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トピックス -企業家倶楽部

2014年12月19日

タイ発 地球を救うグリーン成長

企業家倶楽部2014年12月号 ビジネスウェーブ




地球環境からの問題提起

 2050年、世界人口は90億を越える。すでに40年以上にわたって、許容量を超えた自然資源を消費し続けている人類がさらに20億人増えるという未来。そこには、持続可能なシステムと社会があるのだろうか。今日でも、10億人が飢え、7億6800万人が安全で清浄な水を利用できず、14億人が安定した電力を使えないという現実。さらなる人口とエネルギー消費、そして自然需要の増加が見込まれるなか、未来を楽観することはできない。

 地球の状態は深刻だ。食糧、水、エネルギーという人が生きていくうえで必要な要素すべてが、遠くない未来に枯渇することがわかっているのだから。解答期限は迫っている。地球と人類が救われる、答えとは?



注目されるアジアの動き

 急速な経済成長にともない、アジアのエネルギー動向が注目されている。1965年には世界エネルギー消費の1割ほどだったシェアが、2009年には約4割まで上昇。アジアの総消費量は9倍にまでなった。そして、今後も経済成長に伴うさらなる消費が予見されている。国際エネルギー機関(IEA)は、アジアの途上国のエネルギー消費は、2035年までに1.6%増加すると予測している。一方で、日本や米国、EUでは需要の減少が見込まれている。つまり、これから成長していく途上国が、世界のエネルギー問題の中心になっていくわけだ。

 こうした急速なエネルギー需要増に、アジアの国々は追いつくことができない。アジア太平洋地域は、資源に恵まれているわけでもなく、特に人口比でみると明らかだ。このエリアには、世界人口の3分の2が居住するのに、資源埋蔵量では、石油で世界の約3割、天然ガスで1割弱、石炭で3割程にしかならない。エネルギーの輸入依存度が高くならざるをえない状況にあるのだ。

 中国の動きは早かった。積極的な戦略にもとづき、アフリカや南米、中央アジアの国々と資源外交を行い、権益を確保しつつ、低効率の火力発電所を数百基閉鎖。再生可能エネルギーにも意欲的に取り組み、風力発電では2010年に米国を抜いて世界一位。太陽光発電については、2006年に日本を抜いて、世界一の太陽電池生産国となった。国内のエネルギー資源を確保しながら、他国の需要を見越した戦略には、学ぶべきものがある。



タイ発 地球を救うグリーン成長


 アジアの国々が抱える、エネルギー安全保障への不安とともに課題にあげられるのが、環境問題への対処。温室効果ガスの排出量は増える一方で、2005年には世界のCO2排出量48%をアジアが占めるようになった。もはや世界は低炭素社会に移行するよりなく、それは、再生可能エネルギーが世界のエネルギー市場の主流になっていることからもわかる。環境保護と経済成長を両立させるグリーン成長を意識する潮流も激しくなってきた。

 2012年6月の地球サミット開催後、7月にタイのバンコクで開かれたアジア開発フォーラムでも、「いかに、グリーン成長を遂げていくか」が討議された。タイのキティラット副首相(当時)は、「持続可能な開発のためには、グリーン成長が重要。インクルーシブ(すべての人が恩恵を受ける)成長の観点と併せて検討していくべき」と唱えた。



タイの再生エネルギー計画


 アジアの中進国、タイ。国をあげて再生エネルギーに注力していることはあまり知られていない。2006年には固定価格買取制度(FIT)を導入し、バイオ液体燃料も発達している。生産量は2011年時点で世界10位。1970年頃に国王が王室プロジェクトとしてはじめたのがきっかけで、今では政府がバイオ燃料の使用を義務付けているからだ。さらに、2011年に導入をはじめた、集光型太陽熱発電(CSP)も、出力量が世界8位にランクインしている。

 一次エネルギーに占める化石燃料の比率が90%と高すぎるゆえの安全保障問題、低炭素化を急ぐ世界からの巨額投資、そして、潜在的な再生可能エネルギー源やレアアースに恵まれているといった複合的な要因がタイのエネルギー構造をドラスティックに変えようとしている。タイ政府は「Renewable and AlternativeEnergy Development Plan」を打ち出し、2021年までには一次エネルギーに占める再生可能エネルギーを25%にすると発表。従来よりも速いペースと高い目標を掲げた。



世界とつながり未来を創る

 実行あるのみ。タイ国の動きをみていてそう思う。自ら掲げた高い目標に向かって、とにかく挑戦を続けている。自国でまかないきれないものは、他国から取り入れる。コンサルとしては、再生可能エネルギーで先端をいくドイツ系企業に依頼し、長期的な電力供給の安定化のために、隣国ミャンマーから天然ガスを引き、大メコン圏(GMS)6カ国間では資源融通の覚書を締結した。

 タイ最大規模のメガソーラーには、日系企業が協力。今年8月には北九州市が、タイの工業団地を環境配慮型へ転換させる支援を行うことで合意し、公害対策・リサイクル等のノウハウとともにインフラを輸出する方向だ。

 目的達成のために全方位で国策を立てるタイ。もちろん、自国でできる施策にも熱心だ。エコカー補助金や、官民への太陽光導入助成、そして、2011年から着手したエネルギー消費削減計画ではすでに削減実績が360億バーツ(約1150億円)相当に達している。

 さらに今年は中小企業の電灯をLEDに交換する計画や冷却装置の省エネ化など合計で56件のプロジェクトがあり、これまで以上の消費削減が見込まれている。



タイに根付く足るを知る経済

 タイ国民の心をひとつにするのは、国王の存在。そこが、タイ式民主主義といわれる所以でもある。

 在位中のプミポン国王は、1974年に「足るを知る」ことを経済の軸とし、人間性の発展のためにこそ経済があると説いた。成長を急ぐことなく、思慮深さをもって、一歩一歩前に進み、倫理を重んじることを望む国王の言葉は、国民の思想として根付き、国策にも反映されている。このような国が迎える未来は、グリーン成長の手本になりうるはずだ。

 これからのタイ。どう変化していくのかを見守りたい。           

(田中紀久子)



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