トピックス -ビッグベンチャー

2015年08月25日

全社員経営で世界を目指す/クロスカンパニー代表取締役社長 石川康晴

企業家倶楽部2013年8月号 今、日本を最も面白くする企業家たち


肩書き、プロフィール、会社概要は掲載当時のものです。

石川康晴 (いしかわ・やすはる)1970 年岡山市生まれ。94年クロスカンパニーを創業。99 年に「earth music&ecology」を立ち上げ、現在では他ブランドを含め、国内店舗数470店舗(2012年7月末現在)まで拡大、昨年9 月には中国に進出。宮崎あおいを起用したテレビCMでも注目を集めている。一方、女性支援制度を中心とした社内制度の充実、環境活動や地域貢献活動へも積極的に取り組み、東日本大震災で被災者180人を雇用をしたことでも話題となった。内閣府男女共同参画会議議員。国立岡山大学経済学部卒。



幼少期から洋服が大好きだった

 当社は1994年創業のアパレル会社で、1999年に「アース ミュージック&エコロジー」(以下アース)を立ち上げました。「大人の清楚」をコンセプトに掲げ、ゆくゆくは日本のファッションを代表するブランドにしたいと考えています。また、社名である「クロスカンパニー」という名前には、互いを支え合うことで人と人とがクロスしていく会社にしたいという願いが込められています。

 私は、日舞の師範を務めていた祖母の影響もあり、小学生の頃から洋服が大好きでした。祖母が着物の色合わせについて話す姿を見て、潜在的に洋服の色やコーディネートに興味を持ったのでしょう。お年玉はすべて洋服に使っていたので、よく通っていたお店の店員には「そんなに服が好きなら洋服屋を経営したらどうだ」と言われるほどでした。そして、その言葉がきっかけで、14歳ながらアパレル会社の起業を心に決めていました。



接客ナンバー1を決める「ベストオブクロス」

 2010年から女優の宮﨑あおいさんを起用したテレビCMの放映を開始しました。テレビCMへの12億円の投資は社内で猛反対され、「赤字になるのではないか」「投資の効果が確実ではない」など様々な意見が挙がりました。しかし当社は「挑戦」を企業理念の一つとしています。たとえ直接的な売上効果が出なくても、自社が世間に認知されることによって社員のモチベーションが上がるのであれば、CMに挑戦する価値は十分にあると考えました。結果的に売上は飛躍的に伸び、テレビCMの効果が証明されました。

 社員のモチベーションを維持するため、当社は「ベストオブクロス」というイベントを毎年行っています。これはその年の接客ナンバー1を決定する実演コンテストで、「この大会で優勝したい」という夢を持つ新入社員もいるほどです。上位入賞者にはヨーロッパ旅行を用意しており、五ツ星ホテルや三ツ星レストランで一流のホスピタリティを体験してもらっています。



全員を正社員として採用する

 創業当時、先輩経営者にアパレルで生き残る術を相談したとき、ほとんどの方が口をそろえてこう言いました。「正社員は採るな、人材は調整弁として考えろ」。しかし、このような発想では、アパレル業界は人材が欠乏してしまいます。

 そこで、当社はスタッフ全員を正社員として採用しております。確かに正社員採用はコストという観点から考えると楽なことではありません。しかし私は人件費を収益の源泉と捉えています。なぜなら、社員の習熟度は収益の生産性と大きく関わっているからです。アルバイトや契約社員は一定期間を勤めると退職してしまいます。せっかくノウハウをつかんでも、会社の雇用形態を理由に辞めてしまうのです。こうした事態を防ぐためにはスタッフを正社員で採用するしかありません。

 また、人材という武器に加えて、あまり知られていない当社の強みが財務戦略です。第一に低資産。他社が大型店を構える中、当社は約20坪という小型の店舗に特化しています。自社の工場・物流センターを持たず、無理な投資をかけないように工夫しているのです。第二に高粗利。SPA(製造小売業)で中間コストを削減し、製品の利益率を上げています。第三に高回転。店の規模を小さくすることでダントツの商品回転率を誇っています。年間で13回商品が入れ替わりますので、1カ月に1度お店が変わっていくというスピード感をお客様に提供しております。



中国市場はファッションのオリンピック

 当社は2011年から現在に至るまで、中国に10店舗オープンしました。領土問題で日中関係が悪化したため、現地の日系企業の方はほとんど帰国してしまいましたが、緊迫した状況での経営はめったにない経験です。経営者自身が正しい情報を持っていなければ、正確な判断はできません。そこで現地がどうなっているのかを自分自身で確かめるため9月は中国に21日間住み、上海でのデモを始めとする中国の現状をこの目に焼き付けてきました。

 そこで感じたのは、私たちが考える中国に対するイメージとのギャップでした。私たちは中国を新興国と考えがちですが、一部の若者に関しては先進国レベルのマナーや道徳心を持っています。また日本では中国人は政府の影響を強く受けているという見方がありますが、20?30代の若者は政府の影響が薄く、思想のバランス感覚を持った方が多いように感じました。

 私たちは本気で中国に展開するという強い覚悟とベンチャー魂を持っています。日本では近隣のお店は日本人が経営していることが多いです。しかし、中国においては隣のお店は韓国ブランド、向かいのお店はヨーロッパ発ということが日常茶飯事です。まさに「ファッションのオリンピック」。中国市場に出店することにより、現在のアースに足りないものを見つけることが出来るのです。

 たとえば、商品の見せ方。特に欧米企業はショーウィンドウの作り方に長けています。そして、これまで欧米企業を熱心に研究してきた韓国企業も侮れない。欧米や韓国よりも優れたショーウィンドウを作るため、私たちは現在中国で試作を重ねています。そして中国という「オリンピック会場」で得た経験やノウハウを日本市場に投入することで、アースはよりよいブランドになっていくでしょう。

 売れる商品は日本も中国も基本的に同じです。ただし違いがいくつかあり、中国では細い品が人気です。例えば日本で売れる商品の7割はMサイズで残りがSサイズですが、中国ではこの比率が正反対となります。タイトなサイズを好む点では、やや欧米的な感覚を持っていると言えるでしょう。

 もう一つの違いは色です。日本では紺色・ベージュなどの清楚な色が売れますが、中国では赤・ピンクなど主張の強い色がよく手に取られます。よくプロダクト(製品)の現地化といわれますが、売れる商品は一緒ですので当社は商品の現地化は必要ない。ただ、発注の現地化は考慮しなければなりません。Sサイズや派手な色の商品を多めに仕入れるなど、状況に応じて方針を決定していきます。



ファッションに国境は関係ない

 我々の海外戦略の基本的なスタンスは「ファッションに国境は関係ない」です。領土問題で衝突が起きたとしてもハローキティを嫌いになる中国人がいないように、ファッションにも国境はありません。確かに反日運動による妨害はありましたが、破壊活動をしたのは1人のみで、私服公安当局がすぐに取り押さえました。重慶の国営百貨店に出店する際にはデモ隊1000人が百貨店の目の前を活動していましたが、そうした中でも売り上げは一日80万円を記録しました。この売り上げに勇気づけられ、私たちは改めて日中集中戦略を進めることを決意したのです。

 これまでクロスカンパニーは日本を始めとするアジア圏を中心に活動してきました。尖閣問題で日中が衝突する中、中国に住んで強く感じたことは、日中集中戦略の大切さです。現在、日系企業が投資を抑えている隙を狙って、韓国やヨーロッパは中国へ大型投資を行っています。ここで負けてはいられません。今後も中国に投資し続けることが私たちのするべき経営判断です。

 アジアに関して申し上げると、アースが国内で260億円規模にまで成長したので、中国におけるアースもあと5年で同規模にしていきます。また、お台場のダイバーシティに「セブン・デイズ・サンデイ」というお店を出店しました。このブランドは毎日を休日のように、リラックスしつつもアクティブに楽しむカップルやファミリー層を狙っています。売上800億円を目指しており、これら二つのブランドにこれから大きく投資をかけていくこととなるでしょう。

 当社は百貨店にふさわしいようなラインナップから、若い方々でも手の届きやすいブランドまで展開し、商品の多様性を重視しています。プロダクトポートフォリオ(効率的な事業の組み合わせ)という考えの下、立地・購買層の違いを明確に区分けしながら8つのブランドで商品戦略を仕掛けております。



2020年までにアジア一を目指す

 当社は毎年「オカヤマアワード」を主催し、49歳以下の岡山出身者で、各業界で活躍している方を表彰しています。業界のプロが受賞者の選考をするのが特徴で、たとえばヘアーサロン業界であれば美容師のみを対象に4000部アンケートを配って受賞者を選出する形です。そして岡山の業界ナンバー1を30名ほど選出してもらい、その中で大賞を決めていきます。各業界の最前線において現役で頑張っている人を表彰し、若い方にスポットを当てることで地域の経済を活性化させたいという思いが込められています。地方の経済を活性化させることは、国の経済を活性化することにも繋がります。

 また、日本の経済を考えると同時に、当社は世界を視野に入れた戦略を実行しております。2014年までに国内トップ3、2017年までにアジアトップ3、2020年までにアジアナンバー1になることを目指しており、世界一という将来を見据えて「日本のファッション」を世界に広めていく所存です。



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