2015年06月25日
日本発の仮想空間サービスを展開/スプリューム代表取締役 梶塚千春
企業家倶楽部2008年6月号 注目企業
スプリュームはインターネット上の3次元仮想空間サービス「スプリューム」を提供する。仮想空間の「スプリューム」では、ユーザーがアバター(分身キャラクター)を用いて、他のユーザーと会話したり、コンテンツやイベントを楽しんだりできる。
同分野では、米国のリンデン・ラボ社が展開する仮想空間「Second Life」(セカンドライフ)が昨年に会員数1000万人を突破し、大きな注目を集めてきた。だが仮想空間サービスはセカンドライフが世界初ではない。日本でも1990年代から研究開発が進められており、その代表選手がスプリュームなのである。
もちろん、セカンドライフとはまったく違う仮想空間になっている。セカンドライフは一つの仮想空間に多くの企業が店を構えているが、スプリュームは外部のユーザーが自分のホームページやブログに仮想空間を作り配信できるのだ。フジテレビジョンが冬の恒例イベン「HOT FANTASY ODAIBA2007 ~2008」でスプリュームの仮想空間サービスを利用した際も、フジテレビの特設サイトに仮想空間を設置。ユーザーは仮想空間の中でリアルのイベントと同じように、フジテレビ社屋のイルミネーションや球体展望台、シアターモールなどを楽しんだ。普段は遠くて来場できない顧客が仮想空間上で現実のイベントの疑似体験できると、非常に好評だった。
仮想空間はその表現方法が多彩で、文字や画像などで構成された2次元のウェブサイトに比べ、ユーザーの感性や感性により強く訴えられる。そのため企業とユーザーをつなぐ新たなコミュニケーションツールとして注目されている。「企業のサイトに訪れるユーザーは最初から興味を持ってくれているから、PR効果も高い。今後は各企業が自社サイトで仮想空間を配信し、新商品やサービスを紹介する時代になっていくでしょう」とスプリューム社長の梶塚千春は指摘する。
スプリュームの仮想空間は、各サイトの仮想空間を繋げることも可能だ。例えばA社が仮想空間を自社のサーバーにアップすると、そのURLはスプリュームのサイト「Splume.com」ではなく、A社のサイト「A社.co.jp」になる。そこにスプリュームの「空間リンク」という特許技術で空間同士を繋げれば、ユーザーが「スプリューム」の仮想空間内を歩いていると、URLがいつの間にか「Splume.com」から、「A社.co.jp」に移動し、A社の仮想空間を体験することができる。これは通常のウェブサイトがリンクで互いに結ばれるのと同じ発想だ。この仮想空間をつなぐ技術を同社では「空間リンク」と呼び、日本と中国で特許を取得している。
「セカンドライフのようにひとつの閉じた世界ではなく、仮想空間でも自由でオープンなネットの特性を活かすことが重要。我々のサービスを使えば、ウェブサイトがリンクを通じて自己増殖的に広がったように、仮想世界がどこまでも無限に広がっていく可能性がある」と梶塚は指摘する。
空間表現が簡単なのも、スプリュームの特長である。セカンドライフでは高度な作成技術が必要とされるが、スプリュームでは写真などの静止画とアバターを組み合わせて簡単に仮想世界を構築できる。企業はウェブサイトと同様に、自由に仮想空間を作り上げることができる。
「どういう仮想空間を作り上げるかは作り手の自由です。多くのサイトが文字や画像、動画を中心にしていますが、仮想空間も有力なツールになると思います」
スプリューム創業者の梶塚は、業界では知られた存在だ。1962年生まれで、84年に東京大学工学部を卒業後、CG(コンピュータグラフィックス)制作会社のトーヨーリンクス(現リンクスデジワークス)に入社。つくば科学博覧会用の大型映像やCGを使ったCM制作を手がけ、着実にキャリアを積んでいった。その後、フリーで活動し、92年にCG製作会社の株式会社ケー・エー・ジェー(KAJ)を設立。NHKのテレビ番組「驚異の小宇宙・人体 」のCG製作や仮想空間をテーマにしたプレイステーション用のゲームソフトなどを開発した
「CG製作を手がける中で出会ったのが、ネットの仮想空間です。独自のCG技術が活かせる上、ネットの拡大に未来を感じました。それがスプリュームを始めたきっかけですね」
梶塚は2000年頃から政府の助成金などをもとに仮想空間の開発に着手。05年10月にはスプリュームを設立し、代表取締役に就任する。約1年半の開発期間を経て、07年3月に仮想空間サービス「スプリューム」を開始した。
同年7月にはリクルートのフリーペーパー「R25」が創刊3周年を記念して、スプリュームのサービスを使い、仮想空間イベント「R25的ガク祭」を開催。オバケ屋敷や屋台、花火大会、キャンプファイヤー、ライブなどのイベントを仮想空間の中で開き、注目を集めた。他にもマイクロソフト社主催のカンファレンス「REMIX07 TOKYO」と連動する仮想空間イベントを開催、他社とのコラボレーションにも積極的に取り組み、実績を積み重ねてきた。
仮想空間の製作受託をはじめ、サイト広告やアバターなどのアイテム課金が収益の柱だが、その規模はまだ小さい。「収益化が今後の課題」と梶塚は言う。08年2月には第三者割当増資で電通ドットコムから6000万円を調達、研究開発を強化し、収益化を急ぐ。
昨年、セカンドライフのブレイクを受けて、日本でも仮想空間事業に参入する企業が続出した。トランスコスモスや産業経済新聞社などが出資するココアが東京を忠実に再現した仮想世界「Meet me」を開始。ネットベンチャーのはてなが展開する「はてなワールド」やカプコンとドワンゴが設立したダレットの「ダレットワールド」、SBIホールディングスのグループ会社が手がける「東京0区」など、数多くの和製仮想空間が生まれている。
ただ収益性の高い仮想空間は少なく、「一時のブームに過ぎない」と否定的な見解を示すIT関係者も多い。一方で、「仮想空間の現状は約10年前のネット創世記と似ている」との指摘もある。当時はネットがビジネスになるとは思われていなかったが、今ではネットビジネスが一つの産業として急成長している。ブロードバンド環境も普及し、マイクロソフトのOS「ndows Vista」では3Dグラフィックを使用した3次元表示も可能になった。パソコンの機能も高まり、仮想空間が広がる下地は整ってきている。
「我々が仮想空間のデファクト・スタンダードを築いていきたい」。梶塚はそう力強く語る。日本発の仮想空間サービスが根付くのか。スプリュームの挑戦はまだ始まったばかりだ。
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