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トピックス -企業家倶楽部

2015年06月25日

【潮田健次郎の経営道場】5 勝つ経営者のライフスタイルとは/INAXトステム・ホールディングス会長 潮田健次郎

企業家倶楽部2004年4月号 経営道場


日本屈指の創業経営者である潮田健次郎氏が豊富な経験に基づいて持論を展開するとともに若手経営者のさまざまな疑問、想いに答える。今回は「経営者としての生き方」をテーマに、若手有力経営者たちと盛んな意見交換がなされた。

 

 

 肩書き・プロフィールは掲載当時のものです。



潮田健次郎(うしおだ・けんじろう)

1926年東京都生まれ。小学6年生の時、結核でサナトリウムに入る。家業の建具屋を関東最大の建具卸問屋に発展させる。66年住宅用アルミサッシ事業に進出、翌年東洋サッシを新設。アルミ建材総合メーカーとして事業を拡大し、85年に株式を上場。92年社名をトーヨーサッシからトステムに変更。2001年INAXと共同持株会社INAXトステム・ホールディングスを設立、会長に就任。


潮田健次郎(うしおだ・けんじろう)

狂人走ると、万人走る


 現代は消極的になりがちです。バブル崩壊以降、日本経済は沈みましたが、人々の意識はそれ以上に落ち込みました。八〇年代は日本が永遠に良くなるように考え想像以上に盛り上がりすぎていましたが、その反動が一気に押し寄せたのです。しかし今の日本経済は世界の経済と比べても悪くありません。九〇年代は失われた十年といわれながらも、日本は世界最大の貿易輸出黒字国でした。それだけではなく十年前に日本人の預金は一千兆円でしたが、現在は千四百兆円です。毎年四十兆円ずつ増えていますから、余裕があるのです。

 韓国では労働争議が起こっていますが、日本は不景気といわれるなかでも、労働争議は起きていません。失業率が高いともいわれますが、人口五千万人以上の先進国では一番少ないのです。私にしてみれば、なぜ日本が不況といわれるのか、よくわかりません。経済的には世界で一番成功した国なのに、日本人の精神は現実以上に落ち込んでいます。

 大切なことは、社会の風潮と自分のバイオリズムをつかみ、判断と行動を誤らないことです。落ち込んでいるときはものごとが悲観的に見え、元気なときは楽観的に見えますが、現在の自分がどういう位置にあるかを知り、そして社会全体がどういう風潮なのかを正確に把握することが重要です。危険なのは、社会と自分のバイオリズムが重なることです。社会が落ち込んでいるときは明るく、社会が明るいときは冷静に見ること。私は社会が明るい一九八五年頃、精神的に落ち込んでいたので、バブルの影響を受けずにすみました。幸運だったのは、失われた十年に元気であったことです。この十年でINAXトステム・ホールディングスは売上高が二倍以上になりました。

 極度に悲観的になることも、極度に楽観的になることも、間違っています。ある料理屋さんに行ったら、「狂人走ると万人走る」という格言が提示してあったのですが、これはまさに言い得て妙です。人は社会の風潮と同調してしまいやすいのですが、影響されないようにすることです。これから日本は徐々によくなっていきます。それに沿って日本人も元気になっていくでしょう。



先人の思考と体験を吸収する

 本を読むというのは、経営者にとって非常に重要な仕事です。私は七十歳までは通読で何時間でも本を読み続けることができたのですが、段々と読めなくなっています。ですが、本を読み続けることは仕事のうちですから、速読術を身につける必要が生じました。

 速読術は、まず目次を見て、自分に興味がある箇所だけを読みます。つまらなかったら、その本は捨ててしまう。そして重要だと思ったところを百文字以内に要約します。ビジネス本を読む際は、初めから最後まで読まないことです。読み通しただけでは頭に入っていません。どんなに素晴らしい本でもエッセンスは百文字以内に収まります。自分のアンテナに引っかかる部分だけをまとめて、一つの冊子に書いておきます。その冊子に、何百冊分の本のエッセンスをまとめて、毎日時間のある時に読み返します。その読み返しを細切れ時間で繰り返すことで内容が頭に定着します。

 
 私の場合、その冊子が年に二冊、出来上がります。冊子には、例えば「未来は予測するものではない。われわれが作るものだ」と書いてあります。これは松下幸之助さんの言葉です。それ以外にも「横道にそれずに王道を歩みなさい」と言われ、力を持ったら王道を歩まなくてはいけないと助言しています。

 この冊子には、弊社の業績も入れています。部門別の業績を数字で把握することで、どこが強みで、どこが弱みなのかをすぐに判断することができるからです。このように重要な情報を集約し、ポケットサイズでまとめることが大切です。日頃からこの冊子をポケットに入れて、繰り返し読みましょう。

 書籍だけではなく雑誌を定期購読することも大切です。雑誌の速読も、書籍を読むのと同じように目次に目を通して、興味あるところだけを読み、エキスを吸収します。私の定期購読雑誌は「週刊ダイヤモンド」、「週刊東洋経済」、「日経ビジネス」、「エコノミスト」、「中央公論」、「VOICE」、「文藝春秋」、「トップポイント」です。この「トップポイント」という冊子は数多く出版されるビジネス本の中からエッセンスだけを抽出してまとめています。「トップポイント」を読んでいれば、ビジネス本を買う必要がないほどです。ただこの冊子で紹介されている本は、面白そうで読みたくなるから、つい買ってしまいます。この冊子は面白いし、ぜひお薦めします。



趣味でエネルギーをもらう

 年を取るとお酒が飲めなくなる代わりに、仕事に集中できるようになります。ただ七十歳を超えると疲れが出てきます。そのとき大事なことは、趣味を持っていることです。若い頃は、趣味があったほうがいいと他人に言われても、経営者に趣味など持てる時間はないと思っていました。経営者は一日二十四時間、自分の会社のことを考えているからです。しかし年を取ると、仕事だけでは疲れが取れません。そのためには趣味があるといいのです。書道や茶碗作りなどいろいろな趣味がありますが、どれもエネルギーを使います。趣味で大切なことはエネルギーをもらうことです。私の場合、絵画に辿り着きました。仕事部屋に絵画をおいて、疲れたときにその絵を見るんです。そうすると画家の全精力で描かれた絵画からエネルギーが伝わり、観る方も元気になれます。昔は値段の高い西洋絵画を買っていましたが、それでは心が安らぎません。観ていて楽しい平和な絵画であることです。必ずしも高い絵画である必要もありませんし、版画でもなんでもいいのです。旅行に行っても、版画が一枚あると助かります。趣味によって精神を安定させ、エネルギーをもらうことが重要です。



健康管理は、自分でする

 経営者にとっては健康維持も大切です。生活習慣病はもう始まっています。対策は早く立てたほうが絶対にいい。コレステロール値は二百(㎎/連まではいいというけれども、あくまで二百は上限であり、これ以上は危険です。コレステロール値は薬で簡単に下がります。現代は薬がものすごく進歩しているので、ぜひ活用しましょう。副作用を心配するかもしれませんが、日本の薬は安全です。昔は平均寿命が六十歳だったけれども、薬の発達で長く生きられるようになりました。現代では私のように一日に五時間も本が読めるのは、薬のお陰です。ただし漢方薬はやりません。効果が立証されていないからです。日本の薬は、副作用がないと立証しなければ販売しない仕組みですから信用できます。漢方薬は、科学的な検証を行っていません。科学的な検証は、例えば、その薬を飲んだ人と飲んでいない人を十年間、比較することです。日本では、アメリカがすでに使っている薬でも許可しないものが有りますが、これは慎重だからです。医者でもらえる薬は安心して飲んでいい。例えば、真面目な人は鬱になりやすい傾向がありますが、それも今は薬でよくなります。薬の進歩はすさまじく、人間の性格を変えてしまうくらいです。薬でコントロールすれば、百歳まで生きられます。

 健康のために薬の知識を持つことが大切です。その手助けをしてくれるのは、優れた医学書で、「ホーム・メデイカ家庭医学館」(小学館¥6,000)という書籍をお薦めします。本格的な医学書ですが、われわれも読めるようになっています。この本には、医学に関することがすべて明確に書いてあります。例えば二千もの病名解説や症状から病気がわかるような工夫が施されています。

 健康に関する知識は、医者がすべてを教えてくれるわけではないので、自分で学ぶことです。たとえ主治医がいたとしても、彼らは一人で何百人も担当しているので、ひとりひとりに時間をかける余裕がありません。自分で主治医になるしかないのです。

 健康維持のためには知識だけではなく運動も行います。例えば、足の運動です。足は第二の心臓で、心臓が送り出した血液を足で送り返しています。足の運動というと、散歩をする人がいますが、これはあまり効果がありません。私がお薦めする足の運動は、まず座っている状態から片足でゆっくり立ち、ゆっくり座ります。これを左右で毎日十回、繰り返します。私は、一年半続けたら、筋肉が太くなりました。普段から運動をしない人でも、自分の足の筋肉だけは衰えさせてはいけません。



質疑応答

小さな改善を褒める

質問 会社が成長するなかで社員たちにどのように達成感を与えればいいでしょうか。

潮田 定期的に社員全員を集めて小さな成功を喜びあうことです。月に一度、成績を残した人に賞を送るなどの制度を作ることがとても大切です。十年前の話ですが、会社の改善を行った人に一千万円をプレゼントするという企画で、女性社員がコピーを節約する方法を考えて、見事受賞したという記事が「日経ビジネス」に載っていました。コピーの節約は小さなことですが、これこそ重要です。小さな改善を褒めること。そのときの表彰状は立派なものを作ること。ゴルフの景品以上に格好いいトロフィーを送ること。賞金は、個人にあげるのではなく、チームにプレゼントし、その部門でパーッと飲み会などで使ってしまうことです。私の会社でも、各工場でそのお祝いを行っています。社員に自信を与えるシステムを整えることが重要なのです。叱ってばかりいては絶対にいけません。優れたところを見つけ、褒めること。経営者の仕事は、それが一番大切なのですが、実際に行うのはとても難しい。経営者はすぐに怒ってしまいやすい。私も、開発部門が型の作り方を間違えたときに徹夜で直させ、その後開発部長を呼んで失敗の原因を説明してくれ、と言ってしまいました。しかし、これはよくありません。まずは「よく頑張ってくれたな」と、ねぎらわなければならないんです。そのあとで、失敗の原因を聞くというプロセスでなくてはなりません。

 このように怒り方を間違えてしまったときは、こちらからきちんと謝ることです。私も、家に帰ってから開発部長に連絡して、謝りました。

製造業からサービス業へ移行する

質問 製造業の経営者はものづくりにこだわる傾向があり、サービス業への転換が遅れています。どうすればサービス業にスムーズに移行できるでしょうか。

潮田 まず製造業で日本が生き残るのは難しくなっています。技術が進歩しているので、中小企業は大変厳しい状況です。これからは例えば自転車を作るのではなく自転車の修理を行うように、サービス業に移行しなければ、生き残れません。中国などで安く質の良い製品を作る技術が向上しているからです。

 ではどうすべきかというと、まず会社すべてをサービス業に転換するのではなく、独立会社をいくつか作り、その新しい会社でサービス業を行うことです。そうすればリスクは減りますし、社員の移動も徐々に行えます。

 この例だけではなく、どの業界であれITの発達によって社員が必要ではなくなる分野が出てくるので、新しい事業が必要となります。社員をクビにするのではなく、新しい事業を起こさせ、経営陣として働いてもらいます。立ち上げ段階に死に物狂いで働くことで、サラリーマンだった彼らが経営者の視点を持つことになります。これは仕事でも別世界に入ったことを意味します。サラリーマンは時計の歯車であるだけですが、経営者はすべてのことに責任を持たなくてはならない。サラリーマンが経営者になることで、企業はより活性化します。

高度技術を持つ製造業だけが生き残る

 とにかくこのままでは中小企業はとても生き残れません。どの業界でも新入社員を毎年採用している会社は生き残ります。IT技術格差が驚くべき勢いで進行しているので、それについていける企業でなくてはなりません。例えば、二十種類の部品を3D-CADで書いたら、明日にはそれぞれ異なったデザインの部品が二十個揃ってしまいます。昔は金型が必要でしたが、いまは必要なくすぐに作れます。この技術革新についていくのは、中小企業ではかなり難しい。

 ただし悲観材料だけではなく、製造業が生き残る道はまだあります。日本は高度な生産財を作る能力がまだありますから、十年間は大丈夫です。しかしそれは高度な技術を持っているところだけが生き残るということです。中国やタイなどの工場では日本よりもコストが三割も安い上に、品質は劣りません。商品価格は、ほぼすべてを人件費が占めています。例外は、石油と鉄鉱石と石炭だけです。人件費の安い国が製造業では強くなります。高度経済成長の日本が良い例ですが、人件費の安いときに工業化するのです。現代はアジアがその段階に入ろうとしています。日本は、知的な創造力とサービス産業しか生き残る道がありません。いまのところ研究費がGDPに対して、三・五%あるので、あと十年間は製造業も大丈夫でしょう。米国は研究費が二・五%しかありませんし、そのほとんどが軍事費です。日本はアメリカに比べて二倍の研究開発費があるので、高度な開発研究分野では生き残れます。

 製造業だけでなく、小売業界も安心できません。地方の商店街はどこもシャッターが下りています。郊外ではホームセンターも今は売場面積三千坪が標準です。駐車場も一千台は置かないといけない。商品も中途半端に揃えるのではなく、あらゆる商品を数多く揃えなくてはいけません。スーパー、百貨店は全盛期に比べ利益が半分になっています。家電はビックカメラなどの量販店に奪われ、紳士服は青山に、カジュアルウエアはユニクロに、と販売する商品がどんどん少なくなっているからです。さまざまな商品を適度に揃えるだけではお客様は呼べません。ある分野に特化した上で、その分野のあらゆる商品を揃えることが求められています。

 また大型店を管理するのは、コンピユーターをはじめとしたIT技術であり、世界中から安い商品を仕入れて、在庫を抱えず、品切れもせずに、売り場で在庫管理をしないといけません。最小限の社員で管理し、パートタイマーで売り場を動かしていく。小売業は勤務時間が長い上に、賃金が少ないので、パートタイマーの交替勤務を徹底的に活用するしかありません。このように製造業も小売業界も大きな変化にありますが、その変化の本質を掴んで対応することが大切です。



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