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トピックス -ビッグベンチャー

2014年01月23日

地域のインフラを目指して/ダイシン百貨店代表取締役社長 西山敷

企業家倶楽部2014年1/2月号 今、日本を最も面白くする企業家たち


会社概要、プロフィール、肩書きは掲載当時のものです。

西山 敷(にしやま・ひろし)

 1947 年3月、東京都生まれ。工学院大学建築科卒業後の1969 年建設会社に入社するも、2ヵ月ほどで退社。同年、大手スーパーチェーン長崎屋に入社、ショッピングセンターの開発、フランチャイズチェーンの開発に携わる。1977年株式会社商業建築計画研究所(現・株式会社商業建築)を設立、商業施設の建築設計、生鮮コンビニ、惣菜店、イタリアンレストラン、コーヒー専門店にも携わる。2004 年、クライアントだったダイシン百貨店の当時の幹部に請われ、取締役に就任。2006 年、ダイシン百貨店代表取締役社長に就任。 



半径500メートル圏内100%シェアを目指す

  私が流通業界に入ったとき、「狭商圏・高シェア」という言葉を教わりました。これは狭い範囲でもそこにいるお客様の多くに利用されれば利益が出るという意味ですが、それを社員に教えてもピンと来ないようでした。そこで私は「半径500メートル圏内100%シェア」を目標に掲げ、社員にも教えるようにして来ました。この目標がやがてお客様にも聞こえ、ダイシン百貨店に親しみを覚えてくださったようです。

 ダイシン百貨店は、みなさんがイメージする百貨店とは異なっているかもしれません。東京の大森で65年経営しているローカル百貨店として、井戸端会議の場所のようなコミュニティーを老若男女に提供する店作りを目指しています。「電気・水道・ガス・ダイシン」が私たちのスローガンです。この地域に無くてはならない存在として、地域のインフラ作りに取り組んでいきたいと思っています。



徹底的にお客様の声に応える

 65年間の経験を活かしたユニークな商品構成がダイシン百貨店の特長です。弊社はもともと八百屋としてスタートしました。それが、「衣料品を置いてほしい」「家電を置いてほしい」といったお客様の要望に応える形で成長してきたのです。商品を必要とするお客様が1人でもいれば、しっかり提供していきたいと思っています。最初は1種類であった豆腐も、「この商品がほしい」という声に応えていくうち、今では約100種類に及んでいます。

 時代の中でニーズに応じて商品を増やし、創業時は20坪程度だった店は売り場面積3000坪になりました。

 しかし、私がお客様に提供したいのは商品だけではありません。モノだけではなくコト、つまり心地いい空間や楽しい時間を生み出していきたいと考えています。たとえば以前、若者が多く訪れるブックカフェを目にしました。気軽に利用でき大変便利ですが、なぜお年を召された方がそのように立ち寄る場所がないのかと疑問に思ったのです。そこで気兼ねなく行けるお年より向けのブックカフェを店内に作りました。商品をやり取りする上で、お客様と私たちは川を挟んで対岸に立っているような状態です。ですが私はその川を渡って、お客様の傍に行きたい。お客様の立場で考えることの大切さを忘れないようにしたいのです。



手作りイベントで地域を盛り上げる

 ダイシン百貨店ではイベントの開催に力を入れています。私はイベントが自分の担当だと思い、毎回全力を尽くそうと心がけています。イベント開催のために社外の人間を使わないのが私の方針ですので、プール1つでもベニヤ板を使い、防水処理をして手作りします。大変な労力を必要としますが、それこそがイベントをする上で一番大事な工程なのです。

 最初に開催したのは、子供向けの祭りでした。小さな頃に小遣いを握り締めて行った縁日のようなイベントを行いたいと考えたのです。子供にも手が出るようにと焼き鳥などもすべて20円で売りました。雨の中4000人の来場者が訪れ、成功かと思われましたが、これだけ安く商品を出すと大人が買い占めようとして行列を作ってしまうという問題も起こりました。そこで2回目からは子供にだけ無料のチケットを渡すなどの工夫をし、夏祭りの開催は現在5回を数えています。外部に任せれば数千万円のコストがかかりますが、自分達の手作りなら1000万円ほどで済む。その分お客様に安く楽しんでもらえるので、私はこれが本当のイベントだと思っています。

 ダイシン百貨店のイベントは、夏祭りやいちご狩りといった子供向けのものから、ゴールデンウィークに行った夜のダンスパーティーや、5000円で提供する食事コースつきの本格的オペラなど、大人向けのものまで開催しています。このオペライベントは当初見込んでいた1日50名を大きく上回る80名ほどの来客がありましたが、それでも200万円ほどの大赤字でした。

 都心部へ行くと、このダンスパーティーやオペラのようなイベントはたくさんあるでしょう。しかしお年寄りがわざわざ出て行くのは難しい。だから私はそういった方たちに、ダイシン百貨店という身近な場所で本物を見せたいと思っているのです。参加してくださったお客様の中には、泣いて喜んで下さる方もいました。イベントそのものは赤字でも、このようなお客様がダイシンを一層愛してくださることで、長い目で見ると利益に繋がるのです。

 イベントを行う中で、子供に指をさされ「ママ、あれが社長だよ」などと言われることがあります。私はこの瞬間が一番嬉しい。さらに、私は毎日の業務として、自分で店舗に顔を出すようにしています。イベントや店での挨拶でお客様に経営者である私の顔が見えればダイシン百貨店への親しみが生まれます。訪れるとほっと安心するような店づくりは、こういったところから行っていくべきだと思っています。



地域密着で再建に挑む

 私はダイシン百貨店の創業者ではありません。もともと、弊社に出入りしていた設計企画会社の代表でした。社長代行のように店作りを手がけていたのですが、社長が亡くなった際経営危機に陥っていた会社の再建を頼まれ、ダイシンに入社しました。私は強面ですので、当時再建を迫っていた銀行の対策を任せられ、端株を貰って役員となりました。

 銀行は当時8店舗ほどあったうち、ダイシン百貨店の本体を売って他の小規模な店舗を残す再建案を出してきましたが、私にはそれが得策とは思えませんでした。私は銀行の求めてきたのとは逆に、ダイシン百貨店の本体だけを残し、他の店舗を売却することにしました。最初は渋っていた銀行も、最終的には私の説得に折れる形になりました。

 65年間地域に根ざして経営してきたダイシン百貨店には、ファンが多くいます。近隣に住んでいてダイシンのことを知らない方はほとんどいません。この信頼こそがわたしたちの大きな強みなのです。一回潰してやり直したのでは、借金は棒引きになったとしてもファンを失うことになります。それでは意味がない。

 再建で一番大変だったのは、社員の誰もこの潜在的価値に気が付いていないことでした。それどころか、会社が危ない状況にあるということにすら皆楽観的に構えていました。私は再び会社の利益が出るようになったところで役目を終え、会社を去ろうと思いましたが、「お前がいなくなったらどうするんだ」と言われ、結局そのまま社長に就任しました。

 危機感のなかった社員たちの中には、いきなりやってきて社長面されてはかなわないと、私の言うことを聞かない者もいました。そういう社員には、「社長に挨拶もできないようではクビだ」と言い、本当にそれを実行しました。今では社員一同、驚くほど良く働いてくれます。



社員教育は背中で語る

 私は、社員に直接教育するつもりはありません。人材は毎日自分が店舗に顔を出し、親父のように背中を見せることで育っていくと思っているからです。大きなチェーンのスーパーなどでは、社長が店舗に来たところなんて見たことがないというようなことがままありますが、それは絶対におかしい。スーパーや百貨店は、企業ではなく商店なのです。たとえチェーンが100店舗あっても、その一つひとつは商店です。店を先導していくのはトップである私でなくてはいけません。

 もし将来自分以外の誰かがトップになっても、今度はその人が毎日店舗に顔を出してお客様と接するべきだと思います。お客様との交流の中で、その変化に絶えず目を向けていくことが大切なのです。今は現場主義ではなくシステム主義の時代だと言われています。建築の業界でも、中国で描いた図面で日本の建物が施工されることがありますが、そういった体制はいつか必ず破綻するでしょう。

 私の夢は、自分のコピーのような後継者を育てることです。本当の理念の共有ができる人間に、自分の後を頼みたいと思っています。私は昔、決して優秀な部類ではなく、むしろ劣等生でした。現在入社3年目までの社員は約70名いますが、その社員たちにもそういったハンディキャップをはねのけて頑張って欲しいと思っています。純粋に仕事を好きだと思えるような人間になってもらいたいのです。



住んでよかった町づくり

 医療や福祉なども含めた地域インフラをダイシン百貨店が主体となって整え、地域の活性化を図ることが私の理想です。例えば、今はまだ難しいですが、ダイシンのポイントカードを地域通貨として病院で使えるようにする。住民票をダイシンで取れるようにする。現在弊社のポイントカードは6万人の利用者がおります。そのお客様を株主、サービスを株と考え、ご利用してくださるお客様に還元していく。そうすることでダイシン百貨店が地域ファンドとしてなくてはならない存在になると思っています。

 私たちは「住んでよかった町づくり」を理念にしています。現在は宅配やお年寄りの見守り、送迎バスの運行などを行っており、ダイシンがベースとなって介護事業との連携を行うことも視野に入れています。お客様と直接ふれあう小売店であるからこそ出来ることがあるはずです。地域に根ざした商店として、これからもよりよい町をつくっていきたいと思っています。



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