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トピックス -ビッグベンチャー

2014年04月27日

俺のシリーズで外食革命/俺の株式会社代表取締役社長 坂本 孝

企業家倶楽部2014年6月号 今、日本を最も面白くする企業家たち


坂本 孝 ( さかもと・たかし)

1940年山梨県甲府市生まれ。オーディオ販売や中古ピアノ販売、化粧品販売などいくつかの自営業を経て、90 年にブックオフコーポレーションを創業。中古本チェーンとして16 年で900店舗まで拡大し、古本業界の流通に変革をもたらした。現在は飲食事業の展開に取り組み、俺のイタリアン、俺のフレンチなど、ミシュラン級の味と立ち飲みスタイルを掛け合わせた革新的なビジネスモデルで外食産業に革命を起こしている。99年度第1回企業家賞人材育成賞を受賞。



他店の8倍お客を入れる

 当社は飲食店を経営しており、「俺のフレンチ」を始めとする立ち飲みスタイルの店舗形態で人気を博しております。普通の飲食店では、食材原価率を30%以下に設定していますが、当社ではその2倍の60%、ものによっては300%をかけています。それ程に高級な食材を、一流のシェフがおいしく料理することが付加価値となっており、他に類のないコストパフォーマンスが実現可能になるのです。スムーズにお客様をご案内して、高級食材をお得な値段で提供しています。各店オリジナルの限定メニューをご用意しているのも強みの1つです。

 これは、業界を知らないからこそ出来ることなのだと思います。僕は、企画書を何枚も作るのが大嫌いで「自分の直感でやろう」「走りながら考えれば良い」と、計画はほとんど立てていませんでした。ある時、業界を改革するのは「よそ者、わか者、ばか者」という言葉を聞いて「自分は3つ揃っている」と思いました。

 どっさり原材料費を使うので一人当たりの利益は少ないですが、それを立ち飲みにすることにより通常の2倍受け入れることができます。さらに、それを4回転する。すなわち他の店の8倍ものお客様が入るので、1人当たりの利益が1/8で良いのです。だいたい売上の10%くらいが経常利益で、利益率としては十分でしょう。



70歳の「若さ」を発揮

 私は居酒屋を経営していたこともありました。初めの頃は、魅力的に感じても2?3ヶ月するとお客さんがどこかに消えてしまいました。赤字続きでもう辞めようと思い、どうして競争の激しい飲食業界に入ってしまったのかと悩みました。自分の情けなさを嘆いて、誰かに会社を買い取って欲しいと願う時もあった程です。

 しかし70歳を過ぎて、ここで挫折してはいけないと思いました。70歳という「若さ」をどう発揮するかということで、毎日どうすればいいのか考えました。

 この飲食店不況の中でも元気な店は有ります。そこから100店舗を選び、さらに10店舗に削っていくとミシュランの星を取った所が輝いているのです。また、立ち飲み屋が行列ができるほど繁盛していました。それは手頃な値段で提供しているからです。この一流の味と立ち飲みを組み合わせたら大爆発するという予感がしました。



夢を一緒に抱く

 ブックオフ創業者としての知名度も健在だったため、そうした追い風からも上手くシェフ達を説得することが出来ました。ニューヨークやパリ、ミラノに出店したいと言うシェフ達を乗せてきましたが、言い換えればこれは、夢を共有したということなのです。

 シェフを集めるのは容易なことではありません。それは、多くの経営者が人を上手く乗せることを知らないからです。私たちは、理念を本当にわずかな時間で浸透させることができました。当時からシェフが30人ほどいますが、1人も辞めていません。これが1番の強さです。



1店舗にフレンチとイタリアンを

 俺のフレンチ・イタリアンの厨房は理想的です。従来は狭くて料理人が働きにくい環境でしたが、私たちは料理人が自分の能力を完全に発揮できる空間を作っています。

 要望の中に、イタリアンとフレンチに別々に行くことなく、1店舗でロッシーニとピザが食べられるようなお店が欲しいとありました。そこで、青山店は2つの業態が一緒になるようなお店にしようと考えたのです。

 青山店はオシャレに白を基調としています。照明も凝っていて、ジャズの生演奏を聞きながら料理を楽しめるような粋な空間になっています。そして、競合が絶対に出ないようにしています。仮に競合が出たら「フランチャイズとして一緒にやりましょう」と説くのです。

 これまでの飲食業界では、良いビジネスモデルが出てくると皆こぞって真似をするのが通例でした。つまり、簡単に真似できるモデルではあまり特徴にはならないのです。私たちは腕利きのシェフを集め、原価をジャブジャブ使うことを特徴としてきました。このノウハウは当社だけが持っています。



全員を幸せにすることが目標

 私は京セラ創業者の稲盛和夫氏が率いる盛和塾という経営道場で、もう15年近くお世話になっています。そこで、理念を共有している会社が伸びているということを知りました。最初、料理人は経営者の方針を聞くのではなく、賃金の話しかしないと思っていました。しかし、一流の料理人は人間力も大きいのです。フレンチのシェフはみんなイケメンで、奥さんは必ずかかあ天下です。だから、シェフとお話しする際には奥さんにも夢を共有しましょうと言うと、2人とも良い返答をしてくださいます。身近にいる料理人を、奥さんまで含めて幸せにすることが私の夢です。

 企業として理念を共有することが重要になります。人のため、仲間のために汗を流すのです。これを何回も繰り返し言うと、次第に伝わっていきます。互いに理念を共有し、お酒を飲み明かし、同じ屋根の下で同じ釜の飯を食うということです。

 戦略を練ることと、理念を共有することが私の仕事です。店の開店や資金調達は周りの仲間が全部こなしてくれますので、私は戦略立案と理念共有だけに絞れます。



新しい発想で再出発

 ブックオフの会長を不甲斐ない形で辞職してしまい、ハワイで優雅な生活を送ろうと考えていた時、盛和塾の稲盛塾長がJALの再建に乗り出すという知らせを聞きました。そんな時にハワイでのうのうとしていたらひどく叱られるのではないかと、恐怖感からハワイには行きませんでした(笑)

 私は長らく、自立した社員を育てたいと考えてきました。加えて、料理人が良い思いをしていなければいけないと思います。彼らの幸せのために会社を作ろうと思い立ちました。

 もちろん、焼き鳥屋で失敗した経緯もありました。だれでも簡単に出来て他店との差別化が出来なかったのが原因です。やはり他店が出来ない特徴をいくつか持ち、それでこそ10年間は向かうところ敵なしと言えます。この失敗があったからこそ、次の成功へのビジネスモデルが創れるのです。失敗は絶対に必要で、その辛酸を舐めた事が成功へと繋がります。



危機は「気」で乗り越える

 街を歩いていた時に、足元が狂い怪我をしたことがありました。両手両足が動かなくなってしまい、救急車で運ばれて手術を受けたのです。自分の人生は半ば終わったかと思いました。でも、もっと多くの料理人を幸せにしなければならないという目標が明確になっているわけですから、自分は絶対に治ると心に誓ってオペを受けることになりました。退院の時、先生に「検査のデータを見て歩けると判断されたんですか」と聞くと、「検査の結果は当てにしません。坂本さんがどうしても治すという『気』ですよ」という応えが返ってきました。

 病気でも経営でも、自分の持っている強い意思と信念をどこまで貫いていくかが本当に大切であるということを70歳にして学びました。自分の歴史的な一瞬です。まだ何店舗かできたくらいで、富士山で言うところの1合目の時点で負けてはいられないと思い、怪我を機会に休もうとは思いませんでした。



高級食材で世界に挑む

 創業した時に、銀座で30店舗出した後はニューヨークだと考えていました。いきなり世界大会に挑むわけです。今、日本が世界に負けてはいけないものは料理人の腕だと思います。世界という舞台に羽ばたいて皆さんの腕を証明する。そうなりますと、やはり料理人が奮い立ちます。小学生がプロ野球の選手やパイロットだけではなく、良いシェフになりたいという夢を語るようになるのが目標です。

 高値の華である高級食材をジャブジャブ使うことを中心に考えると、次は中華料理でしょうか。後は日本蕎麦と天ぷら、そしてスペイン料理です。つまり、ビジネスモデルは全部同じで10業種くらい簡単に出来ます。

 ニューヨークでの出店は2014年秋の予定で、和食から出すつもりです。ミシュランの星を持っている料理長クラスが7人います。彼らにニューヨークで勝てるかと聞くと、全員が絶対勝てると言うのです。本当に皆さんが自分の仕事に自信を持っています。



食のプロを自ら育成

 ミシュラン級のシェフが作る料理を提供する形態のフランチャイズは一番難しい所です。このシステムは、料理人を本部が加盟店に提供するものです。つまり、厨房はほとんどこちらが引き受けるので、経営者の方にはお客様へのサービスに努めていただきます。すると、競合には絶対勝てます。

 今の加盟店の中小企業で良いシェフを採用するのは無理です。僕みたいに皆を上手く乗せられる人はいませんからね。世界に土俵を構えると決めた以上、大きなチェーンを作るのではなく、料理人がそこで腕を上げ、心も育っていく人間道場のような場所を実現するのが夢です。今は飲食店経営ですが、気合の入った真心のある人間の育成を実現していきたいと思っています。自然と情熱も湧いてきます。

 本社の地下に、研修生・プロ養成の料理アカデミーが出来ました。そこで、加盟店からお預かりした料理人を立派なシェフにするという、今まで出来なかったことが出来るようになりました。そこには、日本を誇るミシュラン級の教授が30人も居ます。全部一人ずつ付くので20ヶ月経てば一流の料理人です。在籍している生徒を見ると、日本は大丈夫、絶対に負けてはいけないという気持ちが伝わってきます。そして、この人が将来料理人という夢を実現して、本当に料理人になって良かったと思わせてあげたいと思います。



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