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トピックス -企業家倶楽部

2015年02月27日

【竹中平蔵の骨太対談】vol.35 社長がゴールを示すのではなく社員が自ら決める組織を創る/vs VOYAGE GROUP社長兼CEO 宇佐美進典

企業家倶楽部2015年4月号 骨太対談


宇佐美進典 (うさみ・しんすけ)

1972年愛知県生まれ。96年早稲田大学商学部卒業後、トーマツコンサルティング入社。99年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)を創業、02年代表取締役CEOに就任。05年cybozu.netを設立、代表取締役CEOに就任。2012年MBOによりサイバーエージェントから独立。07年 日本インターネットポイント協議会を設立、副会長に就任(現会長)。14年「第16回企業家賞チャレンジャー賞」受賞。


竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。73 年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。



承認欲求を満たす機会を増やす

竹中 1970年代、ベンチャー企業が台頭してきた頃、面白いことを言った人がいました。「バカは何人寄ってもバカである」という言葉です。佐貫利雄博士が大企業を批判する言葉として挙げたのですが、名言だと思います。

 賢い人が1人いれば問題は解決する。だからこそ、賢い人を集め、その人が他を教育していくような体制をつくらなければならないのです。それがまさに経営だと思うのですが、宇佐美さんはどのような人材採用をされていますか。

宇佐美 2006年くらいから新卒採用に力を入れ始め、現時点での能力で採用するのではなく、潜在力で採用していこうと切り換えました。

 金銭的なものでモチベーションを感じたり魅力を感じて入る方は少なからずいると思いますが、それに重きをおくと、逆に金銭的な条件がいいと他社に移ってしまう人ばかりになってしまいます。そのため、私の考えとしては、金銭的な条件としては業界よりは良くしつつ、承認欲求を満たす機会をつくっていきたいと思っています。というのも、やはり人が働いている中で喜びを感じたりするのは認められたり、褒められるなどといった承認欲求の部分が大きいと思うからです。その機会としては、評価の仕組み、表彰制度のほかに、月に1度、サンクスカードというコメントを書いて渡すといった制度を用意しています。

竹中 私の友人でもあるパソナの創業者、南部靖之さんも「こいつは期待できると思っていた人がそうでもなかったり、一応採用してみるかという人が大化けしてみたり、人っていうのは難しいな」と言っていたのを覚えています。人材を扱う会社を経営する彼がこのようなことを言うくらいですから、本当に採用は難しいですね。

宇佐美 評価の仕組みのほかには、ここ5年くらいで「会社として事業をつくっていくことが僕らの事業内容なんだ」と、事業立案などのチャンスが多い会社に変えていくことに意識的に取り組んでいます。

竹中 社員が創造意欲を持てて、かつ社員同士が一体となって仕事ができるようにするためにも、クリエイティブクラスを設けるのが肝だと思います。ボヤージュグループでは運動会もされたそうですね。

宇佐美 創業以来、社内でのコミュニケーションが重要だと考えて来ました。2005年頃、会社の規模がその当時100人を越えるくらいになってきてから、「成長企業において社内のコミュニケーションをどのように活性化させていくべきか」と考えたときに浮かんだのは、高度成長期の日本の会社がやってきたことでした。

 ふと自分が小学生だったときのことを思い出したとき、学校の運動会だけでなく、職場や地域の運動会もありました。そこで「社員旅行をやめて運動会にするぞ」と宣言したのですが、社内みんなからは「今さら運動会か」と大反対。しかしそれでも、実際にやってみたらそれはそれで楽しいと、恒例行事になりました。



2020年という締切効果が産業を創る

竹中 これから2020年に向けていろんなチャンスがありますね。1950年から2006年まで、オリンピックを開いた都市を統計的に検証したところ、オリンピックを契機にして非常に大きな変化が起きていることがわかったという調査があります。オリンピックは非常に大きいイベントで、世界の7割の人が見る。だから「オリンピックだから仕方ない。オリンピックだから普段出来ない事もやろう」という特別の動機が働くんですよ。

 そういった現象を我々は締め切り効果と呼んでいます。振り返ると51年前の東京オリンピックのとき、同年にホテルニューオータニと芝プリンスホテルがオープンしています。新幹線はオリンピックの開幕9日前、日本武道館に至っては開幕7日前でした。

宇佐美 締め切り効果でいうと、社内で新規事業プランコンテストを公募するのですが、そういった機会があると一生懸命考えますよね。

竹中 この締め切り効果が生んだ産業があります。1964年の東京オリンピックのときに「VIPを警護するセキュリティビジネスができる」と2年前に日本警備保障という会社ができました。これは今のセコムですね。当初は従業員が2人だったと聞いていますが、セキュリティビジネスで働いている人が今や53万人。オリンピックがきっかけで2人の事業が53万人の産業になったんです。

 1964年当時は発展途上国型のオリンピックなので整備されるのは主にインフラなのですが、今度のオリンピックではライフスタイルを変えるようなものが生まれるでしょう。2020年になれば、紙の入場券を使うこともなく、スマホやそれに類するものを使用すると思います。このような新しいサービス全てにインターネットが絡んでくる。宇佐美さんは、新しいアイデアが欲しいときはどのような試みをされていますか。

宇佐美 社員向け以外に役員による事業プランコンテストを開催しています。当社の役員が社員を勧誘して3~4人でチームをつくりまして、チームごとでどこが一番かを決める。1ヶ月の準備期間中に今の会社の課題からプランを用意して「この人を異動させます」などとリアリティのあるものです。そのため、コンテストのあとそのまま「やろう」と動くものもあるくらいです。役員を指名してプライドをかけてやると、プラン自体が散漫にならず非常にいいものができます。そういった仕組みを作ればアイデアをうまく生み出す機会になるでしょう。

竹中 アインシュタインの名言に「必要なのは知識ではなく空想力である」という言葉があります。「学者にとって」という頭がつきますが、空想力は重要ですね。インターネットを利用した新しいアイデアが私の最大の楽しみで、これは政治家にも官僚にも学者にもわからない。私はそのアイデアを出すメインプレイヤーの1人が宇佐美さんだと思っています。

宇佐美 創業のときに世の中を変えるようなすごいことをやろうと思って会社をつくりました。ビジョンではなくソウルと呼んでいますが、「360°スゴイ」というものにその想いを込めて掲げています。ビジョンのようなゴールを示さず、ゴールを自分たちでつくっていこうという趣旨です。一方で、クリードは創業時から自分達らしいと思った言葉を更新してきている価値観です。想いを共有することが重要だと思っているので、誰かの借り物の言葉ではなく、社内でアンケートも取ります。

 ネットの中で次々と新しい領域が出てくる中、どのような事業をやるかについては無限の可能性があります。だからこそ、社員がしっくりきてないビジョンは多分メリットよりデメリットのほうが大きいと思います。なので、皆が納得できるビジョンが見つかったら改めて掲げます。今はビジョンではなくソウルを掲げてやっていきます。

竹中 素晴らしいと思います。ボヤージュという社名にもその想いを込めていますね。

宇佐美 自分達が自らリスクをとって飛び出していこうと名付けました。


 2020年という締切効果が産業を創る

「もったいない」から生まれるビジネス

竹中 今回の対談で伺いたかったことがあります。それは、インターネットを使って、地方創生にどのように係わることができるかです。実は今度、「地方創生特区」というのをつくる予定です。その中に「近未来実証特区」というのを設けようとしています。この案は我々民間が出したものではなく、自民党の小泉進次郎議員によるものです。

 ネット通販のアマゾンは無人飛行機を飛ばして商品を運ぶと言っていますが、日本の場合は250m以上高いところを飛ぶのは航空法の規制がかかる。つまり、250m以下だと法律には引っかからないグレーゾーンであるため、それなら実際に実証特区で検証しようということです。

 そういう意味でも、今後キーになるのはやはりインターネットなんですよね。地方に行けば行くほどインターネットに対するリテラシーが低いという問題もありますが、だからこそインターネットで解決できる問題もあるでしょう。

宇佐美 私が最近の新しい事業を考えるときの視点に「もったいない」という考え方があります。

 実はアドテクノロジー事業は「もったいない」という観点から始まったものです。「このサイトの余ったスペースに広告バナーを掲載したら、これだけ売上げが上がるのではないか」など、どうしたら売上げがもっと増えるかを試行錯誤し、ソリューションを提供します。

 地方においてもこうしたものはたくさんあると思います。もったいないものをネットの中でどう生かしていくかのマッチングが出来れば、ビジネスにも、地方創生にも繋がっていくでしょう。

竹中 その発言をぜひ内閣の会議でしてほしいと思います。実はおっしゃる通りで、地方はもったいないの塊なんです。

 まず休耕地。休耕地というのは使いたい人に使わせないからそうなる。使いたいと東京の会社が言っても、地元の農民が「よそ者は入れない」と拒否するんです。自分で自分の首を絞めている状態です。シャッター通りというのもありますが、空き地を安く借りて商売をしたいという若い人はいっぱいいる。しかしそれも所有者が貸さない。だからシャッター通りになる。これらの理由が規制緩和だと言う人もいますが、実際はそれらを所有している人の責任なんです。もったいないの塊でしょう。

 全てそこに既得権益がある。既得権益者が目の前の利益にこだわって、将来の大きな利益を忘れてしまっている。地元を守るために補助金が出されますが、結局それは「もったいない」を温存するための資金になるのです。そしてそれが今の日本全体の活力を奪う大きな要因になる。だからこそ、面白い技術が実証特区で出てくると流れも変わるのではないかと思っているところです。


「もったいない」から生まれるビジネス

フィリピンは女性管理職比率が世界一

竹中 海外にいくつか拠点がありますね。現状についてお伺いしたいです。宇佐美 海外は中長期の取り組みとして考えています。国内とは難易度が数倍違いますし、知見を貯めない限りはうまくいかないのではないかと。そのため、海外事業についてはじっくり取り組んできています。現在は上海、ソウル、フィリピン、シンガポール、アメリカ・ロサンゼルスとニューヨークに拠点を持っています。

 海外の事業に関しては2つのアプローチからビジネスをしています。1つは海外のネットリサーチのビジネスです。クライアントは欧米のマーケティングリサーチの会社で、アジア領域における調査を日中韓の3カ国で依頼されたりします。

 もう1つはアドテクノロジー事業です。実は、この事業については海外の拠点を設けなくても、ネット上でデータ接続し、海外の会社が日本に広告を出したり、その逆もできるようになっています。そのため、海外の広告のカンファレンスなどがあると、そこに行き名刺交換をし、あとはメールとスカイプで契約。あとはシステムも全てネット上で行います。

竹中 今後はどこに進出する予定ですか。

宇佐美 ヨーロッパを視野に入れています。しかし、拠点を新たに出すということは、それだけコストがかかるということと、あらゆるマネジメントでの苦労があるということです。海外スタッフのモチベーションの管理も勿論ですが、現地の文化との違いをどう乗り越えるかは課題です。

竹中 笑い話ですが、ネットビジネスを手がけている会社が実際の拠点ばかりつくるのはある意味矛盾するわけですね。バブルの時代にほとんど全ての金融業がニューヨークに拠点をつくりましたが、彼らの仕事は「何をするか」を考えることだった。拠点をつくると維持するための余計な仕事が増えてしまう。マニラにも拠点があるのは面白いですね。何故ですか。

宇佐美 欧米のクライアントとのやり取りは英語なので、そのオペレーションセンターです。24時間態勢で請求書の発行からお客様対応までできるので、加速度的にビジネスを進められるのです。

竹中 ここ2、3年、マニラの経済が注目されはじめています。2014年にマニラで開かれたアジア・ダボス会議に参加するために訪れたのですが、その活気に驚きました。

 フィリピンで興味深いのは女性の管理職比率が世界で一番高いということ。これは同じくその割合が高いといわれている北欧以上です。面白いことに、現地の人に「女性が管理職に向いているのですか」と聞くと、「そりゃそうですよ。男は感情的じゃないの」と言われました。日本では依然として女性は管理職に向かないといった趣旨の発言をする財界人が多い中で、大変いい話を聞いたなと感じました。

 フィリピンはスペインとアメリカの文化がうまくミックスしていて、国民全員が明るい気質です。英語を使った拠点としてフィリピンに目をつけたのは面白いですね。

 優れたリーダーには共通している点があります。それは、未来を見通す力と、その未来を周囲に説得する力、そして人々のインセンティブを考えて組織を動かす力があります。宇佐美さんには、是非我々のライフスタイルを変えるようなものを世の中に生み出していってほしいと思います。



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