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トピックス -企業家倶楽部

2015年04月06日

21世紀の新しいワークスタイルを創造する/クラウドワークス代表取締役社長兼CEO 吉田浩一郎

企業家倶楽部2015年4月号 新興市場の星たち


2014年12月に東証マザーズ上場を果たしたクラウドワークス。インターネットを利用し、企業が直接、不特定多数の個人に業務委託できる「クラウドソーシング」によるビジネスを国内でいち早く立ち上げた。「新しいワークスタイルを提供したい」と熱意を燃やすクラウドワークス社長、吉田浩一郎に迫る。(文中敬称略)


PLOFILE


吉田浩一郎(よしだ・こういちろう)

1974年兵庫県出身。東京学芸大学卒。パイオニア、リードエグジビションジャパンを経て、ドリコム執行役員を経験した後に独立。2011年、クラウドワークスを創業し、代表取締役兼CEOに就任。2014年12月に東証マザーズ上場。



「個の力」がイノベーションを起す

 クラウドワークスは2012年3月、「クラウドソーシング」により、企業が個人に業務を外注するサービスを開始。個人に仕事を委託したい会社と、自由な働き方をしたい人のマッチングを行っている。現在、クライアント数は5万社、登録ユーザー数は30万人を数え、トヨタやソフトバンクといった名だたる企業が優秀な個人に仕事を依頼している。

 従来、日本企業が外注する場合、他の企業に依頼することが多く、個人が仕事を受注することは稀であった。そこで、クラウドワークスは個人のスキルや評価をインターネット上で可視化。企業が直接、個人に外注できるプラットフォームを立ち上げた。これにより、個人はクラウドワークスを通して、インターネット上で様々な企業から仕事を受託できるようになった。

 今まで、一般人はポイントサイトやアフェリエイトなど「お小遣い稼ぎ」の要領でしかインターネットで収入を得ることはできなかった。ところが、クラウドソーシングの出現により、システム開発や経理代行、ウェブデザインなどの高単価・プロフェッショナル領域の仕事を企業から受けられるようになった。従来、正社員に任されていた仕事も自宅などで行うことが可能になり、クラウドワークスの紹介した仕事だけで年収1000万円を稼ぐ者も出現している。

 クラウドソーシングによって、子育てや介護で一時的に仕事を休んでいる人が合間を見つけて1日2〜3時間ほど働くことも可能だ。いざ、会社に復帰する時になっても、自分で企業から仕事を受託していた経験がデータとして記録されているため、それがブランクの期間を埋めるだけの力があることを証明してくれる。また、定年を迎えてもエネルギーを持て余すシニアが活躍する場としても注目されている。

 一方、企業側のメリットとしてはクラウドワークスを利用することでコストダウンを図れる。同社が企業と個人の仲立ちをすることで、短時間のマッチングが可能になり、紹介料やマージンの削減にも繋がるのだ。

 さらに、企業に新しい知見を与える「オープンイノベーション」という利点も生まれる。クラウドソーシングを利用し、会社で解決できなかった課題に対して、個人の知恵を広く集めるのだ。企業のマーケティング、商品開発、企画などをユーザー視点で一般人が提案できる。個人の力が企業のイノベーションに貢献するだけのパワーを持ち始めたのだ。



背水の陣で挑んだ第2の起業

 孫正義やスティーブ・ジョブズといったIT業界の経営者たちは20代で創業した者が多い。37歳の時にクラウドワークスを創業した吉田は遅咲きの企業家だ。起業する前には、IT企業の営業担当役員をしていた。

「自分ならもっと上手く経営できる」と、初めての会社を設立。しかし、役員と社長では大違い。売るものも無く、外部から持ち込まれた仕事をそのまま受け入れた。上海でワインビジネス、ドバイで派遣業、ベトナムでアパレルにまで手をつける。多少の儲けは得たが、会社は目的を失い、役員が取引先を抱えて離反してしまう有様。信用していた社員の裏切りは吉田に深い傷を与えた。

「何がいけなかったのか考え直しました。無一文になることを恐れ、単なる金儲けをしていたのです」と吉田は当時を振り返る。「社員が仕事を通じて、追い続けたくなる夢が必要だ。そして、その夢は自分の強みの先になければいけない」と一念発起。再スタートを切るべく、新しいビジネスを模索する。

 初めての起業では資本金を全て自分で出していた吉田。しかし、「過去の成功者に引き上げてもらうことが大事だ」と気付き、投資家を探し歩いた。クラウドソーシングとの出会いも「吉田さんが得意そうなビジネスがある」という出資者からの紹介がきっかけだ。吉田はすぐさま、クラウドソーシングの長短を直感し、自分の得意分野だと確信する。

 複数のビジネスに手を出して失敗した経験を活かし、クラウドソーシングに集中することを決意。車を売却し、貯金の2500万円を全て経営資源に投じて退路を断った。その後、徐々に注目を集め、2012年3月にサービスを開始するに至る。



経営陣上場の鐘を撞かず

 こうした困難を乗り越え、クラウドワークスは2014年12月に東証マザーズに上場を果たした。インターネット系のビジネスとしては14年前のサイバーエージェント以来の赤字上場。確かに巨額な設備投資をせざるを得ないロボットやバイオ分野では赤字上場することもあるが、IT企業としては稀なケースだ。それでも上場に至ったのは、「個人が働ける環境整備」という新市場への期待と、インターネットによって実際に個人の力が高まっているためだ。クラウドワークスの「個人の働く環境を作りたい」という想いも大きかっただろう。

 そんなクラウドワークスだが、経営陣は誰一人として上場の鐘を撞かなかった。「上場はあくまで通過点。個人が働きやすい環境を作るにはまだあと10〜20年かかります。それまで自分を追い詰め、次の挑戦に100%でコミットしなければいけない。次のステージに行くために、創業時以上に緊張感と集中力が試されている」と改めて襟を正す。

 代わりに鐘を鳴らしたのは、クラウドワークスを通じて仕事をする66歳のシニアや、子育て中の女性といったユーザーたち。「退職後にこんな体験ができるとは」と、感動もひとしおであった。ユーザーがあってこそ、現在のクラウドワークスがあるのだ。



個人が働くためのインフラをつくる

 今日、人々の働き方に対する価値観は急激に変化してきている。未来は約束されていない。いつ会社が潰れたり、大災害が起こったりするか分からない。「未来のために今は我慢して働こう」という20世紀的な労働観から、「今、納得できる働き方をしよう」という考え方に変わってきているのだ。さらにはインターネットとSNSの出現によって、一般人が情報発信することが可能になり、個人の力は一層強くなった。個人が働きやすい仕組みを作ることが急務だ。

「新しいワークスタイルを提供したい。個人の力を最大限に活性化して、社会の発展と個人の幸せに貢献することがミッションです。自分で未来を描けば、賛同する人たちを増やしていくことができる」

 こう情熱を燃やす吉田が目指すのは、創業20年で営業利益1兆円。ソフトバンクでも33年かかった大台を超えるべく、未来を見据えている。

 今後の展望としては、クラウドワークスを利用して働く人を増やし、そういった個人に対して社会保障の整備も進めていく。例えば、ライフネット生命と協力してクラウドワーカー向けに保険を紹介。個人が大企業の団体保険と同等の保険に加入できる機会の提供を開始した。さらに、ベネフィット・ワンと提携し、在宅ワーカーの福利厚生を支援する。

 クラウドワークスは、今まで信用を得られにくかった人々が自由に、安心して仕事ができる世の中を構築することを目指す。「21世紀のワークスタイルを変える」と力を込める同社の活躍に目が離せない。



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