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トピックス -企業家倶楽部

2014年12月25日

ミドリムシでジェット機を飛ばす/ユーグレナ代表取締役社長 出雲 充

企業家倶楽部2014年12月号  今、日本を最も面白くする企業家たち


コメンテーター:徳永卓三(企業家ネットワーク会長)キャスター:宮舘聖子

この記事は、BS12TwellV 火曜7時30 分から放送中のワールド・ビジネス・チャンネル同名番組を紙面化したものです。今、日本を最も面白くする企業家の熱きドラマを綴っております。今回は2014年2月放送分をお届けします。なお、過去放送分も含めた当番組の全てのラインナップは、企業家ネットワークのホームページでご覧頂けます。(http: / /kigyoka.com)

P r o f i l e

出雲 充(いずも・みつる)

東京大学農学部卒。2002年東京三菱銀行入行。2005年8月株式会社ユーグレナを創業、同社代表取締役社長。同年12 月微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。2000年、米スタンフォード大学『アジア太平洋学生起業家会議』日本代表。2004 年、米バブソン大学『プライス・バブソン』修了。内閣官房知的財産戦略本部『知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会』委員等を務めた。また、中小企業基盤整備機構JapanVenture Awards 2012「経済産業大臣賞」受賞、世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader 2012 に選出。2013年、第15 回企業家賞ベンチャー賞を受賞。



栄養豊富なミドリムシ

 当社は、世界で初めてミドリムシを大量培養する技術を開発したベンチャー企業です。社名のユーグレナとはミドリムシの学名であり、企業理念として「ミドリムシで世界を変える」という目標を掲げています。

 ミドリムシは、ムシというネーミングのせいか、アオムシとよく間違えられてしまいます。しかし実際は昆布やワカメなどの海藻の仲間で、虫ではありません。食物連鎖の一番底辺に属しているので、空気中にいるバクテリアやカビ類など多くの生き物から狙われています。ですから、普通に育てているとすぐに微生物に食べられてしまうのです。

 そこで私たちは、外敵を避けてミドリムシだけを育てていくことが出来る培養液を開発しました。そのような大量培養技術を持つ会社は世界でユーグレナだけであり、これが我が社の強みとなっています。微生物に食べられることなく育てるのは本当に至難の技なのです。

 私どものビジネスの大部分を占めているのは、ミドリムシ関連食品事業です。ミドリムシには59種類もの豊富な栄養素が入っており、様々な食品に混ぜることによって健康で付加価値の高い商品になります。当社がブレイクするきっかけとなったミドリムシクッキーをはじめ、お客様のニーズに合わせて開発されたミドリムシ乾パンは、いざというときに不足する栄養素を補える食品として人気を博しています。



バングラデシュで見た現実

 大学1年の夏、私はバングラデシュ旅行で栄養失調の人たちを目の当たりにしました。とにかく栄養のあるものと考えた時に、動植物両方の栄養素を持つミドリムシならば栄養失調を解決できるのではないかと考えついたのです。

 最初はどこかミドリムシを扱う会社があれば、就職してバングラデシュの担当になることを考えていたのですが、よくよく調べてみるとそういった会社もないし、培養する技術さえ確立されていませんでした。「ミドリムシで地球を救える」という論文はあったのですが、生産方法が確立されていなかったのです。まさか自分が起業するとは思いもよりませんでしたが、ミドリムシの会社がなかったので自分で成し遂げるしかないと決心しました。

 在学中、ミドリムシを育てる技術の開発は箸にも棒にもかからないくらい全く上手くいきませんでした。「これではダメだ」と一度断念して銀行に就職し、一生懸命修業させていただいて、さまざまなネットワークを築き、将来のミドリムシ会社設立の際に役立てようと考えました。

 ところが、銀行員であるのかミドリムシ事業をやるのかはっきりせず、中途半端な状態に陥ってしまいました。そうすると困難を乗り越えようというやる気や情熱がどうしても出ないのです。そこで、銀行を辞める決心をしてミドリムシ事業一本に絞ると、気合が入り、後がなくなったことでミドリムシのことを24時間365日考えるようになりました。結果的に良いアイデアが浮かんでくるようになり、2005年12月16日、わが社は世界で初めてミドリムシの培養技術の開発に成功しました。今日もミドリムシの大量培養に成功しているのはわが社のみです。



459回挑戦すれば必ず成功する

 ミドリムシは栄養満点の為、作ることさえできれば売れると思っていました。つまり、マーケティングの発想もプランもない状態で会社をスタートしたのです。宣伝などしなくても飛ぶように売れると思っていました。しかし、いざスタートすると全く売れず、それどころか、ミドリムシは世間一般の人々に正しく認知すらされていませんでした。準備不足で、2005年8月の創業後、丸3年間全く売れず、電話営業しても何度も断られ続けました。

 営業の際によく言われたのは、「他の会社が採用しているならばうちも買います」という言葉でした。最初の一社目になってもらいたいとお願いしても、「それはダメだ」と断られてしまいます。最初の一社がベンチャーにとってはとても難しいのです。


そんな状況下であっても営業を続けたのは、「459回挑戦すれば、失敗の確率は1%になる」という考え方を持っていたからです。最初、いきなりミドリムシを知らない人に売るのは99%無理です。ですが逆に、1%は上手くいく可能性がある。これにより、2回目の営業で成功確率は1%から1-(0・99×0・99)=1・99%に上がり、100回目に68・398%、459回目になると99%上手くいく。そして460回目には必ず成功します。これが繰り返すことのパワーです。



チームで危機を乗り越える

もし私がこのミドリムシの事業を一人で始めていたらとっくに止めていたと思います。毎日営業の電話をして、ミドリムシの説明をして回る日々が続きました。営業の度に「他に採用実績がないのなら帰れ」と言われる。毎日3年間これがずっと続くのですから、「どうせ今日行っても、採用実績のないものはいらないと言われる。それならば家でサボっていても変わらないのではないか」とも思いました。

 ユーグレナは私を含む3人で始めた会社です。1人で事業を始めて459回も営業で断られるなんて無理かもしれませんが、3人だと、「ここまで来たのだからあと1週間頑張ってみようよ」とへこんでいる仲間を励ますことができました。1人ではなく、3人でやるとチームになるのです。ですから、難しい事業を始めるときは、1人ではなく、チームで仕事を始めるのが大切です。

 そんな中、2008年5月に伊藤忠商事から救いの手が差し伸べられました。販売も請けもち、研究費も出してくれたのです。ありがたいことに伊藤忠商事に資金を出して助けていただいたおかげで、何とか生き残ることが出来ました。

 伊藤忠商事がミドリムシを買うと、面白いことに次から次へとみんなミドリムシを欲しがるようになりました。ミドリムシが足りなくなるくらいでした。ミドリムシ自体は何も変わらないのに、「伊藤忠商事が採用したミドリムシ」と言うと飛ぶように売れたのです。



2013年度企業家賞を受賞

 私は2013年に企業家ネットワークの主催する企業家賞のベンチャー賞をいただきましたが、私ではなくミドリムシがいただいたものだと思っていす。ミドリムシの代わりにこういった賞を頂戴したわけですが、「ミドリムシはただ者じゃないな」「賞を取るくらいだから、もしかしたら虫じゃないんじゃないの」と社会一般の皆様のミドリムシに対する理解が受賞を機に深まるのは嬉しいことです。

 私たちはミドリムシで地球を救う会社です。ミドリムシを作る過程において、儲かるからといってゴミや悪いものが出たりする方法は首尾一貫して選びません。ビジネスも研究も真面目にミドリムシ一筋で地球を救いたいと思っています。

 2015年のミラノ万博のサポーターに任命していただいたのですが、今度のミラノの万博のテーマは、「Feeding The PlanetEnergy For Life」つまり、「地球に食料を」という意味です。その万博で出す日本パビリオンは、地球に食料を届ける日本の農業、技術を世界の皆さんに知っていただくいい機会になると思います。私たちはミドリムシで地球を救うことを目標としていますから、日本が一生懸命研究していることをアピールするいい機会です。



ミドリムシで新エネルギー開発

 ユーグレナの事業は二本柱で、一つは、私どものビジネスの大半を占める食品事業。二つ目は、今開発中のミドリムシによる新エネルギーです。中でもわが社が一番力を入れているのが、ミドリムシのバイオ燃料でジェット機を飛ばすプログラムです。ですから将来、食べることにより人々を健康にするミドリムシ、ジェット燃料で地球を健康にするミドリムシの二本立てで地球を救う会社になりたいと考えています。

 現在人間は化石燃料を使い過ぎです。私が学生だった1990年代後半、二酸化炭素の濃度は350ppm(0・035%)でした。2013年11 月、地球の二酸化炭素の濃度が40万年ぶりに400ppm(0・04%)を超えたのです。しかし、温室効果ガスが増えて、これから次第に気温上昇や台風大型化といった問題が起きるでしょう。起きてからでは大変なので、これからはバイオ燃料で地球にやさしい生活スタイルを世界に発信していきたいと考えています。

 東京オリンピックの開催される2020年に、2000万人のお客様が外国から日本にいらっしゃいます。その時に、「この飛行機、実は日本の国産エネルギーであるミドリムシで飛んでいます」と言えるよう、実用化を目指しています。

 我々は上質な油を多くつくるミドリムシを既に開発しています。あとは、ジェット燃料にするためには多くの量が必要ですから、今は巨大なプールで培養して、たくさんミドリムシを絞って燃料を作ることを研究しています。

 新エネルギーでジェット機を飛ばすことにより、日本の皆様に元気なってもらう。そして今、地球にいる10億人の栄養失調の人々を将来的にミドリムシで0人にする。この2つが私の夢です。



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