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トピックス -企業家倶楽部

1997年04月27日

【伊藤園特集】気配りと誠意を尽くす人柄が ビジネス抜きで語り合える男同士の友情を生む/本庄正則の人的

企業家倶楽部1997年5月号 特集第5部

気配りと誠意を尽くす人柄が ビジネス抜きで語り合える 男同士の友情を生む

 
 「一途に究めるタイプ」「気配りの天才」「義理、人情を重んじる人」。第一印象としては質実剛健なイメージが漂う本庄だが、本人をよく知る友人たちは口を揃えて、彼の人間性をこう形容する。一方、本庄自身は自らを「運のいい男」と称し、成功の7割が運、3割が人間関係だと語る。しかし強運は黙っていては舞い込んでこない。本庄のもとへ運を招き入れてきたのは、彼が気配りと誠意をもって丁寧に築き上げてきた人間関係ではないだろうか。かつての財界の大物に目をかけられ、ビジネス抜きに語り合える友人の多い本庄正則。その揺るぎない人的ネットワークからは、信義を貫き通す男のこだわりがかいま見えてくる。



仕事も人づきあいも 納得いくまで究め尽くす

   伊藤園の缶入りウーロン茶は、インスタントラーメンと並ぶ戦後の二大ヒット商品とまで言われる。品質や風味を損ねずウーロン茶を缶に入れるのに、本庄は研究開発に十年間もの時間を費やした。この徹底したビジネスの姿勢に、一途に究める本庄の性格が現れている。

   セコム会長の飯田亮はそんな彼を、「彼も俺も思い込んだら命がけの男だから」と表現する。

   一途さはビジネスだけでなく、人間関係にも共通する。本庄は東急グループ総帥の故五島昇にかわいがられた企業家の一人だが、五島に対する彼の思いには並々ならぬものがあったようだ。

   「五島さんの命令なら、たとえ無理難題でもハイと従ってしまう。これぞと思った人には頑ななまでに尽くし通すのが本庄さんです」とはモスフードサービス会長の桜田慧。

   伊豆下田に別荘を構え、カジキマグロの釣りを趣味とした五島の話は有名だが、本庄はその釣り仲間の一人でもあった。

「日産の石原会長、鹿島の石川会長、セコムの飯田会長、伊藤園の本庄会長、それに私の五人で連合艦隊を組み、カジキマグロの釣り競争をやっているんですよ。伊豆の沖合で誰がいちばん大きいカジキをとるか」

   亡くなる半年ほど前、城山三郎との対談(雑誌『宝石』一九八八年十二月号より)で五島が語ったこんな言葉からも、彼と本庄の距離の近さが伺える。

   五島に「お前もそろそろ船をもてよ」と言われて本庄が「ハイ」と答えたら、早速、五島の指定した船会社が訪ねてきて船の見積もりを出しはじめた。船に関しては全く素人だった本庄が「二、三億円かかりますか?」と聞くと、それがまた「太っ腹な奴だ」と五島に気に入られたというエピソードも残っている。

   本庄が五島、飯田の三人で初めてカジキ釣りに出かけた時のこと。五島は事前に「一番初めに釣った者に対し、あとの二人は五万円払い『参りました』と土下座すること」と提案した。五島一流の茶目っ気である。

   ところが、最初に釣ったのは何とビギナーの本庄。船を出して三十分後に百五十五kgの見事な黒カジキを釣り上げた。早速五島に無線で連絡する。「サバか何かの間違いじゃないか」と信じてくれない。そして本当だと分かると、五島からの連絡が途絶えた。

   結局、その日は五島が遅れて本庄より五kg重いカジキを釣り、飯田はゼロ。別荘に帰ったら、五島が「一番重いのを釣った方が勝ち」とルールを訂正、”専制君主“振りを発揮した。



七〇%の強運を招き入れる、 三〇%の確かな人間関係

   本庄といえばビジネス界では、プロ級の腕をもつゴルファーとしても有名だ。グリーンの上でも彼の”究める性分“はやはり際立っている。ゴルフを始めたのは二十四歳の時。当時は出社前に練習場で三百から五百発。仕事が終わるとまた三百発。練習しすぎて肋骨を折ったこともあるほどの熱の入れようだった。

   その甲斐あって始めて一年でハンディ8、その後、四年でハンディ1(二年間維持)という驚異的スピードで腕を磨いた。七年ほど前、胃ガンの疑いで手術を受けてからは「やっとかわいいゴルフになって、人並みになってきた」(ゴルフ仲間談)というが、調子が良ければ、ハーフ三十台を出し、かつての片鱗が窺える。

   ゴルフ好きが高じて、本庄が千葉県に「グレートアイランド倶楽部」をオープンさせたのは四年ほど前。ここは現在「伊藤園レディーストーナメント」の舞台ともなっているが、このイベントでも本庄の”気配りの天才“ぶりが発揮される。ゲストの歓迎パーティーのためにフランスから生のフォアグラを空輸したり、特別にシェフや寿司職人をつれてきて、最高級のもてなしに徹するのだ。

「プロアマのトーナメントの中でも、その接遇ぶりは多分日本一でしょう。どうせやるならいたれり尽くせりのことをして、人を喜ばせたいという姿勢は凄い。彼ほど気配りのできる人は少ないですね」

   モスフードサービス会長の櫻田の言葉だが、これは本庄の友人たちが誰しも認めることである。気配りの細やかさは同時に、義理人情を重んじる性格にも通じている。「グレートアイランド倶楽部」は当初「ファイブアイランド」にしようかという話も出たほどで、世話になった五島にこだわるそのネーミングにも、本庄流の義理がたさが現れている。

   ゴルフといえば、本庄はこれまでにホールインワン八回という神業をなし遂げている。一方胃の手術をはじめ過去に数度、執刀を受けているが、こうした病気の発見はすべて偶然の所産だったと聞く。ウーロン茶買いつけのきっかけも、健康ブームと相まっての無糖飲料の伸びも、本庄が意図して招いたものではない。 「私はなにしろ運が強いんですよ。伊藤園の今日も七〇%は運で、三〇%が上下横の人のおかげ」

   仕事の話になると本庄自身は、ビジネス戦略や先見性よりも、むしろ自分の運の強さをことさら強調する。しかし常日頃から友人知人に気を配り、いざとなれば彼らのために誠意を尽くす姿勢と、そこから構築された広い人間関係が、強運の呼び水になっていることはまず間違いないだろう。本庄の人的ネットワークを貫く一本の軸からは、古き良き日本の心のようなものが感じられる。



プロの仕事師 ずば抜けた勘の 鋭さをもつ人  東映会長 岡田 茂氏

   岡田は本庄が経営するゴルフ場「グレートアイランド倶楽部」の理事長、そして今年設立した本庄国際奨学財団の理事として名を連ねる仲だ。

   本庄との付き合いは日産系のディラー会社を退職し、食品問屋を始めたときからというから二十五年にはなる。

   岡田と出会った頃の本庄はお茶だけでは儲からないと不動産業も手掛けていた。ある時、埼玉銀行頭取の大木とともにゴルフをしていた時だ。大木に「不動産をやるなら融資しない」と宣告され、岡田も「撤退で苦しむならあっさり捨てて、新しいことにエネルギーを傾けるべし」と勧めた。撤退の難しさは岡田自身が一番知り抜いていたからだ。

   本庄は「わかりました、お茶屋に徹します」と答えるや、翌日出社すると、いきなり保有していた不動産を全部売り払い、不動産業務から撤退指令を出した。突然の命令にわけのわからぬ社内は騒然となった。この時、岡田は本庄の決断の早さ、潔さにただならぬものを感じたという。

   岡田の紹介で本庄の交友関係も次第にさまざまな分野に広がっていった。特に親しい友人関係を築いたのは岡田が会長、本庄が世話人のOK会のメンバーとである。そのメンバーたるや、すかいらーく社長の茅野亮、モスフード会長の櫻田慧ら、いずれもそうそうたるメンバーであった。

   本庄は今もこのメンバーとともに遊び、ともに語り合う気のおけない親友として付き合いを重ねている。

「本庄さんは他にもさまざまな会に顔を出しては、ネットワーク作りをしていたようだが、特に五島さんには可愛がられた。五島さんは好き嫌いが激しい人だったが、なぜか本庄さんのことは気に入って、本当に可愛がっていた」。

「五島さんに君も来いと言われるとハワイやスリランカにも二つ返事で同行。船を作れと言われりゃ、すぐに船を作り、伊豆の五島さんの別荘の傍らに別荘を建てて、カジキマグロ釣りのお供をしていた」。

「五島さんや瀬島さんとスリランカに同行したとき、紅茶を買わないかと言われ、紅茶を手がけるきっかけとなった」。「礼儀正しく、先輩には心から尽くす人だね。そしてなんといってもすこぶる面倒見がいい」と、岡田は本庄の人柄を絶賛する。

   気配りだけでない。岡田は本庄を「プロの仕事師」と、その仕事にかける情熱と販売第一の販路主義を評価する。そして「経営者として数字に強く、ずば抜けた勘の鋭さを持つ人」と語る。「とにかく真面目で人に心から尽くす人。伊藤園をあそこまで大きくしたのは一にも二にも本庄さんの人柄だろうね」と、岡田は弟分の活躍ぶりがうれしくてたまらないといった表情で饒舌ぶりをみせた。



細心にして剛胆 バランスの取れた創業者  オンワード樫山会長 馬場 彰氏

   「細心にして剛胆。一見すると、強面(こわもて)の風貌だが、内面的には実に細やかな神経の持ち主だ」―。オンワード樫山会長の馬場彰の本庄評だ。

   二人の出会いは十五年ほど前にさかのぼる。YPO(ヤング・プレジデント・オーガニゼーション)の会合で知り合った二人は「横浜在住の会員で集まろう」と横浜エレベータ会長の勝治信、三浦印刷社長の三浦久司を誘って四人で会合を持つようになった。以後、ひんぱんに会合を重ね、今ではメンバーは二十四、五人に増えた。

   馬場はいつも本庄の気配りのすごさに感心させられる。仲間が少しでも体調を崩すと、「一番に見舞いに行くのは本庄さん」。裏切られても、裏切らない性格。ある時、仲間の一人が友情を裏切るような行為に出た。恐らく本庄にとってはショッキングな出来事であったはずだが、「本庄さんはその後もその仲間と以前と変わらぬつきあいを続けた」という。

   細やかな神経はビジネス面でも発揮されている。株式を店頭市場に公開する時、本庄は公開の手続きから財務上の分析まで全部自分で手がけた。「経理の者に任せておけばいいのに、本庄さんはすべて自分でやらないと、気がすまないタイプ。とても真似できない」と馬場は本庄の緻密さに舌を巻く。

   もっとも、普段のつきあいでは、仕事の苦労は露ほども見せないのが本庄の美学。「シャイな人で仕事の苦労話や自慢話をほとんどしない。しかし、ヤマ勘だけでは、缶入り緑茶なんか開発できない。相当勉強しているに違いない」と馬場はみる。



本音で語り、本気で楽しむ 少年時代のような親友関係  セコム会長 飯田 亮氏

   「本庄ちゃんは何しろ男気があるね。人相は悪いんだけどさあ(笑)。とにかく一二〇%正直。一二〇%人を裏切らない男。だから全面的に信用できる。彼との付き合いで俺は一度も嫌な思いをしたことがない。向こうは嫌な思いしてるかもしれないけれどね(笑)」

   独特のユーモアをたっぷり交えながら、飯田は二十数年来の親友である本庄のことをこう切りだした。飯田も本庄も故五島昇に目をかけられ、伊豆沖合でともにカジキマグロを追いかけた釣り仲間でもある。五島の健在中、本庄が初めて大物のカジキマグロを釣り上げた日のことを、飯田は今でも忘れられない。

「あの時は本当にしゃくにさわったよ。俺は朝六時から海に出ているのに何も釣れない。そこに初めて海に出た本庄ちゃんから『捕れたよ!』と無線が入った。しばらくして五島さんからも『オーイ、マコト、捕れたぞ』とひと声。俺は夕方まで粘っても結局収獲はなし」

   その晩、五島の別荘で獲物の話に花が咲いたが、彼らを横目に飯田はただ黙々と酒を飲むばかりだった。「あの晩のメシのまずかったこと。悔しいんだけど、でも一方では初めて釣り上げた彼に対して『本庄ちゃんよかったな』って思いもあるわけさ。複雑なんだよな」

   また七年前、本庄が胃の手術をした時のことだ。術後、彼は食欲がなく点滴だけで体力の回復が心配された。担当医からそんな話を聞いた飯田が彼を見舞った。その時の二人の会話を再現すると……。

   飯田「お前、メシ食わねえんだってなあ」

   本庄「そうなんだ。気持ち悪くなっちゃってな」

   飯田流のユーモア混じりに「じゃあ、お前、ずっと点滴の生活してたら」

   本庄「そうもいかねえよなあ……」

   その翌日から本庄は食事に箸をつけ始めたという。「あいつ、俺の言葉がしゃくにさわったんだろうな」と当時を振り返って、飯田は豪快に笑った。カジキマグロの話といい、この見舞いのエピソードといい、そこには仕事を抜きにした男同士の、爽やかな友情が感じられる。

   ところで企業家としての本庄に対する飯田の評価はどうだろうか。初めて伊藤園のウーロン茶を目にした時、お茶に対する全く新しい価値観を消費者が受け入れるかどうか飯田は疑問に思ったという。しかし日本社会にセキュリティという新しい価値観を根づかせ、ビジネスとして大成させたという意味においては、飯田も本庄も共通点が多い。 「だから本庄ちゃんの苦労は十分理解できますよ。ウーロン茶も最初は売るのが大変だったと思う。でも商売の苦労なんて、我々の仲間はお互いに誰も口にしないからね」  

   わざわざ語らずとも通じ合える。そこからも飯田と本庄の関係が十分に伝わってくる。



会うだけで楽しくなる人物 刎頸の友のようなつきあい すかいらーく会長 茅野 亮氏

   本庄との出会いは十五、六年前に遡る。セコム会長の飯田亮を囲むゴルフの会「マコト会」を通して知り合って以来の友人で、茅野は「グレートアイランド倶楽部」の理事も引き受けている。

「とにかく会っているとワクワクして楽しい人。遊びも含めて、何か事を起こすとき、彼のためならすぐに行動したくなります。僕にとっては刎頸の友のような存在です」

   茅野のこの言葉の背景には、本庄の面倒みのいい人柄が多少なりとも影響しているようだ。友人が困っている時には、損得抜きに心底尽くすところがあり、気配りの人だとも茅野は言う。

   かつて喉や胃の手術をしたこともあって、本庄はさまざまな医者とのネットワークをもっている。体の部位別に主治医が何人もいるというから、その交流の広さは想像に難くない。すかいらーくの役員の家族が病気になった時も、本庄は親身になって医者や病院を世話してくれたという。しかし茅野は彼を親分肌だとは見ていない。

「彼の面倒みのよさは親分肌というより、細やかな気配りから出てきていると思いますね。口では冗談を言ったり、雰囲気を盛り上げようと気を使うけれど、本質的には非常に真面目一徹な人です」

   その真面目さが容易にわかるのは、彼のゴルフへの姿勢。本庄にかかるとゴルフもビジネスの合間の「たかが遊び」ではなくなる。またそうでなければ、プロ級の腕にまではならないだろう。

   茅野の感想によれば、トラブルショットのフォローアップの場面でも、本庄は一か八かという無理は決してしない。確実に緻密に決めていくのだという。

   そんな性格はビジネスにも貫かれている。千億から年商千二百億の企業のトップでありながら、本庄は自らを「僕は企業家ではなく商人です」と謙遜する。

「彼も僕もお客さん相手の商売だから、常に消費者を大切にしていかなけりゃいけない。役割分担が明確な大企業と違って、我々、中堅企業は二十一世紀を見つめながらも、『商い』の原点に立ち戻らないと会社が浮き足だってくるんです。彼のいう『商人』という感覚は、僕にもよくわかりますよ」

   右肩上がりの業績に奢らず、常に原点を忘れない謙虚さ。そんな経営姿勢に加えて、商品開発力を強化してきたところに、茅野は本庄のビジネス手腕を感じるともいう。

「お金を出してウーロン茶を飲むという発想のない時代に、その価値観を変えていくだけの開発力をもっていたことが伊藤園の強み。自動販売機の出現や、加糖飲料から無糖飲料の健康志向へという時代の変化に対して、思い切って商品開発力をぶつけてきた。その大胆な決断力にも本庄さんの凄さがあるんです」



気配り、こころ配り、 目配りを忘れない 信義の人  モスフードサービス会長 櫻田 慧氏

   「神経が細やかで気配り、こころ配り、目配りを忘れない。本庄さんほど人づきあいを大事にする経営者は少ないんじゃないでしょうか。この人と思ったら、頑ななまでに信義を守るところがあります」

   櫻田は本庄の心の細やかさを何度も強調した。それは時として、思い切りのいいお金の使い方に見て取れるそうだ。

「ここぞという時に彼は『エッ!』というほど上手にお金を使います。友人の冠婚葬祭を大事にするし、祝い事の時も驚くほどです。その思い切りが並大抵じゃないから、強烈な印象として残るんです。お金の問題だけではないですが、彼は人の心理を掴む才覚をもっていますね」

   伊藤園の成長の最大の要因を、櫻田は本庄のこうした気配りの哲学だと考えている。

「クリエイティビティやイノベーションも大きく寄与しているでしょうが、本庄さんの生き方に影響されて、伊藤園はきっと営業力が強いはずです。気配りの精神で常にマーケットの動向に注意し、新しい動きを少しでもキャッチしたらすぐに商品化する。行動も早い企業です」

   本庄自身によると商標登録済みの伊藤園の商品は約四千アイテム。そのうち飲料市場で動いているのが約百アイテム。櫻田が指摘するように、開発商品の多さはマーケットリサーチのダイレクトな反映ともいえるだろう。桜田は本庄のもうひとつの人柄に、謙虚さがあるという。

「信義を大事にする人。自分が黙って誠意を尽くすだけに、調子のいい人を嫌います。またいろんな会合でも本庄さんは表に立つのを控え、挨拶などを頼まれてもできる限り辞退しますね。そういう意味では典型的な日本人経営者のひとりといえるかもしれません」

   日本的といえば、本庄は実は英語が大の苦手である。以前、櫻田がロサンゼルスで合流する約束をした時、本庄は彼と空港で出会えない場合を想定し、不安に思ったあげくこう言った。

「ハワイから飛行機をチャーターしようか。もしロサンゼルス空港で会えなければ、そのままハワイに逆戻りできるから」

   自分のゴルフ場までつくってしまう人の、いかにもスケールの大きな発想である。

   ところで櫻田は毎朝五時に起き、三十分間天然塩の入った風呂で下半身浴をし、健康には人一倍留意している。そんな友人として、本庄へのアドバイスはただひとつ。

「彼は薬の飲み過ぎです。薬は極力飲まず、有機野菜を食べること。医食同源。彼のような人には健康で、ずっと頑張ってもらわなければいけませんからね」

   きっぱりとした口調ながら、その言葉には友人を思う温かな思いが込められていた。



企業拡大の第二ラウンド 伊藤園に文化貢献を期待  ホリプロ会長 堀 威夫氏

   「古色蒼然とした礼儀作法が、そのまま洋服を着て歩いているような人だよね。日本人が社会全体として失っているものを、彼は非常に濃密にもっているんじゃないかな」

「信義の人」「気配りの人」といった本庄の形容詞は、堀のフィルターを通すとこうした表現になる。多くのタレントたちを発掘し、育ててきただけあって、彼は本庄の外見にも言及した。

「礼は形に始まるといい、立ち居振る舞いに出ます。彼は姿勢がいい。背筋がピューッと伸びていて、礼にかなっている。ただ顔つきはお茶屋に向いているとはいえませんけどね(笑)」

「礼」を堀の別の言葉に置き換えると、ナイーブということになるのかもしれない。

「一見、そうじゃないような雰囲気を発していながら、彼は非常にナイーブな人。東映会長の岡田さんをはじめとした先輩のたて方や行動に、彼のナイーブさを感じます」

   人間関係においてもビジネスにおいても、本庄はナイーブさと大胆さも併せもつとも堀は指摘する。人づきあいでも、一旦心の琴線にふれると、損得度外視で行動する場面を何度か目や耳にしたと聞く。もうひとつ堀が本庄から強く感じるのは、彼の中にある純粋さだ。

「すごくシャイで、今でも少年のごとき心をもっている。五島さんのひと声で船をもち、別荘を買ったのは師、先輩、親などに対する一種の憧れもあったのではないかな。何歳になっても、かくありたいという夢を抱き続けられるのが、本庄さんだと思いますね」

   そんな彼に対して堀が楽しみにしているのは、伊藤園が将来にむけてどんな企業文化を打ち出してくるかということ。お茶という伝統的な商品から出発して、伊藤園の商品群は今やフルーツドリンク、コーヒーなど若者市場にも参入してきている。若者文化を担う業界柄、堀には伊藤園の若い消費者層への訴求力が気になるところなのだろう。

   老舗には厳然とした歴史があるが、保守的なイメージもつきまとう。老舗として生き残っていく企業は、伝統のよさを維持しながらも、日々革新につとめているというのが堀の意見である。

「本庄さんは商品開発という物理的革新には非常に積極的な人です。一方で企業の年商が千億円を超え次の段階へ発展する時、そこには精神的革新も必要になってくるのではないでしょうか。本庄さんのもつ質実剛健なイメージが、そのまま伊藤園の企業イメージになっているような気がします。その真面目さを大切にしながら、これからは自動車でいえば、ハンドルの遊びのようなものが加わってほしいですね」

   釈迦に説法のようだけど……と前置きしながらも、企業文化を見つめる観点から、伊藤園の今後に対する堀の静かな期待感が伝わってきた。



純粋でデリケートな感性が 消費者心理までも掴みとる  ビックカメラ社長 新井 隆司氏

   伊藤園の缶入り緑茶「お~いお茶」、缶入りコーヒー「プレミアムモカ」、「アロエドリンク」の缶をポーンと接客用のテーブルの上に置いて、新井がひとこと。

「この三本セットは私のお勧めなんです。どんな偉い人がここに来ても、この三本を出すんですよ。別に伊藤園から頼まれて、商品の宣伝してるんじゃないよ(笑)。でもそこが本庄さんの不思議なところ。損得感情抜きに、ついあの人とは付き合ってしまう。それが彼の人間的な持ち味でしょうね」

   東京・池袋の繁華街のビルにあるビックカメラ本部は、現場に直結した営業所といった雰囲気だ。新井のざっくばらんな人柄もカジュアルな雰囲気の社長室も、本庄のそれとは対照的に映ってしまう。

「対照的なのに仲がいい。面白いでしょ。あの人はひと言でいうと非常にピュアでデリケート。酒の席でのちょっとした気配りや会話から、彼の純粋さが醸しだされるんです」

   新井はお茶の商売には、彼のデリケートな感性はうってつけだと考えている。清涼飲料は生活必需品ではなく嗜好品。微妙な人間心理を把握し、それが商品に反映されてこなければ、消費者は嗜好品に決して手を伸ばさないからだ。

「デリケートな感性があるから、本庄さんは大きいことをやっても失敗しない。大きいことは小さいことの積み重ねですから。彼が陽気にガハハと笑える背景には、缶一本売って何円儲かるという裏付けがきちんとあるからだと思います」

「グレートアイランド倶楽部」の正式オープン前、現地で彼とプレーした新井は、本庄の故五島昇に対する強烈な思い入れと神経の細やかさを感じたことがある。植物に詳しい新井が、グリーンでふと漏らした言葉がきっかけだった。

「スリーハンドレッド(五島のゴルフのホームコース)にはメタセコイアのいい木がたくさんあったよ。五島さん、メタセコイアが好きだったんじゃないの?」

   その話を聞いた本庄は即座にスタッフにメモを渡し、プレー終了までにメタセコイアが植樹してあることをきちんと調べさせていたのだ。

「本庄さんにとって五島さんは人生の師だったんですね。ゴルフコースの建設、伊豆下田の別荘や釣りの趣味、何をとっても彼には五島さんのイメージが重なり合う」

   同じ日、新井にはもうひとつ印象深い出来事がある。「グレートアイランド倶楽部」は初めて訪れたコースだったため、設備の場所など要領を得ずに戸惑っていると、見知らぬ青年が驚くほど親切にしてくれた。それが本庄家の子息だと知ったのは、後になってからのことだ。

「彼も僕が何者かは知らなかったようです。にもかかわらず自然に手をさしのべられる。親父の影響でしょうね。凄いなあと思いました」

   新井は妙に感じ入った口調で、こうしめくくった。



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