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トピックス -ビッグベンチャー

2015年03月13日

今から100年続く会社を目指す/エイチーム代表取締役 林 高生

企業家倶楽部2015年4月号 今、日本を最も面白くする企業家たち


林 高生(はやし・たかお)

1971年、岐阜県生まれ。中学卒業後はさまざまなアルバイトを経験。97年、個人事業としてソフトウェアの受託開発を開始。00年、有限会社エイチームを設立し、代表取締役社長に就任。04年、株式会社に組織変更。12年4月東証マザーズ上場。12年11月、東証一部へ市場変更。14年「第16回企業家賞」受賞。






史上最短で東証一部へ

 名古屋発の急成長ITベンチャー、エイチーム。このユニークな社名に社長の林高生は、米国人気ドラマ「特攻野郎Aチーム」のように、「その道のスペシャリストが集まり仕事をしたい」という願いを込めた。2012年4月に東証マザーズに株式上場を果たすと、その僅か7ヵ月後の同年11月には東証一部へ市場変更し世間から注目を集めた。マザーズ上場から233日目での東証一部昇格は東証史上最速となり、今もその記録は破られていない。

 東証マザーズに上場承認が降りた際には社員にサプライズの演出を用意していた。400年に1度のうるう年の2000年2月29日に会社を登記し、12年後の2012年2月29日に東証マザーズに上場承認が降りるようにタイミングを合わせるとは何ともドラマチックな演出だ。この日、林はナゴヤドーム球場を借り切り、全社員300人をグランドに招いた。

「たった今、マザーズへの上場承認が下りました!」と林が宣言すると、社員たちから一斉に歓声が上がった。その後、マウンド上で上場後初めての取締役会を開催するなど粋な計らいだ。

 2014年6月4日、スマートフォンの無料対話アプリを手掛けるLINE(ライン)が日米で同時上場を検討すると新聞紙面に掲載されると、業務提携をしているエイチームもライン関連株として注目され、株価は15%も跳ね上がりストップ高となった。現在、時価総額は700億円超となっている。社員は400名を超え、2013年7月期の売上げは109億円、経常利益は17億円に達した。今やエイチームは名古屋を代表する企業となった。


史上最短で東証一部へ

みんなで幸せになれる会社

 しかし、ここまで来るのには数々の試練があった。まずは林の生い立ちに遡ろう。林の父親は有名な陶芸家で、裕福な家庭であった。それが林が9歳のとき、父親が41歳の若さで病死してしまう。青天の霹靂だった。一家の稼ぎ頭を失った林家の生活は一変する。家は競売に掛けられ、借金2000万円が残った。林はこの借金を返すために高校進学も諦めアルバイトに明け暮れた。

「生活は楽ではなかったが、母も家族も明るく、貧乏ながらも幸せでした」と林は青年期を振り返る。小学5年生の時に母親に買ってもらったコンピューターで自らゲームをプログラミングして遊んでいるような子供だった。

 サラリーマンでは多額の借金は返せないと考えていた林がコンピューターを使って起業することは至極自然なことであった。1997年、会社を設立したのは林が25歳の時だった。受託開発を請け負う小さなシステム開発会社を仲間と3人で始めた。数年が経ちインターネット関連の仕事が増えるとアルバイトを雇ったが、10時始業のはずが夕方になっても出社しなかったり、無断欠勤する者もいた。

「まだ実績も知名度もなく、この頃が一番どん底でした」と林は話す。

 苦しみもがきながらも自社初のオリジナルゲームを開発すると業績も上向いてきた。そんな矢先に大きな落とし穴が口を開けて林を待っていた。社員二人の裏切りである。一人は林の右腕的存在のエンジニアであった。

「彼とはよく食事も一緒に行き、とても頼りにしていました。危機と言うよりも精神的にショックでした」と林は当時の心情を語る。その二人は開発中のゲームプログラムを盗み出し、独立を企んでいたのだ。問題が発覚したのは夜中であったが、林はすぐに他の幹部に連絡し、二人を解雇しても影響がないか確認した。翌日、全社員を集め、証拠を提示し説明を求めたところ、事実を認めたので、社員の前で解雇を伝えた。

「その日の内に経営理念を決めました。『みんなで幸せになれる会社にする』とメモ帳に書き留め、翌日社員の前で発表しました」

 エイチームは逆境がある度に這い上がり、失敗を糧に今日まで成長してきた。それは、不運な境遇にも落胆することなく、現実を受け入れ前進する林の生い立ちとも重なり合う。

 何があっても前向きに捉え、現状打破する気概がベンチャーには必要なのだ。


みんなで幸せになれる会社

バランス感覚を持つ企業家

 エイチームの収益はスマートフォン向けゲームを主体とするエンターテイメント事業が6割を占め、残りの4割を引越しや中古車、結婚式場の価格を一括見積り・比較できるライフスタイルサポート事業が稼ぎ出している。ゲームは一発当たれば月商10億円を稼ぐタイトルもある。しかし、当たり外れの波が大きく業績が安定しないという欠点がある。一方、認知されるまでには時間が掛かるがある程度のボリュームになるとユーザーが継続的に使ってくれ安定した収益を上げるサービスもある。価格比較サイトはその部類に入る。そこで、人気のエンタメ事業で収益を上げながら、引越し比較サイト「引越し侍」や結婚式場検索サイト「すぐ婚navi」を企画し先行投資を続け、エンタメ事業と並ぶ事業の柱になるよう育ててきた。

 新規事業を任された担当者は、すぐに結果を出すことが出来ずに林に悩みを打ち明けることもあった。そんな時、林は「何を弱音を吐いているの。私もいつも失敗の連続だよ。何度失敗しても問題ない。エイチームは挑戦し続ける会社だ」と励ました。

 林を慕いエイチームに入社してきた社員も多い。

「林社長の周りには、常にワクワクしながら主体性を持って仕事をしている人が多い。自分もそう社員に思わせられるような社長になりたい」と2013年12月に子会社A.T.brides社長に任命された大崎恵理子は林の人柄について語る。



当事者意識が重要

 幼い頃に父親を亡くし、苦労した経験が経営者として役立っていると語る林。

 何事も「諦めようがない。借金を背負っていたので返済するしかなかった。何が何でもやるしか道はなかった。逃げ場がない環境は社長業も同じですね」と林は話す。

 人で苦労してきた林は、採用に力を入れる。現場でエンジニアが足りないと言ってきても人格的に優れている人物が現れるまで採用しない。面接では第一に協調性があるか、自己中心的ではないかを判断する。入社希望者の性格を知るためにユニークな取り組みがある。事前にエイチームに関する10個以上の質問を用意してもらうのだ。するとその人の本質が見てくると林は言う。前職での不満や不安が浮かび上がってくるのだ。

 また、面接に役員を同席させ、林の想いを入社希望者に話すのと一緒に聞かせている。林のビジョンを共有させているのだ。

 2013年から分社化を進めている。その狙いは、「環境が人を育てる」という林の信条から来ている。創業当時、共同代表を務めていた人物は「融資の連帯保証人になりたくない」といって役員を降りた。「みんなで自分たちの会社を作るのだよ」と林が話をしても、「社長、うちの会社はどうなるのですか」と自分の頭で考えようとしなかった。

「自分以外の人は車の助手席に乗っているような気がした。当事者意識が重要だと思う」と林は言う。今後、多くの社長を育て、5年後に売上げ1000億円が目標だ。林の挑戦はこれからだ。



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