• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2015年05月01日

人徳溢れる企業家/矢﨑雄一郎の人的ネットワーク

企業家倶楽部2015年6月号 テラ特集第5部


免疫療法を普及させるべく邁進する矢﨑。夢の実現に向け次々と周囲を巻き込んでいく。そこには、志を熱く語り、真っ直ぐ人と向き合う姿があった。誰もが認める矢﨑の魅力とは何か。医療界だけにとどまらず幅広い交友関係を持つ企業家の人物像に迫る。(文中敬称略)



正々堂々と挑戦する先駆者


正々堂々と挑戦する先駆者


京都大学 医学博士・医師 川上浩司


「彼は大志のある人です」。そう語るのは京都大学医学研究科薬剤疫学教授の川上浩司である。

 矢﨑と川上の出会いは10年前の2005年にまで遡る。前職、東大の助教授としてがんワクチンや再生医療の審査を担当していた川上のもとに現れた矢﨑は「東大医科研の技術でベンチャーを作った。ビジネスとして軌道に乗せるため薬事について教えて欲しい」と相談を持ちかけてきたという。同い年ということもあり3回目に会った頃には互いに熱く語り合うまで意気投合した。

 「薬事規制と科学的な臨床評価に基づいて、がんワクチンの製造・販売の承認をとりたい」と矢﨑は川上に話していた。矢﨑がチャレンジしている自費診療のがん治療は玉石混淆で誤解が多いのも事実だ。

 「わらをもすがる患者さんを食い物にしている」と公言してはばからない医者もいるほどだ。しかし世間のそういった厳しい目に対しても正面から向き合い、科学的なエビデンスで証明しようとする姿勢に「この人は違う」と感じたという。

 全国に30万人といる医者の内、途中で医師を辞め他の道に進む人は多く見積もっても2?3 %程度。中でも「起業しようとする人は滅多にいない」と川上は語る。矢﨑の起業は、医療業界からすれば特異な例だった。

 「彼はお金儲けではなく社会に対する公益性を一番に考えています。誰かが動かないと社会は変わりません。そういう意味で矢﨑さんは、がんワクチン治療という自分の仕事に強い責任感と自覚を持っています」

 がん根絶を目指す矢﨑。川上は、その覚悟や決心を彼の仕事に対する姿勢から感じ取っていた。

 創業期から知る川上は、その強みを社長である矢﨑そのものだと分析する。免疫療法の分野で似たことを行う企業は他にもあったが、矢﨑のテラほど正面玄関から薬事承認に挑戦している会社はなかった。矢﨑自身の熱い想いや能力、カリスマ性がテラ全体を引っ張っているというのだ。

 現代のエビデンスレベルは低い順に有識者の発言、症例報告、観察研究、臨床試験に分けられる。テラが目指すのは一番レベルの高い臨床試験による薬事承認だ。しかし臨床試験には莫大なコストが掛かると川上は示唆する。一方、既存の診察結果を纏めたデータを収集した方がコストは削減できる。

 「今後、医療で重要になるのはITとデータベースです。日本は、個人の出生から最期まで記した健康データが豊富な国。しかし、情報が開示されずブラックボックスとなっています」

 データベースを作り、健康の歴史をつむいでいくべきだと川上は語る。それにより病気を予見し先んじて予防を行う「先制医療」がこれからの主流になるというのだ。

 「他の人が受けている医療が本当に良いものなのか、その結果を測定するのが、ソーシャルキャピタルにおける医療の価値です。矢﨑社長、テラもこの領域で活躍して欲しい」と川上は語る。

 今でも2ヶ月に1回ほどの頻度で矢﨑と食事を共にするという川上。仕事の話はそこそこに、個人的な相談をし合うフラットな仲だという。

 「彼は論理的に物事を考えるタイプです。それが彼の強みであり、他の経営者とは違うところです。学生のときから何か違うことがしたいと考えていたようです。矢﨑さんは医者にならない生き方を選択しました。その先駆者の一人になって欲しい」

 そんな矢﨑に対し川上は「いつまでも志を忘れず、邁進して下さい」と親しみを込めて背中を押す。



辛い時期を共に乗り越えた戦友


辛い時期を共に乗り越えた戦友


東京大学エッジキャピタル代表取締役社長 郷治友孝


 2004年4月、東京大学が承認する「技術移転関連事業者」として、優れた知的財産・人材を活用するベンチャー企業に対して投資を行う東京大学エッジキャピタル(UTEC)が創設された。現在、社長を務める郷治友孝は、通商産業省(現・経済産業省)時代の後輩による紹介で矢﨑に会った。そこからが早かった。年末にはテラへの支援を決断し、翌年1月に投資を実施した。

 当時は投資する郷治も出資を受ける矢﨑もベンチャーキャピタル(VC)の知識や経験は少なく素人同然、手探り状態だった。

 ある日郷治がテラの事務所を訪れると、「VCに騙されるな」といった本が棚にあった。矢﨑もVCから出資を受けるに当たっては慎重になり、内心はビクビクしていたのではないか。これも今では笑い話だ。

 培養技術を使ったがんの免疫療法事業を始めようとすると、矢﨑をサポートしようと様々な分野から人が集まってきた。その様子を郷治は、「決して強引ではないが自分を支える人をうまく引き込んでくる。童話の桃太郎のように、自然と仲間が増えた」と振り返る。

 何を隠そう、郷治も引き込まれた一人だ。自分が矢﨑のビジョンの具現化を支えたいと思ったのが、投資に踏み切ったきっかけだった。VCは資金を融資するのみの銀行とは違い、事業を一緒に作っていく感覚が強い。矢﨑と同じ目線で設立前から軌道に乗るまで苦労を共にしてきた。

 「一度投資をした以上は一心同体だし、当事者だと思っている」という言葉に郷治の強い決意がにじみ出る。

 資金支援以外でも、多方面からのサポートに徹した。テラが目指しているがんへの免疫を覚えこませた樹状細胞をがん患者の体に戻すという医療行為は、前例が無い取り組みだ。その過程で違法になることがないか、法律を確認して治療法や契約の仕方について試行錯誤をし、周知のために作ったチラシを持って矢﨑と共に医療機関にも出向いた。

 設立当初は資金繰りに苦しむことも多かった。郷治に追加出資の要請が来た際には矢﨑自身も経営者として相当の金額を出したといい、矢﨑の覚悟が伝わる。

 また、リーマンショック直後でほぼ閉店状態だったマザーズへの上場を断念し、当時できて間もなく、あまり知られていなかったジャスダックNEOへ切り替えるべきだと郷治が提案したところ、矢﨑はすぐに受け入れてくれたという。

 そうして2009年に上場したが、時価総額は30億円程度。総額83億円ある第1号ファンドのうち2億円ほどテラに投資していた身としては「汗をかき大変な思いで上場したら、辛くて泣けるほどの価格だった。このままでは第1号ファンドも返せる額には届かず、非常にきついと思った」と当時を振り返る。

 そのような厳しい状況でも矢﨑は忍耐強かった。そうしているうちに論文発表や新規医療機関との提携があり、それに付随して株価が急速に上昇。なんと3ヵ月経った頃には時価総額が当初の約7倍となる200億円近くまで跳ね上がった。

 これが結果としてUTECの評判をあげ、現在総額300億円程のファンドを運用するまでになった。これも今思えばテラの成功があったおかげと感じている。

 郷治は今でも、また新しいことを始めるときには声を掛けて欲しいと矢﨑に伝えている。「高みを目指すビジョンを引き続き持って、新しいことにチャレンジし続けてください」とその挑戦を力強く後押しした。



書生から猛獣使いになれ


書生から猛獣使いになれ


アドバンスト・メディカル・ケア代表取締役社長 ミッドタウンクリニックグループ最高執行責任者 古川哲也


 六本木の一等地にある東京ミッドタウンクリニック。2007年に開設され、今では予約が数カ月待ちも珍しくない。政治家や実業家、海外セレブからも人気の診療所、検診センターだ。

 主力事業のひとつが免疫療法であるテラの樹状細胞ワクチン療法。1000例近く手掛けているが、クレームはゼロ、むしろ、「ワクチンのお陰で助かった」と感謝されることの方が多い。

 古川は「東京ミッドタウンクリニックの中に先端医療研究所を立ち上げ、医療機関として大きく成長していくためのきっかけを、テラの樹状細胞ワクチン療法にいただいたと思っている」と浅からぬテラとの関係を語る。

 初めて矢﨑と出会ったのは2006年の秋。当時のテラの取締役と古川の実弟が高校の同級だった縁で会うことになった。ミッドタウンクリニックのオープン準備の時、免疫療法の可能性についての話が持ち込まれた。当時はさほど心が動かずに話はそのままになった。多数持ち込まれたビジネス提案のひとつで、矢﨑との出会いもあまり印象に残らなかった。

 2009年の春、ミッドタウンクリニックの経営が安定し、何か新事業をというタイミングで再び矢﨑と会う。テラは既に免疫療法で実績を残しており、新規事業として可能性と魅力を感じた。導入以来、樹状細胞ワクチン療法の最先端を行く現場として、がんと向き合う人をサポートし、患者の立場から見ての要望や意見をテラに伝えている。

 最先端医療を受ける患者の負担は大きい。数万円前後といわれる費用もさることながら、主治医や、家族、親戚などの無理解や抵抗にあうこともある。治療を始められたとしても、自分の身体を使ってのデータ提供には難色を示す人も。しかし、最初にお金を使い、データを提供する人がいるからこそ、技術が実証され、世間に広まりコストも下がって療法として定着していく。そのパイオニアともいうべき勇気ある患者に誠実に向き合うために、テラに要求するものは多い。

 最先端の免疫療法を支え合う二人は、プライベートでも、ゴルフに行ったり食事に行ったりする親しい仲だ。古川からみてテラと矢﨑の強みとは何か。

 「矢﨑さんの圧倒的な求心力ですね。年上の人に可愛がられていて、たくさんの夢を熱く語る人。永遠の書生みたいだなと思います。スタッフからも慕われていてスーパースター。人との間の取り方が絶妙で、医療という派閥や系列のどろどろした業界で、敵も作らないし、ライバルでも気にせず懐に飛び込んでしまう。真似できない人間関係の作り方など、突き抜けてる感じがありますね」

 同世代で、同時期に社長になり、共に先端医療を手掛け、腹を割って話す友人でもある。人間として経営者として、お互いを意識しないわけはない。大きく飛躍するテラの組織運営や人事について相談を受けることもあるという。

 「今のテラは矢﨑さん色のある人が多く、そこが強みでもある。矢﨑さんの人間性の良さと、テラの技術の質の強さ、縁の強さで今後も成長していくのは確実です」。しかし、今後さらに企業として成長していくためには、変わった毛色の人を入れていく必要がある。「価値観ややり方の違う野武士、猛獣を放り込むかのような。最初は社内にアレルギー反応が起こるでしょう。能力もありクセもある人間を、裏切られることなく、会社の飛躍的な成長に貢献させることができる、猛獣使いのような経営者にお互いなりましょう」



医者が進化した企業家


医者が進化した企業家


レオス・キャピタルワークス取締役CIO 藤野英人


 中小型・成長株の運用を数多く手掛け、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ、レオス・キャピタルワークスCIO(最高運用責任者)の藤野英人。テラが2009年に株式上場してから半年後、証券会社に勤める知人の紹介で矢﨑と出会った。

 「経営者としての賢さを感じ、この人には賭けられると思いました」と第一印象を語る藤野。多くの人を健康にしたいという自身の夢を実現するために、医療プロセスを販売して確実に利益を出す方法を選んだ矢﨑に強く惹かれたのだ。

 「投資の面から見て、テラのビジネスモデルは堅い。バイオ系の銘柄を押さえる上で、迷うことなくテラという選択肢になった」。数々の企業を見てきた藤野の目から見てテラのビジネスモデルは他のバイオベンチャーと一線を画すものだ。

 バイオベンチャーは莫大な赤字を垂れ流しつつも、一度薬品が認可され製品化されると直角的に黒字を出し赤字を一気に回収する。しかし、テラは黒字先行型で、バクセルの研究開発による赤字が出ようともそれを帳消しにしつつ、ゆるやかに上昇していく。短期的な爆発性には欠くが、堅実さがある。マイナスに振れるリスクが小さく、投資対象としては魅力的だ。

 「チームとしての厚みがあり、然るべきところにふさわしい人材がいる。論文などのデータも蓄積されているし、気合と根性だけの会社ではない」と組織としてのテラも藤野は評価する。ビジネスモデルの強みだけでなく、適材適所にタレントが揃っているのだ。

 元救急救命医であり、最前線で生死と向き合う一方で、医学界の師と真摯に向き合う姿勢も持っている矢﨑。そんな矢﨑を藤野は「求道者のような雰囲気を持つ特殊な専門家」と称す。大学教授など優秀な人材が集まるのも専門家としての経験があるからだ。

 藤野から見て「救急救命医とファンドマネージャーの仕事はどこか似ている」のだという。昼夜問わず次々と怪我や病気を抱えた患者が運ばれたとき、株式市場で株価が暴落したとき、その事実に文句を言っても始まらない。ただ対処するしかないのだ。状況を見極め、最善の策を打つ。そんな共通点がある。

 「矢﨑さんの経営者としての魅力は夢と現実を混同しないこと」

 企業経営者は夢中になりすぎて現実と夢の境目がなくなってしまうことが多い。しかし、矢﨑は企業家として熱く夢を追い求めるだけでなく、外科医として幾度となく患者と向き合い続けてきたからこそ、現実が常にはっきりと見えている。企業家としての熱い想いと医者としての冷静さを高い次元で持ち合わせているのだ。

 今後成長期に入るテラを率いる矢﨑に対して藤野は「これから組織が大きくなると、手が回らないことが出てくる。ジャグリングみたいに複数のことを同時に回しながら、自分が中心になるだけではなく、いかに人に任せられるか。難しいことだけど、彼ならきっとできるはず」と大きな期待を寄せる。子会社を次々と作り、拡大を図れば図るほど目が届かなくなる。そんな時にいかに自分の意図を伝え、部下に任せることができるか。矢﨑の経営者としての腕が試される局面だ。

 最後に矢﨑に対して藤野は「今まで通り熱く、クールに頑張ってください」とエールを送った。



医師で起業した似たもの同士


医師で起業した似たもの同士


メドピア 代表取締役社長 石見 陽


 自分と同じ匂いがする。そう矢﨑に共感するのは、医師への情報提供をサポートするメドピアの社長を務める石見陽だ。

 「自分と関係の無い話であっても、目を輝かせて色々と質問をするのが印象的です。私も同じように好奇心旺盛で、気が合うので話しやすい」とシンパシーを感じている。

 二人の出会いは2年以上前。元医師でありながら起業して上場している先輩経営者として、石見は矢﨑に尊敬のまなざしを向けていた。話してみると、熱い人だという想像に反してマイルドな矢﨑。ギラギラしたベンチャー企業家というイメージは、すぐに払拭された。

 ある日、「変わった医者で集まろう」という呼びかけによって会が開かれた。珍しい医師として石見も打診を受けたが、その席には矢﨑の顔もあった。参加者は、医師免許を持ちながら起業していたり、病院コンサルティングを行っていたりと多種多様。そこで彼らは、「なぜ白衣を脱いだのか」を伝えることで医療界に何らかの化学反応を起こせるのではないか、と書籍の出版を企てた。

 出版社が決まり、内容の話し合いが始まると、『ハグレ医者』というタイトルまで順調に決まっていった。しかし執筆し始める頃には、7人いた仲間は石見、矢﨑ともう1人の3人になっていた。

 「矢﨑さんは裏表がありません。最後になって止めるのではなく、無理なら無理と始めから言える人です」。石見もまた、「やるなら最後まで意志を貫く」似たもの同士である。

 真面目な矢﨑だが、石見との約束を失念してしまったことがある。「聞き間違えもよくある矢﨑さんですが、憎めない人です」と笑う石見。むしろ、「約束を忘れた時に謝罪の連絡をいただいただけでなく、矢﨑さんは次に会った時にも気にしているようでした」とその細やかな心配りに脱帽する。

 石見は、矢﨑の広い人脈にも感心する。「矢﨑さんは起業して10年ほど。私も経営者歴は同じくらいですが、交流の幅は矢﨑さんに到底及びません」。医師は、知り合いの多くが同業者ばかりになってしまうため、起業するには不利な部分がある。しかし矢﨑は、学者から芸能人に渡る幅広い人脈を持っている。それは、どのような場所でも物怖じしない性格があるからだろうと石見は分析する。

 2人で会った時はビジネスの話をほとんどしない矢﨑と石見。しかし一度だけ、テラがメドピアの認知度調査サービスを使ったことがある。これを活用すると、医師数千人への調査によってテラの治療法の認知度を計ると同時に、免疫療法をまだ知らない医師に伝えることもできる。樹状細胞ワクチン療法に関するアンケートの結果、3400人近い医師がこれに答え、テラは認知度を向上させることとなった。

 テラには、他社にない信頼感があると石見は確信している。「矢﨑さんは外科医としての限界を知っています。机上の論理だけで起業したわけではなく、死に立ち会ったことのある人間が経営していることに意義があるのでしょう」。石見は、内科医であった自身の経験を踏まえ、「死」を間近で見てきた元外科医の矢﨑だからこそ成り立つテラの更なる躍進に期待を寄せる。

 同じ医師というバックグランドを持っている二人。「尊敬する矢﨑さんと距離感が近いのは嬉しいことです。友だちとして、これからも長く、公私共に楽しみましょう」。気の合う者同士、医療業界にイノベーションを起こし続けていくだろう。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top