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トピックス -企業家倶楽部

2015年05月08日

【竹中平蔵の骨太対談】vol.36 リーダーには信頼できるチームと相棒が必要/vs リネットジャパングループ代表取締役社長 黒田武志

企業家倶楽部2015年6月号 骨太対談


黒田武志 (くろだ・たけし)

1965年、大阪府生まれ。大阪市立大学商学部卒業。1989年、トヨタ自動車株式会社入社。1998年、トヨタ自動車株式会社を退社し、ブックオフコーポレーション株式会社の企業家支援制度の第1号として株式会社ブックオフウェーブを設立。代表取締役社長に就任した。2000年、株式会社イーブックオフ(現ネットオフ株式会社)を設立。2013年3月、リネットジャパン株式会社を設立し、代表取締役社長に就任した。2014年、社名をリネットジャパングループに変更。

竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。73 年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。第2次安倍内閣において、13 年に日本経済再生本部の「産業競争力会議」の民間議員としても活動。14 年1月より、国家戦略特区の特区諮問会議のメンバーに就任。著書に『知っていると役に立つ世間話』、『竹中式 イノベーション仕事術』、『経済古典は役に立つ』などがある。



リーダーはバルコニーに駆け上がれ

黒田 我々は2010年に「宅配便で、都市鉱山を発掘する」というビジョンを掲げました。当時、会社としてはピンチな状態にありました。ビジネスとして、収益を上げていく上で「世の中において、私にも役割があるはずだ」という想いがありました。

 そこで、1000万円以上の費用をかけ、日経新聞にカラー広告を出したのです。ビジョン広告なので、売上げはほとんど上がりません。ただ、この想いに誰かが気づいて、自分を使ってくれる人がいるはずだという気持ちがあったのです。

 それから4年を経て、小型家電リサイクル法ができました。小型家電リサイクル法は、許認可を得た事業者が家庭から一般廃棄物を回収できるようになったエポックメイキングともいうべき規制緩和です。

 我々は許認可を得ることができ、資源のリサイクルという大きな役割を得ることができました。竹中 リーダーシップ実践理論のスペシャリストであるロナルド・ハイフェッツが書いた『最前線のリーダーシップ』という本の中に、「リーダーはバルコニーに駆け上がれ」という言葉があります。我々の目の前には多数の問題がありますが、バルコニーから俯瞰してみると全く違う景色が見える。アランの幸福論にも「悲観は気分である。楽観は意志である」という名言があります。

黒田 リーダーは客観的に物事を見つめることが重要ですね。落ち込むことがあっても、意志を強く持って、前向きに考えなければいけません。竹中 黒田さんは経験と体力の両方を持ち合わせている年齢です。私が大臣になった時も50代。40代の頃は論文を多く書くために睡眠時間を削っていました。これが大臣になった途端に病気ができないと思い至り、睡眠を6時間は必ずとるようにしました。

 年齢や人生の節目とともにスイッチの切り替えが必要です。企業にしても収益を大きくする上で、売上げの最大化と費用の最小化はどちらも大切です。それでも、時機に応じてどちらに重点を置くかスイッチングする必要があります。このスイッチの切り替えをバルコニーから俯瞰して、判断することが重要です。

黒田 私が独立した時期は30代前半。インターネットで事業を立ち上げ、当時はそれなりに注目されましたが、チャンスをものにできなかった。それから経験を積み、ノウハウも蓄積しました。

竹中 長い時間働けば、必ず成果が出るとは限りません。日経新聞に「残業するほど暇じゃない」というワークライフバランスに関する逆説的なキャッチコピーが掲載されました。確かに残業は目の前のことに取り組んでいるから、その瞬間は充実感があります。しかし、長期的に考えてみると、もっと別にすべきことがあるかもしれません。

黒田 緊急度と重要度の違いで、その時に応じ、その人にとって何が本当に必要なことかを取捨選択しなければいけません。

 中部地域は東京並みに有効求人倍率が高く、景気が良くなると、現場で働くパートやアルバイトが採用しづらくなります。そこで、発想を変えて、小さい子どもを持つ主婦も働けるようにパートは午後3時で退社できるようにしました。子どもたちが帰ってくる前に帰宅したい主婦の働き方のニーズに応えたことで、求人が集まるようになりました。

 さらに、我々は小型家電を分解するラインを知的障がい者の方々に任せる試みをしています。この2、3年間で、障がい者雇用は進みつつあります。パソコンの分解といった作業は集中力が高い知的障がい者の方に向いていて、生産力が高いのです。こうした雇用創出は自治体からも評価されています。



朝事あらば馳せ参ずる

竹中 都市鉱山も勿論のこと、私は資本のリサイクルを主張しています。例えば、空港の運営機を民間に売れば、資本のリサイクルができる。今、インフラを作りたくてもお金が無い。非効率に使っている物を民間が有効に使えば、その分だけ価値が高まります。公的機関も運営権を売却して得たお金を別のものに使える。

 日本のような成熟した社会では、リサイクルがキーワードになることは間違いありません。リサイクルといった今まで誰も思いつかなかった、新しい産業の概念を作り、世界に先駆けることに大変な意義があります。

黒田 資源だけでなく、世の中の物を循環させていくというのは面白い発想ですね。

竹中 循環ということでは東京都が所有する土地を民間に売るべきです。ロンドン市場が活性化した理由の1つはブリティッシュ・ペトロリアムというエネルギー関連の国営企業とブリティッシュ・エアウェイズという国営企業を民間に売ったからです。日本もNTTといった元国営企業の多くが高い株式価値を有しているわけですから、公的部門の民営化が進めば資産市場は活性化します。

黒田 遂に、日本郵政も上場します。新しい資本が循環していくことでしょう。郵政民営化が国会で議論されていた時、竹中先生の戦われている姿に感動しました。抵抗勢力が大勢いて、損得勘定で考えたら、民営化を推し進める役割を引き受けたりしません。やはり、使命感があったのですか。

竹中 今考えてみると青臭い話ですが、小泉元首相から大臣の職を誘われた時、「一朝事あらば」という言葉が直ぐに頭に浮かびました。武士は日頃、何もしていません。ところが、一朝、事あらば、君主のために馳せ参ずることが武士の仕事です。この言葉に出遭ったのは小学生の時でしたが、私は子供心に思うところがあり、今まで胸中に秘めていました。

 小泉さんは面白い首相でした。小泉さんは派閥の均衡で考えたら、絶一対に総理大臣になれない人だったのです。それが、奇跡的に総理大臣になって、「一緒に戦ってくれ」と頼み込んできた。私は「これは逃げるわけにはいかない」と感じ入ってしまいました。

 私が大臣就任演説をする際、野党が「前任者は間違っていたと認めるのか」とヤジを飛ばしてきました。政治ですから理不尽な質問をされることもあります。私は演説するために歩いていくと、横を通りかかった時に小泉さんが「言っちゃえ。間違っていると言っちゃえ」と言って、送り出してくれた。「この人の為だったら何だってやってやろう」と思った瞬間でした。

黒田 リーダーシップを発揮するという事は危険な生き方をすることだと、先生は著書で仰っていましたが、学者生命を絶たれるリスクは考えなかったのですか。

竹中 嫌な思いをするたびに、小伝馬町の小さな公園に行っていました。そこは江戸時代に牢獄があった場所で、安政の大獄で処刑された吉田松陰の辞世の句が石碑に刻まれています。「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」

 たとえ、武蔵の地で朽ちようとも、この国を思う心は留めおくぞという気概に溢れています。

 昔は改革をしようとすると亡き者にされてしまったのです。今はどんな悪口を言われても、殺される事はありません。「なんと有難い時代ではないか」と決心がつきました。

黒田 腹の括り方がすごいですね。

竹中 田舎の商店街の生まれ育ちだから、もとより失うものもありません。


朝事あらば馳せ参ずる

「お前が言うなら死ぬまでついていく」

竹中 世の中の人は名言をたくさん残しています。名言辞典を読むことは面白い。岡倉天心が「変化こそが唯一の永遠である」という素晴らしい名言を残しています。行き詰った時に勇気をくれる言葉です。似ている言葉で、「成功は1日で忘れてしまえ」とファーストリテイリングの柳井正会長も言っています。日本の大企業では、管理職の人が自分の小さな成功体験に囚われて、多くの人が失敗に陥っています。

黒田 変化の激しい時代ですから、いかに変わっていくかということが重要です。我々は昨年、社名をネットオフからリネットジャパンに変えました。今までのネットオフはリユースを中心に展開していました。これからはリサイクル中心のリネット事業に重心を移します。ベンチャー企業は時代に合わせて変わっていかなければいけません。

 創業期の赤字続きだった時、チームビルディングやリーダーシップが未熟でした。自分だけで何でも突っ走ってしまい、誰も私に付いてきませんでした。2010年に上海で研修を行い、全社員が本音でビジョンを語り、私をサポートしてくれるチームが出来上がっていきました。信頼できるチームがあるからこそ大きなことができるようになったのです。

竹中 チームやパートナーは大切です。パナソニック、ソニー、ホンダの創業期の共通点は相棒がいることです。ソニーに盛田昭夫、井深大あり。松下幸之助には井植歳男という名番頭がいました。技術屋の本田宗一郎は名参謀、藤澤武夫に経営を任せました。

 最近の日本のベンチャーは一人で経営している人が増えましたが、シリコンバレーではパートナーとともに起業している人が多いのです。「お前が言うなら、死ぬまでついていく」と決断を下すことができるのが本当のチームです。ケネディ米元大統領のキューバ危機の13日間を描いた映画がありました。主人公は特別捜査官のオドンネルというハーバード時代からの親友。

 キューバ危機が起き、最後の情報合戦を経て、ケネディは決断できなくなります。その時、オドンネルが「お前が言うなら死ぬまでついていく」「お前と俺は何もない時からやってきたじゃないか、ここは俺たちを信じろ」と言って、ケネディが決断するシーンがある。

 大成功したソニーやホンダにもそういったシーンがあったでしょう。今の日本企業のチーム力が低くなっている最大の原因は受験です。友達が突然、ライバルになってしまう。

 受験よりもボーイスカウトをする方がチームワークを身に付けられます。意外にも日本のビジネスコンテストでは、小学生が強い。ただ、受験を境にして活躍しなくなってくる。考える前に覚えることに躍起になり、ものを考えなくなってしまうのです。学校も会社もチームワークを重視した教育をしていくべきでしょう。


「お前が言うなら死ぬまでついていく」

日本の都市鉱山は世界1位

黒田 これからは環境やエコが人類にとって大事なテーマになります。私はリユースやリサイクルといったビジネスを静脈産業という新しい産業と捉えています。中古製品を活用するのがリユースで、製品の中の資源を抽出して、活用することがリサイクルです。ヨーロッパではリサイクルの分野が大きなジャンルとなっていますが、日本ではこのような静脈のビジネスは浸透していません。

 我々はリユース事業として宅配便で中古本、CD、DVDを買い取り、ネット販売をしています。会員数は200万人を超え、年間買い取り数は2000万冊。我々は愛知県郊外にトヨタ生産方式を導入した4000坪の商品センターを構え、製造業の雰囲気も持ち合わせる泥臭いベンチャー企業です。

竹中 製造業的な発想でリユースに取り組むのは面白いですね。トヨタ生産方式の考え方はどのように現場に浸透させたのですか。

黒田 トヨタやデンソー、豊田通商を退職されたシニアの方に現場監督と若手の育成をしてもらっています。

 さらにこういった人材を活かして小型家電を宅配便で回収するリサイクル業を始めました。リサイクル業に力を入れていく決意を込めて、社名もネットオフからリネットジャパンに変更しました。

 日本は小型家電の中に入っている資源、都市鉱山をリサイクルすれば、資源大国になれます。天然鉱山の場合、金は南アフリカ、銀はポーランドが埋蔵量世界1位ですが、いずれも日本の都市鉱山における埋蔵量の方が多いのです。

竹中 金や銀は何に使われていますか。

黒田 パソコンや携帯電話などに使われています。問題はそれぞれに点在している資源をいかに集めるかということです。そこで、我々は宅配便で小型家電を回収。1台の家電から採れる量は微々たるものですが、金や銀だけでなくレアメタルも集めることができます。

竹中 日本の都市鉱山が世界一だという話はよく聞きますが、集めるための方策が今までなかった。世界初の試みで、大変興味深い。レアメタルの価格はどのように推移しているのでしょうか。

黒田 現在の価格は落ち着いていますが、2050年にレアメタルは枯渇する恐れがあると言われています。産業革命から200年を経て、地球上の金や銀は地上に出た産出量が地に埋まっている量を上回ってしまいました。金でも約53%が、地上に上がってきてしまっています。

 2050年には世界の人口は90億人になり、途上国は大量消費社会に突入するでしょう。採り上げた資源をいかに再活用するかということが2050年に人類が直面する大きなテーマになります。我々が最初に成功モデルを作れれば、日本発の仕組みになると考えています。実現するには色んな壁がありますが、必ずや花開かせてみせます。



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