トピックス -企業家倶楽部

2013年01月11日

業界の非常識「トレンドど真ん中」集中で大ヒット/ジーユー代表取締役社長 柚木治

企業家倶楽部2013年1/2月号 トップに聞く


   きゃりーぱみゅぱみゅ出演のCM、「ファッションモンスター」が印象的なg.u(.ジーユー)は2012年8月期の売上げ580億円、経常利益50億円と絶好調だ。2006年創業以来不振が続いたジーユーを急激に飛躍させた柚木にその秘訣、今後の事業戦略について聞いた。

(聞き手は企業家ネットワーク 三浦貴保)



ジーユー人気の理由

問 売上げ580億円、経常利益50億円という好調ぶりに驚きました。好調の理由は何でしょうか。

柚木 お客様が求めているものと我々の方向性が合っており、期待いただいているので伸びているのだと思います。


   これまでファストファッションは海外勢の専売特許でした。H&MやZARAなどは憧れもありファッショナブルではありますが、全てが日本人好みであったり、似合うというわけではありません。また日本人らしい日本人が好きなかわいい服は高いままでした。それを安くしています。

   不況や震災もあり、人々は贅沢する必要はないけれど、身の丈にあった楽しさを求めています。それに応えていくのがファッションです。自分にぴったりのファッションだと気持ちが活き活きとしますし、周囲をそうさせる力がファッションにはあるのではないでしょうか。

問 何故ここまで安くできるのですか。


柚木 一つ目は出来るだけ安い素材と縫製工場をユニクロで培ったネットワークとノウハウを使って開拓しています。匠の技術を持つ指導者などの開発チームはユニクロと同じですが、使っている素材、工場は全く別です。ユニクロは「最高品質」を追及していますが、ジーユーは「安心品質」の商品をご提供しています。


   二つ目はサプライチェーンの洋服は生産量と販売量が絶対に合いません。立案から店頭に並ぶまで何ヶ月もかかるため、前もって作るしかありませんが、トレンドがあり、色やサイズも沢山ありますから全て売れるわけがないのです。ですから売り切るために大きく値引きするのですが、我々は生産量と販売量を合わせる努力を死に物狂いでやっています。自社直営ですので去年のデータを元に予測を立てますが、それを全て的中させるのは至難の業ですから、最初に半分だけ作ります。初動を見て生産を調整しますが、売行きが鈍ってきたら棚を前に持ってきて売り、さらに週末にプロモーションをします。それでも残るようなら、マークダウン(値引き)するというように最大限の努力をしますから、値引率が非常に低いのです。ですから最初から安い上代(店頭販売価格)を付けられるのです。

   三つ目が、店舗の家賃、内装、店舗運営、人件費などの経費を低く抑えることです。ユニクロは商品を畳んで積み上げて、ボリューム感や上質感を出しますが、ジーユーは全部ハンガーに掛けています。お客様がご覧になった後、畳み直して戻すというのは大変です。ハンギングは極めてローコストな上、シルエットが見えますから一石二鳥なのです。ユニクロのようなベーシックであれば、畳んであってもいいのですが、チュニックならデザインが見えないといけません。また、店舗に並ぶ商品数を増やそうと、ハンガーの厚さを半分にしました。これで在庫数は2倍になり、補充の手間も減りました。さらに服をかけたり抜いたりする作業が最も早く行える形の道具も開発するなど、細かい努力をしています。経費率が低ければ、原価率を高くし、上代を低くすることが出来るのです。

問 ファーストリテイリンググループでのジーユーの位置付けはどうでしょうか。


柚木 オシャレでちょっとやんちゃな妹です。ウイメンズ比率が6割以上とユニクロより高いのです。大きな違いは価格と、ユニクロはベーシックですが、ジーユーはファッションです。


問 すでに198店舗と成長が早いですね。


柚木 ユニクロの辿ってきた2倍のスピードで今まで来ていますし、これからもユニクロの2倍で成長します。そのうち追いついちゃいますよ。でもそれが親孝行だと思います。ユニクロのノウハウを使わせてもらっているからこそですから。


問 柳井会長は何とおっしゃっていますか。


柚木 「かかってこい」と。


問 柳井会長が期待されていることは何でしょうか。


柚木 ゆくゆくは世界の主要都市にユニクロの大型店とジーユーの大型店を一緒に出し、あらゆる人のニーズに応えていく、さらにこれを勝ちパターンにすることです。



トレンドの「ど真ん中」はマス

問 990円ジーンズには驚きました。

柚木 当時私は副社長でした。2006年の創業以来、ジーユーはずっと大不振で赤字続きでした。ユニクロの7掛けの価格設定でしたが、お客様には全く響きませんでした。ユニクロが週末にプロモーションをすると価格が7掛けになることが消費者の間に恐ろしい程浸透していたのです。


   ならばユニクロの半額以下の商品に変えよう、それを象徴する商品で伝えようと素材、縫製工場を再開発して990円ジーンズを出しました。非常に売れ、認知度が上がり、集客数が急激に増えました。この年に初めて黒字化したのです。ユニクロの廉価版としてのポジションを得て、990円のフリース、ポロシャツ、500円のTシャツと立て続けに好調でしたが、1年経つとまたすっかり売れなくなりました。

   リーマンショック直後は時流に合っていたものの、ユニクロの廉価版なんて誰も欲しくない、モノマネから本当のヒットは生まれないと実感しました。では「低価格で本当に嬉しいものはなんだろう」と考えたら、ファッションです。「じゃあそれをやってみよう、日本人が本当に欲しい服は安くなっていないのだからこれにチャレンジしよう」とファッションに大きく舵を切ったのが2011年春です。秋にAKB前田敦子さんをイメージキャラクターとして起用し、認知度がまた上がりました。現在のイメージキャラクターはきゃりーぱみゅぱみゅさんです。

問 ユニクロはベーシックなのでファションに挑戦するのは勇気がいりますね。


柚木 ユニクロにはファッションは売れないというある種のタブーがありました。ですから、ジーユーは2011年春、別コレクション「be a girl」を作り、20代向けのトレンドファッションを店舗の小さなスペースで展開しました。多品番少量を高回転で売り切るファストファッションモデルでやってみたら、非常な勢いで売り上げたのです。


   トレンドのど真ん中は売れるということ、さらに、20代にターゲットを絞ったにも関わらず、10代から40代までの幅広い年齢の方に売れるという嬉しい誤算がありました。トレンドは今の時代の気分を象徴していて、その時代において最も普通の服だから誰もが欲しい。つまり、トレンドのど真ん中はマスなのです。


   アイテム数を絞ってど真ん中を打ち出すことはファッション界では非常識なのですが、2011年秋からは「トレンドど真ん中をどんどん作っていこう」と決心して、「be a girl」を女性向け全ラインに展開することにしました。2012年にはその代表商品として990円のユルパン、マキシワンピースを出し、大ヒットしました。

問 現在のヒット商品は何でしょうか。


柚木 1990円のニットワンピースです。ローラさんがキャラクターの女性誌viviとコラボしたものも好評です。デザイナーはユニクロとは全く別で、アイテム数は店頭で常時300、年間1000強です。



本気で「日本発世界一」をめざす

問 なぜファーストリテイリングに入社されたのですか。

柚木 お客様に近い仕事がしたかったのです。実家が八百屋で、そこからできるだけ遠ざかろうと、でかい組織や商社マンに憧れて大学卒業後は伊藤忠商事に入社しましたが、結局、原点に戻ってきてしまいました。


   もう一つは本気で「日本発世界一をめざす」と掲げている会社でしたから、そのチームの一員でやりたかったのです。

問 柳井会長に初めてお会いになった時の印象は如何でしたか。


柚木 「この人、本気だ」。私がファーストリテイリングに入社した1999年当時はフリースブームが始まったばかりで、ユニクロは急にフリースが売れた安い服屋というのが世間の認識でした。正直、私も自分で着る服ではないと思っていたくらいなのに、柳井は本気で世界を目指していた。その迫力にすごい人だと感じました。


問 入社後はどんな仕事を任されたのですか。


柚木 ダイレクト事業の責任者でEコマースの立ち上げを行いました。その後に野菜事業の責任者を3年していました。


問 野菜事業は当時、かなり話題を集めましたね。


柚木 野菜事業は累計で26億円の損を出しました。当時のファーストリテイリングはとてつもない勢いがありました。大手量販店の買収も考えていたほどで、ある意味、私の大失敗がファーストリテイリンググループの極端な多角化を食い止め、26億円でグループ全体を救ったとも言えますね。(笑)それは冗談で、私は責任を取って退社するつもりでした。


問 その時、柳井会長は何とおっしゃいましたか。


柚木 「金を返せ」。それは柳井一流の引き止め方だったのです。「一回失敗したくらいで何を言っているんだ。勉強したのだから、きちんと儲けて損した分を仕事で返せ」と。


問 ジーユーの成功で返せたのではないですか。


柚木  いえいえ、まだまだです。柳井からは「もっと目標をあげろ」と言われます。私も絶対に会社を潰したくないという覚悟でいます。



ジーユーの目指すもの

問 今後の目標は何でしょうか。

柚木 2014年8月期に売上げ1000億円、2014年12月までに海外に出店します。アジア、米州、欧州には全て出店を目指しています。そして10年後には売上げ1兆円を目指します。


問 10年後1兆円を成し遂げる上での課題は何でしょうか。


柚木 第一に人材です。採用は新卒、既卒共にジーユーで行い、グループ間の人材交流が時々あります。成長意欲とファッションが好きだという人を採用したいと思っています。応募も増えましたし、店舗で若い女性の応募が大変増えました。来年度入社は120人です。


   次にグローバル化です。海外に実際に出店し、外国人もこれから採用していきます。海外でも売れるようにさらに商品に磨きをかけます。

   今はお客様にご支持いただいていますが、まだ実力は追いついていないのでバブルだと感じています。バブルがはじける前にお客様の期待に実力を追いつかせようと今取り組んでいる最中です。

問 ご自身の夢はいかがですか。


柚木 「ファッションで世界を元気にする」ことです。


   また、普通の人間が経営者になれる、オーナーでなくとも創業者になれることを証明したいと思っています。これまで柳井が唱えて作ってきた正しい経営がユニクロ以外にも通用するということを証明したいのです。

P r o f i l e


柚木 治(ゆのき・おさむ)


1965年生まれ。88年、一橋大学経済学部卒業後、伊藤忠商事に入社、GEキャピタル・コーポレーションを経て、99 年ファーストリテイリングへ入社。2008年GOVリテイリング(現ジーユー)副社長、2010年社長を歴任。2011年9月ジーユー社長に就任。



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