、業績は好調ですね。7月開催の第14回企業家大賞を受賞され、記念講演の際に企業発展のポイントは2つあると話されました。それは、志と明確なコンセプトが重要とのことでしたが、普段社員の方にはどんな話をされていますか。

川野 私たち一人ひとりは多くの方のおかげで生かされているということです。私たちは一人で生きているわけではない。だから自分の人生をより充実させようと思ったら、「おかげさまで」と言われるような生き方が、私は人間的だというふうに思っています。働くのも人生の一場面ですから、「おかげさまで」と言われるような働きをしていこうと話しています。その働きがひいては自分の人生を充実させることになります。

 それは企業も一緒で、企業もやはり社会的な存在で、人間と同じように「おかげさまで」と言われるような企業になっていくことが、企業の本来の存在の意味だと思います。だから儲かればいいではなくて、多くの方々のお役に立つということを企業存在のための目標にしていこうと話しています。

 もう一つは、お客様のニーズが多様化、高度化していますから、ただ単に物を売っていてはお客様の支持を頂けません。ヤオコーはどんなスーパーになるかということを明確にして、追求し続けようと伝えています。私たちの商売は食事という生活のシーンがターゲットですから、景気で極端に大きくは変わりません。食生活とは本来保守的です。ただ少しずつ変わってくるものです。その小さな変化に合わせて対応していくことが大切です。流行っているレストランに行ってみたり、海外の食文化に直接触れてみたり、何が売れているか数字を分析しながら、今の日本のお客様に必要なものがあるのではと仮説を立て、商品化し売り場に出しています。

問 ヤオコーでは、パートの主婦の皆さんをパートナーと呼ばれていますね。

川野 店舗で働いている主婦の方々はやはり仲間ですから、まさにパートナーですね。日本の女性は優秀ですし、多くは主婦の方ですから、私たちスーパーマーケットにとってはお客様の気持ちを一番よく分かっている存在ですよね。ですから、その潜在的な力をお客様に向けて発揮していただくための教育をし、権限を与えて経験を積んでいただいて、それで力を付けて頂いています。ヤオコーのパートナーは日本一だと思っています。こんなに頑張ってくれる人はいないと思います。

問 スタッフが自分の会社だと思って働いてくれることほど頼もしいことはないですよね。

川野 先代である私の母の時代からもそうでしたが、母は社員にとってもお母さんという存在でした。そういう家庭的な雰囲気が受け継がれており、私もその社風を何とか残していけたらと思っています。

 母は店舗を回った後で、「あの子は元気がなかったけど何かあったのかしら」とよく話していましたから、社員一人ひとりを良く見ていたのだと思います。

問 川野会長もよくお店を回っていらっしゃると聞きました。

川野 今は日曜日に行っています。パートナーさんに声をかけるのが私の役割。「おはようございます。こんにちは、元気? 寒くなったから風邪を引かないように」と話をしています。社内報や朝礼の記録が各店に回覧されていますが、直接「こんにちは」というだけで、すっと腹に収まるという部分があるように思います。昔は予告なしに行きましたが、私は予告をしてね。何時頃に行くかも大体わかりますから、パートナーさんが待っていてくれます。休みの日にわざわざ出てきてくれたりすることもあります。1日に5から6店舗で、1年に1店舗3回ほどは訪ねています。



■小売業に優秀な人材を

問 東京大学法学部ではどんな学生生活を送っていたのでしょうか。

川野 社会派の弁護士になって困った人たちを助けてあげたいという目的で入学しました。私が大学1年のときにヤオコーが当時としては本格的なスーパーになり、大学入学前の12月に父が死にましたので母が1人で頑張っていました。

 その頃の私は商人にはなりたくない、継ぎたくないと思っていました。学部も弁護士になるために選びましたが、母を助けたいと小売業の勉強を始めたら、私が考えている小売業とは違ったのです。つまらないものだと思っていましたが、そうではなかった。小売業が頑張らないと国民の生活は豊かにならないことがよく分かりました。

 しかし、母になかなか言い出せないで、ぐずぐずしていた。「男が一回言ったのに何事だ、お前なんかいるところないから出て行け」としばらく口もきいてくれなかった。裏では「私が入ってくれない」とこぼしていたらしいのですが。2カ月後部屋に呼ばれて「しょうがないから許す。明日からマルエツに行け」と。

問 実際に小売業の世界に入ってみてどうでしたか。

川野 私達がしっかりいい商品、いいサービスを提供しないと、お客様の生活は豊かにならないと実感しました。小売業は私たちがいくらお客様のためだと言ても、本当に役に立たなければ買ってくれません。

 お客様のことを考えれば考えるほど、謙虚になっていくと思います。お客様からいつも鍛錬をされているのが小売業の良いところです。

 小売業を本当に魅力のある業界にしていかないといけないと思います。企業は人だし、業界そのものも人なんです。国も人であるように。優秀な人間が入ってこないと、業界全体のレベルアップが図れない。

 バブルがはじけてしばらくたって多くの銀行や証券会社が潰れました。その時は社長でしたから、決算報告に銀行にうかがって偉い方にお会いした時、「優秀な人材の卵を採用して活かさなかったことが、不良債権を作ったことよりよっぽど罪だ。小売業に、1割でも2割でも入ってくれれば、日本の国民の生活はもっと豊かになったはずです」と言って、後から余計なことを言ったなと反省しました。しかし、そのくらい大切な仕事だと思います。日本くらい小売業の社会的地位が低い国はありません。そういう部分でも地位を高めるということが必要です。それが今の私たちの課題です。銀行から来た人たちは、「小売業はこんなに難しいことだとは思わなかった」と言います。

 世の中のトレンドは生産者主権から生活者主権ですから、小売業が果たすべき役割はますます大きくなると思います。

問 お母様のトモさんはどういう経営者でしたか。

川野 母は私や弟にいろんなことを任せてくれ、象徴的な存在でいてくれました。それと、社員を大切にしていましたね。社員の子供のほとんどを知っていて、運動会があり社員の奥さんが母の所に挨拶にくると、ちゃんと名前を覚えていてお小遣いをあげる。それも百人分位ありましたね。よく名前を覚えているなと思いました。

 母が80才になり動けなくなったときに呼ばれて「お前のお金で500万円、新札で用意してくれ。今満期の定期がないから、あんたのお金で用意してくれ」という訳です。私は、すぐにお年玉なんだなと思いました。会社を離れてからも、お年玉を渡していたのだと、その時分かりました。上に立つ者というのは専門の知識も必要ですが、人間全体が分かることが重要だと思います。

問 今後の課題はなんでしょうか。

川野 一番気をつけていることは老害にならないこと。これからは若い人たちの時代です。これだけ世の中大きく変化してきますと、昔の体験だけで生きて行けません。お客様の変化はもちろんのこと、競合の状況もどんどん変化していますから、そういうものに対応できるのは若さや頭の柔らかさです。われわれは成功体験にとらわれがちですから、若い人たちに考えてもらい、実現してもらうために私たちはバックアップしていきます。

 理念は変えずに、守ってもらいたい。ヤオコーの基本の考え方の伝道師というのがこれからの私の仕事だと思います。具体的な商売については若い世代が考えるということです。

 以前、経営者2世の人たちの勉強会で話をする機会がありました。

 「兵隊持っているのはあなたたちなんだから、親の言うことは右から左に流して、あとは必死で商売を成功させれば、親は認めてくれるよ」と話しました。周りは一生懸命やっていると分かります。

問 ヤオコー三郷中央店のオープンがありましたね。お客様と一緒に店舗で買い物をされていましたが、どうでしたか。

川野 買い物をすると店のことが一番分かります。個店経営なので、それぞれ新しい工夫がされています。本来、食材を買いに行くというのは義務的でおっくうなものです。それをどうやって解消するか、お店は考えて工夫しています。美味しいものが沢山あって、献立の提案があり毎日のメニューで悩まなくて済むようにしています。町の中央市場のような賑わいも必要ですね。

 豊かで楽しい食生活提案型スーパーマーケットを掲げていますから、古い店舗も新店舗に負けないように地域一番店になるように指導しています。今後も年に10店舗くらいは出店していきます。そのためには企業理念の徹底です。私は言葉は違えども同じことを何度も社員に伝えています。

「おかげさまで」と言って頂ける企業文化を目指して続けていきます。



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