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トピックス -企業家倶楽部

2015年07月06日

ITが果たすイノベーションの本質とその全体像/ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋

企業家倶楽部2015年8月号 IoTとイノベーション vol.1


藤原 洋(ふじわら・ひろし)

1954年生まれ。1977年、京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒業。工学博士(東京大学)。日本IBM、日立エンジニアリングを経て85 年、アスキー入社。96年、インターネット総合研究所(IRI)を設立、代表取締役所長に就任。99年、東証マザーズに上場。2000年、第2 回企業家賞を受賞。05 年6月に子会社のIRIユビテック、8月にブロードバンドタワーをヘラクレスに上場させる。




  このたび、6回にわたる連載をさせて頂くこととなりました。私自身1977年以来、エンジニア/研究者/研究開発プロジェクト管理者/事業責任者/企業経営者/投資家として、IT業界に身を置いてきた体験をもとに述べさせて頂きます。

 イノベーションは、従来のモノ/やり方が古くなった時、時代の変化が急速な時、あるいは、全く存在しなかったモノ/やり方を産み出した時に起こります。そこには、新たな挑戦が伴うため過程には失敗はつきもので、失敗から学べば、失敗を補い余りある価値を産み出します。それを「成功」と呼ぶのかもしれませんが、「ITとイノベーション」には、実に多くの物語があります。ITが、以前と大きく異なる点は、以前は、人間の「身体能力」(筋力、持久力、跳躍力、瞬発力など)や「五感」(外界を感知するための視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の補完であったのに対して、ITの本質は、「脳」(思考、記憶、意思)の補完(あるいは人工知能による超越)にあります。脳のメカニズムは、現代科学の最先端分野の1つですが、多くの謎に包まれています。従って、ITイノベーションは、今後も継続するものと思われます。



産業革命史におけるIT革命の位置づけ

イノベーションによる社会変化を産業革命史で振り返ると、大きくは以下の3つに分類されます。

■第1次産業革命:イギリスから始まった「動力革命」

 大航海時代、ヨーロッパ各国は、世界の富を求め植民地を作りました。特にイギリスは、地理的な有利さと科学技術力で優位に立ち、東インド会社を設立(初航海:1601年3月、4隻の船団)、インドを領土にしました。この結果、インド産の綿織物を輸入、吸湿性・耐久性に優れた新繊維は、上流階級の間でブームとなり、伝統の毛織物産業は大打撃を受けました。一方、綿織物は、機械化が容易で、また毛織物工業のような規制がなく多くの発明がなされ、毛織物を抜いて中心的繊維産業へと発展しました。それを支えた発明が、ジョン・ケイによる「飛び杼」(とびひ)(高速の幅広織布機械)、ジェームズ・ハーグリーブズによる多軸紡績機、ジェニー紡績機(同時に八本の糸を紡ぐ)、リチャード・アークライトによる水力紡績機、サムエル・クロンプトンによるミュール紡績機(ジェニー紡績機とアークライトの水力紡績機の長所を組み合わせ)、エドマンド・カートライトの力織機などです。

 次の課題が、紡績機械や綿織物機械の原料となる製鉄や動力源でした。産業革命前夜の世界では、製鉄に木炭が使用され、特にイギリスは、森林を伐採し過ぎて木材が不足。この解決法が、石炭による製鉄で、エイブラハム・ダービー一世の石炭燃料の製鉄法とダービー二世のコークス燃料製鉄法の発明でした。燃料費の劇的低下が起こり、木炭から石炭へのエネルギー転換が進んだのでした。次なる課題は、炭坑の排水で、解決策が最初の蒸気機関によるトーマス・セーバリの鉱山用揚水ポンプでした。改良型のトーマス・ニューコメンの揚水用蒸気機関は、企業家として大成功を収め、百機以上のニューコメン型蒸気機関が設置されました。ジェームス・ワットは、スコットランドの機械職人の子で、ロンドンで機械製造業を学び、グラスゴー大学構内で1757年実験器具製造・修理店を開業しました。大学からの改良依頼でニューコメン型蒸気機関と出会い、熱力学の研究からニつのシリンダーを用いたワット式蒸気機関を考案、特許を取得、ボールトン・ワット社を創業。「ワット」という単位が作られたほどです。ロバート・フルトンによる1809年の蒸気船ビジネスの成功、ジョージ・スチーブンソンによる1814年の蒸気機関車の成功へと続きます。蒸気機関により人間は、「自身の身体能力を遥かに超えるパワー」を手に入れたのでした。





■第2次産業革命:ドイツで起こりアメリカで発展した「重化学工業革命」

 ドイツで重工業が起こるきっかけは、イギリスでの石炭革命でした。当時ドイツは、欧州最大の石炭産出国で、ルール地方にある豊富な石炭を利用した製鉄業が起こり、鉄鉱石や鋼鉄の輸送には、ライン川があり立地条件が最高でした。製鉄を軍事技術へ利用した強力な軍事力で、1870年普仏戦争でフランスに勝利し、英国と並ぶ工業国へと発展。ルール工業地帯に製鉄所と兵器工場を多く造ったアルフレート・クルップは、軍事産業企業家として重工業のリーダーとなりました。

 また、当時ドイツでは、化学と物性物理での新たな発見・発明が相次ぎました。石油の燃焼に基づく内燃機関によって1885年のゴットリーブ・ダイムラーの四輪自動車とカール・ベンツの三輪自動車の大発明がなされました。

 動力革命と重化学工業革命は、ヨーロッパからの移民と共にアメリカへ拡大し、広大な土地と資源を基に、企業家精神溢れる自由な人々によりアメリカの大躍進が始まりました。重化学工業革命を完成させた人物は、ヘンリー・フォードです。フォードはエジソンの弟子ですが、内燃機関の将来性に目をつけ、電気にこだわるエジソンのもとを離れ起業しました。二度の失敗後、3社目が今のフォード社(1903年設立)です。彼は、失敗を超えた典型的企業家です。同社は、A型から製品化を行い、20番目のT型(1908年)でようやく成功。大量生産方式とアフターサービス体制を確立、現代製造業の出発点となりました。部品の規格化、均質化、互換性、流れ作業方式、ベルトコンベア型組み立てラインなどが生まれました。1920年までに100万台の生産を行い、全米の半分のシェアを獲得しました。私が、ヘンリー・フォードを企業家として賞賛するのは、労働力不足と賃金上昇をコストダウンで吸収し、従業員が自社の車を買えるまで賃金を引き上げ続け、世界初の大衆車を実現したことです。こうして人間は、温度や圧力等を計測制御し、「五感を超えたものづくり」を可能としました。




■第3次産業革命:アメリカから始まり今も継続中の「IT革命(デジタル情報革命)」

 コンピュータやインターネットを始めとする情報技術の発展・普及に伴い、社会の急激な変化が起こりました。その影響は経済活動から家庭生活にいたるまで多岐に渡ります。その「IT革命」の全体像を図に示します。先に述べたように、「IT革命」におけるイノベーションは、従来の産業革命と本質的に異なり、人間の「身体能力」や「五感」の補完ではなく、「脳」の補完・超越への挑戦なのです。

 以上3つの産業革命史を振り返ると、そこには、いつの時代にも、共通した3つの要素があります。それは、社会における人間の「経済活動」、科学者・技術者による「発明・発見」、「企業家精神」に基づく事業意欲です。次回から、現在進行形の「IT革命」の過去・現在・未来について述べさせて頂きます。



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