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トピックス -企業家倶楽部

2013年01月16日

謙虚でぶれない軸のある経営者/川野幸夫の人的ネットワーク

企業家倶楽部2013年1/2月号 ヤオコー特集第5部


川野と接した人々は一様に、その謙虚さと人間力に魅了される。表裏が無く、社内外に関わらず同じことを言い続ける川野に、多くの人が確固たる軸を感じるのだ。ライフコーポレーション会長兼CEOの清水信次は「従業員にまで川野さんの理念が伝わっている」、法政大学経営大学院教授の小川孔輔は「川野さんの謙虚さが社風を形作っている」とその全社への価値共有力に驚嘆する。大創産業代表取締役の矢野博丈は「流通業特有の厳しさを感じさせない」とその独特の包容力にいつも癒される。日本アクセス相談役の吉野芳夫は「彼が独りよがりになることは無い」と断言し、大和総研理事長の武藤敏郎は「今後とも社会に貢献していって欲しい」とエールを送った。(文中敬称略)



骨の髄まで謙虚な経営者

ライフコーポレーション 会長兼CEO 清水信次 Nobutsugu Shimizu
骨の髄まで謙虚な経営者


 清水が川野と交友を持ったのは1999年。その年の7月に清水が設立した日本スーパーマーケット協会の発起人をお願いすべく、川越へ赴いたのが始まりだ。

 
 戦後の復興期において小売業界では大手スーパーが台頭し、中小規模のスーパーの声が行政に届くことが困難な状況にあった。この事態に直面した清水は業を煮やし、食品専門スーパーの団体を作ることを決意。しかし外部からの圧力は強く、同志たちの多くがその活動から辞退を表明した。それでも諦めずに新たな協力者を探していた清水に対し、応援を承諾した数少ない一人が川野であった。

「同業者として、以前より時々お会いしたことはありましたが、何か物事を一緒に動かそうとしたのはその時が初めてでしたね」

 
 無事、日本スーパーマーケット協会を立ち上げることとなった清水。昨今まで会長の座に就いていたが、現在では川野にその座を譲っている。このようにスーパー業界の改善に心血を注いできた清水をしても、川野率いるヤオコーの従業員の質は絶賛に値するという。

「ヤオコーの従業員にはやる気が漲っていて、皆さん優秀です。お客様と会話している様子もよく見かけ、実にイキイキと働かれています」

 
 ヤオコーの強さは、パートナーの力を存分に引き出すことのできるシステムにあると清水は言う。パートナーの割合の多くを占めるのは地域の主婦たちだ。彼女たちはいわば家庭の食事や食材のプロであり、プロだからこそ考案できるアイデアや考えを持っていることが多い。その能力を引き出すため、ヤオコーではパートナーに正社員と同等かそれ以上の権限を委譲している。各店舗の商品配置や仕入れには、パートナーの意見や意思が明確に反映されているのだ。正社員とパートナーは一致団結して店を作り上げていく。

 
 また、高利益を出したパートナーには賞与の受賞や海外研修の機会が与えられる。その制度を糧にパートナーや店長は「ここは自分の店だ」という意識をさらに高めていくのだ。パートまで海外研修に連れて行く企業はなかなか無いだろう。


 こうした強みを持つヤオコーの社風は、一朝一夕に作られたものではない。そこには、現会長である川野の母トモの存在がある。トモは、八百幸商店という商店を発展させ、ヤオコーの名のもとでスーパーマーケットという商業形態を生み出した第一人者だ。女性の能力を尊重する社風を受け継いだ川野について「日本の食品スーパー業界で、彼の右に出る人間はいない」と断言する清水。
 

「川野さんの偉ぶらない態度は真似しようとしても難しい。骨の随まで謙虚なのでしょう」

 
 交流が続く中、2012年5月にはヤオコーとライフコーポレーションが正式に提携することを発表した。「お互いに研究し合おうという話が、川野さんからありました。彼からは学ぶところが山ほどありますので、是非こちらからお願いしますと申し上げた次第です」
 

 そんな清水も御年86歳。「あらゆる面で何かと便利になった現代だが、大勢の社員が無言でコンピューターと向かい合う姿を見ていると、科学技術が人間に与えてくれる幸せにも限界があると感じている。大正生まれの私では正直時代に付いて行けないが、川野さんの見識と適応力ならば、人類の幸福に貢献できるはず。是非、世の中を変えていただきたい」と、川野に強くメッセージを送った。



まるで宗教家のような言い知れぬ包容力の持ち主

大創産業 代表取締役  矢野博丈 Hirotake Yano
まるで宗教家のような言い知れぬ包容力の持ち主


 100円ショップ「ダイソー」を運営する大創産業は、売り上げ3415億円(2012年3月現在)、店舗数も国内2680店舗、海外28カ国658店舗(12年5月現在)と好調だ。そのうち26店舗はヤオコーのテナントとして展開する。

 
 そんなダイソーを率いる矢野と川野は、15年ほど前に流通業界の関係者が集まるパーティで知り合った。川野はあまり人と飲んだり会食したりしないと聞いていたが、「矢野さんとなら行く」と言われ、嬉しかったのを覚えている。

 
 矢野は、テナントに入れてもらっている身として、様々なスーパーの経営者と会う機会がある。通常は、「お世話になっている」という気持ちが強いので、偉い人に会えた嬉しさと、ある種の威圧感を抱くことが多い。

 
 流通業には真冬でも大雨の日でも、朝の3時や4時から市場に出るスタッフたちがいる。従業員やパートも多く、一人ひとりがお客と対面して商売をしている。また、食品を扱うとなると衛生管理も厳しく、クレームが多く寄せられる。一般的な企業と違い、常に緊張感を持たねば対応できないという自負がある。それゆえ、どうしても流通業界の社長にはある種の強さがいるのだ。矢野が社員を集める時にも、「皆さん集まって下さい」と優しく声をかけるのではなく、「集まれ!集まらんとクビだ!」と怒鳴らなくてはならないこともしばしばである。

 
 流通業や小売業では、お客に不愉快な思いをさせないため、経営者は必死になって怒る。本心では怒りたくないが、お客のためを考えると怒らざるを得ないのだ。これが流通業の共通の文化なのだと矢野は考える。
 

 しかし川野の第一印象は、それとは違った。本当に優しく、流通業特有の厳しさを感じさせることが無い。ほんのりと人を包む、包容力がある。「こんな優しい方でよく流通業のトップを担っているな」という不思議感があった。豪腕な社長が多い中、川野がいるとほっとする。
 

 そんな怖さや威圧感を周りに与えない川野だが、どこか威厳があり、敬いたくなる感覚を抱いてしまう。人間的な大きさと優しさを併せ持ち、常に笑顔。その言葉、動き、貫禄、雰囲気に直に接してきた矢野は、川野を「まるで宗教家のようだ」と評す。
 

 実際は川野も怒ることがあるのだろう。しかし、以前友人たちも含め、共に食事に行った折、川野は「そうですか」「なるほど」と、きれいな聞き役を演じていた。創業社長には「そうは言っても」「私はこう思います」と自己主張をしたがる性質の人間が多い。しかし、川野はそういう言葉を一切発しなかった。矢野は、川野の大器をこうした挙措にも感じる。

 
 ヤオコーの店舗にはそうした川野自身のような雰囲気があると、矢野は驚く。安売りを標榜するスーパーが多くなる中、一切ぶれることなく自社の理念を貫く姿勢が印象的だ。

 
 現在はチェーンストア協会などの大きなパーティでしか会う機会は無い。しかし、年に何回か会うと、ニコッと微笑を浮かべ、「矢野さん」と呼びかけてくれる。そんな川野に対し、矢野は「お世話になってすみません」と言うのが精一杯だという。矢野は「流通には頭はいらない。元気でよく働け」と言われて懸命に働いてきたが、東大法学部を出た川野には頭が上がらない。
 

 そんな矢野は最後に、「いつも本当にありがとうございます。これからも可愛がっていただければと思います。よろしくお願いします」と川野に向けて丁寧に述べた。



人間力溢れる食品小売業界の至宝

日本アクセス 相談役  吉野芳夫 Yoshio Yoshino
人間力溢れる食品小売業界の至宝


日本アクセス相談役の吉野芳夫が川野と出会ったのは、遡ること50年以上前の1958年。川野は埼玉県小川町、吉野はその隣の滑川村(現滑川町)の出身だ。当時、健全な青少年教育を目的とし、県下の中学から生徒代表が集まって二泊三日でキャンプをする企画があった。同年齢の二人は、互いの中学の生徒代表同士として、初めて顔を合わせた。

「川野さんはリーダーシップがあるだけでなく、地域の共通試験で必ず上位に入る秀才。神童ではないかと常々感心しておりました」
 

 お互いに東京大学へ進学。卒業後、大手商社に就職した吉野は、食品関係の仕事を任された縁で、家業を継いでいた川野と再び繋がった。ヤオコーに商品を供給する立場として仕事柄付き合うようになり、関係は深まっていった。前職より日本アクセスに移ってからも、食品卸しという立場で密な取引を続けている。

 「ヤオコーは弊社との取引額でベスト10に入っています。私の見立てでは、首都圏で最も元気がいいスーパーですね」
 

 吉野は川野の魅力について、人を大切に思う人間的教養の深さとそれに付随するコミュニケーション能力を挙げる。
 

「創業経営者は独りよがりになりがちですが、彼に限ってそれは絶対にありません」

 
 そう吉野が断言するように、川野はパートナーを含めた社員全員を心から大切にしている。そうした人間的教養の深さは、コミュニケーションの仕方からも顕著だ。休日や週末を利用して店舗を視察する際、川野と現場スタッフの間では、同じヤオコーで働く「同志」としてのコミュニケーションが交わされる。相手がパートナーだからと言って軽んじられることなどありえない。たとえ厳しいことを言っても、明確に事情を説明して理解を求める。だからこそ現場は活性化し、ひいては成長に繋がるのだ。
 

 川野は「小売業は現場が一番大事だ」と明言する。ヤオコーは表面上チェーンストアだが、本来は個店経営の店が119店ある状態を理想と考えているのだ。だからこそ、それぞれの店舗との密なコミュニケーションが重要だ。現場の最も近くに位置するのはパートナーであり、彼女たちを通じ、消費者が何を求めているのかを把握し、ニーズに見合ったものを提供していく。パートナーがいるからこそ、チェーンストアのように全てを本部からトップダウンで統御することなく、各々の地域に最適化した商品を提供できるのだ。
 

 吉野は、小売業の中でもスーパーマーケットの役割の重要性を説く。人間の生活の中で食は欠かせない。高度経済成長期では重厚長大型の産業が重視されたが、本来人間に最も身近な産業はスーパーマーケットをはじめとする食品小売産業だ。

「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)という言葉が流行っていますが、川野さんに関してはまさに全人生をヤオコーに懸けていますね。是非、この業界を活気付ける中心的役割を担っていただきたい。いよいよ、埼玉のヤオコーではなく、日本のヤオコーとなる時です」
 

 今や吉野と川野は、家族ぐるみで付き合う仲だ。つい最近、2012年10月初旬にも、夫婦2組揃って佐世保にあるハウステンボスに旅した。ただ、「こんな時くらい仕事の話は抜きだ」とお互い言い合うのだが、最後には必ずビジネスの話になってしまう。
 

 そんな吉野は、「川野さんは食品小売業界の宝です。創業者として生涯仕事をせねばなりません。私も応援団長として陰ながら力になる所存です」と微笑んだ。
 



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