トピックス -企業家倶楽部

2015年08月21日

先手必勝の組織改革に挑む/福山建設取締役管理本部長 福山俊大

企業家倶楽部2015年8月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.16


 人手不足が叫ばれる昨今、古参の現場社員とそれを監督する若手社員の間の軋轢を解消し、組織改革と新卒採用に挑んでいる企業がある。水道管の耐震化工事を主力事業としつつ、東京・練馬の閑静な住宅街に本社を置き、精力的にCSR活動を行う地域貢献企業、福山建設だ。

 2000年代後半、公共事業の縮小とリーマンショックの影響で危機に瀕し、多くの企業が業態転換や廃業を余儀なくされた建設業界。しかし東日本大震災の復興需要とアベノミクスで息を吹き返した公共投資、20年のオリンピックに向けた需要増によって風向きは一転。15年1月時点における業界全体での有効求人倍率は3.01倍と、空前の人材不足に見舞われている。

(文中敬称略)



建設業に興味がある人は採用しない

 福山建設は1972年創業。売上高18億円で、従業員数80人を抱える。東京都水道局の要請に応じ、水道管の耐震化工事を柱に事業を展開中。現在使われている水道管の耐震化率は約34.8%で、大震災が起きた際の断水被害が危惧されている。

 同社は、大地震に備えて水道管路の耐震化緊急10ヵ年計画を掲げる東京都水道局の発注を受け、耐震化率を大幅に引き上げる大事業の一翼を担う。この計画によって水道管工事の市場規模は2倍に膨れ上がり、現在好業績の最中にある。


 そんな福山建設の事業戦略は10~20年先を見据えた経営。創業50周年に当たり、同計画が終了する21年には売上、品質、社会貢献において東京で1番の水道管工事会社となることを目指し、組織改革を断行中だ。今でこそ、耐震化10ヵ年計画の恩恵を受けているが、政府の公共投資に左右されがちな建設業界は時代による浮き沈みが大きい。先読みの経営が生き残りには不可欠である。

 業界の平均年齢は50代。業務の特性上、現場で働く職人たちの技術のほとんどは個人に蓄積されてしまっている。ベテラン職人が若手社員に技術を伝承、共有しなくなると企業にノウハウが全く無くなってしまう。

「10ヵ年計画終了後に備えをしていないと、会社に何も残らなくなってしまいます。公共投資が減少していた時期から若手の人材を採用・育成し、未来の事業を一緒に考えてきました」と同社の二代目として将来を担う取締役の福山俊大は語る。

 福山は、水道管工事業だけでは将来的に成長できないと判断し、今まで同社の築き上げた地域を基盤にして新規事業を創出するため、若手の発想力に期待を寄せる。現在を第二創業期と位置付け、企業文化、事業戦略、組織作りに携われる人物を積極的に採用。むしろ建設や水道に興味がある人は一切採らず、会社説明会では若いうちから活躍したい人にとって仕事がしやすい環境であることをアピールする。

 福山は、「私たちはマネジメントに関わりたい人を歓迎します。ただ、建設が専門でない人がうちに入社するのは、野球未経験者が名門野球部に入部して甲子園を目指すようなもの。ハードワークは覚悟してください」と学生を叱咤激励する。求める人材は責任感とリーダーシップが旺盛な人物。1次面接から経営陣が担当し、その後の採用過程で現場社員との相性を計る。



職人と新卒に生まれた絆

 福山は2008年に福山建設に入社した。同社の第一印象は、変化を嫌う会社。職人たちは各人で自分のやり方を持ち、責任意識は高いものの、福山が新しいやり方や事業を提案すると、「どうして今までの俺たちのやり方と違うことをする必要があるのか」と反対することもあった。

「何も分かってない若造が入ってきて何ができる」

 福山は、将来を見据えて新卒採用を始めたが、新卒一期生が入社すると現場社員たちの猛反発を受ける。最初は全く期待されていなかった新卒一期生だったが、現場のことをよく知るために職人の寮に泊まりこみで働くようになると、現場の見る目も徐々に変わり始めた。

 一見、荒々しくて頑固な職人たちも、熱心に質問してコミュニケーションを図ろうとする新人たちの姿に「やるじゃないか」と感心したのである。現場の従業員たちも打ち解ければ面倒見が良く、この7年間で新卒社員を受け入れる意識が上がり、若者を育てようとする雰囲気が自然と生まれた。

 同社はもとより、叩き上げの職人から、大学を卒業した新卒、中途でゼネコンから来た転職組など、様々なバックグラウンドを持つ人たちが集まっている企業だ。多様な価値観、働き方を認め合うことで、働きやすい環境を実現したのである。



チーム一丸となって進める委員会活動

 水道管耐震化の10ヵ年計画が終わり、需要が急激に減ることが予想される21年に向けて福山は「本当の競争に備えなければならない」と新規事業の計画にも積極的だ。「安全・安心なライフラインを提供し、地球環境・人に優しい生活基盤の実現を目指す」ことが福山建設の経営理念。この信条に基づいて、建設副産物のリサイクル事業やノウハウを活かした介護リフォーム事業などが新規事業の目玉だ。同社がオフィスを構える練馬区も高齢化が進み、介護関連の事業が地域住民に必要とされることは間違いない。

「地域に根差した中小企業と言われれば聞こえはいいが、練馬に事業所があるというだけでなく、本当に必要とされる会社にならなければなりません。創業44年に差し掛かり、今までやってきたことだけでは不十分だと痛感しています」と福山。そこで目を付けたのが地元住民への貢献と交流を強化するCSR活動だ。

 町内会の人々と防犯パトロール、清掃活動、警察署と共同での防災イベントの企画など、積極的に地域活動に参画。水道工事の依頼をするのは水道局だが、実際のユーザーは地元住民たちである。会社に売上という形でのメリットがあるわけではないが、地域活動はユーザーたちとの大事なコミュニケーションの一貫でもあるのだ。

「俺たちはやるべきことをやっている」

 新たな活動を押し進めるため、福山は社内横断での委員会活動を始めるが、またしても現場から反発の声が噴出。職人たちのモチベーションは尊敬する親方と共に仕事ができることや金銭的な報酬であることが多い。福山建設の事業自体に興味があるわけではなかった。

 そんな中でもトップダウンでメンバーを割り振り、5つの委員会活動が始まった。委員会はそれぞれ、安全推進、事業継続計画、エコ社会貢献、イメージアップ対策、5S環境整備といった内容で、意欲のある若手がリーダーを務める。活動は、通常業務での肩書が一切関係無いフラットな組織で行われるため、新人たちのリーダーシップ養成も期待できる。

 最初、誰もが仕方なくやらされているという意識で活動していたが、取り組んでみると地域の住民や区役所、警察に頼られ、感謝されていることに気が付き始めた。最近では、ミーティングなどで自ら活発に発言するメンバーが急増。福山も委員会活動が自走していることに手応えを感じている。「仕事がこんなに楽しいなんて驚きです」と福山に熱く語る社員まで現れるようになった。

 委員会活動のメリットはそれだけではない。部門外の人たちが触れ合うことで、今まで関わることの無かった従業員とも仲良くなり、福山建設全体に一体感が芽生えた。また自主性が生まれ、書類や工具が散らかっているようなことも無い。

 組織全体に当事者意識が根付き始めた福山建設。「チームの力で地域に貢献し、大型需要が減る21年以降の難局を打破していきます」と、福山は組織改革へ期待を込めた。



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