トピックス -企業家倶楽部

2015年07月30日

会計ソフトのシェアNo.1を目指す/freee代表取締役 佐々木大輔

企業家倶楽部2015年8月号 注目企業


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

全自動クラウド会計ソフトfreee

 方々から届いた請求書や社員が積んでいく領収書の山を前に、ため息を漏らしている経理担当者は多いのではなかろうか。これらの書類を預かった彼らは手作業で表計算ソフトや会計ソフト、銀行のデータ上にそれぞれ入力を行い、振り込みを終えると、今度はその事実を再び同じように書き込まねばならない。社内の審査や稟議も含めて考えると、帳簿への記入と精算に費やされる時間は膨大だ。

 この非効率を一挙に解決したのが、freeeの開発するクラウド型会計ソフト「freee(フリー)」である。freeeを使えば、経費精算を行いたい社員が領収書のデータをスマートフォンで撮影して申請すると、そのまま記帳が行われる。

 請求書の発行や経費精算は企業の誰しもが行う業務。こうした作業をクラウド上で全従業員が行えるので、社員が通常業務をこなすと同時に、自動で帳簿が付けられていくという具合だ。こちらが出した請求書に対して入金があったかも一目瞭然な上、検索機能を使えば、期間を指定して一覧をリアルタイムで可視化できる。

 昨年からは、別ソフト「給与計算freee」で給与計算も可能とした。今までは勤怠を別システムで管理し、その情報を集計したデータを給与計算ソフトに打ち込んで、明細を印刷。最終的には社員に手渡しするのが通例であった。一方freeeでは、必要な従業員の個人情報や勤怠が全てクラウドで管理されるため、ソフトが自動的に給与計算を行い、一クリックで従業員全員に明細が届く仕組みとなっている。

 もちろん社内の経理は全てfreeeを使って処理。ここ1年で社員数は5倍の100人に膨れ上がったが、専任の経理担当者はいない。同社代表の佐々木大輔も、「複雑な印象の強かった経理を簡素化することで起業自体のハードルを下げ、経営資源をより有意義に投資できるようにする。それがひいては、スモールビジネスの活性化に繋がる」と語る。



三方よしのビジネスモデル

 現在freeeは、個人事業主から従業員100名以下の中小企業を主なターゲットとしている。ソフト自体は無料で使うことができるが、1カ月以上前に入力したデータを編集するためには有料課金が必要。年間通して1度しか帳簿を付けなかったり、データが少ししか無かったりする場合には無料版で事足りるが、記録を蓄積するなど本格的、継続的に使いたければ課金が推奨される。

 価格は法人が月額1980円、個人事業主は月額980円から。広告収入は一切無く、純粋な有料課金の収益を売り上げとしている。創業3年目にしてアカウント数は33万。実際に使われているクラウド会計ソフトの中でトップシェアを誇る。

 従来の会計ソフトは、紙に書いていた時代の会計帳簿がただ電子化されただけの代物だった。簿記の専門知識が無ければ使えなかったのである。しかし、佐々木は考えた。「請求や支払いの時点で、お金の流れは既に決定している。そのデータをそのまま帳簿に持ってきた方が、圧倒的に効率がいいのではないか」。freeeの存在は、会計ソフト自体のあり方を再度問いかけている。

 では、このソフトが普及すれば会計士や税理士といった専門家が必要無くなってしまうのだろうか。「それは有り得ない」と佐々木は説く。細かい手続きの際には、やはり専門知識を持った人間の力が必要となるため、むしろfreeeは、そうした専門家とデータのやり取りを行う上でのプラットフォームとなりうる。

 これまで、ひたすらデータを入力するような比較的付加価値の低い仕事まで、専門知識を有する税理士などの人間の業務だと盲目的に決め付けられてきた。

「freeeのプラットフォームを活用することで、企業のみならず専門家の業務も減少する。それに応じて、会社の経理全体の効率化を提案するなど、専門家のサービスがより付加価値の高いものになるでしょう」

 クライアント企業、専門家、freeeが、言わば三方よしの関係を築けることになるのだ。

 今では銀行とも連携し、経費などをほぼ自動で振り込みができるようになってはいるが、「個人的には納得していない」と佐々木。最終的には、クラウドに経費の領収書を載せ、データを入力した時点で、自分の口座へ自動でお金が振り込まれる仕組みの構築を目指す。



最初の完成度は10%でいい

 佐々木が会計業務の非効率性に問題意識を持ったのは、以前IT企業でCFOを務めていた時。財務担当として、スタッフが一日中請求書などの入力を行っている姿を見て、重複作業の繰り返しに辟易していたのがきっかけだ。

 当時は本業と関係の無い経理業務にわざわざアプローチする気は無かったが、その後グーグルに入社し、中小企業向けのマーケティングを担当したのが契機となった。任されたのは、小さなビジネスを展開する人々を大企業と互角に戦えるようにするツールの提供。インターネットを通して何か出来ないか考えた際、会計業務の非効率性を思い出した。調べてみると、以前感じた問題点は一切解決されていない。イノベーションが起きていないこの領域を一歩前に進めることには意義があると感じた。

 しかし、必ずニーズがあるという佐々木の確信とは裏腹に、調査すればするほど「うちの経理はちゃんと回っているから大丈夫」との回答が続出。焦りが募る中、実際にリリースしてみると、予想外の好反応が待っていた。評判はツイッターやフェイスブックといったSNSで広まり、一気にシェア拡大へと動いていった。

「高い期待を持ってもらう努力がインターネット上の拡散に繋がる」と説く佐々木。更なる認知度向上のために注力しているのは、圧倒的な速さで改善を行うことだ。ユーザーが困っていれば迅速に解決するのはもちろん、新機能も次々と追加していく。

 どんな分野にも増してスピードが重要とされるIT業界。「商品を最初に出す際の完成度は10%でいい」と言うから驚きだ。確かに日本では、お客が求める品質要件の遥かに上を目指す風土がある。それはハードウェアにおいては美徳かもしれないが、誰よりも早く商品を出し、それをベースにどんどん改善していけるのがソフトの強みだ。

「最初よりも完成度は上がっているが、それでもまだ20%」と謙遜する佐々木。掲げる目標は高い。



会計ソフトの概念を超越する

「早急にクラウドにとどまらない会計ソフト全体の中でトップシェアを取りたい」

 そう豪語する佐々木は、会計ソフトの周辺まで含めた市場を見据える。会計ソフトのマーケットだけでも2500億円と言われるが、freeeが目指すのは銀行決済、社会保険、年金などの手続きまで含めたプラットフォームの構築だ。

「投資していただいている以上、もちろん株式上場は視野に入れている」とする一方、「しっかりと事業を作り上げてからでなければ、上場する意味は無い」とも語り、骨太の経営を心がける。従来の会計ソフトという概念を超越し、新たな未来へ橋をかけようとするfreeeの挑戦が見逃せない。(相澤英祐)

クラウド会計ソフト freee:http://www.freee.co.jp
クラウド給与計算ソフト freee:http://www.freee.co.jp/payroll


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