トピックス -企業家倶楽部

2015年08月10日

「老人について」の勘違い/朝日航洋元社長(トヨタグループ) 塚田彊

企業家倶楽部2015年8月号 言いたい放題


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

 




「老人」とは暦の年齢で決まるものだろうか。厚生労働省による老人の定義は65歳以上とされている。当の「老人」自身もそして「世の中」も老人について、大きな勘違いをしているように思えてならない。

 少し前になるが、興味深い資料が日本経済新聞に掲載されていたので、メモに残しておいた。それは、「平均余命の延長を踏まえた高齢の新定義と人口指標」というものだ。1960年には、当時65歳男性の平均余命は11.6年とある。これが、1990年には16.2年、2010年は18.7年、2030年は20.6年、2060年は22.3年と延びている。

 1960年の65歳時の平均余命11.6年と同じ平均余命の年齢は、1990年は71.6歳、2010年は74.8歳、2030年は77.2歳、2060年は79.3歳となる。平均余命という指標で見る限り、今年の老人の新定義は65歳から約75歳へ変わったと考えてよいのではないか。

 同じ資料に、従属人口指数の統計もあったので紹介しよう。15歳から64歳を生産人口と呼び、それ以外の0歳から14歳、65歳以上を従属人口と呼ぶ。従来の65歳を老人とする定義では、生産人口に対する従属人口の割合は、1990年43.5%、2010年56.7%、2030年72.2%、2060年96.3%と上がっていく。日本の将来を考えると恐ろしくなる数字だ。

 しかし、先ほどの新定義に当てはめてみると1990年33.1%、2010年30.7%、2030年35.5%、2060年40.7%となる。ちなみに2060年の高齢化率は、従来の定義では39.9%だが、新定義では19.8%と半減する。数字のトリックに悲観的になることはない。

 平均余命は物理的に延びているだけではない。気力、智力、体力を伴って延びているのだから、2つの提言をしたい。




 1つ目は、これからは老人は単に「生産人口」に留まるでもなく、「従属人口」に甘えるでもない、自分のことは自分で賄うこと。具体的には、生産人口のサポート役を担うことだ。社会保障費増大の元凶と呼ばれないよう、健康年齢を維持し、社会負担を軽減しよう。また、仕事の経験、ノウハウを活かし、生産人口の世代が真の価値を生み出せるように助言することも適している。特に男性は社会との接点がなくなると老化が進むようだ。

 2つ目は、会社をリタイヤした後の人生を、「第2の人生(セカンドライフ)」や「余生」と言うのをやめよう。今や平均余命は約20年間もあるのだ。単なる余生では勿体ない。

 私は、「アナザー・ファーストライフ(もうひとつのファーストライフ)」と呼ぶことにしている。会社のため、家族のため、生産人口として燃焼し、成果を上げることは素晴らしい人生だ。ファーストライフの充実が大切なことに異論はない。

 しかし、人生はそれだけではない。ファーストライフでは望めなかった、もう一つの人生を設計したらいい。20年間という長い時間を趣味や晴耕雨読のみで過ごせるものではない。

 私はもう丸9年になるが、某企業の課長クラスの社員に自らの体験をアドバイスしている。人数は10人未満で最初に2時間半ほど、仕事上の悩みに対して具体的な事例を挙げながら、質疑応答の時間を設けている。特徴的なのは、その後だ。「赤提灯」と呼んでいるが、オフィスを出て近くの居酒屋でざっくばらんに話す。お酒も入り、突っ込んだ話もでき好評だ。私にとっても現役世代との接点を持つことができる貴重な時間であり、精神衛生上も良い。世代も変われば、失敗話や経験談が喜ばれるのだ。なんとも愉快である。



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