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トピックス -企業家倶楽部

2015年04月22日

【ソフトバンク特集】国内を支えるソフト・ ネットワーク事業部

企業家倶楽部1997年1月号 特集第7部


海外企業への戦略的投資で注目を浴びているソフトバンク。しかし、それができるのは国内事業が磐石であればこそ。派手な企業買収に目を奪われがちだが、国内事業も実は、すさまじい勢いで伸びている。ソフトバンクの国内戦略をリポートする。

デジタル事業の総合商社

 ソフトバンクは知名度の割には、その事業内容が正確に把握されていない。メーカーと店舗・ディーラーの間にある立場だから見えにくい。加えて、同社の事業は、パソコン市場とその周辺にアメーバのごとく拡大中であるため、マスコミでたびたび、的の外れた解釈をされているようだ。

 国内での主な事業は、パッケージソフトウェアの卸と出版である、と見られている。かつてはそうだった。が現在は、それでは正確でない。ソフトの卸というと、問屋のようなイメージがあるが、正確に言えばデジタル分野の総合商社に近い。ここのところがよくわかっていないと、同社の国内事業は語れない。

 同社の国内の柱は出版事業部、ソフト・ネットワーク事業推進本部、ソフト・ネットワーク営業本部の三つである。この編成は、九六年四月一日からのもの。従来、地域・製品別に分けていた組織をソフト・ネットワーク営業本部とソフト・ネットワーク事業推進本部の二つに統合したのだ。地域ごと、相手先ごとに事業部を分けて、それぞれが違った政策をとっていてはやりにくくなったのである。

 いま伸びているのは、ソフト・ネットワーク事業の方である。九六年三月期の決算で売上高一二〇〇億円(前期比一四七%)、さらに来期は一八〇〇億円を目指そうという勢いである。ソフトウェアの低価格化、またパソコン本体へのパッケージ化(プレインストール)が進み、同業のソフトウェアジャパンが行き詰まっているなか、なぜこうも景気がいいのか。というのが素朴な疑問であろう。

 さまざまな要因が絡んでいるが、「ソフトの卸」ではなく、「ソフト・ネットワーク事業」と呼んでいるところがミソ。結論を一言でいえば、ソフトバンクはそんなのんきな会社ではない、というにつきる。  営業本部は宮内謙(常務取締役本部長)、事業推進本部は石川憲和(常務取締役本部長)が統括している。大まかにいえば前者が営業、後者が仕入部門である。

 ソフトバンクは全国に約二万五千店の加盟店をもっている。このうち約半数が、大阪の上新電機「J&P」、東京のラオックス「ザ・コンピュータ館」をはじめとするパソコンショップ(量販店)である。東西の両横綱専門店にソフトウェアを独占的に供給し、製品においてもマイクロソフトのウィンドウズ、ジャストシステムの一太郎、ロータスのロータス1―2―3など、人気ソフトの流通を押さえ、ソフトウェア流通市場の五〇%以上を支配しているのは、周知の通りである。  そして加盟店のもう半分が、オフコンディーラー(システムインテグレーター、ベンダーなどと呼ばれ、顧客企業にコンピュータシステムを提供する会社)である。たとえば大手ではNTTデータ通信、CSK、日立情報システムズ、東芝情報システムといった企業があげられる。実はここの部分がいま一番伸びているのだが、よく理解されていない。



全国にソフトバンクの旗を立てて回る

大手企業には必ずソフトウェア関連会社がある。前述した企業のほかに、NECには日本電気情報サービス、富士通には富士通エフ・アイ・ピー、日立製作所には日立ソフトウェアエンジニアリング、新日鉄には新日鉄情報通信システム、ヤマト運輸にはヤマトシステム開発など、枚挙にいとまがない。

 こういった会社はもともとメインフレームやワークステーションでシステムを構築し、企業に提案していたが、ダウンサイジングの流れの中で、これがパソコンに代わってきている。パソコンはソフトバンクの領域である。

 ソフトバンクのインセンティブ制度で、九五年五月に一億円の報酬を手にした宮内はいう。

 「PCの世界はかつては、パソコンという表現で、一太郎とかゲームなど、パソコンの中のソフトウェアのことだけを考えて仕事ができた。ところがウィンドウズNTなどが出てきて、ネットワークの端末として、企業の本格的な業務にも使えるものになった。それで、われわれの仕事が、パソコンマニアの領域から、コンピュータ情報システム網へと、ぐっと広がってきたのです」

 もう一つの大きな流れは、パソコンからブランドが消失したことである。心臓部のCPU(中央演算処理装置)はインテルのマイクロプロセッサ、OS(オペレーティング・システム)はマイクロソフトのウィンドウズという標準が確立し、(マッキントッシュ以外は)どのメーカーのパソコンもみな同じになった。ウィンテル(ウィンドウズ+インテル)と言われる由縁である。これはメーカー系オフコンディーラーにとっては、自社ブランドでの統一が不可能になり、顧客にとっては、好きなメーカーのパソコン、ソフトウェアを自由に選べる時代になったことを意味する。

 「オフコンディーラーには東芝系、富士通系、IBM系などいろいろなチャネルがあります。数年前までは、東芝系のチャネルなら、東芝の製品だけを売っていれば、それで事業が成り立っていたわけです。東芝系は東芝パッケージ、IBM系はIBMパッケージで、ハード、ソフトの品揃えからアプリケーションソフトのカスタマイズ、サービスまで一貫して行っていました。ところがPCの時代になり、われわれがそこに(汎用のネットワーク商品である)ネットウェアやウィンドウズNTをもってきたり、さらにインターネット、イントラネットの時代になって、そんな縦の統合はなくなってしまったのです」(宮内)

 たとえば東芝系ディーラーでも、顧客から次のような要望を受けるようになった。コンパックのパソコンを使ってイントラネット(インターネットを活用したネットワーク)を構築したい。ロータスノーツを入れて、ワープロは一太郎にして、これこれをしたい――。こうした要望にこたえるには、さまざまなハード、ソフトを仕入れてワンパッケージ化し、そのうえで、お客さんが使えるようにカスタマイズしてあげなければならない。本来ユニックスなどのプログラミングをし、システムを構築するのが仕事だった会社が、何万種ものパソコン関連ハード・ソフトの品選びから仕入れまで請け負わされてはたまったものでない。そこで、仕入れはソフトバンクから、という図式になるのだ。実際、現在のソフトバンクはパソコン本体から、周辺機器、ネットワーク機器まで、あらゆるものを扱っている。

 この構図に乗って全国を飛び回っているのが、宮内率いる営業部隊である。

 「いま天下統一を図る気概で、全国にソフトバンクの旗を立てて回っています」。野武士のような迫力あるキャラクターである。

 「机に座って考えてばかりいるようなやつはだめだ。理屈でなくて、実際の戦いに勝てる強い人間が必要」と強調する。

 宮内の主な仕事は講演・セミナーである。全国のメーカー系ディーラー、情報サービス会社、メインフレームサービス会社などを回り、これからはPC文化である、われわれといっしょにやろう、そうすればあなたの会社はこれからこんなにチャンスがありますよと説いて回っている。それを受けて営業部隊が、イントラネット導入パックをつくって、地方の市町村などを回る。

 「メーカー系の説明会は、自社製品の売り込みばかりでおもしろくないが、ソフトバンクの説明会は、どの製品が勝つかをざっくばらんに話すのでおもしろいと評判です。いまは情報リーダー的な存在になっていて、その地域のトップ企業がバックアップしてくれるので、おもしろいほどとれる」と宮内。



 時勢の風を受けた、明治維新における薩長のような勢い、といえば言い過ぎだろうか。



デジタルテレビ時代の先手を打つ

 ソフトバンクの勢いは、「先を見て」走ることからきている。PC文化はマニアの世界から、企業の情報システムに広がったが、今度はさらに、放送局の領域とリンクしてくる。

「こういう時代は、単にPCの領域だけをやっていれば、周りの人は騒がないし、堅実な経営だと言うだろうけど、実はそれはものすごく危ないことなんですよ。なぜなら、いまのネットワークは電話線を使ってますが、これがISDN、CATV、衛星電波、光ファイバーと、デジタル情報網のインフラが発展していく。通信料金はどんどん下がり、世界中の電話と同じ数のパソコンがそこにつくことになります。そして光ファイバーが張り巡らされた暁には、その端末でテレビがばーっと動く世界になる。これをわかっている経営者は孫しかいない。みんな近視眼的にPCの世界しか見ていない。最近、孫がPC産業と言わず、デジタル情報産業と言っているのはそれです」

 パソコンでテレビが動くというのは、いまの電話がテレビ並の情報量を送れるということで、テレビがプライベート化することを意味する。すると、百チャンネルはおろか、番組が千万チャンネルあってもおかしくない原理である。

 「データが全部デジタルになったときに一番重要なポイントは、PC、放送局、新聞、雑誌、ゲーム、家電などなど、あらゆるところにその影響が広がっていくということ。だから、いま業域、領域破りをやっている。既存勢力から見ると、煙たい存在でしょうが、明治維新のようなもので、いまは領域が崩壊する前夜なんです。たとえば、マードックさんがきたとき、日本の放送局は大騒ぎしました。日本には十二チャンネルで十分だという意見もあったが、それは大間違い。殻はどんどん破れていきます。そのときに誰がとるかです。ここの見抜き方です。このビジネスは変化に乗り遅れたら終わりです。日経さんにも文句を言ったんだけど、流通業の観点でこの会社はどうこうというとらえ方をしてますが、見方が浅い。単にパソコンのソフトウェアだけを物流していると確かに未来はないかもしれないが、いまの発想でいくと、いろいろなものがある。インターネット一つとっても、それに必要な機器、ソフトウェアはどんどん出てくる。これを先手を打って取り込んでいけば、粗利益もがばっととれる。敗退していった会社はみな、ずっと同じことをやっているからです。企業三十年寿命説というものがあるが、この業界は三年寿命説ですね」

 ちょっと横を向いてぼーっとしていたら置いていかれる激しい世界なんだと、宮内はエネルギッシュに語る。



対メーカー戦略も万全

 仕入れ部門を率いる石川も、ソフトバンクは単なるディストリビューター(卸売店)でないという。

 「たとえばルーター(ネットワーク機器)などは動作チェックをして出荷してます。またシステム図を書いて、さまざまなシステムを提案するといったこともやってますから、単なるディストリビューター以上の付加価値を提供しているのです。けれど、エンドユーザーにぴったり付いているわけではないから、卸売店としてくくられている」

 ユーザーに張り付き、プログラムを組み、メンテナンスをするのはディーラー(ベンダー)の仕事だが、ディーラーがPCの扱いに慣れていない場合は、その手助けもしている。ソフトバンクは、ディーラーにとっては、最新情報と技術をもった非常に頼りになる仕入先なのである。

 メーカーに対しても、あらゆるサービスで差別化を図っている、と石川。

 「仕入れの仕事は、よい商品を早く見つけて、それをいかに有利な条件でメーカーから仕入れるかが大事です。それは単に安くしてくれでなくて、メーカーに対してどれだけの付加価値を提供できるかにかかってます。サービスなきところにマージンはないのです。ですから、われわれはあらゆるサービスをメーカーの立場に立って、幕の内弁当のように提供しています」

 メーカーが商品を開発して利益を上げるまでの間には、次の行程が不可欠である。セールス・マーケティング(商品化計画、マーケットリサーチ)→地域化(翻訳作業など)→商品テスト→販売→広告→ユーザーサポート。このあらゆる過程にソフトバンクは関わっている。卸売り業者でありながら、展示会、出版部門をもっているから、グループ内でこれらの業務をコーディネートして、パッケージ化してメーカーに提供できる。

 実は、商品の翻訳化やユーザーサポートまでやっている。子会社のソフトバンク技研がこれをやっている。たとえば、Aメーカーのソフトを買ったユーザーが、操作方法がわからなくて、A社に電話をしたとする。「はい、A社です」と電話に出て、問い合わせにこたえているのは、実はソフトバンク技研の社員なのである。小メーカーにとっては、自社でサポート業務をするのは負担になるため、それを請け負っているのである。



増殖拡大中の国内事業

 会社にネットワークを導入して、どんなメリットがあるか。ソフトバンクの社内・外システムを見るのが一番わかりやすい。たとえば同社の見積り管理システムでは、ボタン一発で、見積書が作成できる。しかも、仕入れ価格のない外部向けは、ディーラーともつなげている。ソフトバンク加盟店システムというもので、昨年から始めたサービスだが、ディーラーはいつでもどこでも、同社の取扱商品の在庫、価格などのデータを手に入れることができる。これに加盟すれば、見積書を依頼する必要もない。

 「競合他社からは情報による囲い込みだと嫌味を言われてますが、将来的にはこのシステムで発注までいただこうと思っています」と宮内。二十万点あるという取り扱い商品も、このシステムさえあれば、右から左へ自動的に流せるわけである。

 また電子メールも、ソフトバンクでは不可欠の道具となっている。それなしでは仕事が一歩も進まないという状況を、石川は次のようなエピソードで語る。

 「孫社長と一緒に車に乗ったときのことです。石川さん、あの件はどうなったと聞かれたので、メールに入れておきましたよとこたえると、社長はさっそく携帯パソコンでメールを読みました。どうですかと聞くと、社長はメールに入れておいたよとこたえ、それで終わりです。これは笑い話でなくて、メールの便利さを表しています。その場の会話ですと、それで終わってしまうが、メールでやりとりしておくと、その情報はほかの社員とも共有化できるのです」。

 だから、こういったシステムを導入し、活用するには、オープンな組織でないとできない、と宮内。

 「情報が横に漏れたら嫌だなどと言っていては難しい。データをオープンにやりとりするという発想・コンセプトがないと、なかなか前に進まない面があります」

 昨年四月からの拠点である東京日本橋・箱崎の本社内を見せてもらったが、第一印象は「若く、活気があり、女性が多い(派遣社員が多いせいでもある)」というものだ。

 女性社員のがんばりは非常に大きい、と宮内も認める。

 「若い女性が青春をかけて、自分から休日出勤をしたり、辛い仕事もやらされるのでなくて、進んでやっている。すごいですよ」

 そして、そういう中から、新規事業が次々と生まれているのを目の当たりにした。

 たとえば十階は、当初は空きフロアだったが、いつの間にか次々と間仕切りができ、新会社や立ち上げ準備中の部署ができていた。加入者十一万人を目標に無料キャンペーンを展開中のインターネット・プロバイダー会社メディアバンク、着々と準備を進めている衛星事業企画室、情報検索ナンバーワンのヤフージャパン、パソコン性能試験を行うPCラボなどの部屋が並ぶ。 「ここは会社の卵を育てているフロアです。おもしろいでしょう」と石川。

 石川は七年前、富士写真フィルムからやってきた。ソフトバンクが店頭公開するには、人事部長が必要だからと、請われて入社したのだが、その間、一年ほど悩んだという。

 「結局、その組織の中で、自分がどれだけ大きく貢献できるかという基準でソフトバンクを選びました。野村證券やその他の企業からやってきた人たちだって、みんなそうでしょう」。大企業出身らしく、物腰が柔らかでスマートだが、スピード違反経営と称するマスコミの風評に対しては、「いまの五十歳くらいの人は、高度成長期の甘ったれが多いからそう感じるのだ」とばっさり。明治、大正から戦前にかけて創業し、大きくなった会社はみんな大きなリスクを乗り越えてきたではないか、と言う。

 ソフトバンクの課題は、との質問に、「問題だらけだからなあ、なんだろう」としばらく考え、次のようにこたえた。

 「急成長している会社だから、そういうときに注意しなければならないことが一般的にある。どうしてもコミュニケーションが悪くなりがちだし、志と現実のギャップが大きくなるだろうし。スピードがあるのは事実で、道の悪いところを走っているからガタガタ揺れる。そして、常に同じドライバーが運転している。圧倒的にリーダーシップのある孫社長だから、そういう立場の人はコーディネーションはあまりやらない。何をいつやるかを決めて突っ走る。ホワット、ホエンは正しい。スピードもいい。あとはホワイ、ハウマッチという面での課題はいっぱいあると思う」

 不安要素は、考え始めればきりがない。が、ここしばらくは、それらを考える間もないほどの勢いで突っ走りそうだ。それだけのエネルギーを感じた。



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