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トピックス -企業家倶楽部

2015年05月07日

四角い氷を丸くするマネジメント/ベストモチベーションカンパニーアワード

企業家倶楽部2015年6月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.15





(文中敬称略)

 2015年3月5日、リンクアンドモチベーションが主催するベストモチベーションカンパニーアワードが、東京・港区の八芳園で開かれた。本アワードは、社員のモチベーションを企業の成長エンジンと捉え、これをうまく引き出している「モチベーションカンパニー」を表彰するもので、今年で5回目となる。

 同社のサービスで、社員が無記名のアンケートに答える「社員モチベーション調査」を実施した166社の中で、スコアの高い企業上位10社が受賞した。

 今回1位の栄冠を手にしたのは、ウェブ上でのマーケティング支援を行うPLAN-B。前回の調査では「中の上」を示すC+という評価だったが、リンクアンドモチベーションのコンサルティングによる成果もあって半年で大躍進を遂げ、今回の受賞に至った。

 PLAN-B社長の鳥居本真徳は「日本一社員が生き生きと働いている会社を目指し、全員参加の経営を意識して邁進している。ますます素晴らしい会社にして恩返ししたい」と喜びを語った。

 リンクアンドモチベーション会長の小笹芳央も「短期間でこれだけスコアを伸ばすのは難しい」と驚きつつも、「改革の変化感が社員に伝わりやすいステージだった。むしろ、これを維持し続けることの方が重要」と叱咤激励した。

 たった半年という期間でPLAN-Bに何が起きたのか。授賞式後のパネルディスカッションでは、同社のコンサルティングも担当したリンクアンドモチベーション執行役員の麻野耕司がモデレーターとなり、小笹、鳥居本に加えて、社内改革を主導した3人の部長も登壇。「どうすれば組織が変わるのか」というテーマに沿い、PLAN-B飛躍の秘訣を紐解いた。



経営と現場の架け橋を育てろ

 社内では「鬼の岩永」と恐れられてきた経営企画部部長の岩永淳。部下にはとにかく厳しく接し、彼の言う通りにすれば結果は出ていた。しかし、岩永自ら「鍋蓋式の組織」と評するように、彼が直接指示を出さなければ何も動かない風土が醸成されてしまった。

 社員には、岩永に正解をもらうために行動する癖が付いてしまったのだ。そこで岩永は、部下に対して自分が何を求めているかではなく、社員一人ひとりがどこに向かうのかをしっかり伝えることに専念した。その仕事は最終的に何のためにあるのかだけを伝え、何をして欲しいかという方法論の部分は指示せずに、自分で考えてもらうようにした。

 成果は、「怒鳴ることがなくなり、提案もしやすくなって好循環の組織になった」という部下の声からも明らかだ。岩永自身、「コミュニケーションが楽しくなり、自然とその量も増えた」と言い、鳥居本も「岩永がいなくてもチームが前進するようになった」と実感を語る。

 ウェブサイト制作を請け負うWebインテグレーション事業部部長を務める岡田誠一も、組織のマネジメントがうまく行かず、悩んでいた一人だ。

 岡田の部署には、デザイナーやエンジニアといったクリエイティブな専門職が集う。岡田自身、大企業から名指しで仕事が来る程の敏腕クリエイターであったことから、部下が会社に依存せずに稼げるような力を付けることが、結果的には会社の利益にも繋がると考えていた。しかし、モチベーション調査の結果は惨憺たるもの。会社への不信が募り、メンバー同士の相互尊重に欠ける組織になっていた。

 こうした状況下で岡田が徹底したのは、個人の目標と会社のビジョンが交わる面積を増やすこと。言われなくても分かりそうな事柄まで順を追って説明し、期待を伝え、機会を提供した。

 会社のビジョンを翻訳して現場に伝えることで、社員一人ひとりの目標が見える化され、それによって社員は自身の業務に意義を感じ、プライドや熱意を持って仕事に取り組むようになった。

 小笹によると、「ミドルクラスの人材配置には落とし穴がある」とのこと。企業が拡大すると、どうしてもトップと現場の距離が広がる。そのためミドルは、トップの方針と現場の実態を繋げる結節点の役割を果たさねばならない。能力や経験を重視して任せるのではなく、意思疎通に長けた人材こそ配置すべきなのだ。

 また小笹は、経営と現場の架け橋に加え、ミドルが担うべき役割として人材育成を挙げる。成長中の企業は中途採用も多いため、年齢や出身組織、場合によっては国籍など多様性が出てくる。これを束ねられる人間であることも、ミドルには求められるのだ。


経営と現場の架け橋を育てろ

労働市場を制する組織を作れ


 営業部部長の渡辺錬平は、根っからの営業マン。営業には絶対の自信があるが、業績を上げられない人間の気持ちが分からなかった。口癖は「いいから黙ってやれ」。本人も「2000回は言ったかな」と苦笑する。渡辺としては、出来ないはずはないと思っているので苛立ちを覚えることもあったが、今では独りよがりだったと反省している。

 
 実際に取り組んだのは、メンバーと本音で語り合うこと。毎晩のように人を変えて飲みに行った。部下も、「普段は自分の非を認めることの決して無かった錬平さんが、きちんと向かい合ってくれただけでなく、『悪かった、ごめんな』と初めて謝られたので驚いた」と当時の心境を振り返る。

 四角い氷をいきなり丸くしようとすると割れてしまう。しかし、一旦解かして水にし、それを再び丸い型にはめて凍らせれば、難なく丸い氷が手に入る。人の気持ちも同様で、「お前らはこう変わらないとダメだ」と無理強いしているうちは変わらない。恐怖心を解いたり、期待感を醸成したりすることで一度解凍し、それから今後の方向性を示すことが必要だ。

 人材の流動性が叫ばれる今日、一度採用した社員がいつ転職するかは分からない。社員が高いモチベーションを保ち、熱意を持って仕事に取り組むようなマネジメントが求められる。

 小笹も「今や、我々が戦うべき市場は増えている」と説く。これまでは、他社と商品やサービスの優劣を競う「商品市場」での戦いがメインだったが、今後はいかに良質な人材を採用し、かつ育てるかという「労働市場」にも目を向けなければならないと言うのだ。

 そのためには、採用と育成を統合して捉え、管理職も積極的に採用の場に出ることが肝要だ。部下が「人事部から割り振られてくるもの」としか考えていないような組織では、育成もままならない。採用は、その人の職業人生を左右する重大事。担当者がこの気持ちを強く持ち、労働市場への適応を図れば、企業の未来も拓けるだろう。(相澤英祐)



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