2015年07月03日
ムーブジャパネットで市場を創造 日本を元気にしたい/ジャパネットたかた社長 髙田明
企業家倶楽部2013年4月号 トップに聞く
独特の語り口で、長年テレビショッピングの雄として君臨してきたジャパネットたかた。デジタル化によるテレビ需要が激減した今、方向転換を模索し新たなスタートをきった。社長の髙田明氏はムーブジャパネットを掲げ、東京六本木にスタジオを新設、佐世保本社と二局体制を打ち出した。2013年12月期で過去最高益を達しなければ、社長を引退すると宣言する髙田社長。若手社員を鼓舞し、あらたな消費を創造したいと意気込む髙田社長にその真意を伺った。
聞き手:企業家ネットワーク社長 徳永卓三
徳永 ジャパネットたかたというと長崎佐世保から全国放送というイメージですが、ここ東京に事務所とスタジオを開設したのですね。オープンは何時ですか。
髙田 事務所は2012年の8月にオープンしました。スタジオは12月11日です。東京は専門チャンネルやインターネットに特化して、息子の副社長以下若手に任せる。佐世保は地上波とラジオとカタログに特化、私が統括し東京と佐世保で社内競争させようと考えています。
徳永 東京スタジオはどのぐらいの人がいるのですか。今後の予定は。
髙田 約100 名です。1年後は200名体制にする予定です。バイヤーは9割、専門チャンネルやインターネット部門は全部東京に移しました。将来の絵を描くと社員だけで500人は必要になるのですが、既にスペースが足りない状態です。
徳永 東京・六本木の高層ビル34階にスタジオ開設とは贅沢ですね。東京タワーやスカイツリーも見渡せる素晴らしい場所を、ワンフロア借り切ったということですが、スペースはどのぐらいあるのですか。
髙田 スタジオと事務所を併せて670坪です。この場所ですから家賃は1か月数千万円と聞いて驚きました。でもそれは産みだせばいいと思っています。
徳永 今、テレビが売れなくなっていますから大変ではないですか。
髙田 わが社も今、テレビの売上げはピーク時の5%程度です。テレビ中心にやっていた優良企業は軒並み大変なことになっている。業界は構造不況に陥っていると思いますので、テレビの需要は3~4年は戻らない。
従っていかに新しい方向性を確立するかが課題です。
徳永 テレビがそこまで落ちているとすると業績は厳しいのですか。
髙田 ピーク時は売上げ1759億円で利益が136億円までいきました。一昨年は売上げ1530億円に対し利益が74億円。2012年12月期は売上げ1170億円で利益が73億円でした。今年はスタジオ二局体制ができましたので、東京と佐世保を競争させ、今期の利益が過去最高時の136億円を越えなければ、私が社長を引退すると宣言しています。
徳永 社長がそこまでの覚悟で臨んでおられるとはすごい。これはある意味、髙田社長の自信の現れですね。
髙田 そのように言われる方が多いのですがそうではありません。社員たちが常に私が言い続けていること、この事態をどのぐらい本気で受け止めているかということです。しかし引退宣言以降、当社はものすごく燃えています。12月は1カ月で250%増を達成しました。逆に組織力が高まっています。まさにムーブジャパネットです。
徳永 会社は危機感がある方が一つにまとまりますね。
髙田 今年は変革の年です。お客様目線で変化対応し、本気で戦略を変えていかないと生き残れません。
徳永 「ジャパネットたかた」というと、家電のイメージが強いのですが。最近は布団や食品など、さまざまな商品を扱っておられます。方向転換されたのですか。
髙田 1年前に社員にメッセージを出しました。テレビ頼みではダメになるので、これからどんなものを取り扱ったらいいのかと。100人から返事がきました。しかしテレビがすごく売れている時でしたから、なかなか難しい。実感をもって受け止められていなかったと思います。しかしムーブジャパネット、いよいよ方向転換のときです。今は衣食住に関わるもの全てにチャレンジしてみようと。但しジャパネットの特性を生かして選び抜いたものを扱います。
徳永 どんなものを手掛けておられるのですか。
髙田 昨年3月には飛騨高山に中継車を出して、現地から日本酒を売りました。2000本ぐらい売れました。しかしテレビを超える商品はそう出てこないですね。
徳永 テレビとまではいかなくとも、これからいけそうな商品はどんなものですか。
髙田 少子高齢社会ですからシニア世代向け商品や健康系がいいと思います。個人の金融資産1500兆円のうち1000兆円はシニア世代が持っていますから。省エネなどのエコ系もこれからの商品です。電気自動車を売ったのですが、260万円もする商品が99台売れました。
徳永 テレビショッピングでクルマが売れるとはすごいことです。
髙田 日本の市場はまだまだ裕福です。モノが溢れているのでそれを超えるものを提案しないと。東日本大震災以降、消費マインドがガラリと変わりました。必要でないものは買わなくなりました。価値あるものでないと買わない。
徳永 価値を見出せば買ってくれるということですね。
髙田 新しい商品というよりは、今まであるものでも見直すと、我々がその価値を紹介しきれていないものがたくさんあります。例えば羽毛布団は10万枚以上売れています。これは睡眠がいかに健康に繋がっていくかを説明し、共感いただいているからだと思います。価値を伝える力、説明力が大切です。消費はまさに創るものだと思います。
徳永 その他に今売れているのはどんな商品ですか。
髙田 焼肉用の調理家電のザイグルというものが売れています。これは家族で食卓を囲むのに最適です。また2万円近くする布団専用クリーナーが売れている。ダニがとれるというものです。省エネタイプのエアコンも、ものすごく売れました。お客様はわかっていそうで意外とわかっておられない。価値をきちんと理解してもらうことが大切です。
徳永 今、女性に美容家電が人気と聞きますが、通販には向いているのではないですか。
髙田 まさにその通りです。当社も狙っています。女性にはいつまでも綺麗で、元気でいていただきたい。例えばパナソニックから出された携帯用電動歯ブラシですが、あれは20代、30代のOLさん向けに出され、家電量販店で大ヒットしました。うちでは60代、70代、80代のシニアのお客様に売れました。これはまさに市場創造です。人はこれは女性向け、これは若い人向けというように決めてかかっていることが多い。しかし発想を変えればまだまだ市場を創造することができます。
徳永 提案の仕方で消費を創造できるということですね。
髙田 まだまだ努力が足りない。実は昨年、省エネ型のエアコンを1日で1万本売りました。当社のメディアミックスを駆使し、1日24時間限定で売りました。息子が発案したのですが、私はリスクが大きいと反対しました。しかしどうしてもやらせてくれというのでゴーサインを出しました。そしたら大成功です。インターネットがパンクするぐらい反応がありました。お客様の心理、市場の変化はおもしろい。
徳永 なるほど1日限定というやり方ですね。まだまだ購買意欲は引き出せますね。
髙田 2013年は変革の年にしたい。ムーブジャパネット、まさに当社がエンドレスで動き続けている姿です。東京と佐世保、社員たちと全力を尽くし、日本を元気にしたいと思っています。
徳永 日本を元気にしたいというのはいいですね。
ところで、さきほど新入社員の説明会を行っておられましたが、どんな人材が欲しいですか。また社員教育についてはどうお考えですか。
髙田 教育強化を今年のテーマにしたいと考えています。働く環境を整えることが大切です。
新入社員については、今、ゆとり世代が続いていますので、考えることが苦手な子が多いような気がします。伝える力も弱い。自分の考えを自分の言葉できちんと表現できる人がいいですね。
徳永 最近メールが発達して言葉を発しなくてもよくなってきているので、これが問題ですね。
髙田 フェイスtoフェイスで伝えないと。昨今日本が弱くなっているとよく言われますが、私は伝える力が弱くなっているからではないかと思っています。
徳永 海外進出についてはどうお考えですか。
髙田 いろいろなお話をいただきますが、未だ日本国内でやるべきことがたくさんありますので、まだ出ていく時ではないと。日本の消費が弱いからすぐ海外へという傾向が強いですが、私はそう思ってはいません。海外進出した企業も今はかなり引き上げています。もし我々が海外進出するのであれば、現地に物流センター、コールセンターをつくってしっかりやりたい。そうでなければ成功できませんので、投資の無駄です。それより今は日本の地方の活性化の方に関心があります。
徳永 なるほどですね。ところで髙田さんの夢は何ですか。
髙田 日本全国47都道府県に中継車を置きたいです。そして全国に埋もれている素晴らしい商品を発掘し、地域活性化に貢献したいですね。
徳永 いいですね。地方には我々が知らない良い商品がたくさんあるでしょうから、ぜひ日本を元気にしていただきたい。ところで今はBS放送が日常化し、テレビショッピングがエンターテインメント番組になっているような気がします。
髙田 その通りです。QVCジャパンさんなんかはショッピングの楽しさを訴えておられ、いい意味で中毒性があるのではと思います。学ぶところが多いです。
徳永 ジャパネットの客層はシニア層が多いのですか。
髙田 確かにシニアの方が多いのですが、インターネットではお客様の幅が広がっています。
東京スタジオでは経験豊富な人をたくさん雇って、インターネット販売に力を入れていく予定です。
徳永 今、テレビショッピングやネットショッピングが盛んですか、御社のライバルはどこになるのですか。
髙田 ライバルはいないですね。強いて言えば、自分たちの中にあるといえます。仕事は極めていけばいくらでもつくれます。
徳永 将来を見据え、すでにさまざまな手を打っておられるようですが、ジャパネットたかたの一番の課題は何ですか。
髙田 集団をもっとプロ化していくことです。普通にやっていたら普通でしかない。もっと精鋭部隊にならないといけませんね。とにかく一流になりなさいと言い続けています。
地上波もラジオも、インターネット部門も、バイヤー部隊も本当にお客様目線で極めているのかと自分たちに問うています。もっとプロ集団になっていくことが大切です。社員の成長を強く願っています。
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