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トピックス -企業家倶楽部

2015年01月27日

ロボットで未来を創る/ZMP代表取締役社長 谷口 恒 

企業家倶楽部2015年1/2月号 フォーカスチャレンジングカンパニー


ドイツやアメリカを中心とした自動運転の開発競争が水面下で活発な動きを見せている。こうした中、海外にも負けない運転支援技術を開発しているのがZMPだ。同社は2001年に二足歩行ロボットを製造、販売する会社としてスタート。11年に1人乗りのロボットカーを発売し、12年には普通自動車に運転支援の技術を搭載することに成功した。自動運転は我々に何をもたらすのか。夢の次世代技術を創造するロボット・ベンチャーに迫る。(文中敬称略)

ロボット技術から自動運転車へ 

 ZMPは現在、自動車メーカーや大学、研究機関に自動運転の開発支援ツールを販売している。開発ツールは実験装置、ソフトウェア開発キットなどから成り、顧客の車種に応じてオーダーメイドで提供する。昨今のCMでよく目にする、自動で停止する車には、ZMPの装置が使われている。

 ZMPが自動運転技術の開発を始めたきっかけは創業当初の家庭用ロボットの製作だった。同社は2004年、日本で初めての家庭用人型ロボット「nuvo(ヌーボ)」を約60万円で発売。「憧れのロボットが手に入る」と富裕層の人気を掴んだ。

 さらに実用性を高め、コストカットに成功した2輪ロボット「miuro(ミューロ)」を07年に約10万円で販売した。ミューロはリモコンで一度動かした道を記憶して、2回目からは自動で移動することができる。この自律移動に音楽再生機能を搭載して「動くステレオ」と反響を呼んだ。

 社長の谷口恒はこの時、「A地点からB地点に自動で移動する技術はエンターテイメント性の高いロボットのみならず、自動車産業でも応用できる」と確信。自動運転車の開発に取り掛かることになる。

 しかし08年、増資の連続で順調に成長していたZMPにリーマンショックの荒波が押し寄せてきた。堅実な経営をしていたにも関わらず、ベンチャーキャピタルからの資金援助が止まり、約5000万円を借り入れて自己破産の危機に直面。それでも谷口は資金調達のため、チャンスがあれば直ちに追加借入を決行し、最終的に2億円にも達するほどの借金を背負った。この返済のために広報活動を活発にして、売れるものは何でも売ったが、いかに苦しい時でも従業員への給料は支払い続けたという。

 「研究開発には資金が必要です。それに、5000万円程度の借り入れで自己破産するなんて格好悪い。最終的に、借りたお金は一度の債務不履行もなく全て返済しました」と得意げに当時を回想する。

 苦境を乗り越えた11年、遂に1人乗りロボットカーを発売。翌年には四輪普通自動車に運転支援技術を搭載することに成功し、脚光を浴びた。今や3カ所の研究所を持ち、完全な自動運転車を目指して提携先の所有するテストコースで日々の実験に邁進している。



高齢者や子供も乗れる夢のロボタクシー

 ZMPの技術で世界的な需要が高まっているのは先進運転支援システム(エイダス)だ。運転支援とは運転手をコンピュータやセンサーで補助するもので、この技術によって事故の予防や渋滞軽減が期待されている。

「自動運転」と言う日本語の意味は曖昧なまま普及してしまったが、運転支援と自動運転は別物だ。運転支援技術が発展した究極の姿が自動運転である。ZMPが目指す自動運転は免許証を持っていない高齢者、子供でも乗れるロボットタクシーだ。すでに私有地や過疎地、専用道路で走らせようと提案をしている。

 高齢化に悩まされている過疎地は将来的に自動運転タクシーの導入が必要だ。現在、地方の小さな駅にあるタクシー会社は破綻に追い込まれ、タクシーに乗りたい人は隣の駅、もしくはそのまた隣の駅から呼ばなければならない。来てもらうだけで3000円を超えてしまう場所もあるという。スマートフォンアプリやコールセンターで呼んだロボットタクシーが目的地に運んでくれるような新たな公共交通機関が未来には必要なのだ。

 自動運転はいつ頃実現されるのだろうか。自動運転技術は現在、国家プロジェクトとして、2035年頃までに導入することを目指している。これほどの時間が掛かる理由としては安全面と法律の問題がある。

 現時点では、舗装した普通の道路を走ることだけならできる。しかし、センサーとカメラを使っても前方車の突然のブレーキ、飛び出す歩行者には対応できない。人間が運転する車でも衝突するような状況下では自動運転でも衝突してしまうのだ。

 日本で産業用ロボットが発展した理由は、人と分業しているため。それ故にロボットが人間と一緒に働く場合、人の動きに合わせる必要がある。自動運転技術には人間の予測不能な動きにも対応できる親和性が重要であり、その上で安全性を高めることが今後の課題だ。  

 そして、日本では限りなく100%に近い安全性が保証されていなければ法律は変えられない。だが、ドイツやアメリカなど海外では自動運転車関連の整備を早期に進めていく考えもあり、日本もそれに追従することになるだろう。世界的に運転支援機能を向上させていく動きはこれからも変わらず、この市場はさらに過熱していくこと必至である。


高齢者や子供も乗れる夢のロボタクシー

ロボットに無限のポテンシャルあり

自動車に特化して収益基盤を固めているZMPだが、自動車で培った自動で移動する技術を様々な産業分野に展開していくことを試みている。

 ZMPのA地点からB地点までの2点間を自動で移動する技術は自動車にイノベーションを起こしつつある。だが、自動車に限らず、土木、農業、物流、建築に応用しようというのが同社の今後の戦略だ。人がやって「きつい」と思われる部分に自律移動技術を導入することでイノベーションを起こそうとしているのだ。

 特にZMPが注目しているのが農業。田畑を耕している農機が自動化するという段階に入っている。耕すといった単純作業の時間を省くことで「いつ種を蒔くか」、「どのように売るか」といった事業計画に力を注げるようになるだろう。

「農業には可能性があります。農作業の時間を簡略化することでマーケッティングに労力を費やせるようになる。例えば、ツイッターやフェイスブックで稲が成長していく写真を載せて宣伝してみれば面白いでしょう」と谷口は胸を躍らせる。

 一方でZMPが注意しているのは、ロボットに任せることと人にしかできないことの区別である。人間が真心やおもてなしを尽くすようなサービスはロボットが立ち入るべきでないというのが同社の考えだ。

 そのため、ZMPは介護ロボットへの参入は考えていない。人間を世話したり、話したりする相手は人間の方が心地よいのだ。また、営業などの高度なコミュニケーションを必要とする仕事はコンピュータや機械が一番苦手とする分野でもある。今後、人間とロボットの仕事の住み分けが明確になる中、ZMPの開発したロボットが多様な産業で活躍することで、仕事のあり方も劇的に変化していくだろう。



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