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トピックス -企業家倶楽部

2014年09月16日

企業家の事業構想について

企業家倶楽部2014年10月号 視点論点


   日本経済新聞夕刊「天下 家康伝」(火坂雅志 著)は最近にない面白い歴史小説だ。小牧・長久手の戦いで家康と秀吉が対峙した時、こんなくだりがある。

「囲碁というのは、盤上に描く図と図の勝負にほかならない。相手より優れた図を描くことができた時、はじめて勝利をつかみ取ることができる」と囲碁の名手に家康は教えられる。

   なるほど、と家康は心中うなずいて、囲碁の世界だけでなく、群雄が競い合う戦国の世も同じことがいえる。すなわち、もっともすぐれた図を頭に思い描くことのできた人間だけが、最後に生き残っていくことができるのではないか、と家康は考える。

   戦国武将における図とは、その人間の持っている哲学・言い換えれば、国家構想といってもいい。作者はそう読者に訴えかける。

   今ように言えば、事業構想だろう。織田信長は「天下布武」を合言葉に武力によって相手を屈服させようとした。天才、信長は鉄砲による新戦術を編み出し、天下統一、もう一歩の所まで来る。ところが、あまりにも過酷な組織運営から光秀の謀反にあい、夢は消える。

   秀吉は天下統一に成功したように見えたが、後継問題で失敗し、一代で終わった。結局、長生きした家康が260年にわたり天下泰平の世を創った。こうしてみると、家康が描いた国家構想「厭離穢土(おんりえど)欣求浄土(ごんぐじょうど)」が一番優れていたようだ。

   現代の事業構想はどうか。さしずめグローバル構想を描いた企業家が勝利をおさめそうだ。ソフトバンクの孫正義社長は「世界一の携帯電話会社になる」と標榜し、昨年7月、アメリカ第3位のスプリント社を216億ドル(約2兆1600億円)で買収。

   次に第4位のTモバイルUSを買収し、スプリント社と経営統合させ、1、2位と戦いを進めようとしている。しかし、米当局は3位と4位の経営統合に難色を示し、今のところ孫社長の構想は途中停車している。

   ファーストリテイリングの柳井会長兼社長は2020年に売り上げ5兆円を達成、世界一のアパレルメーカーを目指している。2013年8月期の売り上げは1兆1430億円を計上、2020年の5兆円達成に柳井氏は自信を見せる。

   日本電産の永守重信社長は2030年に10兆円構想を打ち出し、2014年3月期は前期比23%増の8751億円の売り上げを達成した。目標は「世界一のモーター会社になる」ことだ。

   戦国武将も企業家も同じだ。己れの夢実現のために疾走する人種なのだ。「何のために」と疑問を投げかける人もいるが、登山家に「何で山に登るのか」と問いかけるようなものだ。

   坂本龍馬ではないが、「この世に生を受けるはことを成すにあり」ということだろう。理屈ではない。本能的に人のため、世のために疾走するのが企業家の生き様なのかも知れない。

   企業家は各自、自分の事業構想を実現すべく、日夜奔走していることだろう。どれがいい事業構想であるかは軽々に判断できないが、企業家ネットワークをスタートしたころ、孫社長が講師になった勉強会があり、「豆腐屋の心意気で1兆、2兆と数えられる企業になりたい」と例によって大風呂敷を広げた。

   勉強会が終わって、最前列で聞いていたある若い企業家が私の所に来て、こう言った。「自分は生涯の目標を売り上げ1000億円に置いていましたが、孫社長の話を聞いて目標を変えました。今日から1兆円を目指します」。

   この企業家は現在、グループ売り上げが1600億円ぐらいになり、1兆円に向けて着々と前進している。もし、孫社長の話を聞かず、1000億円の目標のままなら、今ごろ500億円あたりをウロウロしていたのではないか。

   年商500億円も立派な数字だ。一代で年商500億円を達成する企業家はそう多くない。1000億円を突破すれば、世の中への影響力も出てくる。若い企業家はそれゆえ当初1000億円を目標にしたのだろう。しかし、孫社長の事業構想を聞いて、目標を変えた。(T)



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