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トピックス -企業家倶楽部

1997年04月27日

【伊藤園特集】伊藤園、急成長の秘密を探るⅡ 商品力こそ生命線/お客様第一の思想が息づく商品開発

企業家倶楽部1997年5月号 特集第4部



缶飲料などはどれも同じだ、と思っている読者が多いのではないだろうか。筆者も実はそう思っていたが、見識を改めさせられた。伸びている会社の商品にはやはり、それなりの理由がある。「たかが飲料、されど飲料」である。伊藤園、成長の秘密を商品開発の現場から探ってみる。



物まねをしない方針がヒットを生んだ

 伊藤園は一九六六年、茶葉メーカーとして発足した。飲料業界に進出したのは八一年、世界初の「缶入りウーロン茶」を発売してからである。業界の後発企業だったため、他社と同じ商品を出しても勝ち目はない。他社のやらない商品、物まねでない商品を出して、差別化を図らなければならない。この当初からの開発方針が、伊藤園商品を語るうえで欠かせない第一のポイントである。

 この考え方の延長上に出てきたのが、現在三百四十億円を売り上げ、同社最大のヒット商品となっている緑茶飲料「お〜いお茶」である。 「お〜いお茶」を商品化したのは八五年。当初は「煎茶」という商品名だった。「こんなものが売れるとは誰も思っていなかった」と、同社の人間は口をそろえていう。緑茶は日本ではもっともポピュラーな飲み物で、ただで当たり前のように思われていた。加えて、ウーロン茶がブームになっていた八〇年代前半ころは、「緑茶にはダサイというイメージすらあった」と、取締役商品企画部長の社(やしろ)三雄は語る。

 緑茶飲料の開発には七五年から着手していたが、ニーズがあったからではなく、緑茶を夏場でも売れるものにしたい茶葉業界の事情によるものだった。当初は、そうしたメーカーの気負いを強く打ち出し「煎茶」と名づけたが、そのころはあまり売れなかった。

 あるとき社は、「煎茶」を「せんちゃ」と読めない人が結構多いことに気づいた。学生に、緑茶のことをなんと呼ぶかアンケートをとってみると、「緑茶、お茶、グリーンティー」といった答えが返ってきた。そこで、「お茶」を採用し、日本でのお茶のイメージが家庭的な雰囲気であることを考慮して「お〜い」を加え、「お〜いお茶」とした。八八年に名前を変更してから売れ出した。 「お〜いお茶」のヒット要因は、㈰他社が出さないユニークな商品㈪高いレベルの味、香り、色合い㈫それを実現した技術力㈬絶妙のネーミング㈭世の中の健康志向——などが挙げられる。これを実現したのは大きく見れば、伊藤園の社風と、そこから起因する開発方針と言える。



全社員がアイデアソース

 伊藤園の社是は「お客様を第一とし、誠実を売り、努力を怠らず、信頼を得ることを旨とする」というものである。創業以来、倒産の危機を乗り越え、会社を引っ張ってきた会長の本庄が骨身にしみて感じてきた言葉。その理念が商品開発の現場でも生きている。企画開発部では、STILL NOW(スティル ナウ=お客様は今でもなお、何を不満に思っているか?)の考えを基本として、変化に伴って発生する潜在需要の発見と、差別化による商品づくりを行ってきた。

 そして伊藤園は、商品づくりのドメイン(生存領域)を次の五つであるとしている。

 1)自然(自然の素材を使用する)2)健康(健康に役立つ商品)3)安全(法規準以上に厳しい自主管理)4)おいしい(おいしくなければ不可)5)よいデザイン(お客様にわかりやすく、内容を十分に伝達できるデザイン)——。

 このコンセプトにより、表1のような商品を送り出してきた。このコンセプトを他社のまねをせず守り、ヒット作を出し続けるのは容易ではない。失敗を問わない社風が、それを可能にしている。

 役員会で商品の合否を判定することはない。年配の役員が若者向けの商品を判断できることではないからである。月一回、フリートーキングの商品企画会議が開かれ、カンカンガクガクの議論が展開されるが、意見がまとまることはほとんどなく、合意に達したものが商品化されるわけでもない。合議が善ではない、と社は言う。

「われわれサラリーマンは、みんながいいと言うことに賛成する傾向がありますが、市場は別です」。たとえばウーロン茶は、誰も賛成しなかった。みんながいいと言ったからといって成功する保証はどこにもない。「やってみなければわからない」のが、本当のところだ。それには失敗を問わない社内の体制はもちろん、合意に達しない企画をとりまとめ、推進していくリーダーシップをもった人間が必要である。

 技術革新を伴う先駆的商品を出すには工場、研究所、管理、購買などあらゆる部署の協力を得、引っ張っていかなければならない。説得するための材料、技術はもとより、売れなかったときに、風圧に耐える胆力も必要だ。また市場に受け入れられるデザイン、ネーミングのセンスも要求される。社はその重責を担ってきた。一九五四年生まれ。神戸大学農学部を卒業し、七八年に入社した。就職難の時期、多くの会社に門前払いされたなかで、伊藤園の対応がもっとも人間らしかったから入社したという。九二年、三十七歳の若さで取締役に抜擢されている。新商品の出る前は、週に一度しか家に帰らず、ネーミングを考え出すと、寝ても覚めても、夢の中でさえ悩むという仕事人間である。

 商品企画のアイデアソースは、クレームや問い合わせ、流通業界との情報交換、商品企画部の発案、新聞雑誌などがあるが、おもしろいのはボイス(Voice)という提案制度。役員から新入社員まで、すべての社員が商品案を応募できるのだ。商品企画部がその提案を選択し、技術的な可能性などを検討し、商品化する。提案の採用者には三十万円、五十万円といった金一封が出る。表2のような商品が、ボイス制度から生まれた。ちなみに「緑の野菜」は、新入社員の提案だったという。



自社工場はもたない

 商品企画部を経た提案を、最終的に具現化するのは工場だが、伊藤園には飲料工場がない。ファブレス(自社の生産設備でものをつくるのでなく、生産は外部に委託し、独自の製品設計やデザインなどを武器にする)の手法をとり、全国の五十工場に生産を委託している。

「飲料工場は全国の農協などたくさんあり、余っている状態なので、うちでもつ必要はありません。缶に詰めるという作業より、ものそのものにこだわりたい」と社。ファブレスの強みは設備投資がいらない、物流の経費が安いなどだが、もっと大きいのは、ノウハウの交換ができることだという。

「沖縄の工場はパイナップル、サトウキビに強いし、宮崎の工場はニンジン、ミカンに、青森はリンゴに強い。そういったノウハウを集め、交換し合えるのです」。飲料をつくり缶に詰めるといった、どこでもできる仕事(言い方は悪いが)を他社に任せ、伊藤園本体は、商品コンセプト、技術ノウハウといった付加価値の高い業務に徹している。これが飲料メーカーとしては異例の高い利益率を生む一因になっている。



お茶の専門メーカーの強みを生かす

 伊藤園の工場は静岡県・相良にある。新幹線を静岡で乗り換え、東海道本線の金谷駅下車。そこから御前崎の方向へ、タクシーで三十分ほど走る。東京より一段、暖かい。この辺りは、駅前から通り沿い、小山の麓に至るまで、空地はすべて茶畑で埋め尽くされている。扇風機があちこちに立ち、風でカラカラ回っている。聞くと、茶畑を霜から守るためだという。緑と青のラインが見えてきた。

 屋上から太平洋が望める地に、伊藤園の生産本部はある。約一万三千五百坪の土地に、相良工場と中央研究所がある。相良工場では茶葉とコーヒーの加工、ブレンド、包装などを行っている。開発部長の山本隆士、中央研究所長で工学博士の川崎年夫に聞いた。

 世界初の緑茶飲料「お〜いお茶」の開発に、現場で直接携わり、これを成功させたのは山本である。九四年、緑茶飲料市場を開拓したことにより、科学技術庁官賞を受賞している。

 前述したように伊藤園は八一年、業界初の缶ウーロン茶を発売したが、当時は販売力がなかったため、その製法をサントリーに公開した。原料の茶葉を買ってもらおうと考えたが、その結果、缶ウーロン茶の本家はサントリーのような形になってしまった。本庄は、「市場が広がったのだからそれでよかったのだ」と言っているが、現場の人間にとっては、かなり悔しかったようだ。「お〜いお茶」の開発とその後の販売戦略は、その苦い経験がバネになっているのは間違いない。

 緑茶は酸化しやすく、非常にデリケートな飲み物で、容易に開発できなかった。昔から”宵越しのお茶は飲んではならない“と言われており、ポットなどに入れるとすぐに、茶色に変色する。急須でいれたお茶と同じような香り、色合いのドリンクをつくるのは不可能と思われていた。

 山本はこの課題を「TN(ティー&ナチュラル)ブロー技術」を開発することによって解決した。簡単に言えば、缶のすき間に窒素を注入して、酸素をシャットアウトし、加えてpH(ペーハー)調整による中性化を行ったという。この手法は特許をとっている。特許を別にしても、他社はそう簡単にまねできないだろう、と山本は言う。

「うちはお茶の微妙な違いをよく知っているベテランがいっぱいいます。また茶葉メーカーですから、さまざまな原料を厳選して使え、緑茶の特性に合ったラインの組み立て方も知っています」。非常に手のかかる製法をしているという。

「大手鉄鋼メーカーが豆腐を大量につくったが売れなかったという話があります。やはり豆腐は豆腐屋がつくった方がいい。専門のメーカーには専門のメーカーしか知らないことがあります」。かなり自信があるようだ。



味と香りに徹底的にこだわる

 ここでは検茶は日常の仕事。酒造メーカーの熱心な開発員は午前中から、顔が赤くなるほど飲むというが、伊藤園の社員のお茶に対するこだわりも相当なものだ。特に品質管理部では、若手でも先輩社員にくってかかるほど、うるさい人間がたくさんいるという。なにしろ、委託工場に対して、(製品が悪ければ)「このタンクのお茶をすべて捨てろ」と言えるだけのものがないと務まらない。そういう場面は少なくない。よくあるのは、果汁飲料をつくったあとに、お茶をつくるケース。工場のラインやタンクの洗浄が不完全だと、お茶の香りに影響する。それを、各工場から送られてきたサンプル品で判断しなければならない。

 検茶のやり方を、簡単に説明する。三グラムの茶葉を湯飲みに入れ、二〇〇ccのお湯を注ぐ。網で茶葉をすくい取りながら香りを嗅ぐ。色を観て、スプーンで飲み比べる——。ちなみに緑茶は熱湯でいれると渋くなるから、八〇度ぐらいのお湯を注ぐのが望ましい。

 写真1は極端な例で、記者にもその違いははっきりわかった。右から順に値段の高い茶葉を使っている。一番左は赤みがかった黒、中央も黒みがある。右は透明感のある緑である。香りも右が一番よく感じた。左はつんとくる荒い香りがした。味も右が一番よかった。ただし、製品化する場合、右の茶葉だけを使えばいいのではなく、それぞれの特性を考慮して、微妙な配合でブレンドする必要があるという。

「お〜いお茶」の味や、つくり方は、実は急須でいれたお茶とはずいぶん違う。

「急須でいれたお茶を、そのまま缶に詰めたらたぶん、苦くて飲めない。飲料の場合は喉の渇きをいやす目的も大きいですから、すっきりと飲みやすく、胃に負担をかけずに飲める風味にしています」と社。同じ質問を山本にすると、「お〜いお茶」には、殺菌や時間経過による変化を見通して、若干味が強く、渋めの茶葉を使っているという。つまり飲料の場合は、渋めの茶葉を使っても、時間による変化などで、すっきりと飲みやすい風味になる、ということだろう。相良工場では「お〜いお茶」専用の茶葉もつくっている。

「ぜひ、飲んでほしいものがある。これを飲めば、一発でわかりますよ」と山本。検茶室に五種類の紅茶飲料をもってきて、グラスに次々と注ぐ。左端の「金の紅茶」が伊藤園ブランド、あとはライバル三社の商品である(写真2)。まず色が全然違う。飲み比べてみても、「金の紅茶」だけ、際だって違う点があった。他社の商品にはみな香料が入っていて、特有の味と香りがあるが、「金の紅茶」にはそれがない。香料の味付けは相当強く、どこか人工的な、大量生産の風味がある。伊藤園の味は自然で、表現しにくいのだが、いかにも手がかかってそうな、工夫を凝らした感じがした。

「うちの紅茶は香料を使ってませんが、それでいて薄くは感じないでしょう」と山本は胸を張る。伊藤園の言う「自然」は、単なる題目でなかった。

 このウーロン茶版が、九五年に発売した「金の烏龍茶」である。その希少性とおいしさで黄金の名をもつ茶葉の黄金桂と鉄観音を贅沢に使用したウーロン茶飲料で現在、前年比二倍の勢いで伸びている。「ウーロン茶はどこも同じではない。これが本家のウーロン茶だ」という開発員の叫びが聞こえるような商品である。



限りない可能性を秘めるお茶の研究

 千年の歴史を経てきたお茶が、おいしさだけで支持されてきたとは思えない。一見地味な存在だが、これに徹底してこだわれば、大きな金鉱に突き当たるかもしれない。お茶にはカテキン(渋味成分タンニンの一種)やテアニン(お茶のうまみ成分)など、健康に有効な成分が含まれている。これをうまく抽出し、飲料にとどまらず、食品の分野にも生かせれば、その可能性は広がる。中央研究所ではこうした研究を行っている。

 カテキンには活性酸素を消去する働きがある。酸化は生物がエネルギーを得るのに不可欠な化学反応だが、これが体の細胞にまで及ぶと老化、皮膚のシミからガンに至るまで、さまざまな悪影響がある。生物に寿命があるのは、長年の生活の中で、細胞が徐々に壊れていくからだとすれば、それを防ぐ働きがあるカテキンには、ものすごい可能性が秘められていると言えないだろうか。

 研究棟二階には、機器実験室、化学実験室、農学実験室、質量分析実験室、農薬分析実験室、バイオテクノロジー実験室、微生物実験室が並ぶ。数百万円から数千万円する機器・装置がふんだんにある。 「老化すると、記憶能力が衰えます。テアニンには脳の機能を改善する働きがあるので、その可能性を探っています」と川崎。お茶の細胞をシャーレの中で培養して、テアニンをたくさんつくる細胞を見つけ、工業的にテアニンを生産する試験をしている。ネズミの脳を使った実験もしている。



21世紀の戦略商品相次ぐ

 変わったところでは、芝生の研究。

「植物に強い当社の特性を生かして、ゴルフ場のグリーンをターゲットに、夏に強く、春に早く芽が出る芝生を開発しました」。「女神」と名づけられたこの芝生は、伊藤園のゴルフ場グレート・アイランド倶楽部で使われており、農水省に新品種の登録中である。

 取材前は、堅実一辺倒の印象をもっていたが、中央研究所では、別の一面を見せられた。未来に向けた研究に、非常に積極的なのだ。その成果はすでに、商品となって表れている。カテキンを活用した口臭予防商品「ナチュラルウォッシュ」。カテキンにビタミンC、ビタミンEを加え、飲みやすいアイソトニック飲料に仕上げた「カテキンウォーター」。緑茶、ニンジン葉を活用して、腸内環境を整え、排泄物の悪臭を抑える「超繊維」。ウーロン茶の洗浄機能を活用して、フロンを使わないエコロジカルな工業用洗浄剤とした「ナチュラルスイーパー」などである。

 本庄は、二十一世紀戦略は特に考えていないと言っていたが、どっこい、やることはしっかりやっているのである。



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