トピックス -企業家倶楽部

2008年09月02日

キッコーマンとの業務提携を機に更なる企業価値の向上を図る/理研ビタミン代表取締役社長 堺美保

企業家倶楽部2008年10月号 核心インタビュー


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

カットワカメ、ノンオイルドレッシングなどの製品と、中間原料の食品改良剤を並行して扱う理研ビタミン。08年6月18日、300年以上続くしょうゆの老舗メーカー、キッコーマンと資本・業務提携を発表した。なぜ、今資本・業務提携に踏み切ったのか。理研ビタミンの堺美保社長にその背景と事業拡大への想いを聞いた。(聞き手は本誌編集長 徳永卓三)

堺 美保(さかい・よしやす)1939年9月23日生まれ。63年東北大学農学部食糧化学科卒。同年4月理研ビタミン油(株)入社。本社工場東京研究課配属。70年草加工場技術グループリーダー。82年本社食品企画室長。88年取締役。食品事業担当。92年常務取締役。95年代表取締役専務。営業部門担当。96年代表取締役社長。






キッコーマン 理研ビタミン株を約32%取得

問 今回のキッコーマンとの資本・業務提携は御社の経営にとって、大きな転換期になると思われます。どういういきさつで、キッコーマンとの提携に踏み切ったのですか。

堺 6月18日、キッコーマンが理研ビタミンの筆頭株主であった商工ローン大手SFCGから約260億円で、全株式の29・9%を譲り受ける形になりました。元々、2003年から株式を相互に保有し、2006年から金額として両社で同額の株式を保有し合っていました。その中で、主に技術者等の交流を通じて、技術開発、商品開発についての情報交換を行って来た経緯があります。そこへ、SFCGが昨年秋に株式を手放す話が持ち上がり、今年になって譲渡交渉がまとまりました。

問 御社は昨年秋、株式保有率が30%を越える敵対的M&Aを阻止するため、買収防衛策の導入を取締役会で決議されました。この防衛策を今年6月の株主総会で正式決定されましたが、反対はありませんでしたか。

堺 ありませんでした。株式買占めを狙って当社の株式を30%以上保有する株主が現れた場合、新株予約権の無償割り当てにより、買収者の議決権割合が最大3分の1まで希釈化される買収防衛策の導入を昨年9月の取締役会で決定しました。キッコーマンは、もともと保有していた株式を合わせると、当社の約32%を取得したということになりますが、取締役会で今回の株式異動は買収防衛策の対象外と判断、株式取得を了承しました。しかし、買収防衛策は有効期間を1年としています。買収防衛策についてはさまざまなご意見があり、この1年間で動向を見ながら、充分議論していきたいと思います。

問 今回の資本・業務提携を実りあるものにするため、両社で7月に提携推進委員会を作られたと聞きました。

堺 業務提携推進委員会というものをお互いの会社に作り、テーマを設定し目標を明確にすることで力を出し合っていきます。理研ビタミンは、私が委員長になりました。そして、それぞれの部会には、商品開発部会、調達物流部会、海外部会、研究開発部会などがあり、実効が上がるよう真剣に進めていきます。

問 キッコーマンとの提携は理研ビタミンにとって、大きな節目になりますね。

堺 我々は今回の提携を契機に成長軌道に乗り、数年後、あの時の業務提携は良かったと言われるよう実りあるものにしたいと考えております。

  今後の、資本のあり方、役員の人事について、全くの白紙からのスタートです。将来のあり方は、事業推進を進めていくなかでステークホルダーの皆様にとってベストな道を選択していくべきものだと考えています。



技術力の融合

問 両社の提携で一番力を入れていかれる分野は何でしょうか。

堺 研究開発です。研究開発には、一番期待しております。研究開発のテーマによって、短期的なものと長期的なものがありますが、達成すべき大きな目標ほど時間がかかるかと思います。

  キッコーマンには、菌を働かせ発酵を利用することで調味料を作るという技術があります。また、伝統的な技術に、近代的な考え方や手法を合わせた多くの研究成果をお持ちです。

  我々は、天然物の中に含まれる有効成分を取り出して、抽出・精製・濃縮を行う固有の技術を持っています。創立以来、「天然物の有効利用」をポリシーに研究を進めています。両社の得意とする技術力を融合させることによって、新たな展開ができると思います。具体的にどういったものを作るかについては、これから創造します。日本国内市場だけでなく海外市場を含め、世界的なレベルで技術を活用していきたいです。

問 昨年、キッコーマンはアメリカ進出50周年を迎えました。早くから海外志向があったようですね。

堺 キッコーマンは欧米に強いルートをお持ちです。キッコーマンの海外販売は、JFCという会社で行っています。自社の商品だけではなく、レストランで使える主に日系食材の販売、スーパーマーケットにも同様な商品を配荷しています。

  一方、我々の海外販売の強みは、加工食品メーカーへの食品原料の販売です。食品改良剤を中心に海外市場での売上拡大に取り組んでいます。08年3月期は、海外の売上高132億円で前期比6.0%増と順調に推移しています。海外販売の面では、お互い性質は違いますが、逆に利点となりルートを活用できると考えております。

  生産面では、リケビタ・マレーシアの改良剤生産設備の増設工事が08年2月に完了し、4月より本格稼動を開始しました。本設備の完成によって、年間の総生産能力は約4万1000トン体制となり、国内の生産能力を合わせると世界でトップクラスの規模となりました。

  09年3月期は、売上高840億円のうち、海外の売上高を145億円と見込んでいます。今回の提携により、海外の売上高200億円の実現も現実化してくるのではないかと思います。ただ食品の場合には、各国ごとに食品に関する法律が定められています。食品の規格、表示等には充分注意して進めてまいりたいと思います。



業務提携は開国である

問 少子高齢化を背景に国内食品市場が縮小するなか、海外での事業拡大がメーカー各社の勝ち残りの条件となってきましたね。

堺 今回の業務提携は、まさに開国だと考えております。量的拡大を見込めない日本のマーケットの中で戦うためには、質の向上が必要であり、業績を拡大するためには海外に広く出て行く必要があります。例えですが、私たちが池だとすると、キッコーマンは湖です。そこに、パイプを通し、水が交流することで住んでいる生物も生き生きとするでしょう。ずっと同じ池の中にいるのではなく、大きな湖にパイプを通すことで我々の経営の理想に近づきます。湖も交流がなければよどんでしまいますから、キッコーマンとしても同じことを期待しているのではないでしょうか。交流することで理想を共感しながら進めればよいのです。我々としては、これをチャンスに前進していけたらと思っております。

問 今、食品業界がグローバル化される中で、業界編成の動きがありますから、タイミング的には良い時期だったのかと思います。

堺 例えると、今回は黒船の改革だったのです。日本の企業全体が自前主義でやっていこうとする傾向がありますが、欧米は積極的に資本を集めて競争に勝っていこうとします。日本とは、感覚が違うのです。やはり世界で戦っていこうとする場合には、資本の問題もありますから、自前主義だと限度があります。外部要因によって何かが活性化される部分もありますから、今回の提携は企業価値の向上につながるはずです。

問 理研ビタミンのノンオイルドレッシングの原料は醤油ですね。現在は一部をキッコーマンから購入していますが、これからはすべてキッコーマンから購入することになるのでしょうか。

堺 今回の提携で、すべて醤油をキッコーマンから購入するというわけではありません。今まで使っていたものと品質が同様で、コストダウンにつながる商品であれば買います。ただ、新商品を作る際には、事前に情報公開をします。そして、それに見合った商品があれば積極的に検討していきます。

  食材、資材の購入も無理に共同でやることはありません。お互いにメリットがあり、効率化につながるものであれば行うべきです。どちらかが犠牲になるようなことはやらないつもりです。現状の両社の資材購入のあり方を整理することにとどまらず、天然物を主原料とする食品事業の将来を見据えた購入のあり方を再構築する検討をすべきであると思っています。



企業価値の向上

問 今回の業務提携について、社員の方の反応はどうですか。

堺 資本業務提携に至る経緯については、6月18日のプレスリリースまで伝えておりませんでしたので、社内の一部の人には会社の将来について不安に思った方もおられたと思います。

  現在、私自身が各事業所に廻り、今回の資本業務提携の主旨について誤解のないよう説明し、理解を得る努力をしています。社員には「キッコーマンと業務提携することは開国である。新しい経営戦略の構築につながり、企業価値が向上するような事業展開ができると思っている」と話しました。国内事業戦略と世界戦略を考えながら、大いに緊張感と責任感を持って推進してもらいたいと思っております。



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