• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2015年03月19日

【ケン・コーポレーション特集】大局観とユーモアのある企業家/田中健介の人的ネットワーク

企業家倶楽部2007年10月号 特集第5部



抜群の大局観と情報収集力で、ケン・コーポレーションを高級不動産仲介のトップ企業へと育て上げた田中健介。培った人脈は幅広い。日本土地建物社長の中島久彰と早稲田大学ファイナンシャル研究科教授の川口有一郎とは、共に不動産業界でイノベーションを起こしてきた。趣味の囲碁では、天才棋士の武宮正樹が主催する「武宮会」の会長に田中が就任し囲碁の普及に努めている。時局心話會取締役・編集主幹の山本新太郎とは国際情勢の意見交換を交わす。彼らが深く付き合う中で見たのは、自信いっぱいのゴルフで失敗して「おかしいな」など苦笑いする田中の愛嬌。無敵の分野を作り上げた企業家に垣間見える“男の愛嬌”に、彼らはみな信頼を寄せる。(文中敬称略)



合理的かつ愛嬌たっぷり正義感溢れる人

日本土地建物 取締役社長 中島久彰


  「どのような物件を作ろうか」


    2000年春、東京都渋谷区鉢山町の土地を前に中島らは様々な考えをめぐらせていた。


    代官山にほど近く、時にドラマの撮影にも使われる瀟洒な高級住宅街・鉢山町。不動産の企画・開発などを手がける日本土地建物にとって利用価値は高い。せっかく手に入れたすばらしい土地を最大限に生かす物件を建てたい――そんな思いで中島らがコンサルティング先として白羽の矢を立てたのが、高級物件のノウハウを持つケン・コーポレーションだった。


  「外国人向けの一戸建て住宅はいかがでしょうか」。話を聞いた田中はそう切り出した。「高級マンションの建設を勧められるかと思ったんですけどね。でも、アドバイスに従い100坪以上の土地を使い2件の高級物件を作ったところ、見事に売れてしまったんです」


    以来、つきあいは深まった。日本土地建物が企画・設計した東京・西麻布の超高級マンション「The Manor西麻布」ではケンが値段決めなどから担当、高級物件のノウハウをたっぷりと披露した。


  「おかげで評判は上々です。高級物件に人を集めるケンの力はつくづくすごい。?高級物件はケンと組む“のが私たちの方針です。得意技を極めて日本一になるという田中さんの経営スタイルはとても上手いですね」と、中島は顔をほころばせながら語る。


    田中の「得意技を極め日本一になる」スタイルは何も経営に限ったことではない。ゴルフでも距離が短いアプローチやパットをとことん練習し、最強のショットへと育て上げた。とんでもない地点からパットを入れて中島を驚かせたこともある。ちなみに飛距離が長いドライバーを重視しない理由は「長距離を飛ばすには練習に加え強靭な肉体が必要で、自分には向いていない。逆にアプローチやパットなら練習さえすればプロ級になれる」との計算から。入りやすいところから入り、達人になる。常に合理的な思考を忘れない。


  「田中さんは『私のパットは百発百中』と語るくらい自信を持っていますね。なのに本番では半分くらいしか入らず『おかしいな』と困っていたりする。案外自然体でスキがあって、懐に入っていきやすい方なんです。そんな愛嬌があるからこそ、『この人を助けたい』と多くのスタッフが集まるのかもしれません」


    加えて、田中の新しいことにチャレンジする姿勢に感銘を受けている、とも語る。例えば01年9月に始まったJ-REIT(不動産投資信託:投資家から集めた資金を不動産で運用し、賃貸収益や売却益などを配当金として投資家に分配するもの)。田中はJ-REITの認知度がまだ低かった頃から参入の準備を進め、1年後の02年9月にはプレミア投資法人を東証に上場させた。現在のJ-REITブームに先鞭をつけた形である。さらに、賃貸住宅のインデックス指標「住宅マーケットインデックス」まで生み出した。不動産は相対取引が中心で値段が不透明になりやすいがゆえに、業界への信頼度は低い。誰もが安心して利用できる不動産業界の指標を作り、不動産業界の信頼度を上げたい。社会の役に立ちたい。そんな思いあってのことである。「田中さんが『社会の役に立たないことで金儲けをしても意味がない』と話していたのを強く覚えています。社会の役に立つ仕事をしないと社員もついてきませんよね。経営者が政治など社会のことを考えるのは本当に大切だと思います」



常に「世の中のために」を考えている

棋士 武宮正樹


    武宮はその男に3子を置かせて、第一手を空いている隅の小目に打った。すると、その男は大胆にも中央の天元から斜め一間飛び(はざま飛び)の所に打ってきた。中央から武宮の石を睨むような形である。


    その昔、天才棋士といわれた呉清源が本因坊秀哉を相手に第一手目を三々、3手目星、5手目天元と打ち、満天下の囲碁フアンを仰天させたことがある。「相手に対して失礼だ」「いや、常識破りの手で面白い」など物議を醸した。男の一手は呉清源張りの古近で珍しい鬼手であった。


    時は今から20年前。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの武宮が碁の本を出版することになり、アマチュアとの対局も掲載しようということになった。アマチュア代表に選ばれたのが田中健介で、田中は武宮と初対面、初対局でいきなり天元近くに打ち込んだ。


    武宮はこの時のことを今でも鮮明に憶えている。「意表を衝かれたというか、素人離れした一手だった」と当時を懐かしむように語る。この一手がその後、白石の連絡を分断する妙手となり、終盤、武宮に追い上げられたものの、僅差で田中が勝利を収めた。これが縁となり、田中は指導を受けることになり、最近では月に1、2度胸を借りている。


    武宮は中央に大模様を作る厚み重視の棋風で知られる。天才肌の打ちまわしから宇宙流と呼ばれて、フアンも多い。その武宮が「ケンさんは基本を大切にする一方で、時折、独創的な手を打つ」と田中の棋風を評する。田中の腕前を尋ねると、「ゴルフで言えば、クラチャン(クラブチャンピオン)クラス。アマチュアの県代表と互角の戦いをする」と田中の実力に折り紙をつける。事実、今では武宮は田中に6目半コミ出しなしの黒先番で指南している。


    最近、濃密に付き合うようになって、武宮は田中の人柄もわかってきた。「大局観のある人。ユーモアがあり、時々面白いことをいう。心にゆとりがある。だから、バブルの時期もくぐり抜けたのではないか」。そして「ケンさんはいつも、儲けることより、いかに世の中に役に立つかを考えている。地を稼ぐより、模様を重視する、私の囲碁観と似ているので、気が合うのだろう」と述懐する。


    武宮は経営者、自由業、ビジネスマンら5 0人ほどの囲碁ファンを集めた「武宮会」を持ち、年に数回、囲碁大会を催す。12年前から「武宮会」の会長に田中が就任した。武宮が道場主、田中が師範代として囲碁の普及に努めている。


    囲碁は単なるゲームではない。武宮に言わせると、「神様が人間にくれた最高の贈り物。碁はすべて自己責任。しかも一手ごとに変化し、相手の意図を考慮しながら、変化に対応しなければならない」と碁の醍醐味を語る。


    碁をたしなむと、変化に強くなるようだ。「変化するのが宇宙の摂理。世界はこれから今までになかった変化、事件が起きる。その時、前例がないからやめよう、というのは幼稚な考え。安全なのが実は最も危険」と諭す。


    碁を学ぶと、異質なものに対する寛容さも養えるようだ。「相手と交互に打っていくうちに、自分だけが正しいわけではないことを悟るようになる」と武宮はいう。


    田中は10年ほど前、胃潰瘍か何かで大きな手術をした。そのことを気ずかってか、「健康に留意して、いつまでも碁を楽しんでいただきたい。ただし、これ以上、強くなる必要はない」と武宮は田中にエールを送った。



不動産業界にイノベーションを起こすパートナー

早稲田大学ファイナンシャル研究科 教授 川口有一郎


    川口と田中の出会いは1999年。ケン・コーポレーションが住宅マーケットインデックス(東京都23区のマンションの賃料、価格、利回りの水準を指標で表したデータ)を開発する際、川口に協力を依頼したのがきっかけである。以来、交流が始まった。99年といえば、バブル崩壊や97年のアジア不動産市場崩壊の影響で?土地神話“が完全に崩れ去った頃。「今後、不動産は売却益ではなく、賃料など建物から発生するキャッシュフローをベースに評価する必要がある」。川口はそんな思いから「不動産金融工学(不動産と金融を融合し、キャッシュフローをベースに、ファイナンス理論を使って不動産価値を算定する学問)」なる学問を世界で初めて創りだしていた。一方の田中も長年不動産業界の現場で培った勘で、キャッシュフローをベースにした不動産経営の必要性にいち早く気づいていた。「川口先生、ぜひうちで不動産金融工学の理論を教えてください」。そんな田中の誘いを川口は二つ返事で承諾する。?理論“の川口と?実践“の田中―かくして2人の不動産の新しい分野作りがスタートしたのである。


    2000年にはケンとオリックスと共同でフォーラムを開催、不動産と金融の融合について広く訴えかける活動を開始。2001年には日本初の不動産金融ビジネススクールを設立した。最先端の不動産金融工学を教えるこのスクールには、不動産業界・金融業界をはじめ不動産鑑定士や会計士など専門職の人も参加。「東京・六本木のケン本社からほど近くのビルで、15人の生徒が毎週1回集まって授業をやりました」。卒業生達は今、不動産金融の分野で活躍している。


    それと時を同じくして01年、J-REIT(不動産投資信託:投資家から集めた資金を不動産で運用し、賃貸収益や売却益などを配当金として投資家に分配するもの)が開始。「J-REITはうまく機能するのか」。不動産を研究する教授達がそんな疑問を投げかける中、田中は逆風を気にせずJ-REITの立ち上げに奔走していた。


  「勇気をもって事業を進められる方だという印象を受けました。これは面白くなりそう、これは今後重要になるだろうなど、先を見据える力が誰よりもあります」と川口は語る。


    不動産金融工学の理論を取り入れたり、J-REITを設立したり。新しいことに挑戦を続けるケン・コーポレーションを、川口は?常にイノベーションを常に起こしていく会社“と表現する。「イノベーションを起こす原動力は、田中社長や、田中社長を取り巻く経営陣たちにあります。たとえるならイエス・キリストと12使徒。彼らは今まで出してきた利益を守るのに安住せず、常に変化に対応していく適応力を備えています。田中社長は勘の鋭さ、そして柔軟な適応力を武器に、積極的に新しい種を不動産業界に蒔いていくことのできる経営者です」


    最後に川口は田中に感謝したいと語った。


  「プライベート上でも、ビジネス上でも、直感的に私に全幅の信頼を置いてくれた経営者は田中社長が初めてです。とても懐の深い方だと思います。本当に色々とサポートしていただきました。田中社長は、私に研究や教育を薦める上でいつもヒントを提供して、刺激を与えてくれました。今後とも、不動産業界に共にイノベーションを起こしていくパートナーとしてよろしくお願いします」



大局観のある経営者

時局心話會 取締役・編集主幹 山本新太郎


    田中と出会ったのは、今から20年前。山本が現在取締役を務める会員制の組織団体・時局心話會に田中が入会したのがきっかけだ。時局心話會はマスコミや知識人・経済人を中心にした各界の第1人者が集まる勉強会を定期的に開催している。当時18歳の学生だった山本は勉強会にほぼ毎回出席する田中の向上心に驚いたという。


  「田中社長は非常に勉強熱心で、経営以外のことについても情報や知識を吸収したいという意欲のある方です。企業経営を通じて国と社会を考えるとともに、内外の政治経済の情勢を分析・収集され、常に大局的な立場から経営を見つめているのです」


    田中は国内外の政治・経済の情勢を積極的に学ぶことで、グローバルな視点から日本の置かれている状況を把握し、自らの業界の現状と未来を分析する。その大局観が田中の持ち味である。バブル時代には数多くの企業が不動産の投資に手を出したが、田中は一切手を出さなかった。バブルの到来と崩壊を予見していたからだ。


  「時局心話會の勉強会でも知識人や政治家、財界人のトップの方々と対等に議論をし、これまで国や社会に対しても数々の提言をなされておられます。そういったことが、田中社長の経営者としての強みでもあり、人間的な魅力でもありますね」


    山本は学生時代、1カ月ほどケン・コーポレーションで夏休みのアルバイトをしたことがある。朝礼では、田中が国内外の政治状況を社員に話していた。会社内の売り上げ増進や社員教育は専務以下、幹部社員が担当し、社長は会社の経営理念や人生哲学に基づいてケン・コーポレーションとグループ企業の全体を動かす「舵取り」をしているのだ。


  「田中社長の知的レベルの高い話を、社員が真剣になって聞いているのが印象的でした。社員は社長を心から尊敬している会社だと感じたのです。また社員の誰もが田中社長の経営理念や人生哲学に共鳴し、志をもって仕事をしています」


    ケン・コーポレーションの強みは、田中社長の理念と哲学、社会観を企業経営に反映していることだ。本業から外れることや、問題とされる業者や関係者とのビジネスはたとえ大きなもうけ話であってもやらない。「社員の幸福と家族の安泰を一番大切にしたいというのが田中社長の口癖です」と山本は話す。


  「田中社長の人柄と教養の高さの上に、ケン・コーポレーションの将来の方向性が描かれています。その方針をスタッフが理解し、忠実に実践しています。幹部社員の教育も行き届いて、それぞれの部署の責任者に権限が与えられています。それが社員のやる気を引き出し、好業績を達成しているのだと思います」


    山本と田中は、北海道や福岡、神戸、グアム島などの国内外でゴルフ界や食事会で一緒にする機会も多い。多いときで1カ月に4、5回は会う。「身内のおじさんと会っているような気分です。お互いに気をつかわずに様々なお話しができる仲ですね」と山本。


  「最近、田中社長はお酒の量が減ったのですが、タバコの量がすこし増えたように感じます。背負っているものが大きいので、長生きするため健康には気をつかってもらえたらと思います。


    また、私も若い経営者と会うことが多々あるのですが、彼らは経営者としての道しるべに悩んでいます。これからは、田中社長の経験や教養を若い経営者を教育し指導する機会をつくっていただきたいですね」

 



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top