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2000年04月27日

【パーク24特集】トップとロマンを共有するベテラン50代と機動力の30代/西川清を支えるスタッフたち

企業家倶楽部2000年6月号 特集第4部


急成長を遂げるベンチャー企業にとって、課題の一つが優秀な人材の確保。パーク24もご多分にもれず、他業種からの中途採用組が多い。たが、そうした異なる背景を持つプロたちが奏でるコラボレーションが、自由な発想と時代の潮流をとらえた事業展開を支えている。(文中敬称略)



若い頃のロマンを呼び覚まされた

 「五年後に株式を店頭公開する」

 そう西川が宣言したのは、五十歳を超えたある日のこと。もう一度、創業時代の精神に立ち戻って、チャレンジを決意したのだった。


 中込英隆(専務取締役)も、五十歳を超えたある日、一つの決断を迫られていた。パーク24で働かないか、との誘い。大手銀行マンとしての人生をまっとうするか、それとも賭けにでるかー。西川の噂は、それなりに耳にしていた。だが、駐車場ビジネスなどまったく縁がない。どうしようかと迷っている矢先、西川と一時間の面談にのぞむことに。時間ぎりぎりまで事業にかける夢とロマンを熱く語る西川の語気に、中込は圧倒された。心のどこかに勘弁してほしい、という気持ちもあった。だがそれ以上に、人を説得してしまう西川のパワーに参っていた。「若い頃のロマンを呼び覚まされた」と、中込は振り返る。


 社長室長を半年務めてから、営業本部長に。「官公庁、フランチャイズ関係と銀行関係を頼みますよ」


 それが西川からのミッション。あとは頼んだぞ、とばかりに細かい指示はいっさいなかった。いい意味で、放りつぱなし。だが、しばらくした頃、ある物件を最終段階になって他社に取られたことがあった。それが西川の耳に入ってから一週間、中込は社長室に通いつめることになる。


 「そこまで話が進んでいたなら、なぜ俺をひっぱりださなかったのか」


 西川はとことんまでこだわった。が、真意が伝われば後腐れはない。


 「俺も悪かったよ。でも頑張ろうな」自分のわかることと、わからないことに正直だ、と中込は西川を評する。わからないことに関しては、人の話をよく聞くし勉強も積み重ねる。こうしてさまざまな情報を蓄積しているだけに、ひらめきの感度も鋭い。たとえば二年前のこと。PFIに関する新聞記事を見るや、翌日には幹部に召集をかけ「これはいける」とハッパをかけた。


 新規事業のアイデアが頭の中に三十はあるという西川。これまではその発想力を武器に、西川のリーダーシップで走ってきたともいえるが、将来を見据えた今、若い世代のアイデアと機動力にますます期待がかかる。


 「部署の仕事をしているだけではダメ。組織を超えて、会社のために自分には何ができるのかが大切」と中込は語る。若い人材が伸び伸びと、好きなことを言える風土はある。あとは、専門能力をもった人材がどれだけ集められるかだ。


 「駐車場を基点に、全国二十数万軒ともいわれる空地の有効利用でさまざまなビジネス展開が考えられる。それだけに、ITやデザインなど、各方面の専門家集団をつくりたいですね。このビジネスは、街づくりそのものですから」


 社長は大経営者であり、清水次郎長のような親分であり、会社の象徴としての天皇陛下、と中込。引退しても社長と友人でいたい、と話す横顔にはロマンに賭ける喜びが溢れていた。



営業の精鋭部隊づくりに賭ける

 「煙草、酒、ゴルフはやりますか」三分の面談で聞かれたのは、それだけだった。そして、いきなり大阪支店長を任された井上博明(取締役大阪支店長)が、大手都市銀行から移籍したのは三年前。面談以前には、西川と面識もなかった。


 たった三分の面接で即断即決するのもさることながら、二百人規模の会社組織はあまりに新鮮だった。スタッフはほとんどが中途採用組。職歴も違えば、学歴、価値観、家庭環境もバラエティに富んでいる。まさに、業種交流会のようなもの。それだけに、定期採用とは違い人材のレベルはまちまちだ。会社の成長スピードに人材育成が追いつくようにしなければ……。そんな思いで、営業の精鋭部隊をつくろうと池上は決意する。


 銀行時代も、大阪というマーケットを三十数年見つづけてきた。不動産業は詳しくないが、土地感もあれば、それなりの人脈もある。ことに地主を知っているのは大きい。


 「遠くから見た方が富士山はよく見えるように、本社から遠く離れた地点であればこそ、会社全体がよく見える。本社が戦艦であれば、うちは機動力がある戦闘機部隊。営業の精鋭部隊をつくるには絶好の条件です」


 とはいえ、最初は人材不足に苦労した。一年目は、ボーナスを手にするやいなや、退職を願いでるものが相次いだ。理由は仕事がおもしろくないから。これでは、野球チームでいえば打線が組めない状態。池上は、自らが採用面接にあたり、いい人材を集めていった。一年が過ぎたある土曜日のこと。休日出勤すると、二人の若い営業マンがパソコンに向かっている。聞いてみると、企画書をじっく作りたいとのこと。


 「誰が見ているわけでもないのに偉いな」という池上の言葉に、の返事。思わず目頭が熱くなった。


 いまチームは四十名。一軍選手から二軍まで、日々切磋琢磨している。バントがうまいのもいれば、足が速いのもいる。一人ひとりの持ち味を生かしながら、さまざまな課題を一緒に考えていくことで、チーム打率をアップしているという。組織はフラット。数カ月ごとに席替えをするなど、さまざまな仕掛けがある。


 昨年は営業マンの全国表彰で、ベスト四までを大阪支店が独占。


 「これから、ますます面白くなりますよ」と池上は意気揚揚だ。いい意味での競争原理を働かせる一方で、チームワークの醸成も池上の大切な役目である。若いスタッフだけに、勇気づけをおこなうとともに、ノリを保ちながらの全体の雰囲気づくりも欠かせない。


 「大阪にも野球チームを作ろうと、社長にお願いしてユニフォームをつくってもらったんです。おそらくボケットマネーでしょうが、即決で出してもらいました。そういう心遣いはとても嬉しいですね」


 手駒が揃ったいま、池上はルンルン気分だという。大阪という出城をしっかりと固めつつ、本社に人材を送り込んでいく。

 「私にとっての神様である社長に、この地区は心配しないでください、と言えるのが喜びです」


 日々、遠くから富士山を眺めている目が、キラリと輝いた。



男が男に惚れる

 ベテラン五十代は、大手都市銀行からの転出組が多い。信藤幹郎(取締役東京本店長)も、そんな一人だ。手元に回ってきた出向要請資料を見て、面談に臨んだ。事業の社会性や面白さに興味を抱いたのもさることながら、「夢に手を貸さないか」と、眼光鋭く語りかける西川に、人生を賭けるにふさわしいリーダーを見た。男が男に惚れるとはこのこと、と信藤。迷うことなく、第二の人生を歩むことに決めていた。


 移籍したのは、ちょうど二年前。会社は急成長をとげており、資格制度などの整備が遅れていた。まずは人事システムの基本路線を敷き、昨秋から営業の第一線へ。銀行ではもともと営業畑を歩んできた信藤は、以来、東日本地域の開発推進に力を注いできた。


 社長は大胆さと繊細さのバランスが絶妙、と信藤。

 「われわれが気づかないこともすべて気づかれるんです」


 それだけに、手抜かりがあると厳しい叱責を受ける。その叱り方たるや論理的で、感情にはいっさい流されない。

 「逃げようがない。おっしゃる通りですという感じです(笑)。でも、後には引かない方だから、こちらも気持ちよく叱られますね」

 かくいう信藤が忘れられない叱責は、ある案件をめぐってのこと。かなり大きな敷地を所有しているオーナーさんから、相談を受けたケースだった。あまりの敷地の広さに、時間貸での回転率などを考えたら条件が合わないだろうと思い、深い検討もせずに戦線から離脱した。それが、西川の耳に入る。さっそく信藤は呼び出しを受けた。


 「どんな条件であれ、わざわざ相談をしてこられたお客様に失礼ではないか。話し合いをしていく中で、新たな活路が見えてくるものだ。その絶好のチャンスを逃したんだぞ。お客様からチャンスを与えてくださっているのに、逃げて避けるとは何事か」


 この逸話からも、西川の相手に対する心配りの細かさが伝わってくる。管理的、官僚的なことは大嫌い。どんなに企業規模が大きくなっても、お客様あっての存在であることを忘れてはならない。そのことを西川自身がいちばん痛感している、と信藤。


 「銀行のような大組織に慣れていると、小さい規模から大きな規模へ成長していく過程は未体験。その過程で、企業として何を大切にしていかなければいけないのかを、社長は身をもって教えてくれたのでしょう。感動しましたね」


 どこかへ行く目的のために停める駐車場から、そこへ行くことが目的となる駐車場へー。その実現のために、信藤は日夜励んでいる。時間軸を超えた地主の資産活用に応えること、そして社会生活のさまざまな二ーズにあったソフトをタイムリーに提供すること。それを基本戦略に、他社が追いつけないダントツのものをつくりあげるつもりだ。


 ある時、夜更けまで仕事をした帰り際のエレベーターで、スーパーの袋を下げた西川とばったり合ったことがある。社外との付き合いを終え、一仕事片付けようと会社に戻ってきたのだろう。


 『こんな遅くまで仕事をしているのか…」そんな男の後姿に、また惚れ直した。



戦国武将のいいとこどりをした名経営者

 「社長は天性のひらめきの持ち主。それも、単なるアイデアという枠を超えて、きっちりとコンセプト化された上でのアイデアなんです。駐車場ビジネスも広いコンセプトでとらえれば、街づくりや交通システムといった社会インフラにつながっていきますよ。その点にいち早く注目され、事業化されたのは、まさに先見性の勝利だと思います」


 昨年九月末に大手都市銀行から移籍したばかりの坂本光広(タイムズ24株式会社取締役統括部長)は、駐車場ビジネスの奥深さに目覚めた感動を、そう語る。


 銀行マン時代は、業務開発的な仕事が多く、建設業界や不動産業界との関係も少なからずあった。だが、ゼネコンの工事でも、駐車場問題は最後の最後にやむを得ず話題になる程度。完全に盲点になっていた。そうした現場の経験があるだけに、新天地での意気込みもかなりのもの。


 「駐車場という『場』を拠点にすれば、生活者のさまざまなライフスタイルに合わせた展開が考えられます。たとえば、ソニーのウォークマンが電化製品の中のニッチであったにもかかわらず、新しいライフスタイルとして定着したように、多種多様な生活シーンを提案する役割を、駐車場も果たしていくわけです」


 タイムズ24は、駐車場の管理運営を基軸に、そうしたさまざまなサービス業務のオペレーションを行う会社である。来るべき時代に、駐車場はどのような姿で存在し、人々にどんな快適を提供できるか。それが事業ミッションだ。一言でいえば「アメニティパーキング(駐車場の高付加価値化)」。


 たとえば、ITS(インテリジェント・トランスポート・システムH情報通信技術を使って構築する新しい交通システム)によって、駐車場の予約システムを確立させれば、輸送効率や安全性・快適性は向上する。また、高度監視システムやパレットサービス(車の乗り捨て)、送迎サービスなども、より一層の展開をはかる。


 駐車場に託児所を併設する託児サービスは、すでに賃貸マンション併設型のタイムズコート白金で地域住民の好評を得ている。今後、需要の高まりそうな電気自動車に関しても、法改正の行方を鑑みながら、駐車場と一体化した充電システムを整備していく予定だ。


 こうしたさまざまな駐車場サービスの広がりの中で、自社の駐車場のみならず、全国の駐車場のネットワーク化を図る。駐車場に関する需要供給バランスの不整合を解消し、ほんとうに生活者にとってコンビニエントな存在に変化していくこと。それが、駐車場事業の第一人者としての使命だという。


 「社長の場合、発想の斬新さは桶狭間の戦いでの信長に、よく働きよく遊ぶといった節目節目を大事にする精神は北野の大茶会を催した秀吉に、財務も収益も締めるべき点はきっちり締める姿勢は家康に通じるものがある。戦国の名将たちのいいとこどりをしてますね」と坂本。


 でありながら、西川のコンセプチュアルな思考は日本人の域を超えているとも。IR活動も自ら海外に飛び、精力的にこなす西川。「メジャーリーグの野球をやる」というそのポリシーに、坂本はアメリカンドリームの片鱗を見ている。



体力・気力・精神力は三十代にも負けない

 十代のベテラン組とともに、パーク24の将来を担う人材。それが、…機動力を誇 五十代のベテラン組みとともに、パーク24の将来を担う人材、それが機動力を誇る三十代だ。佐々木賢一(経営企画室長)と大塩剛司(資産活用室長)は、不動産ディベロッパーのリクルートコスモスで同期。一つ年下の菱井宏行(東京本店タイムズ営業部次長)も、同社からの移籍組である。


 リクルート時代、たまたま西川をよく知る人物から、土地を有効活用する駐車場ビジネスに何か具体的なアイデアがあったら提案してみないか、と声をかけられた。仕事柄、地主との深いつながりがあるパーク24に魅力を感じていた三人は、これまで平面活用だったものに、空間的な付加価値をつけられないだろうか、とアイデアを練る。提案した企画は、タイムズコート白金の原案となった。


 「決して若くはないけれど、ベンチャー精神の塊という感じ」とは、西川に対する佐々木の第一印象。大塩も「常に前を向きながら、次のステップに進んでいこうという事業へのロマンを感じた」と述懐する。


 企画提案は西川の即決で、実行に移すことになるが、当時の社内には不動産事業の実務者がいない。トップの考え方に共鳴していた二人は、西川のロマンに賭けて移籍を決意。半年後に、菱井も移籍した。


 現在は、三者三様の立場で事業の根幹を支える役目を果たす。

 「社員の平均年齢は三十歳。多少のプロポーションの悪さはあるけれど、若手三十代とベテラン五十代の間で、チャレンジとリスク管理の絶妙なバランスがとれている。この辺りは、社長の優れたバランス感覚の賜物」


 そう語る佐々木は、西川に近い存在として、西川の持つ感覚とのすり合わせに専心している。

 「物事の判断の強弱から、大局観のもち方、細かい気遣いまで、教えられることばかり。けっこう叱られますよ。でも、その後の憎らしいぐらいのフォローに、やられっぱなしです(笑)」


 タイムズの資産管理を統括する大塩は、PFI、SPCなど駐車場開発のバリエーション拡充に意欲を見せる。業界トップシェア企業として、いかに多様なチャネルをもった駐車場をプロデュースし、独自のビジネスモデルを確立していくかが課題だ。

 「駐車場のマークを、すべてタイムズ24にしたいですね」。その思いは、菱井も同じ。「あのシンボリックな看板が持つブランドカは大きい。これは他社に類を見ない強み。うちには、素晴らしい素材があるわけですから、それをいい料理に仕上げていくつもりですよ」


 昨年、IR活動のため、海外で二週間、西川とともに過ごした佐々木は、西川の体力・気力・精神力に驚いたという。

 「僕たち三十代でもクタクタなのに、社長は本当に元気ですよ。一日一都市を回る過酷なスケジュール。夜七時のフライトで、次の都市に到着すると夜十時過ぎ。それから街に繰り出すんですからね」


 そんなトップのエネルギーが、若手ホープたちの新たな闘志に火をつけている。



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