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トピックス -企業家倶楽部

2008年11月07日

5万円PCを投入 売上高1000億円を目指す/オンキヨー代表取締役会長兼社長 大朏直人

企業家倶楽部2008年12月号 核心インタビュー


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。


低価格PC販売を手掛けるソーテックを買収して1年。オンキヨーは、ついに5万円PC販売を発表し、その存在感を示した。今後は、強みの音響機器やホームシアターをも組み入れてハードメーカーとしてのネット戦略を展開する方針だ。創業以来「危機こそチャンス」の理念を貫き通してきた大朏直人会長兼社長が、不況時でも揺らぐことのない独自性に富む事業戦略を語る。(聞き手は本誌編集長 徳永卓三)

大朏直人(おおつき・なおと)1941年東京生まれ。65年駒沢大学文学部卒業後、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通を設立、社長に就任。85年自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、4 社の再建に成功。93年6月東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。03年2月オンキヨーがジャスダックに上場、3度目の株式上場を果たす。



危機こそチャンス

問 オンキヨーグループはアメリカにも拠点があります。今回のアメリカ発の金融危機をどう捉えていますか。

大朏 当初は、サブプライムローン問題の被害は低所得層に限られると考えられていました。オンキヨーの客層とは異なるので、そこまで影響はないという見方をしておりましたが、今回の金融危機は予想していた以上に深刻な模様です。今のところ、大きな影響というのは当社自身にはまだ来ていませんが、今後影響が来てもおかしくありません。

問 大朏社長は何度かこういう不況を経験されてきたと思いますが、こういう時はベンチャー企業の社長は経営トップとしてどういう心構えでいるべきでしょうか。

大朏 私は第1次石油ショックの時に、「これはしめた」と感じました。それまでは「戦場で生きてきた経営者の方は大きな危機に慣れていて、まだ数十名規模の我々が入れる隙間は無い」と思っていましたが、石油ショックは、松下幸之助さんも、本田宗一郎さんも経験が無いわけです。誰も経験したことが無いものは、誰にとっても同じ条件です。これはいいチャンスになるかもしれないと感じましたね。実際何年か経ってみると、あの頃が起点となって多くの企業が力を出してきているでしょう。

問 ある面で、今はベンチャー企業にとって攻めの時だというわけですね。それでは大朏社長だったら具体的にどんな手を打っていかれますか。

大朏 私たちには「上場している」という縛りもありますが、投資すべきところは投資しようと思っています。それが賢明であれば、海外進出をより一層やろうとも考えています。今はどこを買いに行っても安いですからね。そういうチャンスではあるなと思います。

問 この前あるファンド関係者と話をしたのですが、300社くらいあった日本の投資ファンド会社がほとんどなくなり、もう10社ほどしか残ってないそうです。

大朏 私のところにも上場前から投資ファンドが沢山来ましたが、1回も使ったことがありません。ファンドは1日でも早く、1%でも利回りよく資金を回収するのが目的なんです。だから私は、ファンドでお金を借りて行うMBO(経営陣による買収)は100%失敗すると思います。しかし、今は株価が安いから今度はファンドが買ってくれない時期です。MBOをやるなら今ですよ。ファミリーレストランの「すかいらーく」さんだって、今なら4分の1の金利でやれたかもしれない。そうしたらファンドから借りるお金も少なく済んだわけです。だからMBOをやりたいと思っているところは今こそチャンスだと思います。

問 そういう意味では、大朏社長にM&A(企業の合併・買収)の案件が沢山来ているのではないでしょうか。

大朏 今、M&Aも同じようにチャンスです。それはもう間違いないでしょう。ただし、幾つかいい売り出しがあるからといって、オンキヨーに関係のない会社を買おうとしたことはありません。創業時の思いを忘れずということで、ものづくりに関係していないところは考えていないですね。



5万円PCに予約殺到

問 低価格PC販売のソーテックを買収されて、1年経ちます。ソーテックの立て直しは順調に進んでいますか。

大朏 2007年10月1日から08年6月30日までの3四半期連続での営業・経常黒字を達成いたしました。ソーテックの07年3月期の連結業績が、売上高158億5300万円、経常損益は9億2700万円の赤字だったことを考えると、非常に大きな進歩だと思います。

問 どこを改善して黒字に転換したのでしょうか。

大朏 かかったコストより高く売る。それだけですよ。売り場では競争が激しいから、他より安く魅力ある商品づくりをすることです。今度我々が発表した5万円PCは大変魅力的です。年内に約3万台の生産を予定していますが、既に個人のお客様からその3倍の予約が来ています。

問 大変な人気ですね。5万円PCについて詳しくお聞かせ下さい。

大朏 5万円PCは、日本の大手のメーカーは作っていません。やはり安売り競争に入って行ったら大変だということがありますから。でもソーテックは、もともと低価格が武器であり、痛くもかゆくもありません。新規で商品を出すだけだから、売れた分だけ儲けになる。それでは、新規ならどのメーカーも5万円PCをつくれるかというと、急に他の業界の人ができるわけがない。どんなに儲けている会社でも、つくる技術のない会社にはつくれないわけですからね。しかし、オンキヨーはつくれる技術を持っています。ソーテックの山田健介社長は、世界初のノートPCである東芝ダイナブックの商々品企画部長だった人です。そういった人が加わるから、面白く、品質がいいものが出来るのです。



独自性に富むオンキヨーPC

問 5万円PC以外のPC戦略についてもお聞かせください。

大朏 デスクトップPCは通常、モニターと本体に分かれますが、本体は大きくてどこにおいても邪魔になります。そこでオンキヨーのPCでは、本体をモニターの中に全部入れてしまいます。そうすれば事務所の机を広く使えて非常に便利です。ただ、本体はどんどん進化していくものです。本体だけを変えればモニターは買わなくて済みます。だからモニターに本体を内蔵するのは結局は高くつくのでダメだ、というのがこれまでのPCメーカーの発想でした。しかし、デザイナーにとってはやはりすっきりした方がいい。デザイン性は経済性も凌駕するはずだと考えています。この本体への内蔵というのは、おそらく世界でオンキヨー製品が初めてでしょう。

問 御社はオーディオ専用PCの必要性を訴えておられます。オーディオPCの売れ行きはいかがですか。

大朏 高音質の音楽を聴いて育った人は、通常のPCの劣化した音質に耐えられず、オーディオPCを購入する方が多い。一方で、初めから圧縮された音を聞いて育った人は、それに慣れてしまい、特に音質にこだわろうとしません。中学生のころからiPodで音楽を聴いている人にとってみれば、その音質を特に悪いと感じないのです。現状では、後者のような人達がそれなりのマーケットを形成していることを認めざるを得ません。良いものなら必ず売れると思っていると商売に失敗します。好みの問題でもありますから、オーディオ機器といっても一括りにしないことです。確かにオンキヨーのような高い商品についていえば縮小しているのは事実です。しかし音楽のファンは減っているどころか増えています。これは我々にとっても良いことです。いずれ、これまでは音質にこだわらなかった人たちが、我々の商品に一度触れることで、もっといい音を聴きたいという風になると思います。



ハードメーカーとしてのネット戦略

問 オンキヨーグループのネット戦略についてお聞かせください。

大朏 これまでソフトメーカーは、我 ハードメーカーが望むサービスを提供して来ませんでした。だから彼らに任せるのはやめて、我々自身でソフトの分野もやろうとしていました。しかし、最近やっとソフトメーカーが良いものを提供してくれるようになっています。例えば、NTTの「光ネクスト」は、アンテナ不要で「地デジ」も見れて、速度は数100メガです。動画については1ギガまでできる。また、NHKが今までのドラマを今度から有料で見せるというサービスを始めました。こういうことを我々は消費者の1人としても、ハードメーカーとしても求めていたわけです。これほど良いことをソフトメーカー自身がやってくれるのなら、これに対応できる良いハードを造らないといけない。サービスを見るハードに特化して、我々の力を発揮しようと考えたのです。だからPCを安く大量に造ることのできる会社を買いました。これで、PCに対応されたものをつくった時には、他よりもコストを安くできる。

 だから、今まではCDを買わなければオーディオで聴けませんでしたが、今度は画面をつけるだけで、音楽も映画も買えるハードになるのです。

問 御社は以前からホームシアターにも力を入れています。ホームシアターとネットの組み合わせはどう考えていますか。

大朏 ネットでコンテンツを引き出してきて、それをホームシアターで見ることもできるようにしたいと考えています。ホームシアターは年々順調に売り上げを伸ばしています。まだ持っていない人が多いから大きなマーケットになってくるでしょう。自分の家でホームシアターを使って映画を観たら、もう他のものでは観る気がしませんよ。一度ホームシアターを味わったら画像より音が大事だと実感するはずです。小さいテレビでも音が良いと、急に迫力が増して、画面の中に顔が入っていくような感じがします。



チャンスを活かせる体質に

問 オンキヨーグループの業績をどう見ていますか。

大朏 売り上げに関しては、2008年3月期では590億円ですが、09年3月期には900億円になるでしょう。10年には1000億円を越えようと思っています。今は利益を高くするよりも、その分は次の成長のために使う道を選ぶべきだと考えています。業績を々良くするだけだったら簡単です。1年間開発も何もしなければいいわけですから。こういうことをファンドは要求するんです。早く利益を出したいから。「あと30億円利益出したい」と彼らは言う。「でもその30億円を開発に使わないと3年後はない」と、経営者である私は思うのです。わがままに経営しないと面白くないものです。

問 そういう面では、株主や金融機関が長期の見通しを持って本当に企業を育てることが必要ですよね。

大朏 特に銀行は、ある業界が悪いということになると急に業界全体にお金を貸さなくなる。大きな会社がつぶれたら他の会社に一気にチャンスが来るというのに。例えば、今回の金融危機の打撃を受けて、ゼネラルモーターズ(以下GM)が潰れたと仮定します。すると、トヨタは一度に倍のマーケットを持つことになるわけです。トヨタがGMの工場を使えば、地元の人たちに感謝されるでしょう。当然、今まで通りの使い方をしていたらGMと同じになってしまうので改革をする。トヨタがGMを改革して稼ぐことのできる会社になったら、これ以上の手本になる企業はありません。つまり、立派なアメリカの資産になるといえます。本当にそういうチャンスが生まれる可能性も潜んでいるのですから、銀行をはじめとする金融機関も企業育成の観点をもっと持つべきです。

 オーディオ業界も同じです。オーディオ業界は毎年縮小していますが、もし大きな会社が一つ潰れたら巨大なマーケットが開けるわけです。企業側としては、そういう時のために、チャンスを活かせる体質にしておくことが大切です。例えば、数百人規模の会社だったら数千人規模の会社を請け負うことのできる知性・教養も身につけておく必要があります。その用意をしていた人は「やってみないか」と声をかけられる。また「君がやるなら金を出そう」という人も出てくる。一気に10倍の会社を持つことのできるチャンスが来るかもしれないのです。

問 新聞やテレビでは、日本が今にも沈没するかのように報道されています。不況だからといって暗くなるばかりでなく、チャンスを信じて日本を盛り上げていかないといけませんよね。

大朏 日本が沈没することは絶対にないと思います。例えば、ガソリン代高騰で大変だといっても、日本だけが苦しいわけではありません。世界中が厳しい状況に追い込まれているのです。ただ、日本人は世界でも珍しくガソリン代に加えて高速道路代も支払っています。この高速道路代を無料に、せめて半分にしてあげれば、人々は明るくなり、旅行にも行こうという気分になる。結果的に内需が良くなるわけです。同時に、産業界は輸送コストを安くできる。中国は元々高い石油を使用しているのだから、条件は同じです。コスト競争力が日本にはあります。ちょうどバブルが弾けてその後遺症に悩んでおり、サブプライムローンに深入りしなかったので、立ち直りも他国より早いでしょう。外国の会社に買われ続けていた日本が、外国企業の買収を始めています。これからが日本の出番だと思います。



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