2014年12月11日
技術大国日本からマーケティング大国日本の実現へ/フロムスクラッチ社長 安部泰洋
企業家倶楽部2014年12月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.12
西新宿のオフィスビルの中に突如現れた町工場。今年移転したばかりのフロムスクラッチのオフィスだ。ライトアップされた会社のロゴの周りにある様々な工具や作業着、古い自転車などの凝ったディスプレイが目を引く。新オフィスは事業創造や日本の国力の出発点を表現しており、社長の熱意が込められている。
近年、アメリカではインターネット広告がテレビの広告市場規模を抜き、新たな企業の生命線になりつつある。しかしその実際は各社にノウハウがなく、ウェブマーケティングの部門は他の部門と切り離されて考えられがちである。
もちろん、ウェブマーケティングのみで宣伝効果を出すことが望ましいが、実際は成果を挙げることができる商品ばかりとは限らない。「『フェイスブックを使って何かやりたい』など、お客様は施策から入ろうとします。しかし、本来は課題が先に立ち、そこから戦略立案をすることが正しい順序です。我々は5つの観点から起業の課題を可視化し、抽出します」
2010年に設立されたフロムスクラッチは、マーケティング戦略、ウェブクリエイティブ、システムエンジニアリング の3つを軸に事業を展開している。特にマーケティング戦略に関しては、施策だけで解決することのできない課題を「見える化」し企業に合った段階に合わせて解決する。これを同社はMIERUKA(見える化)マーケティングと呼び、商品の持つ課題は何か、目標は何かを考え、その目標と実態とのギャップを解決する仕組みを強みとしている。
課題抽出、目標設定、戦略立案、施策の選定、ノウハウの引き継ぎという5工程は5S -BOXと呼ばれ、ウェブマーケティングとしては異彩を放つアプローチであるが、現在取引する会社は300社を超えた。
「我々の商品はMUSTじゃない、WANTなんです」
フロムスクラッチの強みはMIERUKAマーケティングであるが、企業の課題を診断し、戦略を策定し、そのノウハウも引き継ぐというきめ細かいサービスには当然コストがかかる。そのため、同社のターゲットはウェブマーケティングに対して大きな危機感と強い意志を持った会社に限られる。
「人事であれば何10年というノウハウが社内にあるため引き継ぎも容易ですが、ウェブマーケティングは新しい分野であるため、担当者が辞めてしまうとそれが困難になってしまう。この未来の担当者に向けてそのノウハウを公式化するのも我々がやります」
当然、自前主義でフロムスクラッチ5S -BOXの過程を行うという企業もあるが、「『これを変えなければまずい』といった課題や願望を持った会社は、予算に関わらず取引できるでしょう」と安部は強気だ。
安部の経営者への道は「影響力のある人間」になろうと志したところから始まった。生徒会長など人前に立つことが好きで、「リーダー」や「長」がつくことは全て経験した。その一方で、経営者である父を持ち「幼い頃から松下幸之助などの伝記をいやいや読まされていました」と語る安部だが、大学進学を機に入った不登校や引きこもりの学生を支援するNPOで、安部は日本の教育の今を目の当たりにする。
「学校も家庭も、目の前の学生を誰も教育していないと感じました。資源も何もない日本が世界第二の経済大国になったのは日本の教育にあるとどの経営者も言っていた。教育がなくなれば日本という国が衰退してしまう。それは嫌だと思いました」
一時は教師や政治家になろうかと考えたが、人や会社の影響力が人を集め、教育や政治を変える原動力になるのだと理解し、安部は起業を志した。
大学2年生のときには「経営者は営業部門の出身者が多い」と、トップの営業成績を獲得したら、辞めて次の会社に行くということを繰り返す営業の道場破りに挑戦。卒業までの3年間、15社でトップをとり続けた。「大学時代は仕事ばかりしていたが、腕だけで勝負できるのが楽しかった」と安部は自身の大学時代を振り返る。
その時代に得た「目の前にいる人が困っていて何かを求めていればそれを提供する。営業は売る行為ではなくコミュニケーションである」という信念は今でも息づいている。安部は社員に「重要なのは、誤魔化さず、自分と取引先双方のメリットを明確にすることだ」と、自然体の営業を指導するのだという。
そんな安部は日本の企業を、技術があるにもかかわらずマーケティング力が弱いがために海外の企業に追い抜かれていると分析する。フロムスクラッチではそうした会社をM&Aし、同社の手によって市場が縮小しつつある国内のみならず、世界に広めていこうと考えている。
「今までは技術力で勝負していましたが、技術×マーケティング大国にならない限りは日本のグローバル化は進まない。日本には突出した技術を持つけれども、マーケティングができないことで商品が売れず、潰れてしまうような会社はたくさんあります。そうした会社を中国、韓国が買収しているというのも由々しき問題です」
フロムスクラッチが視野に入れているのは自社の展開のみではない。MIERUKAマーケティングを通じたワンストップの経営によって外貨を稼ぎ、日本の世界的地位を上げることに貢献するというのがフロムスクラッチのモットーだ。
その上で安部は新規事業に意欲を示し、そのための優秀な社員の獲得には目を光らせる。「よくグーグルは技術がある会社と言われることがありますが、正確には技術を生み出す優秀な社員を多く抱えている会社です。優秀な社員がいるからこそ素晴らしい事業や技術が生まれる」と断言する安部。組織づくりでは採用に最も力を注いでいる。
採用においては、創造と変化を当たり前とする姿勢を持つ人間である他、精神的・肉体的強さ、賢さ、気持ち良さの3つに焦点が当たる。3つめの気持ち良さとは、一緒に気持ち良く酒が飲めるような共通体験があるかどうかだ。「競合優位性を確立するのは先駆者の持つノウハウや情報の優位性と、人材の壁の2つです。1つの事業で戦うのではなく、連合体として戦う」と意気込む。
同社では昨年度の新卒採用ではパンフレットをオーケストラというテーマで作っている。手段は違えども共通の目的を持つ組織という意味合いを込めたものだ。「会社の8割の人間は同じクラスなら友達にならないような人間ですが、それが面白い」と安部は笑う。
変化の中で変化をしない会社は淘汰される。創造しつづける力を持つ志高き人材を武器にフロムスクラッチは日本の会社として国の未来を創造し続ける。安部の今後の活躍から目が離せない。
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