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トピックス -企業家倶楽部

2015年04月17日

南場智子の人的ネットワーク

企業家倶楽部2006年12月号 DeNA特集第5部

誰もが思わず助けたくなる 素直で一生懸命な企業家

人間・南場智子は、万華鏡のように様々な一面を持っている。論理的で頭脳明晰かと思えば、笑顔ではしゃぐ。凛と語りかけつつ、泥臭い姿勢も見せる。技術者・若手社員などの意見をよく取り入れながら、時に断固としたリーダーシップも発揮する。しかしいつだって、素直で一生懸命な姿勢で事業に取り組んでいる。そんな南場を見ていると思わず助けたくなる―5人はそう口を揃え、エールを送る。(文中敬称略)



凛として 高い志を持った経営者

三菱東京UFJ銀行 リテール部門長 常務取締役 和田哲哉


  「絶対、日本一になります」


    テレビの中で、凛としてイキイキと宣言する南場に、和田は釘付けになった。2004年、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)がインターネットでの決済を手がけるべく、動き出した頃のことである。何としてもこの経営者と組みたい、会いたい―そんな和田の願いは半年後、現実のものとなる。二人は会ったその日に意気投合した。そして和田は、南場に携帯電話でのマーケティング方法などについてコンサルティングを依頼することとなる。


    南場は、和田らに携帯電話と口コミマーケティングの相性の良さを説いた。いい商品を見つけた時、携帯電話のメールを使えばすぐに「この商品がいい」と流すことができる。すると、その商品が瞬く間に売れ筋になる。携帯電話によってマーケティング方法も変わっている。そんな説明をしつつ、南場は東京三菱銀行のモバイルの取り組みの改善点をビシビシと挙げていった。「本当に容赦ないと思いました。しかしその指摘が的確で、なるほどと唸ってしまう。しかも、厳しいと思いきや、指摘し終わった後にニコっと笑ってくれるのです。その笑顔がたまらない。私も含め、うちの社員はコロっとやられて、次々と南場さんのファンになってしまいました(笑)」


    そうして1年ほどコンサルティングを手がけた後、南場は和田にある案件を持ちかけてきた。「安心で、安くて、手早くできる決済サービスを作りませんか」。和田に異存はなかった。かくして東京三菱銀行とディー・エヌ・エーの若手社員が入り乱れ、激論を重ねた末、06年5月に両社の合弁会社ペイジェントが誕生する。


    ペイジェントが提供する決済エスクローサービスは、モバオクの出品者と落札者の間をペイジェントが取り持つというサービスである。ペイジェントが入金や商品の発送確認をしてくれるので、落札者が「お金を払ったにも関わらず商品が届かない」という事態を防ぐことができる。しかも落札者は、従来の代金引換郵便での取引に加え、コンビニなどから代金を払えるようにもなる。その安心感と便利さが支持され、8月のサービス開始以来、利用件数が急増。現在、モバオクの1日の取引の1割にあたる4000-5000件がこのサービスを利用している。


    しかもこのペイジェントは、来年1月から三菱東京UFJ銀行を含め計29金融機関が参加、巨大なインフラとなる予定である。ペイジェントに参加する金融機関の間なら、お金のやりとりは振り替え扱い。いわば、ペイジェントという巨大な銀行が1つ誕生したといっていい。当然、手数料も抑えることが可能で、代金引換郵便の利用と比べ支払い手数料は最大70円ほど安くなる。今後、モバオクに加え、他のイーコマース(EC=電子商取引)を行う会社にもペイジェントのサービスを広く使ってもらう方針だ。大きなインフラを創ることで儲けを追求するかと思いきや、和田はにこやかに首を振る。


  「正直言って、このシステムを使って大きく稼ぐことはあまり考えていません。どちらかといえば、志から発した事業です。今後、商流がインターネットに移ると共に、より安全・安心・安さが問われるようになります。日本の将来のために、社会共通のインフラを作っておきたい。南場さんも私も、そんな思いからペイジェントを設立したのです。南場さんやディー・エヌ・エーのメンバーは『社会のために』という高い志を持っていて、信頼できます」


 
    06年3月、三菱東京UFJ銀行が45億円を出資、ディー・エヌ・エーの大株主となったことからも、その信頼の度合いが見て取れる。


    インターネット社会を見据え、同じ志を持つ仲間―それが和田と南場である。そんな南場について、和田は大らかに笑いつつこう語ってくれた。「ものすごく負けず嫌いだと思います。他人への負けず嫌いではなく、あくまで自分の志に対する負けず嫌い。その厳しさが魅力的ですね。インターネットの世界は日進月歩、今日の勝者が明日の敗者の世界。現状に満足することなく、志高く一緒に頑張りましょう」



人間性・感性を育くみ花を咲かせる

エイベックス・グループ・ホールディングス 上級執行取締役 コーポレート企画本部長  荒木隆司


    出会いは十数年前、荒木がコンサルタントとしてベンチャー企業のIPO支援を手がけていた頃のこと。マッキンゼーに務めていた南場と同じプロジェクトに参加したことで、親交を深めていった。


    99年3月に南場がディー・エヌ・エーを創業してからは、南場の相談にも乗るようにもなった。当時の南場は、経営者とコンサルタントの仕事の違いに悩む毎日。そんな彼女に荒木は一喝した。


  「マッキンゼーでは論理が絶対だったかもしれない。しかし、論理的に正しいからと言って、人はついてくるか?会社というチームでやる以上、人の感情が大切だろう。人は心地よいところに集まる。人が増えれば、やれることも多くなる。経営者は社員のモチベーションを上げて結果を出すためにも、人間に対する洞察力を持つ必要があるぞ」


    いたく納得した南場は、さっそく行動に出た。当時のディー・エヌ・エーは、南場に似て勉強ができ、頭が切れるエリートタイプがほとんどだった。しかし、それ以降は学歴にこだわらずタイプの違う様々な人材を採用、異なる文化をディー・エヌ・エーに吹き込んでいったのである。


  「そうして色々工夫を重ね、七転八倒しながら人間に対する洞察力を身に付けていったのでしょう。経営者になって、すごく人間味が出てきたなと思います。南場さんは、もともと絶対にウソをつかない誠実な人。言い換えると、真面目ですごく不器用なんです。それでひたすら論理的に突き詰めて考えるクセがあったので、コンサルタントの頃はまるで『考えるマシーン』のようでした(笑)」


    南場の変化が「モバオク」の成功に表れている、と荒木は分析する。「モバオク」は画像が多用されているにも関わらず、サクサクと次のページに飛ぶことができる。自分より高い値を付けた人がいたら、お知らせのメールをくれる。ユーザーの使いやすさや、オークションに参加する楽しさをあおるように細かい工夫がなされているのである。ユーザーはその楽しさに惹かれて集まるのであって、必ずしも「モバオクは他社より商品数が多いから」などと論理的に分析して参加しているわけではない。


  「人間味が増したことで、『楽しさを追求する』『面白いからやる』といった感性も身につけた。そこに、もともと持っていた論理の強さが合い重なって、モバオクが誕生したのだと思います」


    そう語る荒木もまた、モバオクの楽しさに引き込まれた一人である。特に、次のページにすぐ飛ぶことができる利便性とそのシステム力はすごい、と絶賛する。その実力を買って、ディー・エヌ・エーの社員に現在、エイベックスが手がける携帯用音楽配信サイト「ミュゥモ」のコンサルティングを依頼した。パートナー的存在として共に協力してサイトを運営する中、荒木はディー・エヌ・エーの社員が家にも帰らず、椅子に座ったまま寝ている姿を幾度も見かけた。そして、求められているクオリティ以上のものをデッドラインまでに必ず提供するプロフェッショナリズムに舌を巻く。


  「南場さんのプロフェッショナリズムが社内に息づいているんでしょうね。教育が行き届いているなと思います」


    ディー・エヌ・エーの今後については、10年来の友人としてこう助言をしてくれた。


  「今まではヤフー、楽天といった巨大サイトを追いつけ追い越せでやってきた。非常にしんどかったと思います。そこを踏ん張って、モバゲータウン、モバオクといったページビュー数ナンバー1、2の携帯コンテンツを持つまでに成長した。私も本当に嬉しいです。しかし、自分たちが先頭に立った時、その真価が問われる。今後も慢心せず、新しい世界をどんどん作り続けて欲しいです。ディー・エヌ・エーがどんな世界観を打ち出すか、期待しています」
 



常に前向きで貪欲 やればやるほど伸びる人

日本テクロノジーベンチャー パートナーズ投資事業組合 ゼネラルパートナー 村口和孝


  「ベンチャーキャピタル業界では不文律のジンクスがある。女性経営者とコンサルティング会社出身者に投資をすると失敗するというものです」と、村口は笑いながら話す。南場との出会いは99年7月まで遡る。当時、村口はジャフコを辞めて独立系ベンチャーキャピタルを立ち上げたばかり。一方、南場は起業準備中の段階であった。休日の喫茶店で南場の事業計画の相談にのった。目の前に座っているのは、若くベンチャー企業の経営未経験の女性コンサルタント。常識的に考えたら成功確率は低いと考えるキャピタリストも多い。さらにリクルートやソニーコミュニケーションネットワークといった大企業が2社も事業提携で入っていたら経営の主導権を取れるのだろうか。


  「本当に大丈夫だろうか」。型破りで通ってきた村口でも投資するか一瞬考えたという。何度か話し合いを続けていくうちにその不安は解消した。


  「個性が強く、好き嫌いがはっきりしている。チームの成功のためなら何でもするという怖さがある。時には取り付く島もないといった感じかな。この人なら女性も男性も関係ない。正しい判断ができるに違いないと思った」


    南場から発せられる必ず成功するという執念・情熱が村口の心を動かした。日本でe Bayのようなネットオークションを展開しようとする南場と次世代のネットインフラビジネスを検証していた村口の2人のロードマップが交差した瞬間だ。


  「お互いにトンネルを掘って進んでいったら、ばったり出会っちゃった感じ」と、村口は話す。


  「90年代、Netscape、YAHOO、Amazon.comにeBayとインターネットビジネスはことごとく米国ベンチャーに牛耳られ悔しい思いをしていた」と村口は語る。次世代では日本発のインターネットビジネスを展開したいという南場と村口の想いは相通じるところがあった。いわば同志のようなもの。「村口さんはお師匠さんのような存在」と南場は師弟関係を強調する。


 
  「2005年2月にディー・エヌ・エーが株式公開するまでの4年間、同業者からは何度も成功しないと心配された」というが、「いや、大丈夫」と村口は答えたという。ディー・エヌ・エーの狙っている市場の成長率と南場の強い意志を信頼していたという。


    晴れて上場企業となったディー・エヌ・エーだが、「これまで未経験のベンチャー経営で失敗を繰り返し、その度に吸収し経営者として洗練されてきた。今後はマッキンゼー時代に培った大企業との事業提携など南場さんの強みを活かせるステージになったのでは」と村口はエールを送る。


  「反応が早くて、感度がよい。活き活きとしていてバイタリティに溢れている経営者。それでいて庶民的で腰が低く、気さくな人柄」「誰に会ってもお辞儀しているよね」と南場の印象は会った頃から変わらないという。



打倒ヤフーをめざす同志

エキサイト 代表取締役社長 山村幸広


  「一緒にヤフーを抜きましょう!」


    山村と南場はがっちりと手を握りあった。2001年11月、ポータルサイトを展開するエキサイトはインターネット・オークション部門をディー・エヌ・エーに業務委託する契約を結んだ。これにより、エキサイトはネットオークションの商品数増加とサービスの強化が実現し、ディー・エヌ・エーはエキサイトの会員数約15万人を見込み客として獲得することになった。


    両社の目標は、「打倒ヤフー」。ネット業界は、ヤフーが圧倒的なナンバー1として君臨しており、エキサイトはポータルサイトの分野で、ディー・エヌ・エーはネットオークションの分野でヤフーに後れをとっていた。「ヤフーを追い抜き、ナンバー1になりたい」。焦りにも似た二人の想いが速やかな提携に結びついたのである。


  「今でもそうですが、ヤフーという巨大な敵に対してどう戦っていくか。ナンバー2以下は、そのポジショニングが非常に重要です」と山村はいう。生き残るには、差別化しかない。ディー・エヌ・エーは、BIGLOBEやgooなどの大手プロバイダーやポータルサイトとも連携し、対ヤフー陣営を着々と構築していった。これらの相次ぐ提携で、ディー・エヌ・エーはヤフーに飲み込まれない幅広いネットワークを確保する。さらにモバオクなどを武器にモバイル市場に活路を見いだし、成長路線を突き進むことになった。


  「ディー・エヌ・エーの強さは、モバオクを中心としたモバイル事業を確立したことにある」と山村は見ている。厳しい環境の中で紆余曲折しながらも社員と乗り越えた実績がディー・エヌ・エーを強くした。


  「南場さんはまるで女性の格好をした男性のようです。マッキンゼーで働いていたり、MBAを取るような人たちは頭でっかちで理屈が多く、手足が細い人が多い。けれど、南場さんは、頭だけのプランナーやコンサルタントだったらとっくにギブアップするようなことを絶対にやり遂げる。その執念が南場さんの持ち味だと思います」


    南場とは年に数回会う仲だ。久しぶりに会ったときは、「あのビジネスモデルはもっとこうした方がいい」「あの経営者はこんな性格だ」など、巷で騒がれている企業について激論を交わす。想いや考え方は共鳴する部分が多い。二人の共通の趣味は読書で、山村と南場は同じ目標がある。「私は直木賞を、南場さんは芥川賞を取ることをめざしています」と山村はいう。


    今年の6月には山村と南場を含めた数人で韓国までゴルフをしに行ったばかり。「今、彼女はゴルフにすごくはまっているみたいです。でも決してうまいわけではないんですよ。この前、南場さんに『120を切ったら、山村さんに挑戦状を叩きつけます!』なんて言われたんですが、まだだいぶ先だろうなと思っています(笑)。ただ南場さんはものすごく仕事熱心だから、たまには息抜きすることも大切ですよね」


  「カラオケにも一緒に行ったことがあるのですが、南場さんは、プリンセス・プリンセスの曲を踊りながら唄うんです。本当に元気だなあと思います(笑)。そんなトップのいるディー・エヌ・エーはとても居心地のいい会社だろうと思います。南場さんは社員の誰もがハッピーになれる会社をつくろうとしている。それがディー・エヌ・エーの魅力になっていると感じますね」



技術者を大切にする経営者

インフォテリア 代表取締役社長 平野洋一郎


  「困っているから助けて欲しい」。出張先のシアトルに滞在中、ディー・エヌ・エーとインフォテリアの両社に出資をしているベンチャーキャピタリストの村口氏から電話が掛かってきた。直ぐに日本に連絡を取り社内の技術者に様子を見に行ってもらった。状況を聞くとサービスインの1カ月前になってシステム構築が間に合わないという。


  「蓋を開けてみたら、本当に何もなくて驚きました」と平野はいう。


  「サービスインの日は決まっているので、選択肢は一つしかなかったですね。うちにできることは何でもやりますよ」と答えたという。「仕様書は本当に完璧でした(笑)」と当時のことを振り返り話す平野。この仕事を通して南場ともよく会うようになった。


  「あれだけのキャリアを捨ててまでオークションに掛ける意気込みに期待していたので、応援したいと思った。我々にできることなのに、やらない理由はない」と早速仕事に取り掛かった。


  「会ったことない人はキャリアウーマンというイメージが強いですよね。しかし会って話をしてみると、本当に気さくで人間南場智子という魅力の虜になってしまう。だけど、中身は『ついてこい』といったような強いリーダーシップも持っている。このギャップがいいんでしょうね。皆、浪花節の南場さんに惹かれてしまうんです」


  「南場さんは華があり、この人のために何かしたいと思わせる人ですね」と南場の印象を語る。


  「徹底的に議論のできる人ですね。論点と人物を切り分けて話をしていく。議論の仕方を心得ているなと思います」


  「ここまでやってこれたのは、彼女がよくいう『やってみようよ』というチャレンジ精神が理由だと思います。ですので、これからもその意気込みで成長していくだろうなと思っています」と南場の経営者としての実力も認めている。


  「南場社長から、よく技術開発の強い会社にするにはどうしたらいいの。優秀な技術者を採用するにはどうしたらいいの」と質問をされたという。「これだけ技術志向のネット企業は珍しいのではないでしょうか」と平野はいう。


  「実際に今ではいい技術者が揃っていると思います。最初の開発の失敗から強烈に反省されて、南場社長自身が技術者に対する意識がある」「開発を外注していたら、『ちょっとやってみよう』といったことが出来なかったのではないでしょうか」とディー・エヌ・エーの強さの秘密を語る。


  「優秀な技術者を採用するノウハウなど実はなくて、社長が真剣に優秀な技術者を欲しているかどうかなんですよね。いつも頭の中で考えていたら行動にそれが表われるでしょう。だから、よくあるエンジニアのためにマッサージチェアを用意しましたとか小手先は通用しないですよね。ディー・エヌ・エーは本当の意味で技術者を大切にする企業になって欲しい」と平野は話す。


  「今後ディー・エヌ・エーが成長し、新しいサービスも増えて社員も多くなっていっても、このまま技術志向を忘れないでいて欲しい。技術コアの企業は機動力があり、オリジナリティのあるサービスを提供できると思う。本質的に技術者が居心地のいい企業を目指して下さい」



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