トピックス -企業家倶楽部

2007年02月27日

社会最適でCSとSSを両立する/プラス社長 今泉嘉久

企業家倶楽部2007年4月号 私の信条 vol.1


   私は24年間の社長業の中で、数多くの失敗をしてきました。その結果学んだものは、顧客満足(CS)が最も大切であるということです。CSの重要性はどの企業でもいわれています。しかし、達成できていない企業が大多数です。それは、なぜなのか。

   実はCSを追求すればするほど、供給者側の不満足が高まるからです。お客様は「もっと安くしてほしい、もっと早く届けてほしい。土日だろうとお店を空けてよ」と言います。そこでCSを実現しようとすれば、夜中まで働いたり、土日まで出勤し続ける人がでてきます。価格を下げるためにコストを削減しようとすると、人件費にしわ寄せがいきます。結果として、CSを実現しようとすればするほど、供給者満足(サプライヤー・サティスファクション=SS)が得られません。CSとSSが一致しない。だから企業が顧客第一主義を掲げても、ほとんど実現しないのです。

   しかし、成功するためには絶対にCSが重要です。でも私はサービスやモノをお客様にお届けしている人たちも満足してもらいたい。とすれば、CS=SSというウィンウィンの関係を築かなければいけません。「お客様も我々も満足する」という新しいビジネスモデルを構築しなければいけないと気がついたのです。

   そこで考え付いたのが、アスクルでした。プラスのグループ企業であるアスクルは事務用品や文具などオフィスに必要なものを届けるトータル・オフィス・サポートサービス事業を展開しています。全国の企業にカタログを無料配布し、ファクスやインターネットで注文を受け、土日でも当日または翌日配送するのです。これは法人・個人事業主のお客様に満足を与え、なおかつ供給者である我々も満足する仕組みでした。

   私がこの仕組みを考えるときに意識したのは、「社会最適」です。社会最適とは、小売、卸売、メーカーという業態がそれぞれ合理化の努力をするのではなく、流通全体を見据えて何が一番合理的かを考え実現することです。

   これまで我々の文具業界は流通の仕組みが煩雑でした。例えば、お客様が文具店でペンを100本購入しようとしても、文具店は5本の在庫しか持っていません。ですから、文具店→問屋→メーカーという形で95本の発注がされます。その後、メーカー→問屋→文具店→お客様という流れで商品を届けます。その過程では、たった100本のペンを販売するために、何回も伝票が発行され、数多くの人が携わります。これを毎日毎日繰り返しているので、膨大なコストと時間を使っているわけです。そのため文具店が法人のお客様から受けた注文商品をお届けするには4日間も必要でした。これではお客様も満足しないし、供給者も大変です。

   配送の問題もありました。東京駅の丸ビルには36社もの文具店が1日に2回ずつ配送していました。つまり72回の配送が毎日来ているわけです。ここにアスクルが各社のお客様に商品を届けるビジネスを展開すれば、2回の配送だけで終わります。つまり70回分のコストダウンができるわけです。このコスト削減分で商品の価格を下げれば、お客様は満足します。

   文具店も無駄な手間が省けますし、その時間で新規顧客の獲得ができるから、満足します。これまで文具店は忙しすぎて、新規開拓する余裕がありませんでした。受注・発注業務、納品の立会い、クレーム対応など、すべてのサポートを少ない人数で行っていたのです。そこでアスクルがお客様へのサポートを一括して行います。アスクルでは、一日に一万件のお問い合わせやクレームに対応するので、ノウハウも蓄積され、サポート力も高く維持できます。文具店は作業が劇的に減ることで、朝から晩まで新規開拓に時間を使え、売り上げも向上します。

   アスクルはこのような新しい仕組みでCSとSSを一致させ、成功させることができました。どの業界であれ、社会最適を考えCSとSSが一致したビジネスモデルを構築することが最も重要なことなのです。



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