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トピックス -企業家倶楽部

2015年02月25日

社長の仕事/SBIホールディングス代表取締役執行役員社長 北尾吉孝

企業家倶楽部2015年1/2月号 世相を斬る! vol.6


今回で本連載は最終回を迎えることになりました。これまでの連載ではマクロ経済やマーケティング界の流行語とも言えるオムニチャネル、そして私の盟友でもあるソフトバンクの孫さんについて等々様々なことを書かせて頂きました。最終回は本誌『企業家倶楽部』が経営者の方や将来経営者となることを目指す方々に多く読まれていることを踏まえ、私が考える「社長像」について書かせて頂ければと思います。



社長の仕事についての様々なご意見

 OAG税理士法人発行の月刊誌『the Heartful OAG』のvol.113に、「社長の仕事」というタイトルでOAG グループ代表・太田孝昭さんのコラムが載っています。

 その中で太田さんは、社長の仕事について「他にも様々な仕事がありそうです」と言われながらも、具体的に次の8つを挙げておられます。

① 情報収集:勉強することです。 大きな意味では世の中がどのような方向に向いているのかを感知し、時代に会社を合わせることが求められます。

② 仕組みを作る:なかなか難しいですが、仕組みが全てと考えて、仕組み作りに励む。

③ 働く風土を整える:人が能力を発揮しやすい風土(組織)を作る。組織は必要ですが、往々にして組織が能力発揮の邪魔をする事があります。

④ 営業する:やはりトップ営業は必要でしょう。

⑤ クレーム処理:何といっても大事なことです。お客様の為にも、クレームを起した社員の為にも。クレーム処理で社員の能力も測れますし、お客様をより深く知るきっかけになります。

⑥ 適材適所:人事評価によって決めるのですが、往々にして見間違いは起こります。上からは意外に見えないものです。

⑦ ブルーオーシャンを探す:①にも通ずることですが、ビジネスの隙間探しですね。

⑧ 資金繰り:企業は資金繰りが全てと言う人もいるくらい重要な事です。

 以上のような太田さんのご意見を受けまして、私も「社長の仕事」について述べさせて頂ければと思いますが、その前に社長という役職は会社という組織の一形態におけるリーダーでありますので、まず「リーダーとは何か」について考えたいと思います。



リーダーとは何か

 以前ある誌面にて、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)創業者で現在は最高顧問の大竹美喜さんが、「リーダーとは何であるのか」という質問に対し、「日本では、リーダーという言葉の定義が曖昧で日本語にない言葉の一つです」との認識を示された上で、コーディネーターやインストラクター或いはヒーローを例に挙げながら、リーダーというものを語っておられました。私自身が同じ質問を受けたとして考えとして挙げられると思います。

① 一つの志(理想を目指し到達しようとする心)を描き、その志を共有して行く仲間達が存在する

② その共通目的の実現のために集った仲間達から、その能力や手腕あるいは人格等により指導者という形で仰がれる

③ その目的を成功裏に成し遂げるべく、目標達成に対する誰よりも強い意志と熱意を有する

④ その仲間達全てと会社組織に対しても透徹した責任感と犠牲的精神といったものを持つ

 そして、以上の4点を兼ね備えるようになる時、自他共に目的遂行のためのリーダーとして自覚し、まわりの人達からもそう認識されて行くというふうになるものだと考えます。

 此の4点を兼ね備えるためにはまず志が必要になるのですが、志を持つということでは、例えば『後漢書』の中に「有志竟成(ゆうしきょうせい):志ある者は事(こと)竟(つい)に成る」という中国の後漢王朝の初代皇帝である光武帝の有名な言葉もありますが、此の志という字は士の心と書きます。さらに士という字を見ると、十と一で成り立っており、十は大衆、一は多数の意志を責任持って取りまとめること、あるいはその人たちの一般的指導者を表します。ゆえに志とは公に仕える心、多くの人を引っ張っていく責任の重たい士の心と考えることができます。

 此の字に関しては諸説あって先日もある人の本を読んでいたら、「志という字は十の下に心と書く。仮に十から九を引くと残るのは一人の心であり、一人の命を全て捨て去って最後に残るものが志だ」というふうにあり、非常に味のある考え方だと思いました。私の志に対する考え方は、指導者という人が持つべき心が志だとする伝統的な見方でありますが、このような考えと一脈相通じると思います。

 そしてもう一つ、そもそもリーダーというのは定義に当て嵌めてリーダーか否かを判別するような話ではなく、その人自身がどう思うか・周りがその人をどう思うかという問題だと思っています。だから、私は夫々の分野において色々なリーダーが夫々のタイミングで存在すると考えます。

 そういう意味では今リーダーとしている人が、そのポジションではリーダーかもしれないけれども、他へ行けば他のリーダーがいるということかと思われ、リーダーというのは夫々の組織体の中で自然と決まって行くものだと思っています。



社長の仕事とは何か

このようなリーダー観にもとづき、私が今「社長の仕事は何ですか」と問われれば、大きく言って一言で「大志を抱く」ということだと答えましょう。社長の仕事とは、その大志の下に志念を共有する多くの人物を集め、その志に向かって唯ひたすらに進んで行くことであります。

 そして、その志には二つの要素がなければならず、一つは言うまでもなく世のため人のためという強固な意志を持つことで、もう一つは世のため人のため何を為すかという明確なビジョン、及びそれを達成するための戦略が求められるのです。

 丁度一人の人間が何かを目指し一生懸命に取り組む時、それが私利私欲のためでなく世のため人のためになり得ると認められるならば、人間というのはその熱意に動かされ「少し力を貸してやろうか」といった気持ちが段々と出てくるようになるものです。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という山本五十六元帥の言葉がありますが、自らがやってみせねば熱意など人には伝わりませんし、その人が本当に熱意を持っているということにもなりません。指導者の最高の熱意というものは確実に伝わって行きますし、その熱意があれば次第に人は感化されて行くものです。

 またビジョン及び戦略に関しては、社長はあらゆる事柄を常に考え抜きベターな状況を作り出して行く方向を選択し、部下あるいは自分に付き従う者に正しいと思われる方向を与え続け、そして究極的には、そうした同じ志を有する人達と共により良き世を具現化して行くことが求められます。換言すれば此のビジョンと戦略というのは、「偉大とは人々に方向を与えることだ」とニーチェが言うようなことかもしれません。そして、方向を与えるということでは、そもそもその羅針盤が狂っていれば目的地に全く到達できなくなりましょうし、多くの選択肢から正しいと思われる方向を選んで行くと同時に、また極めて難しいことではありますが、その方向の正しさがいつ時点を基準にしているのかも考えねばなりません。社長としてこうした方向を与えられず、「会して議せず、議して決せず、決して行われず」では、部下あるいは自分に付き従う者が幸せになるはずなどないのです。



志と野心の違い

最近は志と野心を勘違いしている人がたくさんいます。しかし、この二つは全く違うものなのです。志というのは利他的なものです。だから共有され、後世に受け継がれて行きます。一方、野心とは利己的なものですから。一代で完結してしまい、受け継ぐ者が出てこないのです。

 松下幸之助さんは松下電器産業を大正7年に創立されますが、昭和7年5月5日に真の使命を知ったとして、その日を「命知元年」と名付けられ、全従業員を集めて「所主告示」という次の一文を発表されました。

 『凡(およ)そ生産の目的は我等生活用品の必需品の充実を足らしめ、而(しこう)してその生活内容を改善拡充せしめることをもってその主眼とするものであり、私の念願もまたここに存するものであります。我等が松下電器産業はかかる使命の達成をもって究極の目的とし、今後一層これに対して渾身(こんしん)の力を揮(ふる)い、一路邁進(まいしん)せんことを期する次第であります』

 ここには金儲けのことなど一言も書かれておらず、述べておられるのは正に世のため人のためという想いのみです。之こそが本物の志というもので、こうした志の下で事業を行ったが故に、松下さんは成功されたのでありましょう。

 人間学の修養を続けつつ、絶えず襲ってくる私心・我欲を振り払い心の曇りを消しながら世のため人のためを貫き通し、片方で最大限に近未来を予測して私利私欲を離れたところでベストチョイスを為して行く。世に多くの社長は単に「自分の会社が伸びた」とか「自分が金持ちになった」などではなく、大志を抱いて世のため人のためになる何かに向って全力投球し職責を果たすべきでしょう。



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北尾吉孝(きたお・よしたか)

1951年兵庫県生まれ。74 年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78 年英国ケンブリッジ大学経済学部卒。87 年第二事業法人部次長。91年野村企業情報取締役(兼務)。92年野村證券事業法人三部長。95 年ソフトバンク入社、常務取締役管理本部長に就任。99 年ソフトバンク・ファイナンス社長。現在、SBIホールデイングス代表取締役 執行役員社長。



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