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トピックス -企業家倶楽部

2009年08月27日

コイン駐車場の上に 空中店舗と公園を作る/フィル・カンパニー代表取締役社長 高橋伸彰

企業家倶楽部2009年10月号 注目企業

◆創業支援から一転社長就任

   地上部分は駐車場、2階はガラス張りのお洒落なカフェ、3階はオフィスとして使い、屋上はテラスと芝生のある公園。東京都渋谷区千駄ヶ谷の閑静な住宅街にある「フィル・パーク千駄ヶ谷」は、駐車場を活用した「空中店舗」を企画・開発・運営するフィル・カンパニーが4番目に手掛けた物件だ。駐車場のオーナーは駐車料金に加え、少ない投資で短期間にテナント収入も得られるメリットがある。テナントを借りる側も1階にある路面店と比べ2割ほど家賃が下がり、駐車スペースもあるので集客しやすい。さらに2階にあるガラス張りの店舗はとにかく目立つと評判だ。

「これだ。空中を活用するビジネスモデルは大きな可能性があるに違いない」。取締役兼共同創業者の松村方生からアイデアを初めて聞いた代表取締役社長の高橋伸彰は目から鱗が落ちたと言う。高橋は創業支援の会社を経営しており、これまでに2度会社を立ち上げた経験があった。事務所を借りる費用が高く自ら苦労した経験から、オフィス賃料が安くなるこの事業計画に強い関心を持った。初めは会社の設立登記の代行依頼であったが、資金難は言われなくても分かっていた。松村からの強い要望もあり資金調達を手伝うことになった。


「1店舗でも実績さえ作れば地主や投資家など協力者を説得できる」と安易に考えていたが、熱意ある若者の話を聞いてくれても契約まで進むことはなく、思ったように資金は集まらなかった。シンプルなビジネスモデルだが、同業他社が存在しないのは、「手間とコストが掛かるから」と言う。フィル・カンパニーでは、企画設計と工期の短縮を図り、コスト削減を実現して

いる。

「なかなか進まない事業計画がもどかしくて、自分のことのように腹が立った。何とか事業化したいと考えているうちにのめり込んでしまった」と高橋は言う。同い年の松村とも気が合った。事業コンセプトを練り上げビジョンを描くことに長けた松村と、営業畑が長く統率力と資金調達力に強みのある高橋はお互いの長所を認め合い補完する関係だった。二人の役割分担も明確になり、高橋は最終的な経営責任も取ると覚悟を決め、1年後の06年1月社長に就任した。



◆オモチャで見本を作る

   05年6月、フィル・カンパニーを設立したときは、お金がなく資本金1万円からのスタートだった。次に二人で50万円ずつ増し100万円にした。顧問建築士から青山にアルミ製建材メーカーのショールームがあることを聞き、事業提携ができないか訪ねて行くと、社長に事業説明をする機会を得た。その日から1週間は徹夜が続き、事業計画書を作った。

「オモチャのブロックとミニカーで駐車場の上にオフィスと公園をイメージして作った見本を写真に撮り、資料として添付した。他にも業務提携の交渉をしていたが、すべて断られていた。だから、チャンスは今日この日しかないと必死でした」と言う。アルミ製建材メーカーが新規事業に関心があったことも幸いし、創業社長はやる気のある若者を支援してくれた。「とにかくやってみるしかない」が口癖だと言う。熱意が通じ出資を含む包括的提携を結んだ。490万円出資してもらい資本金が1000万円になった。今でも年に2、3回は事業報告をしている。


   この提携が呼び水となり、さらに1900万円まで増資した後の06年3月、東京・八重洲に第1号物件をオープンさせた。1時間100円のコインパーキングの上に鉄骨を組み、全面ガラス張りで建物の構造が分かりやすく目立った。通りを歩く人から注目を集めて話題になったが、1号物件はテナント募集が間に合わず、自社のショールーム兼オフィスとしてのスタートだった。テナントの候補になるショップや美容院は、路面店より賃料が2割程安くなり、駐車場が確保でき来店を誘導しやすくなる。何より洗練されたデザインで目立つのが特長だ。



◆形にするまでは諦められない

   夢がひとつ形になったが、店舗にテナントが入居しなければ家賃収入が得られない。高橋は、フィル・パークに入るテナントを探しにフランチャイズショーに赴いた。そこで駐車場開発のトモパーキング社長と知り合う。テナントを探すと言う目的は果たせなかったが、この出会いが事業を大きく前進させた。通常は1件ずつ地主を訪ね事業説明をし、契約までには数カ月掛かる。知名度がないのでアポイントを取るのにも苦労する。

   しかし、赤坂、目黒地区を中心にコインパーキングを展開しているトモパーキングと事業提携したことにより、06年11月、第2号物件「フィル・パーク赤坂」を2棟同時にオープンし、飲食店が入居した。立て続けに07年3月に、第3号物件「フィル・パーク中目黒」をインテリアショップとしてオープンさせた。


   さらに、資金面での相談や地主を紹介してもらえると、西武信用金庫を紹介してもらった。「地主さんには1度でもいいので、駐車場収入に加え空中店舗の賃料収入が増えることを説明すると関心を持ってもらえる。金融関係者や会計士、弁護士といった先生からの紹介は信用があり、営業面で強いサポートになり感謝している」と高橋は言う。また、トモパーキングとの提携が実績となり駐車場運営の最大手パーク24との業務提携締結に繋がった。地主とのパイプを持っている駐車場運営会社との業務提携は営業面でプラスに働く。


   同年10月、第4号物件「フィル・パーク千駄ヶ谷」で初めて屋上に緑化を施し駐車場の上に公園が誕生した。夏には屋上に友人を招待し、神宮の花火大会を見るのが楽しみだと言う。


   4年前は、資本も商品も信用もないゼロからのスタートだった。現在、都内に「フィル・パーク」を6店舗展開している。第5号物件は銀座にネイルサロン、第6号物件は表参道に美容院をオープンした。都内で少ない駐車場を確保でき、2階にある店舗はとにかく目立つというメリットがある。東京都内だけでも約3万カ所といわれる駐車場があり、潜在的な市場は大きい。「まずは年内に10店舗まで増やしたい」と目標を語る。


   駐車場運営業界での認知度が上がってきた中、事業計画のスピードを加速させるため、資金ニーズが出てきた。株式公開することで地主に対する信用力強化も目論む。そこで、09年5月に日本証券業協会が未上場中小企業のために創設した株式公開制度グリーンシートに株式公開した。


「事業計画書と熱意しかない段階から温かく見守り、応援してくれている株主や協力者がいるので、想いを形にするまではやめられない。アイデアを事業化して、期待に応えられるまで何があっても諦めない」と言う。高橋は都内の駐車場の上に広がる空を見上げながら、今日も営業に奔走している。



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