2015年04月13日
平和ボケした日本に警鐘を鳴らす/ハドソン研究所首席研究員 日高義樹氏
企業家倶楽部2015年4月号 著者に聞く
『中国敗れたり』日高義樹 著 PHP研究所(1600円+税)
今、日本人の取るべき道はどこにあるのか。オバマ政策の失敗、中国経済の破綻、全て他人事ではない。「世界で最も危険な場所」アジアで生き抜くためには何が必要か、日米関係を軸に考える。
問 著書のタイトルに『中国、敗れたり』とありますが、中国はまだ成長しているように見えます。本当に「敗れた」のでしょうか。
日高 皆さんは中国がまだ成長しているとおっしゃいますが、なぜあの国が上り調子だと考えるのでしょうか。実際には、中国経済は破綻寸前です。経済成長率は7.4%との発表がありましたが、ホワイトハウスの経済諮問委員会では、これは事実ではないとの説が有力です。またコンファレンスボードの予想では、成長率は2015年頃6.3%に減速、2020年には3%台まで落ち込むとされています。事実、あれほど下げないと言っていた金利を下げました。これからさらに下げるとなると、実態は我々の想像より酷いかもしれません。
中国は安いものを大量に作ることで経済成長を成し遂げました。しかし、今となっては中国からものを買う国も、中国から技術を学ぼうとする国もありません。アメリカ人は回収できないと分かっているので投資もしませんから、もう中国にはお金がないのです。
問 しかし、対艦弾頭ミサイルの開発が成功したとの報道もあり、中国の軍拡は順調に進んでいるようです。
日高 確かに中国のDF?21D対艦弾頭ミサイルが実戦態勢に入ったとアメリカの国防省による発表があり、「空母キラー」出現と取り沙汰されて衝撃が走ったこともありました。しかし、その後の調査で通常ミサイルの5分の1程度のスピードであることが分かり、万が一、中国から発射された場合でも十分に対応する時間があるとの結論を出しています。マスコミが危機感を煽っていますが、恐れるべきものではありません。
また、中国海軍はまだ創設期です。旧式の性能が悪い艦船が多く、実戦では使えないものが稼働戦力として換算されていることもあります。また、先ほど言ったように中国にはもうお金がないため、これ以上軍備を拡大できません。たとえ中国が更なる軍拡を進めても、すでに軍事技術が優っているアメリカも研究を続けるので中国は追いつくことすらできないでしょう。
問 では、中国はもう世界にとって脅威ではないということですね。
日高 確かに中国の経済成長は目ざましく、素晴らしかったです。しかし、近々破綻するであろう、先の無い中国は怖くありません。今までの成長が何十年も続くと思うから脅威であるかのように見えるのです。経済開発銀行など様々な計画を発信していますが、実行されることは無いでしょう。
問 知らないというのは恐ろしいことですね。
日高 中国が上り坂だと勘違いしているように、日本人は世界のことを知りません。
世界を相手に商売をする商社ですら国際情勢を知りません。三菱商事はオーストラリアの石油、石炭を狙い、伊藤忠はタイのCPグループと共同出資しました。これは誤った戦略であり、商社が世界を知らないのはとても危険です。
問 なぜ日本人は国際情勢に疎いのですか。
日高 メディアに問題があります。以前、著書『アメリカを知らない日本人』のはしがきで触れましたが、ワシントンではワシントンポストの早版を求めて夜の12時に日本人記者たちが記者クラブから飛び出します。同僚より早く読んで記事を書き始めようということなのでしょう。しかし、このようなことをしているのは日本人記者だけです。他国の記者はワシントンポストがアメリカの宣伝に過ぎないことを知っていますからね。そしてこの傾向は現在も変わっていません。日本における中国の記事は人民日報を読んで書かれたものです。中国側の誇張表現を鵜呑みにし、日本に広げています。そのため、日本では中国が脅威だなどという論調になるのです。事実を報道しない新聞はエンターテイメントに過ぎません。
問 では、現在の世界で起きている混乱の真因は何でしょうか。
日高 アメリカが世界のリーダーとしての責任を放棄したことです。そして世界を引っ張っていくはずの国の大統領もまた世界を知らない。オバマ政策の最大の失敗はドル体制維持のために中国に頼ってしまったことです。中国は米国債の最大保有国となりました。大統領までが中国の宣伝に踊らされ、見誤り、中国を大切なパートナーであると錯覚したのです。
しかし、これからアメリカは再度一人勝ちするでしょう。ヨーロッパでイスラム勢力が大きくなりつつあるのは、イスラム教過激主義者によるパリ新聞社襲撃事件に対してデモを行うのみで、誰も厳しく攻撃しないことからも明らかです。また、第二次世界大戦後、ドイツに戦争をさせないために作られたユーロは不要だとの考えが広まれば更にアメリカが優位になります。
問 日本は今後どうするべきでしょうか。
日高 アメリカのドルがないと生きていけないというのが現状です。そして日本企業ももはやアメリカのものです。アメリカの経済が乱れていても日本企業がお金を運んでいるからドルは下がらないのです。
正直、日本はアメリカの一部だと考えてもおかしくない状況です。岸元首相が安保騒動を引き起こしましたが、その結果日本はいつでも安保条約をやめることができるようになりました。安保条約を破棄した時、ようやく日本は国家になるでしょう。
問 日本は核武装をすべきですか。
日高 今の日本が核武装をしても世界は興味を示さないでしょう。使う意思のない兵器など意味がありません。日米安保が締結された時、軍事、政治、外交は日本がしなくてもよい、アメリカがするとされたようなものなのです。日本は経済と文化だけだと思われているのです。
しかし、日本がアメリカと話し合い、アメリカの核に頼ることが出来ないと分かった上で核を保有したならば話は変わってきます。アメリカが自国の利益のために差し出した核の傘の下で平和な日本が続く保証はどこにもないということを自覚すべきであり、核を持つこと自体ではなく、核による抑止力を持つことに意味があります。
問 日米関係が変わりますね。
日高 とはいえ、以前から日本は一方的にアメリカに安全を与えられてきたわけではありません。日本を同盟国とすることは共産主義と戦う上で重要でした。軍事面以外でも、日本の技術がアメリカに取り入れられています。この相互関係をお互いが認識し、再構築することで世界の秩序を作っていくことが理想でしょう。
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