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トピックス -企業家倶楽部

1999年04月27日

【リゾートトラスト特集】リゾート市場が本当に大きくなるのはこれから/リゾートトラスト会長 伊藤與朗

企業家倶楽部1999年5月号 特集第3部 編集長インタビュー


一代でリゾートホテル業界の圧倒的ナンバーワン企業をつくりあげた伊藤與朗。その功績は日本人に良質でハイセンスなリゾートライフを提案・提供したところにある。しかし、まだ満足はしていない。世界のリゾートを知り尽くした完壁主義者は、リゾートトラストらしさをあくまで追求し、その価値を倍増させ、余暇産業のリーディングカンパニーを目指している。

(聞き手は本誌編集長・徳永卓三)

 



ビューティフルカンパニーを目指す

問 この四月から伊藤與朗社長が会長に、伊藤勝康副社長が社長になりました。まず社長交代の狙いを聞かせてください。

伊藤 もともと私がCEO(最高経営責任者)で、副社長がCOO(最高執行責任者)という形になっていたのですが、私が社長をやっていると、どうしてもCEOとCOOの仕事が全部きてしまう。だから、役割分担をもっと明確にしようと思ったのです。これからは私が会長として、グループ全体の発展を考えていきたいと思います。

問 いまグループ会社は何社あるのですか。

伊藤 ゴルフ関係、リネン関係の会社。ローン、マンション開発など十一社ほどあります。

問 グループ経営が必要になる時期ですね。

伊藤 将来は、グループ戦略の一環としてM&Aを含めて、新しい分野にも積極的に取り組んでいきます。

問 どんなM&Aの話が来ているんですか。

伊藤 業種的にはリゾート、レジャー関連の案件が多いです。いまは最大のビジネスチャンスの時期ですから、決めるときは思い切ってやるつもりです。

問 二十一世紀の企業経営で一番大事なのはなんでしょうか。

伊藤 はっきりした理念です。それがない企業は、これからは成長できません。そしてきちっとした長期計画がないとダメです。

問 企業理念がしっかりしているところは、軸がぶれないから強いですね。御社は『ビューティフルカンパニ一を目指して』を企業理念としてますが、もう少し詳しく説明してください。

伊藤 われわれは儲かればいいという考え方をしてません。リゾートトラストは余暇文化の創造と提供を通じて、社会に貢献する会社です。会員に洗練の香り、充実した機能、ゆきとどいたサービスを提供し、余暇を快適に過ごしてもらうところに存在意義があるのです。そういうサービスをするには、会社としても理想の姿を追わなければならないのです。



リゾート市場が本当に大きくなるのはこれから

問 リゾート業界の現状についてですが、御社以外の企業はどんな状況ですか。

伊藤 横ばいという感じですね。バブル崩壊後、いろいろなリゾート開発会社が倒産しましたが、ほとんどはリゾートのノウハウのない人たちが、おカネにものをいわせて投資したケースです。ハードさえ立派なものをつくればいいという発想で開発されたリゾートはほとんどダメになりました。ただ、地道にやっている会社は、いまでも健闘してますよ。

問 バブルの始まったころにリゾート法というのができて、各地で大型開発されましたが、あれは何だったのでしょうか。

伊藤 どこの県も、同じようなものをつくる計画を立てました。われわれからすると、気が狂ったのではないかという感じです。日本にはここならリゾートとしていいが、こんなところにリゾートをつくってどうするという場所があります。アメリカでもフロリダはリゾートに適しているからリゾートがあるし、モントレー半島はモントレー半島としての魅力があるからリゾートがあります。魅力のあるポイント、ポイントにリゾートがあって栄えているのです。それを隣の県が出したから、うちもなんて感覚でつくっても事業は成り立ちません。

問 役人的な発想もあったし、理念がなかったのが形骸化した大きな理由ですね。

伊藤 魅力のないところにそんなプランをつくっても絶対に成功しませんよ。

問 将来的には、本当の意味でのリゾートを楽しむ人が増えていくと考えてますか。

伊藤 もちろん。レジャー白書によると、この十年間で、余暇を楽しみたい人と仕事を一生懸命やるという人が逆転しました。十年前は仕事派の方が多かった。価値観が変化したということです。しかも、これは平均の統計で、年輩の人は仕事派が多く、若い人は圧倒的に余暇派が多いから、余暇を重視する人々が年々増えていくのは確実です。それと、日本人の余暇での外泊日数は年間平均三.三泊なのに対して、欧米は十五.六泊です。日本社会が欧米化していくと、当然増えます。欧米並みにはならなくても、三.三泊が六泊になれば市場は倍になる。リゾート市場はこれからもどんどん伸びていきます。



二十一世紀は新富裕層がターゲットになる

問 日本人が本当の意味で、余暇を楽しむための課題はなんでしょうか。

伊藤 日本のリゾート環境は確かにハンデがあります。一つ目はオンシーズンが非常に短いこと。ハワイは一年中オンシーズンですが、日本の海のリゾートはオンシーズンが四十日間しかない。二つ目は土地代が非常に高く、建築費も海外の倍もすること。海外では百億円でつくれるリゾートが、日本では二百億円かかります。そのため、日本のリゾートは採算に合わせるのが難しいから、魅力に乏しいリゾートしかできない。だから、みんな海外に行くのです。そうはいっても身近なところにも良質なリゾートはほしい。そうなると資金回収を早くできる会員制システムが選択されます。リゾートホテルはこれからも会員制が主流になるでしょう。

問 会員制は日本人に合っているんですか。

伊藤 好きですね。これから日本式の年功序列経営が成り立たなくなり能力主義になると、若くても金持ちな新富裕層が出てくると見ています。通常はハードに仕事をし、休むときは思いっきり遊ぶ合理的な考え方をするタイプです。そういう人たちは一カ所でしか遊べない別荘やリゾートマンションを買うより、各施設が楽しめる会員制リゾートの方が向いています。

問 日本人は欧米人に比べて遊び下手と言われますが、それはなくなってくるとお考えですか。

伊藤 確かに遊び下手ですね。でも、うちの会員になれば、交流会のコーディネート、遊びの提案をどんどんします。別荘を買って泊まるだけのリゾートとは違いますから、いろんなイベントを提案することで、会員にに新しい世界を紹介できます。

問 この三月十日にオープンしたエクシブ蓼科を拝見させていただきましたが、すばらしい施設でしたね。大きな敷地の中に八つの棟があって、その間をカートで移動するという施設は初めて見ました。

伊藤 カートでの移動はうっとうしさもある反面、リゾートらしさがあります。オーストラリアのあるリゾートに行ったとき、広い台地にいくつかの棟があって、その間をカートで移動したんです。夜に着いて、カートに乗ったのですが、熱帯雨林の中を移動しているような感じで、凄いところに来たなと思った。ところが朝、起きてみると、ロビーはすぐ近くにあったんです。すぐに行けるところを、カートでわざわざ遠回りして送っていた。それも演出だなといました。ただ、そんな演出も、お客様に不便だと思われては失敗です。

問 高原の森の中に低層の建物があって、非常にいい雰囲気が出ていました。

伊藤 リゾートとは本当は低層階なですよ。自然のたくさんある中に、層の建物をつくるのが本来の姿です。高層ホテルをどーんと建てるのでは、街のホテルと変わらず、リゾートらしさはありません。ハワイのように地価が高いところは超高層でもいいですが、本格的なリゾートは自然の中にあるものですよ。

問 エクシブをつくるとき、一番大事にしているのはどんな点ですか。

伊藤 そのロケーションに合ったものをつくることです。

問 いい土地があったよ、というとうからプロジエクトが始まるわけですね。

伊藤 ああしたい、こうしたいといろいろなイメージがわきますが、一番大事なのはコンセプトです。うちはすべて一流設計事務所に発注してますが、任せてしまうと、意外といいものができません。設計事務所と入念な打ち合わせをして、コンセプトを明確にしないといけません。エクシブ蓼科の場合は、ブリティッシュカントリーで、エクシブ琵琶湖の場合はヨーロッパの大庭園のイメージを出そうといったコンセプト。それを設計事務所が理解した場合はいいものができます。コンセプトがはっきりしないまま任せてしまうと、なんだかよくわからない建物ができて、結果的にそれはよくないです。



バランスの悪いベンチャーは成功しない

問 創業のころについてお聞かせ下さい。早くに亡くなられたお父さんが不動産関連事業をなさっていたそうですが、伊藤さんがリゾート事業を始めたきっかけはなんだったのですか。

伊藤 私は小型船舶一級免許をもってますし、水上スキーなどもよくやりました。海外のリゾートもよく見ていました。当時、日本でリゾートというと温泉旅館とか温泉ホテル。それもほとんど団体客でした。妻や恋人を連れていくような、海外のリゾートの雰囲気がないのです。だから、そういうものをつくりたいと思いました。ホテルを一つの基地として、いろんな遊びができればいいなと思ったのが最初の発想です。しかし、リゾートという言葉もなかった時代ですから、それでは採算に合わない。何とかいい方法はないかと検討した結果、会員制でやるしかないとなったのです。基本的には、リゾートが好きだったんです。

問 七三年に創業して、七四年には会員制ホテルの第一号「サンメンバーズひるがの」を開業したのですね。

伊藤 ひるがのは岐阜県にある中部地方の軽井沢といわれているところです。

問 会員は何人ぐらい集まったのですか。

伊藤 千人ぐらいでしょうか。それが大変だったんです。当時、小さなバブル時代で、スタートと同時にすごい売れ行きだったのです。これはいけると思って、次の計画をすぐにスタートしたらオイルショックがやってきて、売れ行きがぴたりと止まりました。計画はどんどん進んでいくのに、おカネがなくて工事がストップし、ゼネコンに何億円かくれないと工事を再開しないといわれました。そこで感じたのは、当社の企画力はなかなか斬新なものがあったが、経営を考えたときに、企画力だけではダメだということ。営業力、財務力などとのバランスがとれないといけないと思いました。そこで他社から役員をスカウトしました。やはり企業というのはバランスがよくないといけない。ベンチャービジネスで派手に創業して、すぐに倒れるケースがありますが、それはバランスが悪いからです。



創業十年目のCl導入で壁を突き破る

問 それ以来、会員制リゾートを手がけ、八七年にエクシブ(XIV)シリーズの第一号「エクシブ鳥羽」が開業しました。その間、どんな変化がありましたか。

伊藤 しばらくは紀州鉄道、ダイヤモンドリゾート、エメラルドグリーンクラブといった他の大手会員制リゾート企業と横並びで同じようなことをやってましたが、創業十年目ぐらいのとき、本格的なCIを導入しました。社名も「宝塚エンタープライズ」からリゾートトラストに変更しましたが、名称・ビジュアル変更に留まらない、細部に渡るCIを三年間で、三億円の経費をかけて実施しました。まずやったことは、それまでの商品を否定して、新たにエクシブというものをつくろうとした。会員制ホテルは便利で安いけども、泊まりたいときに泊まりにくいデメリットがある。そこで一部屋を十四人で共有し、年間二十六泊を保証するという日本的タイムシェアリングシステムを導入。安いけど施設は一般ホテルと変わらないこれまでの会員制ホテルではなく、ステータスのある世界の一流リゾートに負けない別世界をつくる方針にしました。

問 別世界をつくるには相当なおカネがかかったと思いますが。

伊藤 そうですね。それまでに開発していたものより五倍程度かかっています。他社が一口百万円の会員権を売っていた当時、三百五十万円ぐらいのものを売り出したのです。

問 売れるかどうか心配で、眠れなかったのではないですか。

伊藤 売れるという自信はありましたが、一抹の不安があったのは事実です。なぜならタイムシェアとは正直なシステムで、二十六泊は完全に保証されるけど逆に言うと、それ以外は泊まれない。他社のホテルは空いていればいつでも泊まれるんですよ。営業的には「いつでも泊まれます」と言える方が有利ですから。でも、われわれは正直なシステムで勝負をかけたのです。

問 結果的には大成功だったのですね。

伊藤 やはりお客様にとって、安心感があったのですね。



歳をとっても老けないことが大事

問 伊藤さんの座右の銘は。

伊藤 一日一生が好きです。昔は和敬清寂(わけいせいじゃく=人を敬いおのれをつつしむこと、心の清いこと、さび。利休による茶の湯の精神)という言葉が好きでした。

問 一日一生は私も好きな言葉です。歳をとってくると、一日で一生分のことをしたいという欲が出てきますね。

伊藤 だから無駄なことはしていられないんです。何歳まで生きられるかではなく、元気でいられるのはいつまでか、と考えなければいけない。そう考えると私も六十歳になりますから、先はあまり長くないわけです。それを思いながら行動しています。

問 会長はいつまでと考えてますか。

伊藤 わかりません。気力は体力からくると思ってます。完壁主義のところがあるから、それには体力がいるんですよ。

問 何か体力維持のための運動をしてますか。

伊藤 春秋はゴルフ、冬はスキー、夏はマリンスポーツですね。

問 さすがに趣味が広いですね。

伊藤 人生にはやるときには徹底的にやるというメリハリが大事です。それから歳をとっても、老けてはいけない。絶えず、気力をもって生き、若い人の意見をよく聞く。それを意識的にやらないといけません。事業は老けたら引退ですよ。時流に合わない間違った決断をしたら、会社は大変なことになりますから。

問 私もいろいろな経営者を見ていますが、六十代まではいいんですが、七十を超えると、その判断ができないまま、引退の時期を失するケースが結構多いです。周りの人間がおだてますから。最長で、七十歳は一つの節目だと思います。



世界レベルのリゾートホテル

問 伊藤さんは非常に勉強熱心で、世界中のリゾートをことごとく見ているそうですが、世界のリゾートホテルの中で、一番好きなのはどこですか。

伊藤 一つを挙げるのは難しいですね。十年以上前は、海外に行くと、こんなリゾートにしたいなと参考になるホテルは数え切れないほどありましたが、最近はそんなホテルはそれほど多くはないのです。いま当社がつくっているホテルが非常にグレードアップして、いまや世界の一流ホテルと一肩を並べるくらいになったからだと思います。当社のレベルより数段高いものを見たいのですが、そういうホテルはないとは言いませんが、もうあまりないのです。

問 もうトップレベルにきているんですね。

伊藤 次のホテルをつくるときは、より創造的な試みが必要になりますから、これからもますます勉強しないといけないと思ってます。



いとう・よしろう

1940年3月29日生まれ。1959年、名古屋市立櫻台高等学校卒業。同年4月、父親の経営する宝塚不動産(現宝塚コーポレーション)に入社。61年、同社取締役就任。62年、父親が亡くなったため、代表取締役就任。73年、宝塚エンタープライズ(現リゾートトラスト)を設立、代表取締役に就任。99年4月、代表取締役会長に就任。若いころよりスポーツ万能で、25歳の時にはボウリングでアマチュアの全日本チャンピオンになった。スキー、ゴルフ、マリンスポーツなどにも親しみ、遊びの中からリゾート事業の新境地を開拓していった。何ごとにも挑戦するのが信条。ゴルフのハンデは6。囲碁の有段者でもある。名古屋市在住。



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