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トピックス -企業家倶楽部

2015年04月09日

適切な初動対応であらゆるリスクに備えよ/田辺総合法律事務所 弁護士 田辺克彦

企業家倶楽部2015年4月号 著者に聞く


『企業法務のFirst Aid Kit問題発生時の初動対応』

田辺総合法律事務所 著 レクシスネクシス・ジャパン(3400円+税)

企業の様々な法律問題に関して、適切な初動対応を網羅的に指南する教科書。法人が陥りがちな例を中心に取りあげ、法務初心者にも分かりやすく書かれている。問題発生時の応急措置を施すことが出き、企業にとっての救急箱になり得る一冊。



法務の力が会社を守る

問 今回、『企業法務のFirst Aid Kit 』を執筆された動機をお聞かせ下さい。

田辺 日本の企業は、何か問題が起こってから対応することが多く、初動の応急措置が適切でないと大きな損害を被ることが多々あります。そこで、問題が起こったとき、すぐに手当てできるような教科書があれば有用ではないかという思いで書きました。

 私たちが30年以上手掛けてきた事例から、企業が直面することが多い代表的なケースを選び出し、誰でも分かりやすいように書き上げました。大企業は勿論、中小企業こそ法務の弱点を補うことができると思います。若手のビジネスロイヤー(ビジネス弁護士)にもいい勉強になるでしょう。

問 小さなベンチャー企業でもたくさんの問題が起こりますね。

田辺 人それぞれに利害が異なる以上、問題が起こるのが当たり前です。企業の中で言えば、経営者と従業員の利害は必ずしも同じではありません。部署によっても利害が異なることもあり、ましてや取引相手の企業とは利害が異なることが普通です。問題が起こればそうした対立関係の中で、法治国家ですので、解決の際の拠りどころとなるのは法なのです。

 ところが、ビジネスを規制している法に配慮しないままビジネスをしている企業が多いのが現状です。法を知らなくても、企業活動の中で問題が起これば責任を負うのは経営者です。小さな企業は大企業とトラブルがあったとき事前の備えがなければ、力関係で弱いと不利になります。確かに、すべての権利を守れるわけではありません。ただ、弱いなりにも自分の権利を守るため、どれだけ交渉ができる基盤があるかが大事です。

 最後に判断の拠りどころになるのは法です。法務を専門とする人材を雇う余力がないベンチャー企業も、無防備にならないように知識を身につけたり、外部に相談できる弁護士を持つ必要があります。



問われる企業の対応力

問 ベネッセ事件など、個人情報の漏洩問題をよく耳にします。どういった対応をすべきでしょうか。

田辺 問題が起きたら、謝罪して徹底的に再発防止をしていく他ありません。したがって、情報が漏れないように予防しておくことが一番です。個人情報はパスワード等で保護したり、アクセスできる人を制限したりすることが基本となります。誰もが触れることができる状態にしてはいけません。

 ただ、ベネッセ事件のようにアクセス権限を持つ人が悪用するケースもあります。厳しい管理をしても、悪意をもった人がいると漏洩を防げません。漏洩した場合にはすぐに原因が特定できる態勢を整備することも重要です。誰が情報を漏らしたのかわかるようになれば抑止力になります。

 一番の対策は社員教育です。派遣の人にまで倫理的な教育を施すのは大変です。機密を守るには、派遣に頼るのではなく、企業内の必要個所には信頼できる正社員を増やすことも重要でしょう。

問 ユニクロが中国の下請け会社において、労働環境が良くないと訴えられています。下請けの問題にも対応していかなければならないのでしょうか。

田辺 国内では勿論のこと、海外でも「下請会社がやったことだから、当社には責任がありません」という言い逃れはできにくくなっています。グローバルな企業になるほど、コンプライアンス(法令遵守)についての要求が厳しくなると考えるべきです。

 大企業が法律を無視すると非難も大きくなります。大企業が残業代を払わなかったら、社会から咎められるのは当然です。ルールに従って企業活動をして社会に奉仕していることをアピールしないと許してもらえないでしょう。

問 労働関係のトラブルが多いようですね。どのような点に注意すべきでしょうか。

田辺 中小企業では労務管理がしっかりしていないところが少なくないようです。未払残業代の請求や、解雇、不当労働行為といった問題もよく起こります。現在、労働法制は労働基準法等をちゃんと守らせるように少しずつ規制が厳しくなってきています。中小企業といえども、この点もクリアしながらちゃんと利益を出せるようにしていかなければいけません。

 残念ながら、会社法に関しても、非公開の中小企業ではあまり守っていないところが多いのが現状です。日本の企業は社会風土的にも法務に力を入れてこなかった歴史があり、アメリカやヨーロッパに比べると法令遵守の意識が希薄だと思います。

問 日本企業は法務を軽視していたのですね。

田辺 日本の社会は同文同種ということから、企業も仲間内の意識の感覚でビジネスを始めてしまうことが多いのです。しかし、ビジネスも法治国家のもとで活動するのですから、問題が起これば法で判断されることになります。中小企業では、コストを抑えるため内部に法務の人材もおらず、外部にアウトソースもしていない。法務に掛けるコストを必要だと考えていないことが多く、大きなリスクを背負うことになります。「今まで、何も問題なかったから大丈夫」と思っても、突然に問題が起きて後悔するケースが多いのです。



ビジネスロイヤーはグローバル企業の屋台骨

問 法務はどういう役割なのでしょうか。

田辺 法的な知識は、何かビジネスを始める前の段階から必要です。日本では儲かるかどうかでビジネスを始めてしまうことが多いと思います。しかし、まず法に違反していないかとか、問題が起きたときリスクを回避できるかとかの法的側面からのチェックをする必要があります。

 欧米の大企業は、社内に数百人以上もの弁護士を抱え、徹底的にチェックをしているところもあります。日本では大企業でも社内弁護士どころか法務担当者も100人程度しかいないのが現状だと思います。この法務担当者を少なくとも3倍にしないと日本企業は世界でビジネスができないとも言われています。準備ができていないと、問題が起き利害が対立した時には交渉で負けてしまいます。海外の大会社は年間何億円ものお金をリーガルな面に費やしています。リーガルコストは必要なコストだという認識を持っているのです。

問 海外展開の上でも必須ということですね。

田辺 日本の多くの企業はグローバル化の流れに巻き込まれます。折角、利益を出しても、問題が起こり訴えられて大きな損失を被ってはビジネスに成功できません。

 GEやIBMの日本法人では、リーガルの法律特許部長に日本法人の社長以上の権限があります。社長が何か決定しようとしても、リーガルが了承するまで、何も決定できません。それだけ、欧米はリーガルを重視しているのです。

 アメリカにおいては個人のレベルでも、かかりつけの医者と弁護士、バンカーの3人がいて初めて1人前の大人として見られるのだといいます。ましてや企業が適正なビジネスを行うには弁護士は必須の相談相手なはずです。問題の早期発見のためにも何か起こる前に忌憚なく相談できる弁護士を身近に持つことが必要だと思います。



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