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トピックス -企業家倶楽部

1999年06月27日

【ぴあ特集】真摯で真面目なリーダーシップがデジタル時代のエンターテインメントコンテンツを制する/ぴあの強さの秘密

企業家倶楽部1999年8月号 特集第2部


 

沈没シーンで世界中の人々の心をさらった映画「タイタニック」、松坂ブームで熱狂する野球界、対オリックス戦では五万人もの観衆が手に手にチケットを握り締め、球場へと雪崩れ込んだ。どの顔にも笑顔が輝く。この一枚の入場券に人々は感動と興奮を期待し、自らの人生をも重ねる。映画、コンサート、芝居、スポーツ、アートとあらゆるエンターテインメントで人々にこの感動のパスポートを手渡しているのがぴあである。「一枚一枚のチケットを確実に」。ここには創業者矢内廣が二十数年の年月をかけ、コツコツと築きあげてきた情報収集力とチケッティングノウハウの集積がある。エンターテインメントを人生の原点と定め、真っ正面から取り組んできた矢内の生きざまがある。今、エンターテインメント情報の発信基地として、最も注目を浴びるぴあの強さを探る。





 東京千代田区三番町、英国大使館に程近い閑静な住宅街に若者向けのエンターテインメント雑誌「ぴあ」やチケット販売サービスのぴあの本社がある。事業内容からすると新宿や渋谷とのイメージがつきまとうが、この一見静かな情報基地から日夜、人々の生活を熱くする情報が発信されている。



■時代のニーズを事業ドメインに

もし貴方がコンサートや芝居、スポーツを観たいと思ったらどうするか。おそらく多くの人は当たり前のように、ぴあステーションに直接出向くか、電話やインターネットで申し込み、郵送でチケットを受け取るという行動をとるであろう。

 つまりぴあはチケット類の取り扱い業として、また雑誌「ぴあ」の発売元として、人々の頭脳にインプットされ、ブランドとしてすっかり定着している。

 しかし、ここまでくるのは、た易いことではなかった。エンターテインメント情報の伝達を自らの生きる道と定め、地道に築き上げてきた矢内の志と努力と試行錯誤があればこそである。

 ぴあの創業のきっかけは一九七二年、当時映画ファンだった矢内が自分が欲しい映画興行スケジュールを一冊の冊子にまとめたのが始まりである。大学生だった矢内は友人とサークルのノリでエンターテインメント情報誌「ぴあ」を創刊した。

「自分が欲しいものは他の人も欲しいはず」。この予感は見事に当たった。ベビーブーム世代が大学生となり、映画や、コンサートなどエンターテインメントを楽しみたいという風潮が急速に沸き上がっていた。六年前に来日したビートルズの登場でグループサウンズなどに熱中するファンも生まれていた。

 彼等は「何時」「何処で」「どんな催しがあるのか」をいっぺんで見れる「ぴあ」に飛びついた。まさに「こんな雑誌が欲しかった」からである。

 そして時代は高度成長期、エンターテインメントを楽しみたいという若者が街中に溢れているなか、「ぴあ」はそうした若者のマニュアル本として進化していった。そういう意味では「ぴあ」の創業は時代のニーズを的確に捉えた時代の産物ともいえる。



■時代のニーズに応え情報伝達業へと変身

 

矢内の凄いところは出版業として情報誌「ぴあ」の成功だけで満足しなかったことである。


一九七九年に郵政省、NTT(当時電電公社)主導でキャプテンシステムが登場したときである。矢内はこのニューメディアの出現に大変な危機感を抱いた。「新しい電子メディアに席捲され、紙媒体は駆逐されてしまうのではないか」。

本質をとことん追求するタイプの矢内は真剣に悩んだ。そして当時のキャプテンシステムへの実験に熱心に取り組んだ。一緒に参加した某新聞社の実験画面は千画面だったのに対し、ぴあの実験画面は二万にも及んだ。

 とことん検証した結果得た結論は紙媒体が完全にニューメディアに置き換わることはないこと、紙には紙の存在意義があるということであった。しかし、この実験を機に矢内はぴあの会社としての存在意義を出版業ではなく「情報伝達業」として規定し直した。そして情報の収集・加工ノウハウを高めることに力点を置いた。これが結果的にぴあ飛躍の原点となった。



■情報の正確さで他社に際立つ

 

ぴあがブランドとして定着しているのは、ぴあの情報に絶対の信頼を寄せるファンがいればこそである。ぴあの強さはこのデータの正確さにある。集積された膨大な情報は全てリアルタイムで更新されている。

 これには創業時から培ってきた全国の興行主との信頼のネットワークがある。また正確な情報をメンテナンスするデータ部隊の地道な作業がある。これがぴあの最大の武器ともいえる。

 そして矢内も「データの正確さには絶対の自信がある」と胸を叩く。

 例えばグルメ雑誌として若い女性のバイブル的存在となっている「ぴあMapグルメ」の場合もそうだ。こう不況が続けばレストランの興亡も激しい。廃業や移転も日常茶飯事である。しかし、ぴあでは細かい一つひとつのデータをチェック、正確さを期すことに手を抜かない。

 メニューの価格も最新のデータを盛り込んでいる。値上がり前の価格では全く意味をなさないからである。人と手間と時間とを使って実際に取材し、常に生の情報を盛り込むことを怠らない。これは自ら発信する情報に絶対的な責任感と使命感を抱いているからである。

コンビニや書店の雑誌コーナーをのぞいていただきたい。「ぴあ」と類似する情報雑誌が所狭しと並び、若者たちが群がっている。ここ数年、情報誌全盛期を迎え、益々競争が激しくなっている。そんな中で「ぴあ」はしっかりとその顧客を掴み、九十万部の売上げを確保し続けている。これは「ぴあ」の情報の正確さが読者の心をきっちり捉えている証である。

 例えば人気の情報誌「東京ウォーカー」との競合はどうか。これというプランを持たない客が何か面白いことはないか、と購入するのが東京ウォーカーである。それと比較し「ぴあ」の読者は計画買いが多いという。

「最新のロードショーを見たい」「宇田多ヒカルのコンサートに行きたい」など自分がやりたいことが決まっている読者のガイド役を担うのが「ぴあ」である。

情報氾濫時代になればなるほど正確な情報の価値が増す。「いろいろあるけどやはりぴあが一番」という事実がぴあの存在価値を一層高めている。

 今後、デジタル情報時代が進化すればするほどこの正確な情報は益々その価値を増す。例えばヤフーをはじめとするインターネット検索会社ではどれだけ良質のコンテンツを持つかが勝負となる。このときに価値があるのはいかに正確な情報を発信できるかということになる。なれば正確なコンテンツの創造部隊を持つぴあは他社に一歩抜きん出たことになる。



■一枚一枚のチケットを確実に


 今、ぴあには全国の興行主から年間七万アイテムのチケットが登録され、その販売数量は年間一千万枚という驚異的な数字となっている。これは日本のチケット販売の六割近いシェアで、圧倒的な一位を誇る。

 この一枚一枚を正確に発券するノウハウもぴあが培ってきた大きな強みである。かつては街のプレイガイドに出向き、その店頭で売り切れれば客はあきらめざるを得ないのが実態だった。

 ぴあは八四年にこのチケット販売に参入、NTTと共同でコンピュータ・オンラインサービスによる発券システムを確立した。全国のどのチケット販売店からでもリアルタイムで空席状況をキャッチし、好きな席を指定すれば確実に購入できるという利便性を提供している。

 九八年に開催されたフランスのワールドカップで大量のダブルブッキングにより、大変な社会問題になった不祥事は記憶に新しい。来る二〇〇二年の日韓合同のワールドカップではぴあの発券ノウハウが生きることになろう。

「何万枚になろうが基本は一枚一枚のチケットの管理が重要」と力を込める矢内。どんなに大きなイベントであろうが、一人ひとりに手渡す一枚一枚を確実に管理することが基本となる。こうしたチケッティングシステムにおいてもプロ集団としてのぴあの仕事に信頼が寄せられている。



■全国五千七百店のチケット販売店の威力


 昨秋ぴあはコンビニのファミリーマートと提携し、全国のファミリーマートでもチケットが買えるようにした。これまでの六百カ所のネットワークに加え、五千百店が加わり、一気に五千七百店の販売拠点を持つことになる。客にとっては身近なコンビニでチケットを買えるという利便性はこの上ない。

 そういう意味では今やチケッティング事業のライバルはコンビニということになる。さしずめ既にチケット事業を手掛けているローソンが最大のライバルともいえよう。ぴあとしては今後こうしたネットワークをどこまで取り込めるかが課題となってくる。



■総合情報産業へと変身、デジタル時代のコンテンツ提供業を目指す


 今、ぴあの情報センターにはあらゆるエンターテインメント情報が集積されている。それは映画・芝居・コンサートなどの文化的なものだけではない。サッカー、野球をはじめとするスポーツ、美術館情報などあらゆるジャンルに及ぶ。しかもそれは日本だけではない、世界中の興行情報が集積され、日本に居ながらにして世界中のチケットを購入することも可能である。さらには都市のマップ、店舗情報、天気予報など広く生活情報をも網羅する。

こうしたデータはインターネットや携帯電話のiモード、カーナビゲーションにリアルタイムで提供されている。

 デジタル時代のコンテンツ供給業として、ぴあはなくてはならない存在となっている。というよりは個々のデータの正確さ、集積能力ははぴあをおいて他はないということだ。

 なればこそ、ぴあのデジタルコンテンツには各界から熱い視線が注がれている。実現はしなかったが、この四月に発足した新会社ぴあデジタルコミュニケーションズに大手ソフト会社が出資を申し出たのはぴあの価値をわかりすぎるほどわかっているからであろう。



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