2015年02月19日
デジタル情報革命の鉄砲商人/インターネット総合研究所代表取締役所長 藤原 洋
企業家倶楽部2015年1/2月号 著者に聞く
『デジタル情報革命の潮流の中で』
藤原洋 著 アスペクト(1600円+税)
「政治的な力に屈してはいけない」。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、西和彦らが割拠する「デジタル情報革命の潮流の中で」、イーサネットLANの開発、そしてMPEG(動画圧縮技術)、デジタルハイビジョンの標準化はいかにして達成されたのか。「技術屋」として渦中にいた著者がその舞台裏とアスキーでの秘話を語る。
問 アスキーにいた頃の一番の思い出についてお聞かせ下さい。
藤原 デジタル情報革命の担い手たちとの出会いが多かったことです。
当時は大学を出て大企業に勤める、可もなく不可もない人生がスタンダードだといわれていた時代。だからこそスティーブ・ジョブズ氏が77年にアップル2、ビル・ゲイツ氏がマイクロソフトベーシックを出したときは「我々の世代にも世界を変えるような人がいるんだ」と思いました。アスキーに勤めていたのは、創業者の西和彦さんを通じて直接その中心人物たちと出会った時期でした。
問 西さんとはどのような方ですか。
藤原 先見の明のある方ですね。パーソナルコンピューターのあるべき姿を、時にはビル・ゲイツ氏よりも先に行くかと思わせるほど語っていました。
ジョブズ氏は本当に「直感の人」で、「教授が自分より出来が悪いからいてもしょうがない」と大学を辞めたこともあり、思ったことを言葉にも行動にもするタイプでした。その点では西さんとジョブズ氏は似ているかもしれません。良い意味で少年のようなところがありますね。
問 アスキーに勤めていた頃、ビル・ゲイツ氏にもお会いしたのですね。
藤原 彼のほうがビジネスマンですね。論理的に言葉を選ぶので、大企業のサラリーマンでも出世しそうです。何度も会っていますが、アピール力が抜群、というように見えました。ウィンドウズが発表されたときに「ようこそ未来へ」などと紹介するのですが、その原型はかつて米ゼロックス・パロアルト研究所に既にあったんです。自分が最初に生み出したかのように見せるのはすごい。
孫さんは西さんと比べるとビル・ゲイツ氏に近いかな。感じが悪いことは一切ないし、相手を喜ばせようとしてくれます。通信会社への周波数の割り当てが偏っていたことで「国のことを考えてるんですか」と大きく言う場面もありましたが、あれはポーズで、本当は怒っていないのでしょう。西さんやジョブズ氏なら正直なので怒っていたと思います。
問 インターネット総合研究所を設立した当初のお話を聞かせて下さい。
藤原 ベンチャー企業には、時代の変わり目でその一翼を担うという役割があると思います。「誰もやらないから自分がやるしかない」といったような、使命感のようなものがある。
当時はインターネットは従量課金制だったので通信料金も高額。そこで「インターネットで世の中を変える使命がある」と感じ、「定額課金で常時接続できる新しいネットワークを生み出そう」と考えました。そしてそれはブロードバンドという名前で実現しました。
インターネット総研の一番大きな仕事はこのブロードバンド時代を支えたことにあります。NTTのフレッツ網、イーアクセスのアッカネットワークス、それからヤフーBB。それらのバックボーンの設計にはほとんど我々が関与しているのですが、黒子の仕事です。
問 MPEGとデジタルハイビジョンという2度の標準化を成功させていますね。その一番の要因は何でしょうか。
藤原 仲間集めです。「俺の技術は素晴らしい」ではなくて、「一緒に標準を作りましょう」と世界中で自分たちの意見に同意してくれる人を仲間にする、参加型にしました。
デジタルハイビジョン放送が標準になり、NHKのアナログハイビジョンがうまくいかなかったのは、「研究費も十分にあって良いものができています」としか言わないから。ジャパンアズナンバーワンの時代ではありましたが、標準化は世界の人々のためにすることなので、自分の通したい意見を通すということではない。「みんなで使いましょう」というゴールをきちんと説明することが大事ですね。
問 以前「我々は戦国時代の堺の鉄砲商人だと」仰っていたのが印象深いです。
藤原 大名である経営者の皆さんは天下を取りに行っているので、私のような技術屋は最先端の技術という鉄砲を提供する役回りかなと思っています。
そのため、利益や株価の話はせず「これからの時代はこうなるべき、新しい技術がこういう時代を作ります」というような文化論を伝えてきました。
問 これからのインターネットはどのように変わっていくでしょうか。
藤原 通信網を革新するところから、社会全体のイノベーションに変わっていくでしょう。
インターネットに繋がれているPCやスマホなどに与えられる固有のIPアドレスは、現在25億個くらいだと思います。これが、2020年に控えめで言っても500億個まで増えると言われています。世界には500億人もいませんから、ゆくゆくはインターネットに繋がれるのはモノになるわけです。IoTという言葉があるように、モノとモノがインターネットで繋がるようになる。
最近某大手電機メーカーも私のところに来て、IoTを生かした商品で「何かやりましょう」と言っているところです。また、我々の顧客にはゲノム解析でインターネットを活用する会社があり、患者専用に薬をつくる個別創薬の研究も進んでいます。
問 インターネットの可能性は非常に大きいですね。
藤原 そうですね。だからこそ、現在はまだ当社の事業は証券コードの分類上、情報通信産業ということになっていますが、そこからの脱却も考えなくてはなりません。
今までインターネットは総務省や経済産業省、ITや通信業界の道具でした。今後は医療や農業などあらゆる産業に使われ、それが当たり前になるインターネット前提社会になります。当社もそれを見込み、第2、第3の創業を考えているところです。自分たちにしかできないことをやるのであれば、存在意義があると言えるでしょう。
ブロードバンドタワーは小さい会社ではありますが、連結の売り上げで約267億円に到達し、その経営者であることが自分にとって1つのアイデンティティになっています。
しかしその一方、会社という言葉を反対にすると社会となるので、社会の一員として影響力を持ちたいと考えています。そのためには会社を大きくしたり、大学や政府の委員会に参加することも手段の1つでしょう。その中でインターネットの課題や将来を社会に働きかけていくことが、技術屋としての私の性にあっていることだと思います。
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