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トピックス -企業家倶楽部

2000年12月27日

【アスクル特集】お客様と一緒に進化し5000億円企業をめざす/アスクル社長 岩田彰一郎

企業家倶楽部2001年1/2月号 特集第3部 編集長インタビュー


 ライオンの開発者からプラスに転身。アスクル事業を担当したことから公開企業の社長になった岩田彰一郎。数奇な運命を実現させたのはビジネスモデルに対する確信と「お客様のために進化する」理念を一途に貫く頑固さだ。理念に対して社員が中世をつくし、常に新しい価値を創造し続ける。それが岩田が理想とする会社像である。(聞き手は本誌編集長・徳永卓三)




問 店頭公開おめでとうございます。このお話は後でゆっくり伺いますが、岩田社長は創業時、アスクルはこんなにも伸びると予想していましたか。

岩田 ありがとうごさいます。私は創業時から新しい産業をつくるという志を持ちつづけてきました。アスクルを創業した時、このビジネスは全国の事業所の方々に使っていただける、役に立つサービスになるはずだと思いました。とすれば大きな産業になりうるなと。たとえばセブンーイレブンをつくった鈴禾敏文会長も最初はまったくわからなかったけれど、その業態がうけて百店できた時には、これは全国に広げていけると確信したと思います。それと同じような確信はありました。

問 いつの時点で確信しましたか。

岩田 最初はまったくわからないまま始めていましたがお客様の要望に応えてプラス以外の他社製品を扱ったり、値下げをしましたところ、売り上げが二億円から五十六億円という風に上がって行きました。それまでも、これは成功するビジネスモデルだとずっと思っていましたが、こういった売り上げの数字やお客様のご支援を肌で感じたときに、このビジネスはいけると確信しました。

問 売り上げが二十倍以上も増えたのは販売価格を下げたからでしょうか。

岩田 値段を下げたのは、単に値段を下げれば売れると思ったからではないんですよ。お客様から、値段が高い、安くすれば買うというご意見をたくさんいただいたからなんです。お客様からの声をまとめてみると、値段を下げたら買いますよという意見が本当にたくさん並んでいました。そこで、値段を下げてお客様からの声にお応えしようということになったんです。損得ではなく、お客様のご要望に応えたいという気持だけでした。そういうお客様の要望をいかに集めるかが勝負なんですね。

問 親会社のプラス以外の商品を扱ったり、販売価格を下げたのもお客様の声を反映させた結果だったのですね。文具を中心とした商品に、翌日配達というサービスを付加した新しいビジネスモデルをつくり、アスクルは大躍進したわけですが、そのビジネスモデルを考えたきっかけはなんですか。



アスクルのビジネスモデルのきっかけ

岩田 もう十年ぐらい前になりますが、プラス社内で、今泉社長を座長に、将来日本の文具事業はどうなっていくのかを考えるブルースカイ委員会を開いたんです。その頃、プラスは本当にいい商品をつくっていたが、さまざまな条件下で、流通で消えてしまっていた。お客様に選ばれないのではなく、お客様の目にも触れず売れないのでは、死んでも死にきれない。ならばお客様に届くようなシステムをつくろうと思ったんです。それが今のアスクルなんです。

問 お客様の元へなんとしても自分達のいい商品を届けたいという思いだったんですね。アスクルは従来の文具卸売店や小売店を巻き込んだ形になっていますが、これも当初からビジネスモデルに入っていたんですか。

岩田 ええ、もう一つのキーワードが社会最適でした。それまでプラスにとって最大のお客さんであり、長い間協力していただいた卸店、文具店の方たちと力を合わせて、何かいい仕組みをつくりたいと考えました。個別にやった方がいいと思える仕事、つまり代金回収や顧客開拓はエージェントに任せ、集中して行った方が効率の良い仕事はアスクルでやることにしました。その構造改革で非常に強いビジネスモデルができたんです。

問 九三年に創業してから、倍々ゲームで伸び、この五月期には四百七十一億円という驚異的な数字になっていますが、この成長の秘密はなんですか。岩田本当に素直にお客様のご要望に応えていった結果、それだけなんです。創業当時のアスクルはプラスの商品だけを扱っていて、それをお客様に勧めていましたが、それが本当にお客様の望んでいることなのかというとそうではなかった。こちらが売りたい商品とお客様が欲しい商品はいつも合致するわけではないんですね。「学習する組織」と呼んでいますが、どんどんお客様から学んでそれを事業に取り入れていく、ということが大切なんだと思います。



お客様の声に応えたい

問 お客様からの要望があれば、プラスの商品だけではなく、場合によってはライバルメーカーの商品も扱うということですか。親会社のプラスからは抵抗はありませんでしたか。

岩田 それを普通にやってしまう組織なんです。もちろんプラス社内から最初は大きな抵抗がありました。しかし、それを抑えてくれたのがプラス社長の今泉でした。

問 販売価格の引き下げも成功の要因の1つだと思いますが、これは直販によるコストの削減などで値下げが可能になったのですか。

岩田 アメリカで市場の中心となっているのは、カテゴリーキラーと呼ばれるスーパーストアーにオフィスの商品を全て集めまして、三〇―四〇%引きで売るというやり方なんです。これがここ十年でアメリカを席巻してヨーロッパに渡り、近い将来必ず日本にも入ってきます。アスクルでは当初からグローバルな競争を想定していましたので、そういった競争ができる構造になっています。それが先ほどの新しいビジネスモデル、プロセスの見直しをしたものです。これが当社の原点ですから、構造はすでに出来ていたわけです。実際値段を下げるというのは私達の頭の中で考えたことではないんです。先ほども言いましたが、お客様から、アスクルは便利だけれども高いよ、安ければ買うのに、と多くの声をいただいてそれを実現しただけなんです。他のことは何も考えませんでした。お客様の求めているものはいったい何なのか、ということだったのです。

問 お客様の声を汲み取って、それを事業に反映させていくというのは易しいようで実は難しいと思いますが、どういう形でやっているのですか。岩田アスクルを創業したのは四人で、最初のお客様は自分達の友人から開拓していきました。お客様第一号は自分達の友人ですから、いろいろアドバイスをしてくれるんです。また、こちらもお客様は友達ですから、言うことは素直に聞ける。今でもお客様との関係は本当に大切な友人と変わりありません。そう思うとお客様のご要望にも応えたくなるものです。そういう原点があるから、素直にお客様の声を聞いてこられたというのがありますね。



社員140人で120万の顧客に対応

問 二〇〇〇年十一月二十一日に株式公開されまして、これによる資金調達というのはどのくらいだったのですか?

岩田 大体九十億円ぐらいです。アスクルの株式公開の目的は、今後全国にたくさん増えていくお客様により良いサービスを提供し、また競争刀をさらに向上させる投資を行うためです。

問 投資をされるものとしては、具体的にどういったものが考えられていますか。

岩田まず第一は物流センターの強化ですね。われわれのビジネスは一品一品をきちんと届けて初めてビジネスとなります。物流のシステムと環境がしっかりと、そして効率的にできていないと利益も出ませんし、お客様にも満足いただけません。なので、物流センターのインフラ整備として二〇〇一年三月に横浜センターを立ち上げます。第二はオペレーションの効率化。ローコストのプラットホームは当社の前提条件ですので、ここに投資します。三つ目はITです。全体の効率化と共に、新しいお客様へのサービスが出来る形として投資をしていきます。

問 現在の社員数は百四十名ということですが、百二十万社の顧客にスムーズに物流をこなしていく秘訣を教えてください。

岩田 われわれのビジネスにはテクノロジーやロジックが非常に大切なのです。もともとたくさんのお客様からの日々のご注文ですから、デマンドの予測を立て、しかもそれをローコストでやるというのはロジックとかテクノロジーの世界なんです。そういったものをコントロールできる人達がアスクルの物流システム全体を考えている。メーカーのような日々の改善、コスト削減を地道に積み上げており、物流センターというより物流工場に近いと思います。アセンブリー工場のようなものがアスクルのバックにあるということです。



物流センターというよりも工場と認識する

問 午前中に注文したものがその日の午後には届けられるというのは画期的ですね。

岩田 東京、大阪、仙台、福岡については午前十一時までにご注文いただければその日の夕方五時頃にはお届けできます。それはいかにきちんと早くパッキングできるかですね。問そのために特別な仕掛けがあるのですか。岩田二〇〇〇年度の日本ロジスティクス大賞をいただいたんですが、その受賞理由にもなっているのが、その物流センターの特別な工夫をした構造なんです。つまりその構造自体が合理的な仕組みを持った物流センターなのです。

問 注文された文具などは、まず重さとか体積を測るそうですね。

岩田 オーダーされたものの体積などをコンピューターが自動的に振り分けます。それに基づいて注文品は最短なコースを流れ、想定している重さに少しでも誤差があれば間違えである、とはじき出します。つまりパッキングを論理的に組み立てているわけです。

問 だから注文して二十分で発送できるというわけなんですね。そこがアスクルの強さの秘密だと。

岩田 流通業界もメーカーと同じ発想で考えていかないといけませんね。工程をいかに短くし精度を上げてコストを下げるかという、工場と同じなんです。だから物流センターというよりも工場という認識をお持ちになっていただけたら、と思っております。



アスクルでのインターネット取引の可能性

問 アスクルは色々な点で二十一世紀型の経営モデルだと思うんですが、インターネットについてもかなり先端を走ってらっしゃいます。今はネット取引が全体の二〇%を超えているそうですね。これは将来どのようになっていくとお考えですか。

岩田 今までは、取引先事業所のインターネット普及率が当社のネット取引の率を決定していました。これからますます各事業所がインターネットのネットワークに参加していきますからそれと同じ率でインターネット取引も促進されていくのではないかと思っています。

間 今後は五割以上になる可能性もありますよね。

岩田 何%になるかは、今の段階では想定でしかないのでお話できないんですが、今はインターネットの方が便利なのです。当社のサイトではインターネット上でお客様が予算管理も出来ます。受注の前に画面上で予算インターネットはすぐれたツールだと思っています。



オフィス用品だけでなくお客様の望むものを

問 これからのアスクルは文具やオフィス用品だけでなく、いろんな使い方が出来そうですね。

岩田 アスクルはもともと事業所の方々にとって必要なものをお届けするプラットホームネットワークだと思っていますから、お客様に望まれるものは実現していくという基本的スタンスは全く変わりません。

問 文具の流通会社というイメージから将来変わっていくことはありえるのでしょうか。

岩田 今でも文具、事務用品の売上構成比は三四%と半分以下です。今後もその他のものがどんどん増えていくと思います。

問 ミネラルウォーターでは日本一の販売会社と聞きましたが。

岩田 大変な量を買って頂いています。あんな重たいものは届けてもらいたい、さらに他のものとあわせて届く。だからわが社が大変有利なんでしょうね。

問 これからいろんなビジネスが展開できるでしょうね。ソフトバンク・イーコマースと共同でスマートファームという会社を作りましたがこれはどのような会社なのですか。

岩田これはASP(アプリケーション・サービス.プロバイダー)の会社であり、さまざまなネットワークのお手伝いをしていくものです。全てを当社で解決することは難しいので、eビジネスで先行しているソフトバンク・イーコマースさんとインディゴさんと三社で作りました。

間 B2Bマートというのはどういうものなのですか。

岩田 インターネットの特徴を活かしたパソコンなどの、時価販売、オークション、逆オークションなど、お客様が買いやすい場を提供するビジネスです。

問 インターネットが普及してくると一般の人のアクセスも増えてくると思うのですが、一般消費者についてはどうお考えになっていますか。

岩田 結局は事業所の方々も一般消費者の方々の集まりなのです。この取引をBtoCinBといいます。われわれはまず事業所の支援とそこで働く方々に何らかのお役に立って、当社が価値を創造できるのであれば、お客様の望むことをどんどん実現していきたいと思っております。



お客様のために進化するアクスル

問 今のところアスクルは一人勝ちだと思いますが、敵を迎え撃つ体制をはどのようになっていますか。

岩田 いいライバルがいることはすばらしいことだと思います。そこで切磋琢磨することでより良いものを提供できるわけですから。アスクルはお客様にとって本当に一番価値のあるサービスを提供しつづけます。それができなければ社会的にも存在する意味がありません。われわれはお客様にとってたえず一番いいサービスを提供する会社でいたいという意志をもっています。企業理念も一お客様のために進化するアスクル」としており、事業活動の原点となっています。

問 その進化するアスクルが二〇〇一年になって取り組むべきことはなんですか。

岩田 まずはお客様のために創造し続ける組織風土が大切だと思います。そしてわが社の原点を磨きつづける、その上に初めてお客様に認めてもらう価値が乗ってくると思うのです。

問 お客様め要望に応えられる組織風土をいつまでも維持していきたいということですね。

岩田 クロネコヤマトさんのようにナンバーワンでありながら、いつも新しい価値を創りつづける。企業にとってはそういう風土が一番大事だと思います。



ビジネスの可能性に思いを馳せる


問 岩田さんはどんな社長でありたいと思っていますか

岩田 いい会社とは経営理念に対して社員が忠誠を果たす会社であり、正しい決定がなされる会社だと思います。そういうビジョンで運営されている会社は長続きすると思うんですね。そういうビジョンを長期的にどう守っていくか。本当にお客様のために誰が一番考えているか、それが全てだと思うんですよね。もちろん株主のために利益を出すというのはあたりまえのことです。そしてお客様の支持を受けて成長しつづける。そういうことをみんなが出来る。かつ働く人たちもそこにいて自己実現が出来る。そういう時代になってくると思います。そのためにはビジネスモデルは片方の輪であり、もうひとつの輪は自由な意志をもった優秀な頭脳、経験を持ったビジネスマン達が集まってそれぞれが社会の価値に替えていく会社のプラットホームだと思うんです。この両輪とお客様指向がきちんと守られていればアスクルは正しい方向に進んでいくと思っています。

間 以前、岩田社長は二〇〇五年には年商五千億円の会社になるポテンシャルを持っているといわれていたことを記憶しているんですけれども、五年後にはアスクルはどのような会社になっているでしょうか。

岩田 みんな同じ物差しを持とう、このビジネスの可能性は非常に大きいよ、その中でそれを実現して、いい会社をつくっていこうという意味で数字を言うことはありますが、売り上げは結果だと思うんですよね。お客様のご要望を満たしながら、どういう物差し、どういうグラウンドでプレーするか。その志が一致していれば結果につながると思うんですよね。だからビジネスの可能性にみんなが思いを馳せることが物差しとなるべきですよね。

問 お話を聞いて、アスクルはただオフィス用品を扱っている会社ではなさそうだということがわかりました。

岩田 アスクルはお客様に進化させていただき、お客様と一緒により便利なものを実現していく会社です。先程も言いましたがお客様は仲間です。そしてみんなで解決していく点はまだまだあると思っています。

問 今後、アスクルがどう進化していくのか楽しみにしています。頑張ってください。



プロフィール

岩田彰一郎(いわた・しょういちろう)

1950年生まれ。力年、慶雁義塾大学商学部卒業後、ライオン油脂(現ライオン)入社。商品開発を担当し、ヘアメイク剤の「フリー・アンド・フリー」、雨の濡れを防ぐ「レインガード」などをヒットさせる。㏄年、プラスの副社長に請われプラスに入社。商品開発本部長、文具事業本部副本部長を経て、92年アスクル事業推進室室長となる。97年3月、アスクル設立と同時に社長に就任、現在に至る。プラスの今泉嘉久社長に見込まれ、プラス本社内の新規事業として託されたアスクル事業を見事に開花させ、ネット取引を急成長させた手腕で注目される。

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